レイニーフロッグは2019年10月24日,
Nintendo Switch向けタイトル
「GIGA WRECKER ALT.」のパッケージ版を発売した(ダウンロード専売の
PS4 /
Xbox One,およびSwitch版のダウンロード版は後日,Rising Star Gamesより配信予定)。
本作はガレキを操る改造少女レイカとなり,ロボット軍団が支配する荒廃した世界を探索するアクションゲーム。PCで配信され高評価を得た「
GIGA WRECKER」に改良や追加要素を加えてコンシューマ機向けに移植したもので,開発は「ポケットモンスター」シリーズなどで有名な
ゲームフリークが行っている。
アクションゲームと一口に言っても幅が広いため,本作はどのような内容に仕上がっているのか。そしてセールスポイントとなっている
“ガレキアクション”で,どのような体験を楽しませてくれるのか。本作の魅力を,プレイレポートを通じて詳しく解説していこう。
Nintendo Switch版には,新エリアや高難度モード,パズルのヒントをくれるキャラクターが新たに追加されている。また既存のエリアにも調整が行われている
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左腕が機械になった改造人間レイカがガレキを操る!
まず,本作の世界設定と物語の導入を紹介しよう。
時は2032年,正体不明の殺人ロボットが出現し,瞬く間に地上を制圧。人類は廃墟でひっそりと息を殺して生息する存在に成り下がった。そんな世界でロボットに捕らわれた,
烈景寺レイカという少女が本作の主人公だ。
そんなある日,1人の少女が現れると突如「人類を滅ぼす存在」としてレイカを殺そうとする。しかしその騒動はロボットに見つかり,謎の少女は拘束され,レイカは重傷を負う。
レイカは薄れゆく意識の中で,
ドクター・コウヅキと名乗る人物と出会う。「俺ならキミを助けられるが,どうする?」という提案に乗り,実験台となった結果,左腕が機械の改造人間にされてしまう。なんとか一命を取り留めたレイカは,この物騒な場所からの脱出を目指す……というところで,本作の物語は幕を開ける。
捕らえられていた主人公のレイカ(左)と,レイカを救出に来た……と思ったら突然殺そうとしてきた謎の少女(右)
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レイカは改造人間となり,機械の左腕が備わった。これによりガレキを扱う能力が宿る
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ここで,主人公レイカの能力について紹介しよう。レイカは改造人間となったことで,周囲に点在するナノマシンを操れるようになり,このナノマシンを飛ばして壁を破壊できる。また,この世界には液状ナノマシンが付着したブロックが存在しており,こういったガレキや敵を倒した破片を
“リコール”という命令によって回収し,
“カタマリ”にして操ることが可能だ。
まとめると,ナノマシンで壁を壊し,オレンジ色の破片を[R]ボタンで集めてボールにして持ち運ぶ。これがレイカの基本能力だ。ゲームを進めると,ガレキをカタマリ以外の形にも変化できるようになるが,それについては後に解説する。
前方や上下にナノマシンを飛ばし,敵を攻撃したりブロックを破壊したりすることができる。いわゆる通常攻撃で,飛距離はかなり短い
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オレンジ色のガレキは,リコールというアクションで集めてボール状にして持ち運べる。このカタマリを飛ばして攻撃することが可能
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なお本作には敵ロボットとの戦闘もある。ロボットには
ガードパーツを持つものが存在し,一定以上の威力を持つ攻撃でなければ倒せない仕組みだ。ナノマシンを飛ばす能力は攻撃としても使えるが,威力は最低レベルで,無防備のロボットしか倒せない。
ではそれ以外のロボットはどうやって倒すかというと,ガレキで作ったカタマリを投げて攻撃するわけだ。カタマリは大きくなればなるほど威力が高くなるので,硬いガードパーツを持つ敵には,相応に大きなカタマリをぶつける必要がある。まずは周囲の壁や敵を破壊して材料となるガレキを作り出すのだ。
大半の敵には赤く光るガードパーツが存在している。カタマリを大きくしていくと光が水色に変わる。これがガードパーツを破壊できるかどうかの目安だ。なおパーツと言っているが本体と別というわけではなく,ロボット自体の耐久度と考えていい
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ガードパーツが水色になった敵は,カタマリをぶつけて倒すことができる。飛ばせる距離はそこまで長くはない
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ちなみに本作のステージは小さなエリアに分かれており,ドアを通じてほかのエリアへと移動する。このときガレキやカタマリは持ち越せないため,基本的にギミックの周辺にあるガレキしか利用できない。
しかし,耐久力が高い敵がいるのにガレキが見当たらない……という状況も多く,まずは武器の材料となるガレキ探しから始まることも多い。バトルながら,敵を倒すにはパズル要素を解く必要もある設計になっているワケだ。
マップを確認することも可能。ドアやワープなど重要な施設はアイコンで表示される
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ブロックの挙動を物理的に考えてパズルを攻略!
