イベント
銃声を旋律に変えて。「少女前線」オーケストラコンサート“人形×彼岸花”をレポート
本公演は,ゲームの大元を手がけているサンボーン(上海散爆网络科技有限公司)と,サウンド面を担当してきた上海の音楽クリエイター集団である,Vanguard Soundの共催によるものだ。
会場では,ゲーム内で使用されている電子的なインストゥルメンタルのBGMや,大陸版の今年初のイベントで使用された,AKINO with bless4が歌う楽曲「What am I Fighting for」などが,数々の管弦楽器で構成されたオーケストラ編成によって演奏された。
とはいえ,オーケストラと聞くと日本でドルフロを遊んでいる人はもとより,海外版のプレイヤーも多少なりとも首を傾げたかもしれない。「このゲームのBGMって,そういうのだっけ?」と。
もちろん“そういうやり方もある”と考えつく話ではあるが,それにしたって,親和性があるものなのかと聞かれても想像できない……などと,公演がはじまるまではそう思っていた。
ついに“アレ”が一般販売
あらかじめ宣言しておく。筆者もそうだが,ドルフロプレイヤーはなんだかんだいって,ゲームとはまだ2か月半ほどの付き合いしかない。
最近は戦術人形の名前,ビジュアル,性能,ファンからの愛され具合などがコミュニティに馴染んできたころだが,さすがに“BGMの名称を把握し,区別がつく人”となると少数派だろう。であるはずだ。
一応,数週間ほどOST(Girls Frontline Original Soundtrack)を聴き込み,公演に臨んだ。しかし,「ドルフロではそもそも未実施のイベントの楽曲」も多数含まれていたので,身になっているかと言うとそうでもない。当然,セットリストだって大陸版基準だ。さらに言うと,管弦楽など「いいね」くらいの感想が出てくれば上出来なくらい,馴染みの薄いものである。
つまるところ,ウィットに富んだ感想は期待しないでほしい。
ガラスファサードと呼ばれる,硝子仕立ての意匠が目を引く,上海東方芸術センターコンサートホール。開場時間はSG解禁に浮かれるドルフロプレイヤーを憎まないよう自制心に働きかけた17:00,開演時間は19:30のスケジュールであったが,会場の外にはお昼どきから人が並んでいて,時間が経つにつれ,ホールの周囲へと行列が伸びていった。
現地のファン層の年齢性差は一概には言えないものの,全体的に“お若い感じの男女”が多く見られた。
ゆえに,すでに前例はいくつかあるとのことだが,少女前線のようなゲームIPものが敷居をまたぐケースは稀らしい。
とはいえ「それ相応の人気の高さを求められるが,この作品はそれを満たしているのだろう」という事情は,外部から見ていても手に取るように分かった。
本公演についてだが,コンサートホールのキャパシティは約1800名(※今回の設営では)ほどで,一般入場者が多数で,残りが関係者などになったという。そのうえ1日1回のみの公演ともあり,誰がどう見ても“採算度外視の2周年の恩返し”であった。
しかし,サンボーンとVanguard Soundの意気込みに応えるかのように,開演前の物販は大行列に。まぁ,個人的な欲求が先行していただけかもしれないが,その気持ちは国境で隔たれていてもよく分かる。なお,今回の目玉はこれまで完全非売品とされてきた「グリフィンのコーヒーメーカーセット」(先着50名のみの狭き門)と,Extra級福袋である。
意外かどうかはうまく判断できないが,現地では「まだネットでしか目にできない未実装の戦術人形たち」の姿がことのほか少なく,ドルフロでも絶賛活躍中のAR小隊,404小隊,実装済みの顔ぶれが大半であった。サービス2年分の差により,現地ファンとの温度差が生まれているのではと被害妄想気味に憂いていたが,ちょっと安心した。
それに未実装の少女たちも,いずれはグリフィン日本支部に着任するのだから,この機会に心の片隅に留めておけばいいのだ(※お迎えできるかは分かりません)。
新しい「これから」を目指して
ホールへの入場がはじまり,開演前のカウントダウンが済むと,約50人ほどで編成されたオーケストラ団体が壇上にお目見えした。
なお,日本でも本作の最新情報は出揃ってきてはいるものの,本公演で演奏される楽曲に関しては,ネタバレとも言えてしまうラインであり,公式もセットリストを公開していないことから,今回は要点をかい摘んでの紹介とするので,ご了承いただきたい。
公演は「完全生演奏の楽曲」と「バックにPGMを流しながら演奏する楽曲」の2つの形式が採られていた。すべてのBGMを完全に管弦楽として再構築するには,フルオーケストラ級の人数が求められるからだろう。
PGMを流しながらのパターンでは,基本的にバイオリンやチェロといった弦楽器がメロディーを奏でて,管楽器が要所をなぞっていく。そのうえで,エレクトロ系楽器とパーカッションの音源がバックで再生されていた。
1曲めを飾ったのは,大陸版の大型イベント“有序紊流”の公式PVに使用された「New Dawn」。当然ながら耳馴染みのなさが災いしたが,大陸版で2018年から新規収録されている音源の大半は,2018年以前のサウンドとは多少,方向性が異なっている。まぁ,この感想自体はVanguard Soundからの受け売りも混じっているが,つまるところ「壮大さ」が大きな特徴のため,オーケストラとの相性が非常に良いものと思えた。
続いてはドルフロでもお馴染み,ホーム画面の基地で流れる「Day1」。ゲームのプレイ中は静かな曲調の楽曲と思っていたが,壇上ではサビに進むにつれ,だんだんと強くなるアクセントが強烈に響きわたる。公演の序盤だからこその印象もあるが,今回最もイメージが変わった1曲である。
