インタビュー
[EVO Japan]唯一本気になれたのが格闘ゲームだった――「ストリートファイターV AE」部門優勝,ナウマン選手インタビュー
国内のプレイヤーレベルが非常に高く,ベテランのトッププロが活躍する同部門で,日本の若手選手がビッグタイトルを獲得したのは今回が初めてのこと。大会後,快挙を成し遂げたナウマン選手にインタビューを行ったので,その模様をお届けする。
4Gamer:
優勝おめでとうございます。これまで日本の若手プレイヤーの活躍が少なかった「ストリートファイターV AE」部門ですが,ついにナウマン選手がその壁を破りました。今の心境を聞かせてください。
ナウマン選手:
いちプレイヤーとしては,大きな大会ではじめて優勝できたので純粋にうれしい気持ちです。また,自分と同世代のプレイヤーからプロとして活躍を続けている大先輩まで,いろんな人が一緒に喜んでくれたことが何よりうれしかったですね。
4Gamer:
ナウマン選手は2019年に大学を卒業して,そこからプロゲーマーとしての道を歩み始めました。簡単に決意できることではなかったと思うのですが,どのような思いでこの世界に入られたのでしょう。
ナウマン選手:
もちろん不安はありました。大学を卒業して就職して,普通の生活の中でゲームを続けていくという選択肢も考えました。ただ,何をやっても中途半端な人間だった自分が,唯一本気になれたのが格闘ゲームだったので,チャンスを掴むのであれば,これしかない! と決断しました。
4Gamer:
中途半端だったというのは,たとえば学業やスポーツなどでしょうか。
ナウマン選手:
本当にいろいろですね。僕は中学校ではサッカーをやっていて,3年間でそれなりにうまくなったんですけど,高校に入るときにやめてしまったんです。高校でも成績はいいほうだったんですが,自分の限界に挑戦するということはありませんでした。簡単に言ってしまうと,ある程度のところまでいったら満足してしまっていたんです。
ただ,ゲームだけは「そこそこ強くなれればいいや」なんて考えは一切起きなくて,「この世界で一番になりたい!」という気持ちがずっとありましたし,今でもそれは変わっていません。
4Gamer:
そこまで惹かれたゲームの魅力はどこにあると考えていますか。
ナウマン選手:
ゲームそのものは子供の頃からすごく好きだったんですが,大学生になって秋葉原の「e-sports SQUARE」に通うようになってからさらにのめりこみました。同じゲームが好きな人が集まって,顔を合わせてオフラインで対戦する,ということがすごく新鮮で,楽しすぎて毎週通うようになりました。
格闘ゲームって,年齢も性別も関係なく遊べるところが魅力ですよね。好きなものが同じだからすぐに仲良くなれるし,先輩はかわいがってくれるし,面白い人たちばかりだしで最高です。同級生といるよりも居心地のよさを感じていました(笑)。
4Gamer:
プロを目指そうと決めたのはいつだったのでしょうか。
ナウマン選手:
「EVO 2017」のとき,僕は大会には出場せず,大学の授業を受けていたんですよ。携帯でコッソリと「ストリートファイターV AE」の決勝戦を観ていたんです。大会はときどさんがPunk選手を倒して優勝したんですが,ふつうなら「ときどさん,すげぇ!」ってなると思うんですけど,僕はそうじゃなかった。「同じ舞台に立ちたい」って強く思ってしまったんです。「こんなすごい舞台に立って戦うことができたら,一体どれだけ楽しいんだろう。この舞台からは,一体どんな景色が見えるんだろうな……」って。授業中にコソコソしている中途半端な自分と,夢の舞台で戦っている先輩という対比が,余計にそう思わせたのかもしれません。
そこから,「今から全力であがけば,もしかしたらその舞台に届くかもしれない。諦めたら何者にもなれない」と考えて,自然とプロを目指していました。僕は格闘ゲームの世界が大好きで,遠くから見るだけで満足するんじゃなくて,自分もその輪の中に入って,活躍したいと思ったんです。
4Gamer:
プロを目指すにあたって,周囲の人に相談などはしましたか。
ナウマン選手:
DetonatioN Gamimgに入るときには,板ザンさんが熱心に後押ししてくれました。それから,ネモさんは個人的に「大丈夫?」的なLINEを送って心配してくれたりして,励みになりました。ネモさんは怖いってイメージを持つ人がいるかもしれませんが,裏では本当に優しい人なんです(笑)。
4Gamer:
続いて大会の話を聞かせてください。トップ8までの試合を振り返って,印象に残っている試合はありますか。
ナウマン選手:
予選プールで,ふみてぃーっていう後輩の豪鬼使いと当たったんですが,すごい自信満々な顔で挑んできて,「こいつ,この試合で先輩超えを狙っているな!」って思ったことを覚えています(笑)。ただ,その試合でもしかしたら負けるかも……って思ってしまうくらいに,最初は自信がありませんでした。
ただ,予選プールを勝ち抜いていくうちに,段々と調子も上がってきて,NuckleDu選手との試合ではこれまでの大会で課題だった意識の切り替えがうまくできて,勝利できました。
4Gamer:
意識の切り替えというのは?