本作は,舞台となるエリアを探索して物語を進めつつキャラクターを強化し,特殊能力によって新たな道を切り開いていく。いわゆる“メトロイドヴァニア”と呼ばれる探索型アクションに近い形となっている。
マップには鍵のかけられたドア(ゲート)があり,指定された数のゲート・キーを起動すれば開く仕掛けになっている。各地を探索してゲート・キーを見つけ,行動範囲を増やしていくことが大きな目的のひとつだ。
これがロックされたゲート。同一ステージ内で,上にある丸の数だけゲート・キーを起動すれば,先に進めるようになる
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本作で特徴的なのは,各エリアに
物理的な挙動をするパズルが多数用意されていることだ。これをレイカの特殊能力を用いて解き,新たなルートを見つけ出していく。
レイカの特殊能力は,前述のカタマリ以外に,ガレキを四角いブロック状にする
“ロック”,剣状にしてスパッとブロックを斬る
“ブレード”,投げ槍のように投げて重しや足場にできる
“ジャベリン”などがある。いずれも最初から使用できるわけではなく,ゲーム進行に応じて使えるようになる。なおブレードやジャベリンは見た目とは反して攻撃力はあまり高くなく,バトルよりも謎解きで使用するのがメインだ。
カタマリを四角いブロックにするロック。カタマリが大きいほどロックも大きくなり,重しや足場として利用できる
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ブレード。剣攻撃で,ブロックやワイヤーをスパッと切断できる
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ジャベリン。ガレキを投げ槍にして前方に飛ばし,壁に突き刺す。突き刺さった槍を足場にすることもできる
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ドリル。前方に向かって発射し,ブロックを壊しながら進む
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では,謎解きの例をいくつか見ていこう。まずはブロックが天秤のようになっている場面。ここでは“ロック”を重しにして足場の片方に置くと,傾いて坂道となり,上に移動できる。本作のブロックは,重さによって傾いたり落下したりする性質があり,これを利用してパズルを解いていく。
なんとかして上に移動したい局面。よく見ると,足場のブロックが天秤のようになっている
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片側にロックを乗せるとそれが重りとなり,足場が傾いた。これで上に移動できる
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続いてもう1問。縦に立っているブロックがあり,左右の上側に目的地がある場合だ。ここではブロックの下側をブレードで斬ればいい。ブロックの上側は外側に膨らむ形をしており,下を斬ると重さによって外側に傾いていくのだ。結果,ブロックはナナメになり,通路を作れた。
中央に怪しげに立つブロック。左右の手裏剣のように回転する刃は触れるとダメージを受け,ブロックも壊されてしまう
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ブレードでブロックを斬ると,いい感じに左右に倒れて道ができた。オマケに敵もブロックで潰されて一石二鳥
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ブロック以外にもさまざまなギミックが登場する。カタマリに塗るとカタマリがゴムボールみたく飛び跳ねるようになる液体,弾を発射する砲台,こちらのリコールに反応して弾を撃つ砲台,特定のブロックに当てると何かが作動するレーザーなど,種類は多い。
本作ではブロックが謎解きのポイントになることは分かってもらえたと思うが,ブロックは壊れる性質があり,間違って壊してしまって仕掛けが解けない……なんてこともある。そんなときは,ギミックの近くにある紫色の
“特異点”を調べるといい。時間を少し巻戻して,ギミックを初期状態に戻すことができる。要はリセット機能だ。
謎解きの数々。ネタバレになるので解法は触れないが,さまざまなギミックや能力を活用して突破するのが本作の大きな魅力
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これらのパズルは本作のメインと呼ぶにふさわしいほどボリュームがあり,また楽しい。あれこれ考えながら正解を見つけ出す,思考的なおもしろさに加え,それを実行するアクション要素もある。たとえば落下する足場に乗って向こう岸へ大ジャンプするといった,答えが分かっても実行するのは難しいギミックも多数登場するのだ。そのためトータルとしての難度は高く,クリアできたときの達成感もそれに比例して大きい。
ただ,パズルは序盤から結構難しい。そこで役立つのが,お助けキャラ
“ドゥルマ”の助言だ。ドゥルマはコンシューマ版から登場した新キャラクターで,ギミックの近くにある看板を調べると,解法のヒントを教えてくれる。ヒントというか答えそのものを教えてくれることも多いが,謎解きに詰まってどうしても先へ進めない場合は活用を考えたい存在だ。
仲間となるロボット“ドゥルマ”。レイカのあとをフワフワ浮きながら付いてくる
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パズルによっては,近くにある看板を調べるとドゥルマがヒントを教えてくれる。ほぼ答えを教えてくれることも多々あり
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ナノ・クリスタルを集めて能力を強化せよ!