その後は組曲の形式も交えつつ,ドルフロでは次回開催と予想されている大型イベント“失温症”のBGM群,第五戦役“火種”の「For the Record」,第六戦役“彗星”の「Host」,そして大型イベント“魔方行动(キューブ作戦)”より「Departure」や「Black out」などが披露された。
コンサート前半を締めたのは,AKINO with bless4が歌う,大陸版の2018年冬季イベント“特異点”のテーマソング「What am I Fighting for」。舞台上には同ユニットのAKINOさん,AKASHIさん,KANASAさん,AIKIさんの4名が姿を見せ,オーケストラの伴奏に乗せて歌唱を披露した。
AKINO with bless4と言えば,鮮烈な声量と高音が魅力とされているが,本楽曲は低音パートが主流である。しかし,AKINOさんのパワフルなボイスと,AKASHIさん,KANASAさん,AIKIさんの繊細なコーラスの前ではなんのそのだ。少女前線の世界を表現したものとしても,bless4が歌う楽曲としても,賛辞を贈るほかないパフォーマンスに仕上げられていた。
AKINOさん |
AKASHIさん |
左からAIKIさん,KANASAさん |
20分ほどの休憩時間中のこと。少女前線のプロデューサーである羽中氏のもとに大勢のファンが詰め寄せ,アイドルさながらのサイン会&撮影会が緊急開催されていた。みな一様に輝かしい笑顔で並んでいたのが,彼らが少女前線に抱いている親しみを表しているようであった。
コンサート後半では,宿舎で流れるテーマ「CURY」で会場にひと笑いが起きる。意外な選曲だったのか,ローカルネタが含まれているのか,スクリーン上の宿舎の画面がきっかけなのか,あるいは国民性の違いなのか……ほとんどの人が爆笑していたのだが,結局なにがトリガーだったのかは理解できなかった。事の真相は,2年後の自分に預けたい。
また,CURYの演奏中はサプライズとして,会場の座席番号で抽選するプレゼントタイムが挿まれる。ここではbless4のサイン色紙をはじめ,任意の人形やスキン(一部除く)などが賞品となっていた。大陸版でもプレイ状況や環境によって各々で異なるのだろうが,ドルフロプレイヤーとしては時期的に「Am KSG」を求めたいところであった。
その後も,日本未実装のカフェ機能のBGM「Café de Springfield」や,生演奏オンリーの組曲,まだ見ぬ数々の大型イベントの楽曲など,頭から数えて20数曲ほどの演奏が行われた。そしてコンサートの最後には,こちらもまさかのサプライズとなった,AKINO with bless4による新曲「シラカバの光」がオーケストラの完全生演奏とともに贈られた。
幻想的で,シネマティックで,しっとりとしたサウンドといった印象を受けた本楽曲は,まるで歌詞に込められている感情がダイレクトに伝わるかのようで――と思ってよくよく聞いていたら,なんと“日本語の歌詞”であった。日本のゲーム文化を持ちあげすぎても恐縮だし,臭い話だが,そうするに至った理由を考えると,やはり嬉しいものだ。
サビで歌われる「絶望の片隅で 赤く燃えた空広がり 挫けずに伝えた」は,日本語の構文としてはちょっと頭を捻るところだが,What am I Fighting forに込められている想いと同様,どうしようもない世界の中で,求められ,足掻き,生きる,少女たちの心情がストレートに表現されている。
今はまだ表面上の意味合いでしか受け取れないところが歯痒いが,この一文はきっと,我々がこれから体験していく物語をとおして,より強固な,より真摯な言葉となって,ドルフロプレイヤーの胸に突き刺さるようになるのだろう。その日にたどり着くまで,このときのことを憶えていられたのなら,ほんの少しだけ感慨も深くなるかもしれない。
というわけで,今回のレポートはここまでとする。言語の壁もあって,関係者らの登壇時のコメントを詳しく翻訳できていないところは申し訳なく思うが,できるかぎりの情報は伝えさせてもらった。それに我々は少女前線でも,Girls' Frontlineでもなく,あくまでドールズフロントラインのプレイヤーなのだから,自分たちに見合った速度でコンテンツを享受していくのが,おそらくベターな付き合い方である。
なお,今後の話ではあるが,楽曲や公演についての心境を尋ねた「AKINO with bless4のインタビュー」,ならびにサンボーンの盟友とも言える「Vanguard Soundのインタビュー」を後日掲載する予定である。AKINO with bless4は新曲を披露しているし,Vanguard Soundは面包房少女(パン屋少女)から少女前線に携わっているしと,どちらも満足してもらえる内容でお届けしたいと思うので,もう少々待っていてもらえると幸いだ。
「ドルフロ」4Gamer内サテライトサイト
「ドールズフロントライン(旧名:少女前線)」公式サイト
「ドールズフロントライン(旧名:少女前線)」ダウンロードページ
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ドールズフロントライン(旧名:少女前線)
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(C) SUNBORN Network Technology Co., Ltd. (C) SUNBORN Japan Co., Ltd.
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