インタビュー
[インタビュー]「あんスタ!!」成功の裏には,“自分たちが愛せるコンテンツを作る環境”があった。Happy Elements代表 新井元基氏が語る
京都を拠点とするHappy Elements カカリアスタジオは,アイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!!Basic/Music」をはじめ,「エリオスライジングヒーローズ」(iOS / Android),「メルクストーリア - 癒術士と鐘の音色 -」(iOS / Android),「ラストピリオド - 紡がれし螺旋の物語 -」(iOS / Android)など,オリジナルコンテンツでさまざまなジャンルのアプリゲームを開発・運営しているゲーム会社だ。ゲームに興味がある人なら「あんさんぶるスターズ!!」というタイトルは,一度はどこかで耳に,目にしたことがあるだろう。公式Twitterアカウント(@ensemble_stars)のフォロワー数は136万超,YouTube公式チャンネル「あんスタチャンネル」のチャンネル登録者数は45万超。女性向けコンテンツにおいて絶大な人気を誇っている。
今回4Gamerは,そんな「あんさんぶるスターズ!!」を開発・運営する,同社の代表取締役CEOである新井元基氏にインタビューする機会を得た。同社のビジョンや「あんスタ!!」のコンテンツ作りについてうかがったので,その内容をお伝えしよう。
Happy Elementsが掲げるビジョン
「熱狂的に愛されるコンテンツをつくる」
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずはHappy Elementsがどういった会社なのかをお聞きできればと思います。
代表取締役CEO 新井元基氏(以下,新井氏):
Happy Elementsは元々中国のモバイルゲーム開発会社で,その子会社として2010年に日本に設立しました。
4Gamer:
新井さんがかかわられたきっかけは何だったのでしょう。
新井氏:
当時,私は京都を拠点に4人で会社をやっていました。私を含め全員がエンジニアの会社で,いろいろな会社からシステムの受託開発の仕事を請け負っていたのですが,そのうちの1つが中国のHappy Elementsからの仕事でした。それがきっかけで,一緒にやらないかと声をかけてもらって今に至ります。
4Gamer:
元々新井さんは京都のご出身なのでしょうか。
新井氏:
はい。学生時代は京都の大学に通っていて,いろいろなITベンチャーでアルバイトをしてビジネスの経験を積みました。一度は東京に行っていたのですが,そのときの経験を元に優秀な若者と一緒にものづくりをしたいという想いがあって京都に戻ってきました。京都は大学が多く学生の街ですし,それに東京の次に芸大が多いんです。その地の利を活かして,社内に多数のイラストレーターやアニメーターを抱えることができています。
4Gamer:
京都を拠点にしたのは,強い想いがあったんですね。続いて,掲げられているビジョンについてお聞きします。「熱狂的に愛されるコンテンツをつくる」とありますが,どのような想いが込められているのでしょうか。
新井氏:
幅広い層にウケるコンテンツというよりは,好きな方にとっては“ものすごく好きになれるコンテンツ作り”をしたいと考えて,このビジョンになりました。その「好きな方」のなかに自分たちも含まれていて,“自分たちが楽しめるもの”とか“自分たちが欲しいもの”を作るということがよくあるのですが,もちろん独りよがりではなく,自分たちと同じようなものを好きなユーザーに喜んでもらえるようなものを作りたいと考えています。
4Gamer:
刺さる人には刺さる,コンテンツですね。これを掲げることで社員の方には,普段どのように意識してほしいと考えていますか。
新井氏:
私たちはユーザーに喜んでもらうためにゲーム作りをしているので,やはり“ユーザーを1番に考える”ことを意識してほしいです。
4Gamer:
ユーザーさんを第1に考えつつも,自分たちにとっても熱狂できるようなコンテンツ作りをしているんですね。現在,会社全体としてはどのくらいの規模になるんですか。
新井氏:
ここ京都(カカリアスタジオ)の従業員は約250人で,そのうち90人ぐらいがあんスタチームです。東京にある子会社のグリモアにも40人くらいいます。
4Gamer:
半数近くがあんスタチームなんですね。
「あんさんぶるスターズ!!」成功の裏には
自分たちが好きなものを作れる環境があった
