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「アルカ・ラスト 終わる世界と歌姫の果実」インタビュー。“終わり”を描く重厚な世界観を,フジゲームス独自の多面展開で多くのプレイヤーへ届ける
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印刷2019/05/11 12:00

インタビュー

「アルカ・ラスト 終わる世界と歌姫の果実」インタビュー。“終わり”を描く重厚な世界観を,フジゲームス独自の多面展開で多くのプレイヤーへ届ける

 “これは世界を正しく終わらせる物語”というキャッチコピーを掲げ,フジゲームスが2019年夏にリリースするスマホ向けRPG「アルカ・ラスト 終わる世界と歌姫の果実」(iOS / Android。以下,「アルカ・ラスト」)。その制作には,原作・メインキャラクターデザインに河野純子氏,原作・企画原案に小牟田 修氏,メインテーマに山根ミチル氏,バトルBGMに古代祐三氏,シナリオBGMに柳川 剛氏と,著名なクリエイターたちが参加している。

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 本作では,さまざまな問題を抱えた7つの世界を終わらせ,再出発させる「破壊者」として召喚された主人公たちの群像劇が描かれる。異なる世界の住人が集う「方舟」と呼ばれる拠点や,キャラクターの関係性を重視したバトルが楽しめるゲームシステム,ヒーリングサウンドを取り入れたテーマ曲,作品の世界観を伝える声優ヴォーカルユニット「Kleissis(クレイ・シス)」など,独自の展開によって従来のRPGとは“ひと味違う存在感”を放っている。
 スマホゲーマーだけでなく,昔ながらのコンシューマゲームファンからも熱い視線が送られる「アルカ・ラスト」はどのような経緯でプロジェクトがスタートし,どんなタイトルを目指しているのか。4Gamerでは,フジゲームス総合プロデューサー・赤井誠一氏と本作のクリエイター陣へインタビューを行う機会を得られたので,全貌が気になる本作の魅力や注目ポイントについてたっぷりと語っていただいた。

写真左から,赤井誠一氏,柳川 剛氏,古代祐三氏,山根ミチル氏,小牟田 修氏,河野純子氏
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「アルカ・ラスト 終わる世界と歌姫の果実」公式サイト



ゲームだけにとどまらない,多面的な展開も含めた「アルカ・ラスト」


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介を兼ねて,みなさんが本作でどのような役割を担っているかを教えてください。
河野純子氏(原作・メインキャラクターデザイン)
代表作:「幻想水滸伝」「幻想水滸伝IV」「タイムホロウ奪われた過去を求めて」
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河野純子氏(以下,河野氏):
 「アルカ・ラスト」には原作という形で携わっていて,世界観設定やメインのシナリオ,キャラクターデザインなどを担当しています。

赤井誠一氏(以下,赤井氏):
 シナリオ,キャラクター,世界観と,ここまで作品のコアな部分をすべて担うケースはあまりないんじゃないでしょうか。コアな部分をお願いしているからこそ,そのぶん作品世界の統一感がすごいんですよ。

小牟田 修氏(以下,小牟田氏):
 河野節が出ている作品ですよね。僕は原作・企画原案という形で,河野から降りてきた世界観を膨らませたり,もっと詳細な設定を考えたり,サブキャラクターの設定を考えたりしつつ,開発のディレクションも行っています。

4Gamer:
 ゲーム内のシステム面もご担当されていたり?

小牟田氏:
 そうですね。このタイトルの座組ができて,スタートするタイミングでゲームシステムなどもフジゲームスさんに提案させていただきました。

山根ミチル氏(以下,山根氏):
 私はメインテーマの作曲で参加しています。オープニングとエンディングのほか,ゲーム内の音楽も1曲作っています。

古代祐三氏(以下,古代氏):
 私は戦闘BGMを担当しています。

柳川 剛氏(以下,柳川氏):
 シナリオに関係するアドベンチャー周りのBGMと,一部戦闘BGMを担当しました。
赤井誠一氏(フジゲームス 総合プロデューサー)
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赤井氏:
 僕はフジゲームスサイドで,総合プロデューサーを担当しています。運用でも開発でもなく,“総合”って何だろうって自分でも思うんですけど(笑)。

 「アルカ・ラスト」はゲームはもちろん,まだ実現できていませんがさまざまな展開を見据えたメディアミックスプロジェクトですから,Kleissisも含めた多岐にわたるプロジェクト全体を見る立場ということで,偉そうですが肩書きに総合が付いています。

4Gamer:
 ありがとうございます。それでは,まずこの「アルカ・ラスト」の企画が動き出した経緯についてお聞きしたいです。

赤井氏:
 原作サイドと僕は,共通の知人を通じた飲み会で意気投合した,というよくある知り合い方をして,普通にゲームを作るだけでなく,多面的な展開をやりたいとか,ナンバリングタイトルのようにゲームを膨らませていきたいとか,そんな話で盛り上がったんです。

小牟田氏:
 河野と企画を考えつつ,中国などにも売り込んでいた頃ですね。お声がけいただいたときに「ちょうど温めているものがあるんですけど……」と提案させてもらった企画がうまくマッチしたというか。

