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印刷2017/12/11 00:00

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小茂田浜の戦いをゲームに! 「Ghost of Tsushima」の開発スタッフによるパネルディスカッションをレポート

 カリフォルニア州アナハイムで開催中のイベント「PlayStation Experience 2017」で,「inFamous」シリーズなどで日本でも知名度の高いデベロッパ,Sucker Punch Studiosが開発を進めるオープンワールドのアクションゲーム「Ghost of Tsushima」の開発者によるパネルディスカッションが行われた。その様子はPlayStationの公式YouTubeチャンネルでも公開されているが,ここで要点をまとめておこう。

「Ghost of Tsushima」公式サイト


 パネルディスカッションでモデレーターを務めたのは,北米のゲームメディアIGNのブライアン・アルタノ(Brian Altano)氏。登壇したのはSucker Punch Studiosのクリエイティブディレクター,ネイト・フォックス(Nate Fox)氏,アートディレクターのジェイソン・コネル(Jason Connell)氏,アニメーションディレクターのビリー・ハーパー(Billy Harper)氏,そしてSony Interactive Entertainment Americaからはアソシエイトプロデューサーの片見龍平氏が参加した。

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 会場ではトレイラーも公開されているが,内容は「PlayStation Live From Paris Games Week 2017」で公開されたものとほぼ同一。とはいえ,最後の主人公が刀を振り下ろすシーンからは,激しいメレーアクションが予想できる。フォックス氏はゲームについて,「サムライが生きのび,反逆し,ゴーストとしてのテクニックを学んでいく物語」と話している。この“ゴースト”がどういうものなのか,例えば闇に潜む忍者のような存在なのか,あるいは本当に霊的な能力を備えるのかは分からない。


鎌倉時代をテーマにしたドリームプロジェクト


 本作は,日本産のゲームでさえ例の少ない「鎌倉時代」を背景にした作品で,モンゴル軍の侵攻(元寇)で大きな被害を受けた対馬が舞台となる。「inFamous」シリーズの舞台は同社の地元であるシアトル周辺で現代社会が背景だったが,新作を作るにあたって時間も場所もまったく異なるプロジェクトを模索した結果,そうなったと語った。コネル氏は,「実際の歴史で起きたことをベースに,(時代や場所の)雰囲気そのものを皆さんにお届けしたい」と述べた。社員全員が集まった企画会議では,満場一致で「Ghost of Tsushima」の開発が決定したというほどスタッフのモチベーションは高く,開発はかなりの速度で進捗しているようだ。

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 アニメーションディレクターのハーパー氏にとって良い思い出になったのが,馬のモーションキャプチャを行ったことだ。2頭同時にキャプチャしたそうだが,動物を使う際にはある程度の休息を与えなければならない規定があるので,スタジオには4頭の馬を用意したという。
 馬の動きは非常に力強く,砂糖をベースにした接着剤で取り付けたマーカーが,馬が走るたびに落ちるなど,かなり困難なキャプチャだったそうだ。結果として非常に迫力のある突撃シーンができあがったのは,トレイラーを見た多くのゲーマーが感じているはずだ。

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 トレイラーで描かれる突撃シーンは,1274年に起きた最初のモンゴル襲来「文永の役」での出来事。蒙古軍のうち1000人ほどが,当時「佐須浦」と呼ばれていた現在の小茂田浜に上陸し,それに対して宗氏の当主,宗 資国率いる80余騎が突撃して粉砕された。その史実を基に,生き残った若侍がなおも蒙古軍に屈することなく,孤高の戦いを繰り広げていくというのが,本作の物語になるという。

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スクープされた現地取材


 Sucker Punch Studiosが調査のために日本を訪れたのは2回。片見氏は,「私の祖国の美しさを表現してくれて嬉しい」と話しつつ,必ずしもリアル一辺倒ではなく,歴史ファンタジーであることも強調した。コネル氏やハーパー氏らは,ジャパンスタジオのローカライズプロデューサーである石立大介氏にコーディネートを依頼して,対馬などさまざまな場所を訪れ,日本の原風景を探したという。

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 興味深いのは,ハーパー氏が対馬へ2度めのロケハンに向かった2016年末のこと。宗 資国を祀る小茂田浜神社の例祭を取材することが目的だったようだが,石立氏を含む7人のメンバーが昼食をとっていたとき,たまたま同じレストランに居合わせた現地の人が宗氏の末裔であることが分かり,例祭の前日に行われる一族のみの式典に招待されたという。非常に有意義な時間を過ごすことができたと,ハーパー氏は振り返った。

思わぬ形で発表前にスクープされてしまった「Ghost of Tsushima」。ハーパー氏は「責任をとって辞職しなければならない」と本気で心配していたという
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 750年以上の歴史の重みに感激したハーパー氏だったが,後日ジャパンスタジオとSucker Punch Studiosに戦慄が走る。なんと,偶然の出会いとなったレストランの人物が地元の新聞に寄稿し,彼らが蒙古襲来を扱った作品を作っていることを明かしてしまったのだ。
 「どんなゲームになるのでしょう。早くプレイしてみたいものですね」と,ゲームのテーマとして取り上げられることの少ない対馬の歴史を紹介してくれることに純粋に感激した,罪のない文章だったが,これが翻訳されてRedditなどのコミュニティサイトに知られると大事件になってしまう。

 結果として,その新聞が1200部ほどの地方紙であったことや,おそらくSucker Punch Studiosの名前を知る人が記事を読んでいなかったことで,正式発表の1年前に開発情報が拡散されることはなかった。とはいえ,新聞が売られて数週間,彼らはまさに祈るような気持ちで情報がアメリカに伝わらないことを願ったはずだ。新聞記事にはハーパー氏と石立氏の名刺まで掲載されており,かなりきわどかったのが分かる。

まだ残っていた,映画「13人の刺客」のセットも訪れた
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 そんな「Ghost of Tsushima」だが,水芭蕉の咲き乱れる沼地やススキの生い茂る平原など,日本の風景を美しく再現していることに驚かされる。フォックス氏は「対馬は山だらけ」と話していたが,対馬の人々が満足できるような,例えば和多都美神社や小島の点在する美しい海岸線などもぜひゲームでも再現してほしい。
 なおフォックス氏は,パネルディスカッションに集まったファン達にゲームについて質問しており,その結果「セリフは日本語で英語字幕」が圧倒的多数の支持を受けたことを付け足しておきたい。

ちなみに,「Ghost of Tsuhima」に宗氏は登場せず,登場するのは実在の人物をモデルにした架空の人々になるようだ。タイトルロゴに使われている家紋もオリジナル
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左から,ブライアン・アルタノ氏,ネイト・フォックス氏,ジェイソン・コネル氏,ビリー・ハーパー氏,そして片見龍平氏
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