インタビュー
「アルゴナビス」ランズベリー・アーサーさんが語るFantôme Irisは,社会人バンドならではの重みが“エモい”。ボーカリストインタビュー企画第2弾
ブシロードは,ボーイズバンドプロジェクト「ARGONAVIS from BanG Dream!」(以下,「アルゴナビス」)に登場し,2021年初春リリース予定のスマートフォン向けゲーム「アルゴナビス from BanG Dream! AAside」(iOS / Android)で活躍する5バンドの配信ライブイベント(Sound Only Live。以下,SOL)を,2020年8月より5か月連続で行っている。そして4Gamerでは,これを記念した各バンドのボーカリストインタビュー企画を進行中だ。
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「アルゴナビス」榊原優希さんが語るεpsilonΦ。ポップと狂気が混在する音楽性とは? ボーカリストインタビュー企画第1弾
2020年8月29日,ブシロードの「ARGONAVIS from BanG Dream!」に登場するバンド,εpsilonΦの配信ライブイベントが実施される。本稿では,εpsilonΦのボーカル・宇治川紫夕役の榊原優希さんにインタビューを行ったので,その内容をお届けしよう。
第2弾となる今回は,9月24日に配信ライブイベント「Fantôme Iris S-SOL -histoire des vampires-」を控えたバンド,Fantôme Iris(ファントムイリス)のボーカル,フェリクス・ルイ=クロード・モンドール役のランズベリー・アーサーさんへのインタビューをお届けする。
「ARGONAVIS from BanG Dream!」公式サイト
オーディション秘話や楽曲の制作エピソードなど,Fantôme Irisの音楽を中心に聞いているのでぜひ最後まで読んでもらいたい。なお,YouTubeではコメント動画も配信中だ。
※記事内では,Fantôme IrisのボーカルとしてはFELIX,素の彼をフェリクスと表記しています
「オーディションで“1曲歌ってみて”と無茶振りされました(笑)」(アーサーさん)
4Gamer:
ARGONAVISプロジェクトのボーカリスト5か月連続インタビュー企画,第2弾はFantôme Irisにフォーカスします。それではさっそく,自己紹介とバンドのご説明からお願いします。
ランズベリー・アーサーさん(以下,アーサーさん):
Fantôme Irisボーカル,フェリクス・ルイ=クロード・モンドール役のランズベリー・アーサーです……ということで,まず文字数が長くてみなさん驚きそうですね(笑)。Fantôme Irisはヴィジュアル系バンドなのですが,メンバー1人1人に“楽器とは別の役”があって,ライブで人前に出ているときは,全員がそのポジションを忠実に守ってパフォーマンスをしています。大人たちだからこその変身願望を叶えつつ,しっかりとした世界観を持つ二面性のあるバンドですね。
4Gamer:
Fantôme Irisは全員が社会人なんですよね。
アーサーさん:
そうなんです。ほかの4バンドは高校生や大学生といった年齢感ですが,Fantôme Irisは全員がアラサーになります(笑)。彼らが持つ熱とはまた違う,社会人バンドゆえの音楽への想い,熱量があるんじゃないでしょうか。やっぱり大人である以上,バンドだけやっているわけにいかないのも分かっているし,かといって自分の夢も諦めたくはないと思っているんですよ。
普段の社会人としての仕事が大変なぶん,ステージで自分の違った面を出せるのが逆にいい塩梅になっているというか,そちらのほうですごいエネルギーが生まれるっていうのも彼らの魅力だと思います。
4Gamer:
社会人であり大人ならではのバンドですね。そのなかでアーサーさんの演じられるフェリクスは,実家が貴族ということで盛り盛りの高スペック設定ですが,ご自身との共通点は?
アーサーさん:
似ているところといえば,まずは紅茶が好きなところ。利き紅茶をしたりもします。あとは自分ではなぜか分からないんですけど,「変わってるね」とはよく言われます(笑)。フェリクスは良くも悪くも浮世離れしていて,ひょっとしたら設定じゃなくて本当に吸血鬼なんじゃないか? って思わせる何かがありますが,私も「普通の家に住んでなさそう」とか「どんな食事をしてるか分からない」なんて言われたりするので親近感があります。
フェリクスの場合はそういう面が魅力につながっていて,分からないからこそ知りたくなるし,ついていきたくなる人望もあるので,自分もそこまでいきたいなって思いますね。
4Gamer:
お話を伺っていると,アーサーさんご自身がすごくフェリクスに近いように感じます。ちょっと話が逸れるのですが,Fantôme Irisの略称は「ファントム」ですか?
