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[gamescom]Wargaming.netが1C Companyと共同開発する新作オンラインTPS「Caliber」について,開発責任者に話を聞いた
部分的な情報が入っていたPagan Onlineに比べて,Caliberは日本ではほとんど知られていなかった作品だ。激戦区になっているミリタリーテーマの対戦アクションなのだが,Caliberにはどんな特徴と魅力があるのか。Wargaming.netのR&D Operations DirectorであるAlexsandr Zezulin氏に話を聞いた。
「Caliber」公式サイト
4Gamer:
まず,Caliberがどんなゲームなのか教えてください。日本には,ほとんど情報が入ってこなかった作品ですので。
Aleksandr Zezulin氏(以下,Zezulin氏):
CaliberはWargamingがロシアの1C Companyと共同で制作している新規タイトルです。1Cについてはご存知ですか? 代表作として「IL-2 Sturmovik」のようなフライトシミュレーターがありますが……。
4Gamer:
大丈夫です,魚雷艇のシミュレータまで知っています。ファンですので。
Zezulin氏:
それはよかった(笑)。
座組としては,1C側からCreative Directorが来て開発を進めている感じですね。ゲームは,各国の特殊部隊隊員を操作して戦う,オンライン対戦をメインとしたTPSです。プレイヤー1人が1キャラクターを担当し,4人が1チームになってゲームに参加します。ビジネスモデルはFree-to-Playで,現状ではロシア国内および旧ソヴィエト圏でクローズドβテストを行っていますが,まもなくオープンβテストに移行する予定です。
ものすごく大雑把に言って,「World of Special Forces」だと思ってください。キャラクターのアンロック方法を含めて,いろいろなシステムが大きく異なっていますが,基本的な概念は通底しています。キャラクターには4つのクラスが存在しますので,例えば「ドイツの特殊部隊のサポート役が好きだ」といった感じで,自分のプレイスタイルに合ったキャラクターが見つけられると思います。
4Gamer:
なんだか,一気にイメージがつかめました。ところで4人対4人ほどの小規模なチーム戦で,さまざまなクラスがあって,特殊部隊の隊員を操作して戦うTPSとなると,それなりの競合作が見つかるような気がします。Caliberはここが違うという点を教えてください。
Zezulin氏:
4人対4人で3ラウンド行われるPvP以外に,PvEコンテンツが非常に充実しているというのが最大のポイントだと思います。もちろん,PvEでもチームワークは非常に重要です。いわゆるヒーローシューターに共通することですが,単独で突っ込むと簡単にやられてしまいます。お互いにカバーしつつ,自分の役割をうまく果たしていくことが重要になります。
4Gamer:
各国の特殊部隊があり,それぞれの部隊ごとにゲーム共通の4つのクラスがある,ということですが,クラスごとの違いや,また特殊部隊ごとの違いがあれば,教えてください。
Zezulin氏:
ここはちょっと複雑なところです。4つのクラスとしては,Assault,Support,Medic,Sniperが設定されています。これらのクラスは,あらゆる特殊部隊に存在します。
Assaultは機動力がある中距離戦闘員。SupportはLMGを使う火力支援要員ですが,前衛に立つタイプもいれば,ややうしろから火力支援を行うタイプもいます。Medicは文字どおりのチームサポート要員で,Sniperは遠距離攻撃に特化しています。
4Gamer:
最初は同じでも,特殊部隊ごとに異なる性能を持つように成長させられるんですね。
Zezulin氏:
ちょっと違いますね。各クラスは固有の特殊能力を1つ持っていますが,どんな特殊能力を持っているかが所属する特殊部隊によって異なるんです。
ですので,例えば同じSupportでも,クラウドコントロール能力を持つ後方支援に適したSupportもいれば,敵のヘイトが取れ,タンクとして運用すべきSupportもいるわけです。
特殊部隊によっては,専用の装備を持っていることもあります。例えばポーランドの特殊部隊GROMは全員がガスマスクを装着しており,毒ガスの影響を受けません。
4Gamer:
なるほど。キャラクターの育成要素はどういう感じでしょうか。
Zezulin氏:
それぞのれキャラクターは経験値を得ることによって,Perkを取得します。Perkは15段階ありますが,単純に強くなるわけではなく,よりフレキシブルな運用ができるようになると考えてください。
Caliberのゲーム内リソースには「お金」と「経験値」があります。お金を使うことでキャラクターの外見をカスタマイズできるほか,消耗品や,「とどめを刺す」といった特殊モーション,エモートなどが購入できます。お金は,課金によって増やすことが可能です。