赤井氏:
 それがこのプロジェクトの発端です。最初はKleissisもいなかったんですよ。

河野氏:
 本当に,最初期の話ですね。

赤井氏:
 ただ,片鱗はありました。フジゲームスという会社は,ゲームを作るだけではありません。よりプロジェクトを広げたいとなったとき,事前にユニットを作ろうとか,ゲーム音楽を彼女たちに歌ってもらおうとか……さまざまな展開を考えていました。その過程で「声優ヴォーカルユニットを入れられませんか?」となって。

小牟田氏:
 主人公である7人の破壊者を呼び出す“何か”が必要だという話があったんですが,それがすごく漠然としていて。もし出すなら7人とかそのくらいしか考えていなくて,そもそも女性かどうか,人であるかすらも決まっていませんでした。それがまさかヴォーカルユニットになるとは,ですよね。

赤井氏:
 そこからKleissisと,「アルカ・ラスト」の企画が広がっていきました。

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4Gamer:
 Kleissisの誕生にそんな経緯があったとは。こちらはまたのちほど,詳しくお聞きしたいと思います。
 個人的な興味で恐縮ですが,小牟田さんと河野さんは現在ご一緒に活動されているそうですね。コナミデジタルエンタテインメント(以下,KONAMI)を退社されてから,ずっとこの形をとられていたんですか?

河野氏:
 いえ,小牟田とはずっと別でした。私はKONAMI在職中に,もう机に腕を乗せられないほど肩を壊してしまって。2012年に発売された「幻想水滸伝 紡がれし百年の時」のあとは,ソーシャルゲームのシナリオにも関わっていたんですが,それが終わったタイミングで手術をしたんです。入院して3か月ほど休職して「これからどうしようかな」と考えたときに,そろそろ独り立ちするタイミングかなと退社を決めました。
 そこからしばらくはフリーでいて,リハビリも兼ねて声をかけていただいた案件をお手伝いしつつ,3年ほど前に会社を立ち上げました。中国の仕事もやりながら,企画を立ち上げたくて色々と持ち込んでいたんです。

4Gamer:
 なるほど。今回の座組を見ると,もともとお知り合いという方も多いですね。

山根氏:
 古代さんとは,私がKONAMI在職中に「悪魔城ドラキュラ」シリーズでご一緒しました。

古代氏:
 何度かコラボしていて,山根さんとはこれが3本目ですかね。

山根氏:
 「悪魔城ドラキュラ」シリーズのプロデューサーである五十嵐さん(※)に,全曲は大変なのでどなたかと一緒にやりたいとお願いしたところ,古代さんが一緒にやってくださったんです。

(※)元KONAMI,現ArtPlay代表取締役の五十嵐孝司氏

古代氏:
 その後は「モンスターボーイ 呪われた王国」でも知らないうちに一緒に組んでいたんです。それは柳川さんも一緒でしたね。

山根氏:
 先日行った「アルカ・ラスト」の発表会の中で,私がラフで作成したものを最終的な形にしてくれたのが柳川さんだったと知ったんです。それまでは古代さんがやってくださったのかと思っていました。

4Gamer:
 サウンド側の皆さんも,色々な場での繋がりがあったんですね。

小牟田氏:
 音楽面に関しては,言ってしまえば完全に僕と河野の趣味です(笑)。

河野氏:
 山根さんはコンサートに伺ってお話をしたら,「取れた!」という感じでした。あとはどうしても古代さんと柳川さんにお願いしたくて。

小牟田氏:
 河野が柳川さんの大ファンなんですよ。

柳川氏:
 ありがとうございます。

小牟田氏:
 古代さんは僕が大ファンで,つないでくれたのがエインシャントにいたサウンドメンバーなんです。そこからのご縁で,以前関わった「Heaven×Inferno(※)という作品でも,僕の指名で古代さんに曲を書いてもらったことがありました。

(※)トライエースとNTTドコモが手がけたスマホ向けアクションRPG


物語の“終わり”にフォーカスした世界観
7つの世界は王道からダークな雰囲気まで


4Gamer:
 続いて,発表会でも触れられていた作品の特徴についてお聞きしていきます。本作では“破壊と創造”というテーマで重厚な世界観を描くとのことですが。

河野氏:
 なんというか……終わらせたかったんですよね。

小牟田氏:
 それだけだと分からないですよ(笑)。

河野氏:
 この世界にはとても長い歴史があり,ずっと破壊と創造を繰り返しているんです。

小牟田氏:
 その中の一部の歴史を切り取り描くのが「アルカ・ラスト」という形ですね。

河野氏:
 さまざまな展開に耐えられるコンテンツにしたいと思い,骨組みをしっかりと作ってあります。個人的に,スマホゲームにはストーリーがほとんどなくて物足りなかったり,逆にすごく長くてなかなか終わらなかったり,ちょうどいいまとまりのあるストーリーを体感できるRPGがなかったんです。
 スマホというデバイスで,きちんと満足して物語を終わらせるには“一度壊す”しかないというか,終わりから考えていくしかないと思い立ったのが,このテーマが生まれたきっかけですね。終わりをきちんと見せる,ここにフィーチャーしたいと。