アーサーさん:
はい。設定としては,ほかのバンドからは「ファントム」と呼ばれているようです。
4Gamer:
ありがとうございます。話を戻しますが,プロジェクトに参加が決まったときのことは覚えていらっしゃいますか?
アーサーさん:
はい,よく覚えてます。最初にお話をいただいたときは,まだこのプロジェクトでArgonavisしか活動していなくて,「えっ,バンドが増えるんですか?」みたいな話をマネージャーとしていて,この役は絶対に取りたいね! って言い合ってました。
オーディションの1次審査の曲がシドさんの「ENAMEL」という楽曲だったんですけど,シドさんは初期の頃からずっと聴いていてよく知っていたので,ああ,そういう方向性のバンドなのかと。
オーディションでは2次審査のときにブシロードさんのビルに来て,「ここがブシロードか!」と思ったのを覚えてます(笑)。いざ審査が始まったら,急に「ちょっとなんでもいいから1曲歌ってみてもらっていい?」って言われて……。そのときは何も準備していなくて,パッと思いついた曲を歌ったので不安な気持ちのまま帰ったんですけど,合格の知らせをいただけてめちゃめちゃ嬉しかったし,マネージャーも同じくらい喜んでくれました。
4Gamer:
オーディションもシドさんの楽曲だったんですね。ご自身が演じることになったフェリクスについては,はじめにどんな印象を受けましたか?
アーサーさん:
私自身,昔から吸血鬼が好きっていうのもあったし,なぜかここ数年,吸血鬼的なキャラを演じさせていただくことが増えてきてたんですよ。さらに紅茶好きだし,すごくテンションが上がって「この役は絶対にほしい」という気持ちが増しましたね。唯一懸念点として,フェリクスはアラサーで大人びた見た目なので,声のトーンがもっと渋い感じを求められてるのかなっていうのはありました。歌はさておき,声の方に不安はありつつも,「これが自分の思うフェリクスだ」っていうのを提示して,結果として選んでいただけたので,間違ってはいなかったのかなと思いました。
4Gamer:
今回のフォトを見て,あらためてファンのみなさんも「フェリクスはアーサーさんで間違いなかった……」と思うのではないでしょうか(笑)。
アーサーさん:
ありがとうございます!
4Gamer:
ちなみに今,シドさんの曲を以前からよく聴かれていたという話がありましたが,もともとヴィジュアル系はお好きだったんですか?
アーサーさん:
10代後半から20歳くらいまでバンドを組んでいたんですが,その頃に聴いていたのはどちらかというと洋楽のパンクとかゴリゴリのロック系で,バンドで歌っていたのもGYROAXIAに限りなく近い音楽性のものでした。じつはそのときの活動はけっこう軌道に乗っていて,お仕事にできるかもしれないところまではいってたんです。でも自分が覚悟を決められなくて活動を止めてしまって,しばらくフリーター期間を経て,いろいろあって声優を目指したんですよ。だからなんだか不思議な感じがしますね,めぐりめぐってこうやってバンド関連のコンテンツに関わらせていただけるのは。
4Gamer:
本当ですね。
アーサーさん:
邦楽だとアニソンはずっと好きです。ヴィジュアル系といわれるジャンルのなかでは,当時有名だったバンドはひととおり聴いていて,シドさんはそのなかでもよく聴いていました。だから今,シドさんが作ってくれた楽曲を歌っているのって本当にすごいご縁だな……と。14〜5年くらい前の自分に教えてあげたいですもん。
4Gamer:
たしかに! 当時のアーサーさんは何と答えそうですか?
