プレイレポート
「三國志14」発売直前バージョンのプレイレポート。広大なマップに自分の色を広げていく楽しさは,どこか懐かしくも新しい
が,それだけに「もっと詳しく知りたい」という欲求も強いのではないだろうか。
今回4Gamerでは,発売に先駆けて「最終ビルドに近いバージョン」をプレイしたので,そのレポートをお届けしたい。
分かれば簡単
「三國志14」において,プレイヤーは三国時代における群雄(勢力の指導者)の1人となり,中華の統一を目指す。これまでの「三國志」シリーズには個々の武将となってプレイするバージョンも存在したが,「三國志14」は勢力の指導者となるスタイルだ。
一口に三国時代といっても約100年あるので,活躍した勢力は時期によって異なっている。このためプレイヤーによっては「三国時代終盤に活躍した武将をもっとうまく活躍させてみたい」と思うこともあるだろう。
これについては歴史上のさまざまな状況(黄巾党が荒らし回っている頃,官渡の戦い前夜,三国鼎立状態などなど)に応じたシナリオが用意されており,自分の好みのスタート時期からゲームを開始できる。
さて,「三國志14」は分かってくるとシンプルな構成だが,分かるまではいろいろとやることが多く,またそれがパラメータと関係するため,ゲームの立ち上がりで少し苦労することがある。
以下,本作をどのように理解すると序盤の立ち上がりがスムーズに行えるかという視点から,ゲームシステムを簡単に解説していきたい。
■経済:すべての源流
シブサワ・コウ氏が初代「信長の野望」をリリースしたそのときから,コーエーの歴史ストラテジーゲームの根底は経済にあった。
高い生産力を有する国家こそが,強力な軍隊を保持できる国であり,よって最終的に天下を統一し得る国でもある――これは「信長の野望」「三國志」双方のシリーズを通じた大原則であると言える。
このため「三國志14」もまた,経済から見ていくとゲームの全貌が分かりやすい。
「三國志14」でプレイヤーが管理すべき経済リソースは,「金」「兵糧」「兵士」の3種類と考えられる。このうち「兵士」を雇用し続けるためには「金」と「兵糧」が必要になるが,「金」と「兵糧」はほかに依存せずに備蓄できる。
「兵士」が経済リソースと言われると,ピンと来ないかもしれない。だが「三國志14」では,募兵はターンごとに自動で継続的に行われるシステムだ。つまり,あけすけに言ってしまえば「兵隊が生えてくるのに時間がかかる」のである。
このためプレイヤーは「金」と「兵糧」の生産力に留意するだけではなく,「兵士」の生産速度にも気を遣わねばならない。兵士数の差を埋める戦略や戦術,あるいは武将個人の武勇といったものはあり得るが,結局のところ兵士の数は国家の体力だ。
兵士を素早く育成し,かつそうやって集まった兵士をきちんと運用していけるだけの「金」と「兵糧」を生産するシステムを構築することが,本作においてプレイヤーが真っ先に目指すべき目標となる。
では,経済を強化するためには,具体的にどうすれば良いのだろうか。そのためにはまず,本作のマップ構造について簡単に理解しておく必要がある。
まず,本作のマップはへクス(六角形)で隙間なく埋め尽くされており,そのへクスが一定数集まって,地域を形成している。この地域の中心となるのが「府」で,マップ上では盾のアイコンで示されている。地域から得られた収益は,まずはいったんその地域の「府」に集められるというわけだ。
そして複数の「府」を統括する立場にあるのが「都市」だ。「府」に集まった資源は,その「府」が属する「都市」に集まり,そこで滞留する。
さて,実際に経済を強化するためには,いくつかの方法がある。
・「府」や「都市」が支配する「地域」の占領地を増やしていく:軍隊を使って「地域」を構成するへクスを占領していくと,その地域の「府」に集まってくる資源が増える。「マップの色塗り」(=自分の勢力の色に変えていく)をすべき大きな理由と言える。
・自分が支配する「府」や「都市」を増やす:人様のものであれ,あるいは誰も支配していないものであれ,自分のものにしてしまえば経済規模は拡大する。
・「都市」に募兵と訓練の担当官を立てる:これをしないと兵士数が伸びない。
