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6コアCPU対決レビュー「Core i5-11600K」対「Ryzen 5 5600X」。ゲームに向いた6コアCPUはどっちだ?
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印刷2021/04/30 12:00

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6コアCPU対決レビュー「Core i5-11600K」対「Ryzen 5 5600X」。ゲームに向いた6コアCPUはどっちだ?

 ハイエンド市場向けCPUでは,CPUコア数が8基以上のものが一般的になっているが,ゲーム用途では8基以上のコアが必ずしも必要というわけではない。ゲームのフレームレートの大部分を左右するのはGPUである。CPUはGPU性能に見合う性能を持てば十分だ。経験的には,ミドルハイクラスまでのGPUであれば6コアのCPUでも十分に対応できるという印象を持っている。
 そもそも,8コア以上のCPUは相応に高価だ。予算が限られている場合でも,常に最優先すべきパーツというわけではない。予算に見合ったスペックのCPUを選ぶのが肝要だ。

 というわけで,本稿では最新の6コア12スレッド対応CPUとして,2021年3月に発売となったIntelの第11世代Coreプロセッサから「Core i5-11600K」(以下,i5-11600K)と,AMDのRyzen Desktop 5000(以下,Ryzen 5000)シリーズから「Ryzen 5 5600X」(以下,R5 5600X)を選び,ゲーム性能を中心に比較して,PCゲーマーが選ぶならどちらのCPUが適しているかを調べてみたい。

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i5-11600K
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R5 5600X


Core i9-11900Kのレビューと同じ条件でテスト


 3月末に発売になった第11世代Coreプロセッサに関しては,すでに4Gamerで何度か取り上げているので(関連記事),ここで改めて詳しく説明するまでもないだろう。ざっくりと特徴をまとめてしまうと,CPUコアに新開発の「Cypress Cove」を採用して,第10世代比でクロックあたりの性能が19%向上したとIntelがアピールしている現行世代のデスクトップ向けCPUである。
 そのほかにも,PCI Express(以下,PCIe) 4.0に対応したうえで,CPU直下のPCIeレーン数が4レーン増えて20レーンになるなど,ゲーマーにとって重要な機能強化が行われている。

「CPU-Z」でi5-11600Kのスペックを確認したところ
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 本稿で取り上げるi5-11600Kは,第11世代Coreプロセッサの6コア12スレッド対応モデルで,末尾「K」がクロック倍率のアンロックされた製品であることを示している。また,6コア12スレッドモデルの中では最上位に位置づけられているので,自動クロックアップ機能「Adaptive Boost Technology」(以下,ABT)にも対応している。

 ABTについては,Core i9-11900Kのレビューで説明しているが,ここでも簡単に紹介しておこう。従来からある自動クロックアップ機能のTurbo Boost Technologyは,負荷が生じているコア数と動作クロックの対応が決め打ちだったのに対して,ABTでは動作クロックを決め打ちするのではなく,CPUのコア温度や消費電力に応じて動作クロックが変化する自動クロックアップ機能だ。
 基本的には,Ryzenシリーズにおける「Precision Boost 2」とほぼ同じもので,コア温度や消費電力の条件が整えばi5-11600Kの場合なら全コアが4.9GHzで動作する可能性もあるわけだ。

 そんなi5-11600Kの市場における競合製品が,Ryzen 5000シリーズの6コア12スレッド対応モデルであるR5 5600Xだ。Ryzenシリーズは一時,品薄により入手しにくくなっていたが,4月に入って若干だが流通が回復してきた。中でもR5 5600Xは,ほかのRyzen 5000シリーズに比べると入手しやすい製品になっている。スペックだけでなく,入手性でもi5-11600Kのライバルと言えるだろう。