アーサーさん:
たぶん,「へえ……」みたいな感じで信じないでしょうね。昔は寡黙な人間だったんです。人と話すことがすごく苦手だったので,当時のライブでもMCは一切しませんでした。歌うのは好きだけどコミュニケーションは駄目で,声優業をするようになってから,やっと人と話したりできるようになって表情筋も鍛えられました(笑)。
アーサーさんが語る,
Fantôme Irisの音楽性とオリジナル楽曲解説
4Gamer:
今回のインタビュー企画では,各バンドの音楽面についてとくに詳しくお伺いしています。まずはFantôme Irisのコンセプトや音楽的イメージについて教えてください。
アーサーさん:
音楽性としてはヴィジュアル系バンドというカテゴリの90年代後半から2000年代のネオヴィジュアル系まで,幅広いジャンルを意識しています。キャラクタービジュアルから連想できる耽美系のような,ストリングスを多く使ったシンフォニックなサウンドだけでなく,コテ系のヘヴィな路線や,歌謡曲テイストのメロディの曲などもあって,ヴィジュアル系というカテゴリの魅力を1バンドで表現していますね。
世界観としては,「人間と吸血鬼の共存を目指す、吸血鬼の王と同胞たち」っていうのがコンセプトとしてあるのですが,そうしたところから連想されるゴシックな雰囲気も外せません。大人ならではの厚みがあるなと思います。
4Gamer:
好きな人には刺さりまくる音楽性とコンセプトですよね。それでは次に,これまでに公開されているオリジナル楽曲3曲と,先日発表された新曲について詳しくお聞きかせいただけますか。
◆銀の百合
アーサーさん:
「銀の百合」は,Fantôme Irisの代表曲と呼べる楽曲です。最初に公開された曲ですし,たぶんみなさんにとっても,Fantôme Irisではこの曲のイメージが一番強いと思います。歌詞に関しては「変わりたい人たち」を応援する,というとちょっとポップな感じに聞こえちゃいますけど,何かいま悩みを抱えている人を応援するというか,後押ししてあげる内容になっています。それがエキゾチックなテイストも含む激しいサウンドと美しい曲調に乗せて届けられるんですよね。アグレッシブなドラムと重厚なツインギターも聴きどころですし,バンドの表題曲としてはバシッと決まってるなと思います。
4Gamer:
一気に世界観に引き込まれますよね。ちなみにこの曲は,レコーディングも最初だったんでしょうか。
アーサーさん:
いや,じつはこれがけっこうあとだったんですよ。ファントムはキャラ台詞の収録前よりも先に歌から,それもカバー曲からレコーディングが始まったので,オリジナル曲も含めた最初の数曲は,FELIXのキャラを確立するためにも,スタッフさんたちとたくさん話し合いながら手探りで進めていました。私が「この曲の歌詞はこういう曲調できてるから,今の瞬間FELIXはこういうポーズで歌っているんです!」とイメージを伝えたり,すごく有意義な時間でしたね。ぜひライブでお見せしたいです。
4Gamer:
レコーディングしていて,印象的だったところを具体的に教えていただけますか。
アーサーさん:
この曲は最初の入りでまず悩みました。「月夜に照らされて 光る 我らは 銀の百合」という出だしなんですが,節回しをどうしようかと。ヴィジュアル系と言っても低音,高音さまざまな歌い方があります。ここは曲調がしっとりしているので低音で入りたいけど,アクセントは付けたいという意見が出て,最終的に「つぅきぃよぉにてぇらぁさぁれぇてぇ〜」のような感じで,小さい文字をたくさんつけて歌うことになりました。そうしてファントムの味を足していって,この方向性でいきましょうと。
先ほど話したように,ファントムは古き良きヴィジュアル系からネオヴィジュアル系と呼ばれるところまでしっかりおさえているので,どちらか一方に寄りすぎずに,欲張りですけどどの層も取り込みたいなという想いがありました。初めてヴィジュアル系に触れる人にも聴きやすく,かといって昔から馴染みのある人にも「軽すぎる」と言われないところを攻めたいなと。