レイカの能力は,ストーリーの進行によって覚えていく新たな特殊能力だけでなく,
“ナノ・クリスタル”を利用してスキルを習得することでも強化されていく。
ブロックには水色の点“ナノ・クリスタル”が付いているものがあり,これを一定以上集めるとポイントを獲得できる。このポイントを割り振って,さまざまなスキルを覚えていくのだ。
水色に光るブロックを壊すと,ナノ・クリスタルを入手できる。たくさん集めたい
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スキルはツリーに沿って習得していく。わかりやすいのは
“バイタル・チップ”で,4つ取れば体力を1メモリ増やせる。ほかにも,ジャベリンを同時に出せる数を増やせたり,体力が自動回復する速度を速くしたりできるなど,その種類は豊富だ。
好みの順で習得しても問題ないが,筆者はナノ・クリスタルの獲得量が増えるスキルを優先的に取るのがオススメだ。RPGでも経験値が増えるスキルとかを,いち早くゲットしたいと思う性分なので。
スキル画面。集めたポイントを使用し,レイカの能力を強化していく
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ゲームクリアには関係ないが,収集要素として楽しめる
武器の設計図も存在する。エリア内の少々発見しにくい場所に設計図が隠されていることがあり,これを見つけると武器の見た目が増える。たとえばブレードがドット絵になったり,ドリルがソフトクリームになったりと,ちょっと遊びが入ったデザインに変更できるのだ。
新たな設計図を入手すると,“アルケー能力”画面で各々の外見を変えることが可能。性能はどれも同じだ
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ステージを守るボスはいずれも強敵揃い
各ステージにはボスも待ち構えている。このボス戦も本作の魅力のひとつだ。単に攻撃しただけではダメージが通らず,ボスが繰り出す攻撃からガレキを入手できる手段を見つけ出し,カタマリを大きく育ててダメージを与える。パズルとアクションが融合したバトルを楽しめるのだ。
ボス戦の前にはアイキャッチが入る。ロボットだけどちょっと人間っぽい,可愛らしいデザイン
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ただし難度は高く,筆者は特に最初のボスである
“アストラ・ヴィナター”に最も苦戦した。燃える剣による攻撃は苛烈の一言で,避けるのが精一杯だ。しかもリコールで集められるガレキはまったく出てこず,勝利の光明がまったく見えないまま連敗を喫した。
するとコウヅキから通信が入り,「ヴィナターの剣をはじき返すように攻撃すればいい」とのヒントがもらえた。ボス戦で数回負けると,このように攻略のヒントがもらえるようだ。
というわけで再戦するのだが,やることはわかっていても実現は難しい。敵の攻撃は速く,タイミングを合わせるのに一苦労だ。こうしてさらに苦戦すること10回ほど,やっと倒すことができた。
アストラ・ヴィナター戦。最初のボスにもかかわらず,なかなか激しい攻撃をしてくる強敵
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ボスで苦戦したポイントは,まず攻撃手段を見つけ出すのが難しいことだ。とくにヒントも何ももらえない初回ではアレコレ攻撃を試しつつ絶望しながら倒されるという感じだった。
さらに攻撃手段が判明しても,求められるアクションの難度が高い。加えて,体力回復アイテムは存在せず,ダメージを受けるとスキルによる自然回復しか見込めないため,結局回復が追いつかずにやられてしまうことが多かった。
ただ,2体目以降のボスは「ボスの攻撃をなんかしてガレキを作ればいいハズ」と解法の糸口が見つかったことで,ヴィナターほどは苦戦せずに倒せた。スキルで体力などが強化されていたことも大きいかもしれない。何にせよ,ボス戦はかなり苦戦すると思うので,心してかかるといいだろう。
謎解きが楽しいけれど,先も気になる!
さて,本作の魅力を一通り紹介してきたが,いかがだっただろうか。個人的に気に入ったのは,設定……というか
敵のボスキャラクターたちだ。本作ではロボット軍団が敵として登場するが,ボスキャラクターたちは見た目が人間に近く,また普通に会話も行える。
また,ゲーム中に“おいしい”という感情を味わいたくて食べ物を食べてみたい,なんて人間らしい描写もあって,敵ながら徐々に親しみを感じてしまった。デザインも可愛らしいので,なんとかロボットも助け出せるようなストーリー展開にならないかな……なんて期待してしまい,先を見たくなるのだ。
憎むべき敵のボスだが,こんなラクガキをしている様子も……
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一方で不満点は,キャラクターの挙動にちょっと癖があることだ。攻撃発生が出現するタイミングが一瞬遅く感じたり,着地寸前にボタンを押しても,タイミングがシビアでジャンプしてくれなかったりと,思い通りに動かせないことがあった。これに難度の高さも加わり,リトライが多くなって,そこまで長くないロード時間にも気になりだして,ストレスが溜まる局面があった。
しかし,総合してみると,物理挙動や個性的なアクションを活用する謎解きはおもしろく,ボリュームもお値段以上だ。バトルもガードパーツの存在により,頭を悩ませながら倒す手段を見つける,という作りになっていて,筆者のように謎解きが好きな人には特におすすめの作品と言える。
主人公をどんどん強化して,やっと強敵に勝つ……みたいなゲームではないので,成長を伴うバトルに期待している人はちょっと肩すかしを食らうかもしれない。パズルアクションが好きな人は,ぜひ挑戦してみてはいかがだろうか。