プレイレポート
[E3 2019]“現実逃避”の表現が秀逸。都会に疲れた会社員が主人公のADV「Mosaic」試遊レポート
E3会場の近くにあるHotel Figueroa Downtown Los Angeles。2019年の巨大広告は「DOOM Eternal」だった |
E3 2019ではHotel Figueroaのラウンジが,スウェーデンのインディーズゲームパブリッシャ・Raw Furyのブースのようになっており,ソファーやバーカウンターなどで飲食を楽しみながら開発者がインタビューを受けたり,ノートPCを広げてゲームを紹介したりと,一風変わった風景が広がっていた。
そんな場所でこれまた一風変わった,そしてこのブースとはある意味“逆”の空気を持つゲームのデモ版を試遊してきた。
そのタイトルは「Mosaic」(PC / PS4 / Switch / Xbox One / Mac)。日本時間2019年6月12日に海外大手メディア・PC Gamerが開催したPC Gaming Show 2019で最新トレイラーが公開された本作は,ノルウェーの独立系デベロッパ・Krillbite Studioが手がけるアドベンチャーゲームだ。今回遊べたのはPC版で,操作はXbox Oneのゲームパッドで行うスタイルとなっていた。
Mosaicの主人公は,とある大企業に勤める1人の会社員。彼は発展を続ける街に冷たさを覚え,同じことを繰り返す毎日に単調さと孤独を感じ,自分の人生の意義が見出せなくなっている。そんな彼のある日の通勤途中に不思議な出来事が起き,これまでの“繰り返しの日々”が大きく変わり始める。
本作のデモは,主人公が(いつものように)マンションの部屋で目を覚ますところから始まった。とくに「〜をしろ」といった誘導はないので,とりあえず朝から届くさまざまなメールを確認してから寝室を出て,会社へと向かう。そして外に出た時に,一つの大きな選択肢が待っていた。
それは,駅に向かって大勢の人が歩いている右に行くか,それとも逆の左へ行く――つまりは繰り返しの日々を抜けようとするかだ。左に進むとちょっとした広場で朝日を浴び,木の上から猫を下ろしてあげるという,なんとものどかな時間を過ごせた……のだが,ここでとんでもないことが起きた。とある地点に立ってボタンを押し続けると,遠くに見えるビル群がどんどん崩れ始めたのだ。
これは「あーあ,会社に行きたくないなあ。会社なんかなくなればいいのに」という彼の心境を表したものなのかもしれない。一通りのビルが崩れると,まるで現実に戻ったかのように元の風景となった。なかなかに驚く,突然の展開である。
とはいえ,いつまでもこうしてはいられないと,来た道を戻り駅に向かう。
ここで主人公は,道路をまたいだ反対側に,蝶を見つける。そこでビルの時と同じようにボタンを押し続けると,今度は自らが蝶となり,実際に操作してパタパタと飛べるようになった。それを虚ろな目で見ている主人公も背景にいて,これもまた何か心に訴えてくる。こうした一つひとつの行動が,後々起こる不思議な出来事につながるようだ。
とにかく本作は,現実逃避の表現とそこへの導入方法,そして「今起きていることは現実? 夢? どっち?」と感じさせる雰囲気作りが秀逸だ。筆者は子供の頃から「学校を遠回りして行ってみよう」「会社に行く逆の電車に乗って遠くに行ってみようかな」などと考えたり,街の猫や鳥をぼんやり眺めたりしがちな人間なのだが,「このゲームを作った人は同じタイプの人間だろう」とかなり共感してしまった。特徴的なローポリゴン風のグラフィックスも,モノトーンでありながらもネオンや車のライトの光,黄色い蝶などにアクセントとして鮮やかな色が使われており,アートのような見応えと美しさがある。
発売予定時期が2019年夏から2019年内へ変更となったのは残念だが,日本語版も海外のリリースのタイミングに合わせて配信できるようローカライズが進んでいるとのこと。Steamストアページではインタフェースと字幕が日本語対応となっている。テーマも日本人に刺さりそうなものとなっているので,多くの人に触れてもらいたいと感じたタイトルだ。
Steamの「Mosaic」ストアページ
「Mosaic」公式サイト
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