4Gamer:
あの歌声は出だしからグッと掴まれますし,サビのインパクトも強いですよね。
アーサーさん:
サビも悩みましたね。「翼を〜」の「を〜」と伸ばすところをどうしようとか。張り上げすぎるとかわいくなって軽くなっちゃうし,かといって重くしすぎるとニュアンスが見えてこないなと。やっぱりシドさんが楽曲を作られているので,制作しているみなさんも(シドのボーカルの)マオさんが歌っている声を多少なりとも想像されていると思うんですよ。かと言って私がそれを真似するわけにはいかないので,良き塩梅で,張り上げと低音とヴィジュアル系要素を入れつつ,サビ部分はかなりテイク数を重ねた気がします。「銀の百合」はたしか,収録時間を延長していただいた記憶がありますね。
4Gamer:
細かいところまでこだわり抜かれていたんですね。
アーサーさん:
バンドによっていろいろありますし,みなさんが思うヴィジュアル系のイメージもそれぞれ違うと思うんです。私もファントムでカバー曲とオリジナル曲やアフレコをやっていくうち,やってみたい表現が増えていきました。だからこそ,どう歌おうか迷うんですけどね。
◆棺の中のセラヴィ
作詞:中村彼方 作曲:三好啓太
編曲:三好啓太
アーサーさん:
「セラヴィ」はFELIXをイメージした曲ですね。歌詞のテーマは“人ではないもの”とのお茶会で,「パーティーしましょう」みたいな内容です。
4Gamer:
物語のような世界観ですよね。
アーサーさん:
はい。これは曲調が弾んでいて,低音で格好いい感じには歌えない曲なのでレコーディングでは苦労しました。ファントムとして,今後の歌い方の方向性を決めた曲でもありましたね。「銀の百合」より少し前に収録したのですが,歌というよりセリフを言っているような感覚でした。とくにサビの「何を意味するか分かるでしょう? haha!」とか,歌っていて楽しかったです。
4Gamer:
歌詞を印刷したものを拝見したところ,フランス語が多くて驚きました。
アーサーさん:
そうなんですよ! この曲はSOLで聴いてくださった方もいらっしゃると思うんですが,コーラスは全部フランス語なんです。出だしは「Qu'est-ce qu'il y a?(ケスキリヤ)」と歌っているんですが,FELIXが歌っているとは思わないかも。
4Gamer:
えっ,あのコーラスはFELIXなんですか?
アーサーさん:
FELIXです……つまり私なんですけど,このコーラスは上ハモ,下ハモ,真ん中といろいろな高さの「Qu'est-ce qu'il y a」を歌って重ねてあります。ここは全部私の声だけです。それも楽しかったですね。私自身がFantôme Irisの一員になれたような気がして。
4Gamer:
ちょっと気になったのですがアーサーさんは普段,フランス語は……?
アーサーさん:
まったく使わないです(笑)。
4Gamer:
そうですよね!
アーサーさん:
余談ですが,アフレコのときにフランス語のセリフが出てくると,そのたびにブシロードさんで働いていらっしゃるフランス人の方がフランス語講師として参加してくださるんです。ARGONAVISのチームとは別部署の方らしいんですけど,いろいろと指導してもらって,すっかりファミリーみたいな感じになっています。
やっぱりフランス語は難しいですね! 舌の使い方とかアクセントが英語とは違っていて,最近少しだけ分かってきたのかなっていう感じです。この機会に,ちゃんと勉強したくなりますね。
4Gamer:
歌うとなると,さらに難しくなったりはするんですか?
アーサーさん:
歌には音階という正解があるので,逆にやりやすいかもしれません。セリフの場合,フェリクスらしさを残しつつフランス語の発音をしないといけないので,それが難しいです。
4Gamer:
セリフのほうがより難しいんですね。この曲はFELIXをイメージしたものですが,Fantôme Irisの楽曲は,設定として誰が手掛けているのでしょうか?