4Gamer:
それではコンテンツ作りの具体的な例として,「あんさんぶるスターズ!」のお話をお聞きしたいです。 「あんスタ!」は今や大ヒットと言える人気やセールスを誇っていますが,ここまでのタイトルになると予想していましたか。
新井氏:
正直なところ,まったく予想はしていなかったです。「あんさんぶるスターズ!」を作り始めた時期は,携帯電話がフィーチャーフォンからスマートフォンに本格的にシフトしたところぐらいでした。そのころはまだスマートフォンのゲームで女性向けに特化したコンテンツはそう多くなかったんです。そんななかで,“自分たちが好きになれるコンテンツ”がまだ無いので作ろうとなって「あんスタ!」が生まれました。
私としては,世の中にヒットタイトルがないということは,そもそもそんなに市場やターゲットが大きくないか,うまくいかない何か理由があるんじゃないかと感じたのですが,それに対して企画担当者が「そもそもそういうのがまだ無いからこれから作るんです」と。そんな簡単なことじゃないぞ……と当時は思ったんですけど,とんでもなくヒットしましたね。
4Gamer:
私自身リリース時から追いかけていますが,これだけ勢いが衰えないタイトルは思い浮かびません。
新井氏:
そこはやはりユーザーの皆さんに長く愛してもらっているからこそです。長く熱量高く愛し続けていただけるのも,女性向けコンテンツの1つの特徴かもしれません。
4Gamer:
どうしてここまでになったとお考えですか。
新井氏:
難しいんですが,本当にユーザーが欲しいものを作ったからじゃないでしょうか。
4Gamer:
御社が掲げるビジョンの通りというか。
新井氏:
そうですね。そして,現在の状況で言えば,「あんさんぶるスターズ!!Music」をリリースしたということが大きかったと思います。
4Gamer:
確かに。「あんさんぶるスターズ!」のまま続けていたら,また状況が変わってたかもしれないですね。
新井氏:
変わっていたと思います。さすがに大分勢いが落ちていたんじゃないでしょうか。
4Gamer:
攻めの姿勢をすごく感じますが,あんスタチームと言いますか,新井さんもわりとそういった思考なのでしょうか。
新井氏:
私は,社内でやりたいことがある人を最大限サポートするスタンスです。現場の人たちから,こういうことをやりたいと話があれば,じゃあそれをどうやって実現していくか,どうサポートしようかと考えます。私自身は何をしたいとかはあまりないんですけど,現場の人たちの熱意が形になって,うまくいっているんだと思います。
4Gamer:
そういう環境を整えているんですね。「Music」については,社内に反対する声はなかったんですか。リスクもあったと思うので。
新井氏:
とくに3DCGは社内ではまったく経験が無くリスクは大きかったですが,最終的にやったらいいと後押ししました。それに,体制の問題で「!!」のコンテンツを作るためにリリース前1年ぐらいは「!」の運営コンテンツの量を減らさざるを得なくて,その間は売上もアクティブユーザー数もかなり減りましたが,結果として新規ユーザーもすごく増えて,想像を超える成功でした。
4Gamer:
差し支えない範囲で,あんスタチームがどういった体制でゲームを作られているのか教えてください。
新井氏:
基本的には,3DCGと楽曲を除くほぼすべてを内部で制作しています。あと,ストーリーについてもメインは外部のシナリオライターの日日日先生にご執筆いただいています。
4Gamer:
ありがとうございます。あらためて新井さんとしては,「あんスタ!!」に対してどんな気持ちですか。
新井氏:
本当にすごいと思います。自分が生み出したわけではないので,これを生み出した人達をただただ尊敬しています。会社としては,大きなコンテンツを運営している責任もありますし,よりたくさんの方に楽しんでいただくべくさらに大きくしていきたい気持ちもあります。ユーザーの皆さんの期待に応えるために,これまでCDを出したり,ライブを開催したり……と,とにかく喜んでもらえそうな展開をどんどんやってきましたし,これからも積極的に展開していきたいです。
4Gamer:
本当にいろいろな展開があって毎回驚かされます。
新井氏:
やはりユーザーの皆さんに喜んでもらうことが1番なので。
ユーザーファーストのための
クリエイターファーストな環境作り
4Gamer:
先ほどオフィス見学をさせていただいたのですが(後日レポート掲載予定),社員のことをすごく考えられた作りで驚きました。それもやはり新井さんの考えからなのですか?