4Gamer:
 「終わりがある」と明言されるのは,スマホRPGとしては少し珍しいと思いました。しっかりエンディングが存在するというのは,プレイヤー側にもある種の安心感が生まれるかもしれませんね。

河野氏:
 サービス終了=終わりにはしたくなかったんです。

小牟田氏:
 半年後,1年後にシナリオの第1部完結を迎えるスマホRPGはよくありますよね。今回はそれをさらに短いスパンで区切り,7つの世界それぞれにエンディングを設けて,1つの物語として完結させています。そのうえで,最後に大きなエンディングがくるというのは,これまでと少し違う流れかと思います。

河野氏:
 独立したオムニバスではなく,それぞれの物語につながりを感じられるよう気を付けています。

赤井氏:
 あとは,1つの世界ごとにエンドロールをしっかりと作るなど,そういった部分にもこだわっています。

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4Gamer:
 発表されている7つの世界のうち,最初にプレイヤーが触れるのは「黄昏編」の世界となるのでしょうか?

河野氏:
 そうですね。最初に触れるので,あまり奇をてらった世界にはしていません。RPGの,いわゆる主人公然としたタイプの破壊者が活躍します。JRPG的な王道感のあるファンタジーの世界になっていて,その終わりをどうにかするという話ですね。まず「アルカ・ラスト」はこういうゲームなんだと,慣れていただく“掴み”になるものにしています。そのあとからは少し尖った世界が出てきますね。

赤井氏:
 2つ目からだいぶ尖ってますよね(笑)。

小牟田 修氏(原作・企画原案)
代表作品:「幻想水滸伝ティアクライス」「FRONTIER GATE」シリーズ
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小牟田氏:
 最初の「黄昏編」は王道ですが,次の「漆黒編」は光の届かない闇に閉ざされた世界という,地下帝国のような……ダークな感じになっていきますね。その次の「凍土編」は世界のすべてが凍り付いていて,ごく一部の地域にしか人が住めなくなっています。どの世界も終焉を迎えつつあって,終わり方は7通り,それぞれ違うテイストで描いています。

4Gamer:
 本作は群像劇とのことですが,まず「黄昏編」の物語はクロウの視点で動くのでしょうか?

河野氏:
 「黄昏編」はそうですね。次の世界はクロウの代わりに別の破壊者のヴァローナというキャラクターが出てきて,彼女の視点で物語が進みます。

小牟田氏:
 7つの世界それぞれに主人公がいて,物語が進むごとに主人公が変わっていきますが,ストーリーテラーのような役割を担うイロンデールという謎の剣士がいて,彼が主人公の側で常にサポートしてくれます。イロンデールはどの世界にもいるので,世界が変わっても物語が分からなくなるということはないようにしています。

河野氏:
 主人公を切り替えてしまうことへの不安もあり,そうしたキャラクターを置いてサポートしています。

4Gamer:
 このほか60人以上のキャラクターが登場するそうですが,7人の主人公とはどのような関わり方になるのでしょうか?

小牟田氏:
 7人の主人公はシナリオを進めると使えるようになります。主人公たちは,それぞれの世界に破壊者として呼ばれるので,普通の人間ではないというか……謎めいた存在なんです。一方で,仲間たちはそれぞれの世界に住んでいて,一緒に世界をどうにかしようと協力してくれます。

4Gamer:
 なるほど。

小牟田氏:
 補足すると,7つの世界は“パラレルワールド”になっています。例えばフォルカーというキャラクターがいれば,7つの世界すべてにフォルカーが存在しているんです。基本的な性格や,おおよその見た目は共通しているんですが,それぞれの世界の文化や立場を踏襲した格好をして,簡単に例えるなら「黄昏編」では戦士,「漆黒編」では魔法使い,別の世界では盗賊として生きている……といったような感じです。

4Gamer:
 現在公開されている各世界の紹介を見ても,ゾーイやサイファといった同じ名前の人物が,それぞれの世界にいることが分かりますね。同じ名前のキャラクターでも,世界ごとにジョブや属性などが違うイメージでしょうか。

小牟田氏:
 そういう感じです。

4Gamer:
 そうなると,同名のキャラクターを同時に編成できるのか,みたいな部分も気になりますが……。

小牟田氏:
 世界観としてはできないほうがよかったんでしょうけど,大丈夫です。

赤井氏:
 プレイヤーの皆さんにストレスを与えるのは本意ではありませんからね。

小牟田氏:
 コンシューマであれば,そうした縛りや設定がプレイヤーの皆さんに受け入れてもらいやすいと思うんですけど,スマホゲームは本当に幅広い層の方が触れるものですから,そうした制約は取り払っています。
 もちろん,特定のキャラクターを入れていると達成できるミッションや報酬,聞けるセリフなど,世界観を重視する方がロールプレイを楽しめるような環境も整えています。

4Gamer:
 世界観を強く意識するプレイヤーであれば,メンバー選びから色々と楽しめそうですね。

河野氏:
 仲間になるキャラクターは,「あの場所にいたあの人なんだ」というのがキャラクターシナリオから分かるようになっています。仲間になったけど,どこの誰だか分からないとなってしまうキャラクターはいません。