ナウマン選手:
普段は相手の動きに対応する立ち回りをしているんですが,この試合では相手に対応させる立ち回りに切り替えられました。これまでなかなかできなかったことなので,成長を実感できましたね。
4Gamer:
今回の大会は,大きな調整が入ってから初めての大規模大会でした。調整後のさくらの評価を聞かせてください。
ナウマン選手:
多少強くはなったんですけど,ほかのキャラもかなり強くなっているので,相対的には少し評価が落ちるかなって思っていました。ただ,大会で勝つポテンシャルは十分ありますし,相手からすると怖いキャラなのかなとも思います。
キャラ変更も少し考えましたが,目先の強さだけを追っても,強くなれるかは疑問ですし,そもそもさくらも,以前使っていたケンも「動かしていて楽しい」という理由で選んだキャラでしたから。結果を残すことができましたし,まだまださくらを使っていいんだという自信につながりました。
4Gamer:
決勝トーナメントの初戦では,sako選手に2セット連取されてからの3連勝,という劇的な逆転劇を収めました。このときの心境はいかがでしたか。
ナウマン選手:
正直,無理だと思っていました(笑)。普通に対戦したら負けると思っていたので,いろいろと作戦を練ってはいたんですが,実際に対戦してみたらまったく通用しなかったんです。そこからはもうがむしゃらですよね。普段はできるだけ丁寧なプレイを心掛けているんですが,泥臭くても勝つんだという気持ちで対戦に臨みました。
4Gamer:
普段の対戦ではハイリスクな博打行動はあまり取らないのでしょうか。
ナウマン選手:
極力やらないようにしています。大会でも今までの練習の成果を出し切るという気持ちが強くて,プレイスタイルを変えようとしても手が止まってしまうんです。sakoさんとの試合では,限界まで追い詰められたことで,逆に気持ちが吹っ切れたのかなって思っています。
4Gamer:
Grand Finalのマゴ選手との試合でも,リセットまで持ち込まれてから,流れを掴み3連勝で優勝を果たしました。
ナウマン選手:
マゴさんも普段は勝ち越せない相手で,「このまま対戦をしても普段通りやられる……それなら開き直るしかないな」と思い,戦い方を切り替えたのが結果に結びついたんだと思います。
4Gamer:
選手としては2020年最高のスタートを切れたと思います。今年の目標を聞かせてください。
ナウマン選手:
優勝できて本当にうれしいんですけど,次も勝てるような満足できる内容ではなかったので,もっと地力をつけて,強くなりたいですね。トッププロの人たちと肩を並べられるようになりたいです。大会の目標では,Capcom Cup本戦出場を目指します。
4Gamer:
最後に大会を視聴してくれた人やファンに向けてメッセージがあればお願いします。
ナウマン選手:
いろいろな方が僕を応援してくれている中で,これまで結果を残せていなかったんですが,今回ついに優勝できました。これで少しはみなさんに恩返しができたのかなと,うれしく思っています。よろしければ,これからも応援よろしくお願いします。
4Gamer:
今後のさらなる活躍に期待しています。本日はありがとうございました。
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