新井氏:
そうですね。実際のオフィス作りはバックオフィスの担当者がやってくれているんですけど,会社としては理念であるユーザーファーストを実現するための,働きやすいクリエイターファーストな環境を作っています。徹底的に,クリエイターがものづくりしやすい環境にしようとしています。
4Gamer:
社員の声をきちんと聞いてらっしゃるんですね。ちなみに御社にはどんな社員の方が多いですか。共通項などあったりします?
新井氏:
うーん,でも面白いゲーム作りたいと思っている人しかいないです。
4Gamer:
素晴らしいです。世代や男女比はどうでしょう?
新井氏:
今は平均が30代前半ぐらいで,それくらいの年齢の方が多いですね。5年前は20代後半の人が多かったんですけど,時間が経つと共に平均年齢が徐々に上がっています。男女比は全体でいうと半々ですが,業種によって偏っています。イラストレーターだと9割以上女性で,エンジニアだと9割以上男性です。
4Gamer:
なるほど!
新井氏:
一時期は,忙しすぎて育成に時間を割けないということで即戦力の中途採用ばかりになり,結果的に平均年齢が上がっていったのですが,最近はやはり元々やりたいことでもあった若い方を積極的に採用していきたいと考えています。
4Gamer:
採用面接は新井さんも参加するのでしょうか。
新井氏:
はい。面接は私と現場のメンバーが一緒に出て,一次で終わることが多いです。
4Gamer:
どんな人がいいかイメージはありますか。
新井氏:
弊社のビジョンや考え方に賛同いただいて,良いゲームを作りたいと思う方だったら大歓迎です。面接では,とくに社風とのマッチングを気にしています。チームとして成果を出していかないとダメなので,合う合わないはどうしてもあると思っています。
これからのHappy Elementsは
どんなカラーを出していくのか
4Gamer:
「あんさんぶるスターズ!!」「エリオスライジングヒーローズ」「メルクストーリア - 癒術士と鐘の音色 -」など,オリジナルコンテンツでさまざまなジャンルのアプリゲームを開発していますが,今後どのようにHappy Elementsのカラーを出していきたいとお考えですか。
新井氏:
私自身がこうしたいということはとくにないんですが,会社の中の人たちの好きなものが形になって今のカラーになっていると考えています。とくに意識したわけではないのですが,今出ているタイトルを見るとなんとなく「うちの会社っぽい」雰囲気を感じますし,今後もそういう感じでいくんだろうと思います。
4Gamer:
会社をもっと大きく……といった野望的なものはありますか。
新井氏:
大きくなりたいとかはとくに無く,継続的にヒットコンテンツを生み出していけたらと考えています。コンテンツに関しては,よりたくさんの人に知ってもらえて,楽しんでもらえるようになったらいいなと思います。
4Gamer:
「あんスタ!!」はとくに外部とのコラボもあって,アプリの枠を越えて展開してますよね。
新井氏:
ゲームアプリ発のコンテンツではあるのですが,「あんさんぶるスターズ!!」というコンテンツをよりさまざまな形で楽しんでいただくべく,ゲームにとらわれないさまざまな展開をしていきたいと考えています。
4Gamer:
この先も攻めの姿勢で走っていってほしいなと思います!
新井氏:
そうですね。今回のアニメ(追憶セレクション「エレメント」)もぜひ楽しんでいただきたいです。
4Gamer:
楽しみにしています! では最後に読者へのメッセージをお願いします。
今後もユーザーファーストでコンテンツを作っていくビジョンは変わらないので,引き続き応援していただければうれしいです。こちらも期待に応えるべくがんばります。そしてこの記事を読んで,Happy Elementsに興味を持っていただける方がおられたら,ぜひ公式サイトの採用サイトを見ていただきたいです。人が足りていません(泣)。
4Gamer:
ありがとうございました!
――2023年2月22日収録
「Happy Elements株式会社」公式サイト
「Happy Elements株式会社」採用サイト
(C)2014-2019 Happy Elements K.K
(C)2014-2019 Happy Elements K.K
(C)2014-2019 Happy Elements K.K
(C)2014-2019 Happy Elements K.K
(C)2014 Happy Elements K.K
(C)2019 Happy Elements K.K
(C)2019 Happy Elements K.K
(C)Happy Elements K.K All Rights Reserved.
(C)Happy Elements K.K All Rights Reserved.
(C)2015 Happy Elements K.K
(C)2015 Happy Elements K.K
(C)2015 Happy Elements K.K
(C)2015 Happy Elements K.K