小牟田氏:
 つながりもきちんと意識しています。

4Gamer:
 キャラクターを仲間にするごとに,物語への没入感も深まっていきそうですね。発表会には,クロウ役の赤羽根健治さんや,シュカ役の大空直美さんが登壇し,主人公たちを演じる声優さんが発表されましたが,ボイスはどの程度入る予定なんでしょうか。

赤井氏:
 シナリオでは,テンポよく楽しんでもらうためにパートボイスにしています。そのぶん,拠点となる「方舟」はほぼフルボイスで展開します。バトルでも,もちろんしゃべりますよ。

小牟田氏:
 話しかけたら,すべてボイス付きというくらいの量ですね。「方舟」はスマホゲームだけを遊ぶ層には馴染みがなさそうな,コンシューマライクな作りになっています。

4Gamer:
 この流れで「方舟」についてもぜひ伺いたいのですが,PVでプレイヤーキャラクターが「方舟」の中を自由に歩いて,探索している様子に驚きました。


赤井氏:
 キャラクター個々のストーリーとなると,アドベンチャー形式で展開するのが定番ですよね。本作にもそういったパートはありますが,それとはまた違った形でキャラクターを描きたくて。「方舟」では,例えば食いしん坊のキャラクターがずっと食堂にいるとか,仲の悪いキャラクター同士がいつも訓練所で競っているとか……どこまで入れられるかは分かりませんけど,キャラクターの設定をより感じられる場所として用意しました。

4Gamer:
 パラレルワールドのほかのキャラクターも含め,全員が「方舟」に集まるのでしょうか。

小牟田氏:
 そうですね。「方舟」は特殊な場所で,パラレルワールドの中のあらゆる可能性が集まる場所という設定になっています。大きな敵と戦うために仲間を集めるという目的のもと,パラレルワールドのキャラクターがどんどん集まってくるんです。どんな場所なのかは,ストーリーを進めていくと徐々に明らかになっていきます。

赤井氏:
 仲間になるキャラクターは,ガチャだけではなくゲーム内のコンテンツでメダル(ゲーム内アイテム)なりを集めて手に入れたり,長く遊ぶことでキャラクターを集められたり,強くしたりできる設計です。
 キャラクター同士の関係性を知りたいのに,一方のキャラクターがガチャでしか手に入らない……みたいな状態にはならないようにしています。どうしてもキャラクターを早く手に入れたい人は,ガチャを回していただければ……という形ですね。

小牟田氏:
 先の世界にいる一部のキャラクターをガチャで手に入れることもできるんですが,そうしたキャラクターは「方舟」ではそっけない態度になります。「まだお前は俺のこと知らないだろ?」みたいな感じで,まだ主人公とは知り合っていないという体裁です。そのキャラクターのいる世界のシナリオをある程度進めれば,もっと深掘りできるような流れになっています。

4Gamer:
 システムとプレイヤーの感情の矛盾は避けにくいところですが,設定によってうまく解消しているんですね。

小牟田氏:
 世界観を突き詰めるほど,スマホRPGの仕組みと合わせると,どうしても矛盾が生まれてしまうんですよね。でも,世界観も仕組みも崩したくないんです。
 ちなみに,先の世界のキャラクターばかりが「方舟」に集まると,態度がそっけない人たちばかりになってしまうんですが……そこは申し訳ありません(笑)。

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ライトな操作性のオートバトルに
3Dモデルをじっくり堪能できるカメラ機能を搭載


4Gamer:
 本作ではオートバトルを採用されているそうですね。かなりオーソドックスな設計なのでしょうか。

小牟田氏:
 基本はオートでバトルが進み,タイミングに合わせてスキルを撃つ形です。最初はもっと複雑なシステムを提案していたんですけど,期間的に間に合いませんし,想定しているユーザー層ともちょっと合わないかなと。複雑なシステムで遊ぶ人を限定せず,多くの人に手に取っていただきたかったんです。

赤井氏:
 作品のポイントは“群像劇”ですから,キャラクターを深掘りする部分をしっかり入れつつ,操作性はライトにするコンセプトなんです。企画書の時点ではリアルタイムPvPのようなシステムだったんですが,僕の中で消化しきれずもっとライトにしたいとお話しさせていただきました。
 世界観と遊びごたえのあるバトルを兼ね備えたものをご提案いただいたんですが,バトルと世界観を天秤にかけて,今回は“世界観の面白さ”を選ばせてもらった形です。

小牟田氏:
 今回はライト寄りにしていますが,将来的には企画書段階のシステムも取り入れてみたいですね。RPGのバトルで,リアルタイムPvPを成立させれば,コンテンツとして強くなると思うんですよ。世界観やキャラクターを気に入ってくれた人たちがPvPでお互いに盛り上がると,世界が広がるんじゃないかと。このあたりの片鱗は,「戦争システム」で感じられるかもしれません。

4Gamer:
 操作はライト寄りとしつつも,こだわって制作された部分も?