・「地域」の開発を行う:「地域」には商業・農業・兵舎の,3つの開発項目がある。「府」に担当者を着任させ,そのいずれかを開発させていくことによって,それぞれ「金」「兵糧」「兵士」の増加量が向上する。
以上を総合すると,ゲームが始まったら
(1)自分が支配している「都市」で募兵と訓練の担当を立てる
(2)「府」に対して担当を立て,開発を指示する
(3)同時に軍隊を出して中立の「府」の占領に向かわせる(ないし既に確保している「府」周辺の占領地域を広げる)
というのが鉄板行動だ。
ちなみに担当者の任命には「命令書」リソースが必要になるが,「命令書」リソースはターンごとに全回復するので出し惜しみする必要はない。
府に対して担当を置き(この場合は程銀),「兵舎」の開発を指示したところ |
府の占領を狙って北から侵入してきた馬騰を撃退。こういう小競り合いはよく起きる |
なお本作を初めてプレイすると,上記のような経済政策を採用してもなお「すごい勢いで金と兵糧が減り,やがて兵士の脱走が始まって行き詰まった」ということが起こり得る。
こうなってしまう理由は簡単で,「マップの色塗り」をするために軍隊をたくさん動かしすぎているからだ。色塗りをするために行軍している軍隊は兵糧をどんどん消費していくので,大軍を出して色塗りをしていると序盤の貧弱な経済基盤は一瞬で崩壊してしまう。
本作はあくまでターン進行のゲームだ。一方で1ターンは10日となっており,武将に下した命令はその10日間を使って順次リアルタイムに実行される。つまり「長安へ行け(到着まで25日)」という命令を下した場合,命令された武将は2ターン半を使ってリアルタイムで長安へとマップ上を移動していくわけだ(その武将に対する命令を変更するには,ターンが変わるタイミングを待たねばならない)。
しかるに本作では,金や兵糧の収入があるのは月頭で,月の中旬・下旬のターンには収入がない。このためターンごとの収支報告は「大きく黒字・赤字・赤字」というループを繰り返すことになりがちだ。結果,これだけを見ていると我が国が赤字経営なのか,黒字経営なのかが,すぐには判断できないことがある。
この問題については,画面右上にある「情報」アイコンをクリックし,「自勢力」を選択すると,収支が表示されるので安心だ。
また都市ごとの収支を見たい場合は同じく「情報」から「都市」,「収支」を選べば都市ごとに各月の収支がどうなっているのかを把握できる。序盤で兵糧が大赤字を吐いている場合,ほぼ間違いなくマップの色塗りに回した軍隊の規模が大きすぎる状態にあるはずなので,適宜調整してみてほしい(もっとも「最序盤こそ赤字を吐いてでも支配地域を広げたい」という事情もあるので,ケースバイケースではある)。
右上の「情報」から…… |
メニューを開いて…… |
■軍事:足を使って戦え!
さて,経済が安定してきた段階ではじめて,軍事の話ができるようになる(それくらい本作の序盤は金と兵糧がカツカツの設定なのだ)。
軍事に関しても本作は語るべきことが多いが,最も重要なのは「戦うのが得意な武将+大兵力は正義」ということだ。もちろんこれが絶対の正解ではないにしても,優秀な武将が率いる大軍勢の猛攻は実に「恐ろしい」の一言に尽きる。
膨大な金と兵糧と予備兵士のバックアップを持った,優れた武将たちが率いる大軍勢で,敵をひき潰す。工夫も何もあったものではないが,工夫しなくては勝てない戦争などするべきではない。
とはいえ,敵より優れた武将が,常に敵より多くの軍勢を率いて戦えるわけではない。
また総合的に見れば敵を圧倒している状態であっても,局所的に「敵の武将の質にも,敵軍の数にも勝てない」という状況は起こり得るし,起こし得る。ここがゲームの醍醐味と言えるだろう。
本作における軍事のもうひとつの基本は,補給(兵站)である。
本作においては,あらゆる軍隊はいずれかの都市を補給源として出発する(その軍隊が出陣した都市が,補給の発起点となる)。補給源から軍隊までのへクスが自軍占領へクスで連続しているなら,補給源から軍隊までの連絡線が通っていることになり,その軍隊は都市からの補給を受けられる。
だがもし,ある軍隊から,その軍隊の補給源まで,どうやっても自軍が占領しているへクスだけを使って連絡線を引けない場合(補給源から軍隊までのヘクスが切断された場合),その軍隊は都市からの補給を得られなくなる。こうなると補給切れ状態となり,指揮が著しく損なわれるのだ。