一方,経験値はキャラクターのPerkをアンロックするために使いますが,こちらは課金によって増やせません。ですので,プレイヤーはゲームを遊んで,Perkをアンロックしなくてはなりません。
4Gamer:
考え方は,「World of Tanks」などと同じですね。ところで,画面を見た感じ,いわゆる汎用型の特殊部隊員も選択できるようなのですが……。
Zezulin氏:
はい。彼らはゲーム初期に無料で選択できる隊員達です。彼らはPerkが最大で5レベルまでしかありませんが,基本的な能力値は高めに設定されています。ですから,人によっては汎用型の隊員のほうが手になじむということもあるでしょう。
このように,「課金したからといって,ゲームで有利になるわけではない」というのは,Wargamingが掲げる「Free to Win」の思想に則ったものです。
4Gamer:
ひとつだけ,というか厳密には2つほどキャラクターに関するちょっとした不安があります。
1つめは,確かに世界中にさまざまな特殊部隊がありますが,歴代の戦車や軍艦が登場するWorld of Tanksや「World of Warships」に比べて,さすがに特殊部隊の種類は少ないのではないかという点です。すべての戦車や軍艦をアンロックした人がいる以上,Caliberではより早くすべての特殊部隊員をアンロックしてPerkを最大値にしたという人が出てしまうのではないでしょうか。
もう1つは,特殊部隊隊員の最新装備となると,そこまで何もかも調査できるわけではないだろう,という点です。Wargaming作品の特徴として徹底したリサーチがあるかと思いますが,この点についてはどのように克服しているのでしょうか。
Zezulin氏:
Caliberの特殊部隊は,例えば「2011年式装備」という形で,年号と一緒にデータ化しています。ですので特殊部隊のバリエーションを増やすにあたっても,装備をリサーチするにしても,対応は容易だと思います。ただし装備については,4つのクラスに合わせるため,部分的に実際とは異なることはあります。
4Gamer:
なるほど。「1941年式のSAS」にも期待したいところです。それからもう1つ,最初に「従来とは違う」という指摘がありましたが,キャラクターのアンロックはどういうシステムになっているのでしょうか。各国の特殊部隊をTierで分けるのは,明らかに問題があります。
Zezulin氏:
Caliberでは,World of TanksやWorld of WarshipsのようなTier制は採用していません。それぞれの特殊部隊の個別のクラスを選んで,直接アンロックする形式ですね。また定期的に「無料で遊べるクラス」を開放します。これはMOBAを遊んでいる人ならピンとくるシステムではないでしょうか。
4Gamer:
「今週のフリーチャンピオン」ですね。直感的で嬉しいシステムです。
Zezulin氏:
現状ではロシア国内でのβテストということもあり,ロシアや東欧,ドイツの特殊部隊の実装が先行していますが,もちろん将来的には世界中の特殊部隊を実装していきます。日本の特殊部隊もリストに入っていますので,ご期待ください。
4Gamer:
首を長くして待ちたいと思います。本日はありがとうございました。
実際に試遊させてもらったところ,Caliberの手触りは良く,これといった不満も感じずに遊ぶことができた。ユーザーインタフェースはきわめて一般的なもので,とくにこれといったチュートリアルがなくても,アクションゲームに慣れた人なら操作で困ることはないだろう。
きわめて短時間かつ育成されきったキャラクターでの試遊(しかもほかの3人は開発者)という特殊な条件だったので,ゲームの難度についてはなんとも言えないが,俊敏な判断やエイムより,ちゃんとカバーをとり,チーム全体でうまく十字砲火が組めるように移動して,出てくる敵を制圧していくといったことや,敵のキルゾーンをどうしても越えなければならない場合,チームが相互に支援しあうことで危険を最小限に抑えるといった戦略要素のほうが重要になっているようだった。
このあたり,「アクションよりも戦術性のほうが重要」とWargaming.netのCEOであるVictor Kislyi氏が語ったとおりだ(関連記事)。
また,PvEが充実しているということは,PvPはあまり得意ではないが,特殊部隊というテーマは好きという人にとって,かなり朗報ではないだろうか。
加えて,育成要素がそこまで重くないのもありがたい点だ。少なくともPerkが伸びていくことでHPが2倍3倍になるといった要素はないようで,「日頃からCaliberを遊び続けて,キャラクターのレベリングに励まねばならない」ということはなさそうだ――もちろん高難度ミッションなどのやりこみ要素もカバーされるとは思うが。
日本でのテストやリリースはかなり先になりそうだが,対戦アクションというジャンルが好きなら,注目しておくべき作品だろう。
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