小牟田氏:
 ええ。オーソドックスな作りで操作も簡単ですが,ただオートバトルを見るだけにはしたくなくて,カメラを自由に回せたり,ピンチイン・アウトで好きなキャラクターをアップで見られるようにしたりしています。キャラクターのアクション動画をSNS上で共有するとか,そうした楽しみ方もできるといいなと。

4Gamer:
 バトル中にカメラを動かせるんですか! それは面白そうですね。

赤井氏:
 背景の作り込みとか,アングルに限界が出ないかと思ったんですけど……。

小牟田氏:
 そこは開発ディレクターをさせてもらっているのをいいことに,アセット周りを好きに作らせていただいて(笑)。キャラクターのモデリングも3Dで作り込んでいるので,細かな部分も楽しんでもらえるかと思います。

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これが通常のアングル
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バトル中にカメラを動かすことで,好きなアングルでバトルを見られる
※画面は開発中のものです。


テーマ曲はプレイヤーを癒すヒーリングサウンドに
音楽チームの制作スタイルを聞く


4Gamer:
 次はサウンド面について聞かせてください。7つの世界ごとに主題となるテーマが異なるかと思いますが,曲作りはどのような形で進行されたんですか。

小牟田氏:
 まず,大枠のメインテーマは山根さんに一任して,作品全体の世界観を表すテーマ曲を書いていただきました。

4Gamer:
 「アルカ・ラスト」の軸となるサウンドですね。山根さんはどのように作曲されたのでしょうか。

山根ミチル氏(メインテーマ)
代表作品:「悪魔城ドラキュラ」シリーズ,「幻想水滸伝III」「幻想水滸伝IV」
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山根氏:
 私は,姉妹で結成したヒーリング音楽のユニット「Michikaho'rl(ミチカホール)」でも活動をしています。デビューコンサートで小牟田さんと河野さんにヒーリング楽器の音色を聴いていただいていたので,楽曲制作時に「テーマ曲にヒーリング楽器を取り入れてください」というご要望をもらいました。

4Gamer:
 「ソウルサウンドライアー」ですね。竪琴のような見た目と,繊細な音色が特徴的です。

山根氏:
 竪琴というと,映画「千と千尋の神隠し」のテーマで流れるような音が馴染み深いかもしれませんね。ドレミファソラシドが出る普通の楽器と変わらないのですが,今回のテーマ曲には,1つは“レミラシ”,もう1つは“レミソラシ”の音だけが出る2台のライアーを用いています。
 音楽には国際標準音という音の高さ(ピッチ)の基準があって,五線譜の中の「ラ」の音=440Hzがそれにあたります。しかしヒーリング楽器に関しては,普通の調律よりも低めの基準で,癒しの効果が得られるという432Hzでチューニングしています。疲れを感じている方も多いと思いますので,こういった周波数のことは知らなくても,ゲームを遊んでいるうちにリラックスしてもらえたらなと。そうした私の想いも汲み取っていただけて,よかったなと思います。

小牟田氏:
 僕は音楽には詳しくないので,柳川さんに「これでアレンジをお願いします」とそのまま投げていました。今思えば,割と無茶ぶりでしたよね……(笑)。

柳川氏:
 ピッチは大丈夫だったんですけど,入れる場所はきっちり考えないといけないなと思いました。1コードで最初から最後までというわけにはいかないので,いただいた音からイメージを膨らませて,うまくまとめられたかなと。

山根氏:
 アレンジしたものを聴かせていただいて「ライアーの音もしっかり入って,こんなに素晴らしい仕上がりになってる!」って思いました。

4Gamer:
 河野さんが柳川さんをチームに引き込んだことも,功を奏したのかもしれませんね。オープニング,エンディングテーマはKleissisが歌われるそうですが,こちらも山根さんが手がけられたのでしょうか?

山根氏:
 私の作った原曲はあるのですが,Kleissisさんの曲はまた別のアレンジャーの方がいて,ギターなどが入ったJ-POPらしい,格好いい楽曲に仕上げてもらっています。ゲームに入る曲は,もともとの曲のイメージを尊重してくださったアレンジになっていますね。

赤井氏:
 メロディを踏襲しているくらいで,どれも全然違いますよね。

山根氏:
 Kleissisさんのほうの曲アレンジは,もともと彼女たちが歌っていたものだと思ってしまうくらい違和感のない仕上がりでした。アレンジによって曲の印象やオリジナリティが変わるので,とても大切な作業なんですよね。


小牟田氏:
 このほかゲーム中に使用する曲は,バトルとアドベンチャーパートで大きく分けてご依頼させていただきました。こちらから古代さんにフワッとしたオーダーを伝えると,まず返ってくるのは「バトルのプレイ時間はどのくらいの想定なのか」というご質問で,ゲーム自体のテンポ感とか,プレイ感覚を重視されていらっしゃると感じました。

古代氏:
 あとは,画面遷移のタイミングとかですね。

小牟田氏:
 一方で,柳川さんは世界観をさらに深掘りされる質問が多かったような……。

柳川氏:
 「アルカ・ラスト」の7つの世界それぞれにテーマや物語,文化がありますが,オーダーにはさらに世界ごとにイメージされた楽器や楽曲のスタイルもありました。シナリオや演出との絡みで着地点のバリエーションが無数にありますから,落としどころを探りたくてついつい込み入った質問が増えてしまいまして……。