アーサーさん:
FELIXが詩を書いて,ZACK(ギターの洲崎 遵)が曲を作っています。
◆ザクロ
作詞:マオ(シド) 作曲/編曲:Shinji(シド)
アーサーさん:
「ザクロ」は面白い曲ですよね〜。
4Gamer:
これは個人的に,最もライブが楽しみな曲です。
アーサーさん:
おそらく一番頭を振れる曲ですよ(笑)。だから早くみなさんの前で生で歌いたいですもん。煽りたいし,みんなにも返してもらいたいので。ライブが絶対に楽しい曲だと思います。
やっぱりレコーディングで歌っていても気持ちよかったですね。曲名だけはすでに発表されているオリジナル曲の「狂喜のメロディ」とともに,アフレコがある程度進んでから録った曲だったんですよ。キャラ像もしっかり固まっていたので,迷いなく歌えました。
スタッフさんのなかに音楽ディレクターの廣澤(優也)さんという方がいらっしゃるんですが,最近ではその方と私とでよく「FELIX感」というワードを使うんです(笑)。よりFELIX感のあるものは何かを考えて,レコーディングの方向性を決めていく。この曲の収録時には私のなかでもFELIX感はかなり固まっていましたし,先方も私の好みを分かってくださっているのでこの頃には色々と凄くスムーズでした。
4Gamer:
そのなかでも歌っていて印象的だった箇所や聴きどころはありますか。
アーサーさん:
曲の最初にシャウトと英語のコーラスがあって,「ヴォー!」というシャウトはZACKのものという設定なんですが,「I awake,……」という繰り返しのフレーズはFELIXが歌っています。FELIXとしては激しいというか,がなるような歌い方なので今までにない感じですね。あとは,「グチャグチャに潰し ザクロみたいにさ」のところはグチャグチャに歌おうと思っていました(笑)。サビもノリやすいし,音源としては綺麗めなんですけど,ライブでは激しく歌いたい曲ですね。
4Gamer:
ものすごい暴れ曲になりそうですよね。歌詞についてはいかがでしょう。
アーサーさん:
この曲の歌詞はZACKがイメージされているんです。彼はプロゲーマーでもあるので,Aメロから「バーチャルだけじゃ満たされない欲が」という描写があったりします。「臆病な君は 切り裂いて」というのは,プロゲーマーじゃなくて気弱な彼の面を表していて,それをFELIXが歌うのがすごくいいなと思います。
4Gamer:
「銀の百合」でアーサーさんが「悩む人を後押しする曲」とおっしゃっていましたが,この曲からもある種の励ましのようなものを感じます。
アーサーさん:
この曲はZACK視点で物語が進むんですけど,「新しい世界はいつだって 扉をあけて待ってる」と,FELIXがZACKに語りかける感じに視点が変わっていきます。歌詞を書いたのはFELIXで,彼がZACKのことを考えながら,元気づけるというか力をあげるために歌っているのかなと考えると,Fantôme Irisってやっぱりいいな……って思いますね。
4Gamer:
Fantôme Irisは一見怖めなヴィジュアルですけど,バンドとしては平和ですよね。
アーサーさん:
今いる5バンドのなかでは,一番仲がいいって言ってもいいんじゃないですかね? 一番平和で一番かもしれない(笑)。
4Gamer:
安心感がありますね……。
アーサーさん:
大人なので良くも悪くも我慢すべきところとか,受け入れるべきものがあることを分かっているんですよね。変に「俺が俺が」というのがメンバー間にないんですよ。何かあっても,誰かがフォローして問題解決に導いていく。そういう大人なところがFantôme Irisのいいところでもあると思います。
◆histoire
作詞:マオ 作曲:Shinji 編曲:シド
4Gamer:
最後に,9月25日にデジタルシングルとして発売される新曲「histoire(イストワール)」についてお聴かせください。
アーサーさん:
この曲はもう……何から説明していいか分からないんですけど,今伝えたいのは,今度の配信ライブで公開されるボイスドラマを聴いてからこの曲を聴くと,良さが50倍くらいになるってことです! ドラマはデジタルシングルにも収録されるので,ぜひ曲の前にドラマを聴いてほしいです。
4Gamer:
簡単で結構ですので,概要を教えていただけますか。
アーサーさん:
「histoire」は,「ライブ・ロワイヤル・フェス」に向けて,Fantôme Irisが名古屋を旅立つときの曲なんです。彼らはバンドマンとしてはけっして若くはないし,もしかしたらこれが最後のチャンスになると思っているかもしれません。歌詞を見ると,名古屋は自分たちの故郷ではあるんですが,帰ってくることを前提とした「行ってきます」みたいなニュアンスじゃないんですよ。人間と吸血鬼が共存できる王国を作るための場所を求めての旅立ちを描いていて,メンバー全員の想いが詰まっています。ドラマはそれを盛り上げてくれる作りになっているんですが,語りたいけどネタバレになっちゃうかな……。
4Gamer:
こちらもぜひ聞いてみたいところですが……では,歌詞についてお聞かせいただけますか。
アーサーさん:
「histoire」には,歴史や道標みたいな意味があります。歌詞の「長い夜も ひどい雨も 全部抱きしめて」というのは,彼らが大人として,社会人としていろいろな経験をしてきて,これから背負う苦労も分かっているからこそ全部受け止めるよ……というのを表しているんです。
それから,「何度も確かめ合ったこの想いはぶれることなく未知を照らす」という歌詞は,5人がちゃんと話し合って,音楽への想いを確かめあったからこそ,まだ見ぬ未来である「『未知』を照らす」んです。それが最後のサビでは,「ぶれることなく『道』を照らす」に変わります。
「出会いと別れを繰り返し やっとここまで来たよ」の歌詞から分かるように,彼らは何かが違う,何かが足りないという想いをずっと抱えていて,やっとこの5人ならいける! と,初めて感じられたのが今のFantôme Irisだったってことなんですよ。
4Gamer:
素敵ですね……。歌についてはどうでしょうか。
アーサーさん:
この曲を歌うときに意識したのは,フェリクスのステージネームはアルファベットの「FELIX」なんですが,この曲ではFELIXとフェリクス,できればどっちも共存させたいなということでした。先ほどの「やっとここまで来たよ」というフレーズは,ステージ上のFELIXではなく,素のフェリクスとして歌いたかったんです。
少しセリフっぽくしたいとかニュアンスを変えてみたいとか,いろいろ相談させていただきました。CD音源で聴くと独立した1曲なんですけど,「これは名古屋での最後のライブの音源だ」くらいの気持ちで聴いてもらえたらいいなと思います。私もこれは,歌いながら泣きそうになりましたね。
4Gamer:
以前アーサーさんが,Twitterでレコーディングしたことをつぶやいていらっしゃったのはこの曲ですか?
今日の曲は歌っててちょっと泣きそうだった…凄く良いものが録れた気がする。
— ランズベリー・アーサー (@Art_C_Lounsbery) August 22, 2020
完成版をはやく聴きたい…? pic.twitter.com/x8MF0GkYSZ
アーサーさん:
そうです。これはきっと,ステージの上のメンバーも演奏しながら泣きそうになっているかもしれないなと思いました。そういうメンバーの気持ちを背負ってFELIXは歌っているはずなので,そこも意識してレコーディングに臨みました。
4Gamer:
曲調も既存のオリジナル楽曲とはまた雰囲気が違いますよね。
アーサーさん:
そうですね。少し前のシドさんの雰囲気に近いというか,懐かしさも新しさもある素敵な曲です。演奏には,この曲を作ってくださったシドのShinjiさんがギターで,ドラムにはKENZOさんや,ベースにSatoさんが参加してくださっています。現役のヴィジュアル系の方が参加されているのは嬉しいですよね。
これはただの願望なんですけど……カラオケ番組なんかでよくある「ご本人登場!」というのに憧れています(笑)。ライブで歌っていたら曲の途中からマオさんがスッと現れて,私が泣き崩れてしゃがみこんじゃうみたいな経験をしてみたいです。
4Gamer:
……だそうです!
プロデューサーK氏:
頑張ります(笑)。
4Gamer:
ありがとうございます(笑)。この曲は9月24日のSOLが初披露ですか?
アーサーさん:
その前に,9月18日のラジオ(アルゴナビス from BanG Dream! AAside ラジオ・ロワイヤル・フェス)でワンコーラス流れる予定になっています。先ほどお話ししたとおり,ドラマを聴くとさらに良さが増すので,ライブやデジタルシングルでドラマもぜひ聴いていただきたいです。SOLではもちろん,フルバージョンになっています。この曲はひと言で片付けていいのか分からないですけど,“エモい”です!
アルゴナビス from BanG Dream! AAside ラジオ・ロワイヤル・フェス
9月24日のSOLはドラマにも注目!
なんとフェリクスの○○が……?
4Gamer:
ボイスドラマの収録はいかがでしたか。
アーサーさん:
ドラマの収録が,ちょうど「histoire」レコーディングの前日か前々日くらいのタイミングだったんですよ。そのときすでに歌の音源も資料としてはいただいていたので,この曲がドラマのあとに流れるのか,これはやばいぞと思いました(笑)。ドラマの収録も,曲を知っているからこそ「このあとあの曲が流れる」ところに芝居を持っていきたいなと思い,意識してやらせていただきました。
4Gamer:
Fantôme Irisならではのやりとりも楽しみです。
アーサーさん:
語弊のある言い方かもしれないですけど,ほかのバンドは年齢的に未来があるというか,これからいつでもチャンスはあるんですよ。でもファントムは,これが最後のチャンスかもしれない。それに30歳を過ぎると,「俺もうバンドやめて実家に帰るわ」というバンドマンもリアルに出てくるんですよね。誰がいつやめるか分からないという重みがあって,それはセリフにはなくても感じられるんじゃないかなと思います。
あと,Fantôme Irisメンバー以外の登場人物が出てくるかも……。
4Gamer:
えっ! 誰でしょうか?