このため本作では,極めて高い能力を持つ武将がたった一人で数万人を指揮して敵陣に突入するという作戦は,自殺行為だ。
なるほど,その軍隊の衝撃力は素晴らしい。だが防御側は小規模かつ高機動な軍をいくつも編成し,侵入してきた敵軍の進入路(1部隊だけで敵陣深く攻めている場合,どうしても1マスの自軍占領へクスだけが連続する細い「道」のような連絡線になる)を切ってしまえば,じきに補給切れで敵軍は勝手に自壊する。
などと,言葉にすると簡単なようで,実際に切断を狙うのはなかなかに難しい。そんな中でもピンポイントで狙えるのが,敵軍とぶつかった後である。
本作において,敵味方の間で一度戦闘が始まってしまうと,そこからの離脱は困難だ。一時的に相対した敵の移動を封じる系の技を持つ武将もいるため,「ヤバそうだから逃げよう」がそう簡単には行えない。そのため,前線が固まったところで,機動力に富んだ部隊が敵軍の後背を突いて連絡線を切る,といった作戦は十分に可能性がある。
また,これを嫌った敵が後方からカウンターを繰り出してきた場合,「そうやってカウンターに出てくる軍勢こそが本命」としてこれに痛撃を加え,しかるに真の後方攪乱部隊が新たに出陣する……といった二段構えの作戦も可能だ。
こう言うと「三國志14」は戦闘をマイクロマネージメントするゲームなのかと思われるかもしれないが,これはあくまで一例である(もっとも本作のような広大なヘクスマップを持つゲームの場合,その上を超高機動ユニットを使って機動戦をするのが楽しいというのは否定しないが)。
本作ではマップ上に「施設」を建設でき,これらを用いて軍隊をマップ上に長期滞留させたり(「陣」により補給に有利な修正が得られる),周囲に矢で自動攻撃する弓櫓を建てたりすることで,「地形を使って守る」こともできる。公孫瓚を選んで“北方のマジノ線”を引いてみるのも一興だろう。
個人的には,本作の戦闘システムは「すごく悪いことができそう」という印象が強い。それほど深い研究ができたわけではないが,筆者がプレイした範囲だけでも自由度の高さ(と強い武将が本当に強いこと)は十分に感じられた。
ちなみに戦闘において,初心者が知っておくべきことはほかにも3つある。
1つめは,繰り返しになるが「その軍隊の補給源は,その軍隊が出陣した都市になる」ということだ。このため勢力全体としては潤沢に金と兵糧を持っていても,ピンポイントでその都市にだけ在庫がなくて,出陣した軍勢が路頭に迷うということがあり得る。
この場合,ほかの都市から金や兵糧の輸送が可能(都市を選択し「移動」から「輸送」)なので,さっさと前線の都市に資材を運び込もう。
2つめは,「都市」と「府」の違いだ。「府」は防御力を持たず,移動して踏み潰す形で占領していける。このため機動力のある部隊で敵前線の「府」に嫌がらせすることもできるし,逆に言えば「府」では防御拠点にはならない。
一方で都市は城壁を持ち,守りに強い。都市を直接殴って攻略したかったら,「衝車」などの攻城兵器は必須になるだろう。だが攻城兵器は通常戦闘にめっぽう弱いので,護衛は絶対に必要になる。敵も執拗に攻城兵器を狙ってくるので,かなりうまく守らないと簡単に兵器を潰され,攻城戦が頓挫してしまう。このあたりは慣れが必要だろう。
3つめは,たとえ武将のスペックにある程度差があったとしても,敵の都市を攻め落とすレベルでの優位を取ろうと思ったら,「敵味方の兵力がだいたい同じくらい」だと厳しい戦いを強いられるということだ。前述のように攻城兵器は弱い敵によってでも簡単に破壊されてしまうので,敵の数を前に攻めあぐねることは珍しくない。
かくして,さらにもう1つの要素を考えずに本作を先に進めることは難しい。それはつまり,外交だ。
■外交:俺より弱いヤツに会いに行く
本作における外交の基本は「親善」コマンドで友好度を上げて「同盟」を締結,共に手を携えて同じ敵を殴ったり,あるいは自分の攻撃面を限定したりするという,オーソドックスなものだ。
ただ序盤の話をすれば,はっきり言って本作でアクティブに「外交」を行うことは視野に入れる必要がない……というか不可能と言っていい。外交活動にかかる金が高額だからだ。