4Gamer:
 世界観や方向性を掴むために,シナリオにも目をとおされたんですか。

柳川 剛氏(シナリオBGM)
代表作品:「シェンムー」「カルドセプト」
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柳川氏:
 その時点で執筆を終えているシナリオと,全体のプロットを拝見しました。さきほど誰視点で物語が進むのかというお話がありましたが,本作には規模の大きい群像劇が持つ,世界を俯瞰させるような魅力があります。それぞれの世界を総括するような表現をサウンドでどうアプローチしていくか,最初からすり合わせさせてもらえたのはやりやすかったですね。

4Gamer:
 シナリオを重視されるスタンスを持ち,脚本・演出にも精通された柳川さんだからこそ生まれた「アルカ・ラスト」の曲を楽しみにしています!
 古代さんはバトルBGMの収録に,生楽器での演奏も取り入れたそうですね。

古代氏:
 収録を行ったのは2曲ですね。バトルBGMに関しては,あらかじめいただいたイメージをそのまま曲に落とし込んだという感じです。私はよくバンドものの曲を書いていて,大体はギター押しなんですが,今回は弦押しにしてほしいというリクエストをいただきました。なのでギターは抑えめに,管や弦でも乗れるようなサウンドになるよう注意しました。

小牟田氏:
 RPGとしての「アルカ・ラスト」の雰囲気を出すために,よりクラシックな感じで,民族音楽やアコースティックのような空気感でという点だけはお伝えできたんですが……それ以外はだいぶフワッとしていましたね(笑)。

柳川氏:
 キャッチーなところは古代さんや山根さんがしっかり担当されていますから,僕はどちらかというと世界観寄りで,好き放題やれるところかなと思っていました。とはいえ,あまりアクセルを踏むとさすがにストップが(笑)。

小牟田氏:
 柳川さんからは「こういうテーマならこういう曲,テンポ。メロディがいい」と,提案をしていただきました。それがまた,すごく良い曲なんですよ。

4Gamer:
 ますますゲーム内で聴けるのが楽しみになりました!
 それでは,少しお話に出た声優ヴォーカルユニット「Kleissis」の誕生についてもお聞きしたいです。当初は「アルカ・ラスト」との関係性が伏せられたまま,女性声優7人組のユニットとして活動されていましたよね。

赤井氏:
 しっかりとした原作があったので,その世界観を伝えるユニットという位置づけです。かなり大掛かりなオーディションも行いました。実際にキャラクターを演じる人たちでもありますから,演技はもちろん歌唱力も含めてこの7人を選んでいます。

小牟田氏:
 2018年2月に企画を持ち込んで,5月にはオーディションを実施していました。

4Gamer:
 オーディションには「アルカ・ラスト」の開発陣も参加されたのでしょうか?

小牟田氏:
 はい。キャラクターの声も担当していただく方々なので。

河野氏:
 オーディションのサンプル台本もこちらで用意しましたね。

赤井氏:
 声優さんによるヴォーカルユニットがゲームと絡むとなると,アイドルやリズムゲームを軸としたタイトルや,ゲームがある程度軌道に乗ったタイミングでヴォーカルユニットが派生コンテンツとして出てくることはよくありますよね。それが“破壊と創造”をテーマとして作り込まれたRPGでの起用となると,普通のやり方ではないと感じとっていただけるかなと。

4Gamer:
 Kleissisの楽曲が話題にでましたが,彼女たちの曲はどういったイメージで作られたんでしょうか。

赤井氏:
 「アルカ・ラスト」には,破壊と創造をはじめとしたテーマがあって,“混沌”もその1つです。なので彼女たちのデビュー曲「Kleissis Chaos」は,そうした世界観を踏襲して作っていただきました。彼女たちが活動を地道に重ねた結果,ファンの皆さんに一般的な声優ユニットとは少し違った印象を抱いてもらえたかなと。プロデューサー目線で言えば,Kleissisのファンには同様にゲームのファンにもなっていただきたいと願っています。

4Gamer:
 Kleissisがどのようなキャラクターを演じるかにも注目しつつ,ゲームをプレイしてほしいですね。

赤井氏:
 ただ,オーディションを経て2018年の夏にデビューしたんですけど……思っていた以上に言えることが少なく,とても謎の多いユニットになってしまいました。振り返ってみると,試み自体は面白いと思った一方で,きちんとマイルストーンを設定せず勢いで走ってしまった部分も多かったなと。

小牟田氏:
 ゲームの発表前は,原作側としてもほとんどフォローできませんでしたもんね。彼女たちも7人いるとはいえ,孤軍奮闘で頑張っていただいていました。

4Gamer:
 これからはKleissisも全力で活動していけますね。

赤井氏:
 早い段階でKleissisのファンになってくださった方々もたくさんいらっしゃいますから,定期的にライブを行って,ゲームと連動しながらもっと大きくしていきたいです。
 4月6日に行った発表会に合わせて,山根さんにご担当いただいたゲームのオープニングとエンディングを発表させていただきました。さらに,古代さんのバトル曲をアレンジしたKleissisの曲も作ろうと考えています。もともとKleissisの曲はロック調がベースになっているので,よくマッチしていると思いますし,ゲームのバトルBGMとしてのテンポ感をKleissisでも伝えていきたいです。

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フジゲームスならではのプロモーション展開で
より多くのプレイヤーに届けたい


4Gamer:
 フジテレビの深夜番組「エイコーさん」の公開収録とあわせて発表会が行われましたが,反響はいかがですか。

河野氏:
 日本向けのタイトルだったんですが,なぜか海外からの反応がすごくてビックリしました。どう見てもJRPGなのに,やはりこうした世界が好きな方は海外にも多いんだなと。

赤井氏:
 プロモーション映像をYouTubeにアップしたところ,英語のコメントもすごく多かったです。

小牟田氏:
 ヨーロッパ,インドネシア,タイからのコメントもありましたね。

4Gamer:
 海外で展開される予定はあるんですか?