アーサーさん:
そこも含めて,楽しみにしていただけたらと思います(笑)。ちゃんとボイスもついていますし,どんな登場をするのか? なんて期待を膨らませていてください。
4Gamer:
楽しみです。ライブでは,「histoire」のほかに新曲はあるのでしょうか?
アーサーさん:
みなさんがまだ聴いたことのないカバー曲とオリジナル曲があります! オリジナル曲に関してはかなりロック調でゴリゴリに激しいものになっていますよ。ファントムってこういうのもやるんだ! と,今までの方向性とはまた違うのでびっくりしてもらえるかもしれません。
4Gamer:
期待しています! それから10月10日には,ついに5バンドのボーカルが勢揃いする「ARGONAVIS AAside ライブ・ロワイヤル・フェス2020」が行われますね。ぜひ今の気持ちをお聴かせください。
アーサーさん:
やっとライブができることが本当に嬉しいですね。ついにみなさんにライブをお届けできる,溜まったエネルギーをやっと発散できるなと。じつはFELIX合わせで髪の毛を伸ばしていたんですよ。いつかライブのときに地毛でできたらいいなと思っていて,すっかり長くなりました(笑)。せっかくだから衣装もバッチリ決めて,髪の毛もFELIXに合わせて,みなさんにお会いできたらと思っています。どんな曲を何曲くらいやるのかも楽しみにしていてください。
4Gamer:
ほかのバンドとの絡みにも期待が高まりますね。
アーサーさん:
そうですね! どう絡むのか楽しみです。あとはArgonavisやGYROAXIAと違ってFantôme Irisはバンドメンバーがいないので,演奏はどんな形でやるだろうってワクワクもあります。演出も楽しみです。楽しいことになるのは間違いないので,ぜひ観にきてほしいし,来られない方は配信を観て盛り上がってほしいですね。眷属を増やすいい機会ですので(笑)。
※眷属(けんぞく):Fantôme Irisのファンのこと
4Gamer:
眷属は増えそうですね……! それでは最後に,ファンのみなさんにメッセージをお願いします。
アーサーさん:
まだアプリがリリースしていないうちから,「眷属になりました」や「応援してます」と言ってくださる方がたくさんいらっしゃって,本当に嬉しいです。私自身もこれからの展開を楽しみにしています。まだ明らかになっていない情報もいっぱいあると思いますが,歌やアフレコの収録はどんどん進んでいますので,今後もARGONAVISから目を離さないでくれよとお伝えしたいです。
眷属になったことを絶対に後悔はさせませんので,ぜひこれからも応援よろしくお願いいたします!
4Gamer:
本日はありがとうございました!
――2020年9月2日収録
Fantôme Iris「histoire」デジタルシングル情報
「BanG Dream!」発のボーイズバンドプロジェクト「ARGONAVIS from BanG Dream!」に登場するFantôme Iris(ファントムイリス)初のデジタルシングル「histoire(イストワール)」が9月25日(金)に配信リリース決定。
「histoire」はV系ロックバンド シドのボーカルマオ、ギターShinji書き下ろしのFantôme Irisらしい激しさと美しさが同居したサウンドに、バンドの歩みと決意を感じさせる歌詞をFELIXがエモーショナルに歌い上げる1曲。カップリングには他1曲とボイスドラマが収録されます。
配信詳細:https://argo-bdp.com/music/post-3218/
「ARGONAVIS from BanG Dream!」公式サイト
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「アルゴナビス」榊原優希さんが語るεpsilonΦ。ポップと狂気が混在する音楽性とは? ボーカリストインタビュー企画第1弾
2020年8月29日,ブシロードの「ARGONAVIS from BanG Dream!」に登場するバンド,εpsilonΦの配信ライブイベントが実施される。本稿では,εpsilonΦのボーカル・宇治川紫夕役の榊原優希さんにインタビューを行ったので,その内容をお届けしよう。
ライター:たまお(エンタメ系フリーライター。Twitter @tamao_writer)
撮影:大路政志
動画編集:まりメラ
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