なので最序盤において見定めるべき外交とは,「自分から外交関係をデザインすること」ではない。「いま世界がどうなっているのか」を逐一確認し,もし自分の隣国がどこかほかの国と戦争をしているようであれば,「すかさず殴りかかるリスト」にその名を加えておくことだ。
これは非常に重要で,例えば隣国が総兵力5万で,同じく総兵力5万の某国と戦争しているのであれば,荒っぽく計算すれば「いま隣国に兵はいない」のだ。
もちろん現実的な話をすれば敵の予備兵力が動員されることになるのだが,それでもそれを指揮する武将は,一線級ではないことが多い。本当に強い武将は,もっと危険な前線で戦っているからだ。
このようにして火事場泥棒をするチャンスを見逃さないというのは,シナリオにもよるが,本作の序盤(を脱したあたり)において優位を作れるか否かの境目になり得る。この段階ではまだ何度も大軍勢を繰り出せるだけの体力はないことが多いので,なるべく一撃で十分な戦果が得られるよう,うまく戦略目標を立てていきたい。
そうやって序盤で勝ち組に立ってしまえば,いよいよ1コマンド1000金を消費する「外交」の世界に突入できる。今度は自分から「隣国が複数の国と戦争をしている」状況を作るか,「自分が格下に殴り込んでいる間,留守を荒らされないことが確約される」状況を作るべく,外交関係を調整しよう。
その上で外交(あるいは戦争)の基本中の基本は「俺より弱いヤツに会いに行く」だ。格上と知略を尽くして戦うのは楽しいが,有利に立ち回るならあくまで冷静に,丹念に,自分より弱い相手を探したり,相手が自分より弱くなる局面を作ったりして,確実に勝っていこう。軍事的な一般論として言うと防御側は攻撃側の3倍から6倍くらいの効率を発揮できるので,自分の1/3くらいの弱さが最低限,1/6を切っているなら「他人に喰われる前に喰え」である。
もちろん,格上との戦いでゲーム的な楽しさを味わうというのも,個人の好みではあるのだが。
試行錯誤を楽しむ,懐かしいテイストのする最新作
本作にはまだまだ多数の要素があるが,これについてはスクリーンショットで簡単にお伝えするにとどめよう。
まだまだプレイ時間が足りないので確たることは言えないのだが,これまでのインタビューで何度か「『三國志14』には古い三國志に似たテイストがある」という言葉を聞いてきたように,確かに本作には「三國志III」あたりを想起させるテイストがある。
筆者はいろいろと試行錯誤して,最終的に馬騰で集中的にプレイすることにしたのだが,これは「それまで遊んでみた感触として『三國志II』や『三國志III』っぽさを感じたので,その頃に一番遊んでいた勢力を選んでみた」からだ。そして実際,「あの時代の馬騰ってこんな感じだったなあ」という懐かしさを感じながらプレイを楽しめた。
ただ,ゲームのボリュームとしては,かなり大きめであることは指摘しておくべきだろう。コマンドの種類や要素こそシンプルにまとまっているものの,1ターン=10日なので1年=36ターン。ただ単にターンを先に進めているだけでも,結構な時間がかかる。
また1ターンが短いため,軍隊を動かしていると「またそこで内政命令タイム! いま戦闘が盛り上がってるのに!」的な気持ちになることは少なくなかった。このあたり,勢力が大きくなって戦闘を巨視的に見るようになると解消するのだが,序盤の「クラシックな三國志っぽい楽しさ」を満喫している時間帯には気になる。
加えて,軍隊の移動先指定については,時折「そんなこと命令してねーし!(している)」といったUI面でのトラブルを感じることがあった。1へクスが小さいため,敵味方のユニットが入り組んでくると,誤クリックも起こりやすい。
総じて言えば「三國志14」は,新しくも,どこか懐かしい雰囲気を持った「三國志」だと評価できるだろう。自分の手で攻略法を見つけ,広げていくのがとても楽しい。広大なヘクスマップが持つ自由度には,デザイナーが想定していないような戦術を許容するだけの懐の深さがある。ぜひ,世界を驚かすような機動を,三国時代の中国で描いてみてほしい。
「三國志14」公式サイト
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