赤井氏:
 もちろん見据えてはいますが,まずは国内ですね。

山根氏:
 私はブログを毎日書いていますが,海外の方からのコメントもすごく多いんです。なので,良いゲームを遊びたいと思っている潜在的なプレイヤーの存在をすごく感じていました。「アルカ・ラスト」がヒットして,海外展開ができるとなったら,そうした方々にもライアーの音を聞いてほしいですね。

4Gamer:
 海外ファンからの注目も大きいんですね。
 クリエイターコメントで小牟田さんが「スマホRPG戦国時代」といった表現をされていましたが,ヒットが期待できる市場である一方,短い期間でサービス終了となるタイトルも少なくありません。こうした市場へ「アルカ・ラスト」が新規タイトルとして切り込んでいくことになるわけですが,皆さんは現在の状況をどのように捉えていらっしゃるのでしょうか?

赤井氏:
 新しいタイトルを簡単に手に取ってもらえないくらいの市場になってきているというのが前提としてあって,ランキング上位を見ても運営が2〜3年続いているものが多く,新しいタイトルがとても少ないですよね。新しいものに関しても,IPものや海外タイトルが大半で,国産のオリジナルタイトルが切り込むのはとても難しい。加えて,今は数百万人規模のプレイヤーを意識しないといけません。
 そんな中でのチャレンジですから,ゲームとしてのクオリティはもちろん,メディアミックスを含めた広い展開ですとか,伝え方を意識していかないといけないと思っています。

柳川氏:
 クリエイターとして見たサウンドの話だと,家庭用に比べて少しつらい状況にあると思っていました。外でスマホゲームをプレイするとなると,やはり音を消してしまいますよね。でも今はBluetoothイヤフォンがずいぶん普及してきましたし,HuluやNetflixのような配信サービスを通勤・通学中に楽しむスタイルも当たり前のようになってきました。
 そうした変化に合わせて,むしろスマホゲームのサウンドをしっかり聴く方が増えているように感じます。昔のように,バトルをひたすらこなすだけだから音を切ってしまえ,というような状況は減っているような気がするので,そこは嬉しいところです。有線のイヤフォンだと,絡まってしまう難点がありましたけど,Bluetoothだと煩わしさがないですもんね。

4Gamer:
 イヤフォンの改善は大きいかもしれませんね。Bluetoothタイプも,以前は気にされていたような音飛びや遅延もずいぶん減ったと聞きます。

古代祐三氏(バトルBGM)
代表作品:「世界樹の迷宮」シリーズ、,「湾岸ミッドナイト」シリーズ
画像集 No.009のサムネイル画像 / 「アルカ・ラスト 終わる世界と歌姫の果実」インタビュー。“終わり”を描く重厚な世界観を,フジゲームス独自の多面展開で多くのプレイヤーへ届ける
古代氏:
 私はゲーム音楽を作るときに,プレイしている人の視点を大切にしたいので,とあるスマホゲームを5年ほどやりこんでいます。いちプレイヤーとして遊んでいると,どうしても「課金までしてゲームをしているのに,なんでストレスを感じなければいけないんだろう」となる瞬間はあると思います。だからこそ,せめて音楽ではその気持ちを和らげてあげたいんです。
 ゲームの構成的にいうと,大体バトルをこなしたらホーム画面に戻ると思うんですが,ホーム画面はできるだけ安らげるようなサウンドにしたくて。私の遊んでいるゲームもホーム画面は帰ってきてホッとするとか,安心するような形になっています。スマホゲームの曲を作るときは,そうしたキャッチーさも心がけていますね。

4Gamer:
 さきほど少しお話にも出ましたが,オーダーの際にタイミングやテンポ感などを細かく確認されていたのは,プレイヤーが心地よいと感じる部分を重視してのことなんですね。

古代氏:
 画面のキャラクターの動き,スクロールのスピード,アクションの動きとか……経験則でしか言えないんですけど,これぐらいのテンポ感でこういうリズムを刻むと気持ちいいと思えるものがあるんです。小牟田さんにも言っていたんですけど,本当はもっと合わせるための絵がほしいんですよね。やはり最初の頃はそういうものがなかなかないので,タイミングやテンポ感などに合わせて作るという昔ながらのやり方を取っています。
 バンド収録したものに関しては,いつも担当エンジニアと位相や定位の管理を心がけています。それらがしっかりしていると,結果的にどのメディアで聞いても音がいいんですよ。昔の音楽が気持ちよく聞こえるのはそういう要素が多分にあると思うんですけど,位相が悪いとモノラルになったときに音が消えてしまうんです。音が薄くならないよう,そのあたりを重視してミックスしています。

山根氏:
 私自身はあまりスマホゲームに触れていませんが,やはりゲーム音楽はループする曲が多いので,何回聞いても疲れない音楽や音色になるようにチェックしています。ループの位置も,あまり短いと同じフレーズばかり聴くようになってしまうので,一定の長さがあるようにするとか,違った展開のパートを入れるなどしています。とはいえ1回聴いて終わりではありませんから,あまり奇抜なものにはならないよう,気を付けています。
 リラックスという点でいえば,ホーム画面などでは432Hzを取り入れる工夫をしていくと,よりプレイヤーさんのためになるんじゃないかなと思います。ライアー以外にもヒーリング楽器は色々ありますから,水の音とか,そうしたものでホッとしてもらえれば,さらにゲームを楽しめるような効果につながっていくと感じています。そういう意味でも,今回こうした形で参加できてとても良かったです。

小牟田氏:
 コメントにも書かせていただきましたが,毎日のように新たなスマホゲームが配信されていますよね。とくにRPGが増えてきているなと感じる中,どうやって「アルカ・ラスト」を皆さんのもとに届けていけばいいのか。コンシューマ全盛期の頃にもありましたけど,とにかくお金をかけて広告を打って,目立たないと土俵にすら上がれないという状態に陥っていると感じています。
 僕らは広告を打つ人ではありませんから,ゲームの中をどうしていくかしか考えられないのですが,今回は河野がインパクトのある世界観を考えてくれているので,そんな世界にマッチしたシステムをきちんと提案できていれば,1つのパッケージとして世に広まってくれるんじゃないかと思っています。

赤井氏:
 テレビ的な視点でいうと,RPGは医療ドラマとか刑事ドラマを作るような感じなんですよ。ジャンルとしては世の中にたくさん溢れている,でもそれぞれで違う持ち味があるじゃないですか。

小牟田氏:
 まさにそれですね。ほかの作品と同じようなタイトルを作ってしまえばマンネリ化してしまいますし,独自のものを狙って奇をてらいすぎてもダメ。

柳川氏:
 毒を仕込むポイントというか,ちょっとした違和感が耳目を引くポイントだと思います。それをどのあたりに,どのくらい入れるのかは常に考えています。

河野氏:
 ほぼほぼ言われてしまって私の言うことが……(笑)。

4Gamer:
 そろそろお時間も迫ってきたので,本作のリリースを楽しみに待っている読者の方へメッセージをお願いいたします。

赤井氏:
 フジゲームスはフジテレビから出てきた会社ですから,普通のゲーム会社がやらないことをやろうと考えています。Kleissisもですし,テレビ番組の「エイコーさん」でのプロモーション活動もその1つですね。テレビを見ている人が直接プレイヤーに結びつくとは安直に考えていませんが,狩野英孝さんというタレントさんや番組をうまく活用させていただいて,普通のゲーム会社がやらないような話題作りで認知を高めていきたいです。これだけのクリエイターの方々と作っていますから,きっと楽しんでもらえると信じています。

柳川氏:
 世界観をすごく大事にされている企画ということで,それぞれの7つの世界,その地に住む人々や文化,そうした息づかいが感じられるよう,イベント周りのBGMも頑張っていきたいと思います。まずはまだ残っている作業を進めたくて……今は頭の中がいっぱいです(笑)。

古代氏:
 バトル曲で熱くなってくれればいいなと思います。

山根氏:
 オープニング,エンディングをはじめ,ゲームの曲で癒されていただきたいですね。音楽全般はもちろんなんですけど,素晴らしいスタッフが作ってくださっているゲームですから,昨今たくさんある普通のRPGとは一味違いますよ!

小牟田氏:
 今まさに夏のリリースに向けて頑張っているところですが,音楽も含めて素晴らしいクリエイターに集まっていただきました。モデリングをしているスタッフやエンジニアも,コンシューマ畑でゴリゴリのゲームを作りながら育ってきたメンバーが揃っている「アルカ・ラスト」なので,コンシューマゲームファンの方にも満足していただけるようなゲームに仕上がってきています。リリースを楽しみにお待ちください。

河野氏:
 また全部言われてしまったんですけど,ええっと……これまでのRPGとは一線を画す……。

(一同笑)

河野氏:
 「エイコーさん」など変わった試みも行っているので,普段はスマホゲームに触れないような人も,色々なきっかけで触れてもらいたいですね。以前からコンシューマを遊んでいる人が興味を持ってくださったら嬉しいですし,スマホのRPGをたくさん遊んだ人にも「おっ!」と思ってもらえるものになっているので,色んな世代の方に楽しみにしてほしいと思います。これから帰ってすぐ作業に入ります!

4Gamer:
 興味深いお話をありがとうございました。

画像集 No.013のサムネイル画像 / 「アルカ・ラスト 終わる世界と歌姫の果実」インタビュー。“終わり”を描く重厚な世界観を,フジゲームス独自の多面展開で多くのプレイヤーへ届ける

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