 Ryzen 5000シリーズで採用された「Zen 3」アーキテクチャの特徴は,こちらの解説記事に詳しくあるが,複数のCPUコアとL3キャッシュを統合した「CPU Complex」(以下,CCX)のCPU部分を拡大し,CCX 1基で前世代の2倍に当たる最大8基のCPUコアを集積できるようになったのが大きな特徴だ。
 前世代のZen 2アーキテクチャでは,CPUコア6基の「Ryzen 5 3600XT」が2基のCCXを必要としたのに対して,Ryzen 5 5600Xでは,1基のCCXで済むようになった。これにより,CCXをまたがってアクセスすることで生じていたCPUコア間やL3キャッシュのアクセスによる遅延を低減できるようになり,全体の性能向上に寄与しているわけだ。

Zen 2アーキテクチャは,CCX 1基でCPUコアを最大4基を集積していたので,6コアCPUでも2基のCCXが必要だった。それがZen 3アーキテクチャでは,CCX 1基で最大8基のCPUコアを実装できるようになった。そのメリットはRyzen 5 5600Xにも効いてくるはずだ
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 Zen 3アーキテクチャはほかにも,クロックあたりの命令実行数を最大19%向上させたなど,前世代のZen 2アーキテクチャと比べて,性能は大きく向上している。そんなZen 3世代の6コアモデルであるRyzen 5 5600Xの性能は,競合と比べてどんな位置付けにあるかは,ゲーマーにとって興味を惹かれる点だろう。

 さて今回は,この2製品に加えて,参考のために第10世代Coreプロセッサの6コア12スレッドモデル「Core i5-10600K」(以下,i5-10600K)を加えた3製品を比較していくことにする。3製品の主な仕様を表1にまとめておこう。

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 CPU以外のテストで使用した機材や設定は,Core i9-11900Kのレビューとまったく同じだ。メインメモリはDDR4-3200設定を使い,第11世代Coreプロセッサでは高い性能が得られるメモリコントローラとメモリクロックの動作比を「1:1」としてテストを行っている。また,i5-10600Kでは,ABT有効と無効の2パターンでテストを行った。テスト結果の説明では,ABT有効時を「i5-10600K(ABT)」と表記している。
 若干,注意が必要なのは,Core i9-11900Kのレビュー時とは,マザーボードのUEFIとチップセットドライバのバージョンが新しくなっている点だ。Core i9-11900Kのレビュー時は,レビューアー向けに配布されたものを使ったが,3月末の発売と同時にUEFIとチップセットドライバの最新版がリリースされたので,今回はそちらでテストを実施している。
 細かいテスト環境は表2のとおりだ。

※画像をクリックすると,詳細版を表示します
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 実行するテストは,4Gamerベンチマークレギュレーション23.2に準拠する。ただし,今回は6コア12スレッド対応のCPUが題材なので,OBS Studioを使ったゲーム録画のテストは負荷が高すぎると判断して省略した。実ゲームのテストにおける使用解像度は,3840×2160ドット,2560×1440ドット,1920×1080ドットの3パターンだ。


Time Spyではi5-11600Kが好成績,R5 5600XはFire Strikeで強い


 というわけで,さっそくテスト結果を見ていこう。まずはグラフィックスベンチマーク「3DMark」(version 2.17.7137)だ。
 3DMarkのDirectX 11テストとなる「Fire Strike」の総合スコアが,グラフ1である。

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 4K解像度相当のFire Strike Ultraは,おおむね横並びと言っていい程度だろう。Fire Strike ExtremeはR5 5600Xがトップで,i5-11600K(ABT)とi5-11600Kが横並びで続き,i5-10600Kがやや低いという順になった。描画負荷が軽いFire StrikeもExtremeと同傾向だが,i5-11600K(ABT)がi5-11600Kよりもわずかに低いのが気になるところだろうか。

 グラフ2は,Fire StrikeのGPUテストである「Graphics test」のスコアだ。

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 傾向は総合スコアと一致しているが,Fire Strike ExtremeやFire Strikeではi5-10600Kがやや低いのが目立つ。3製品の中で唯一,PCIe 4.0に対応していないので,それが影響している可能性はある。

 グラフ3は,Fire StrikeにおけるCPUテスト「Physics test」のスコアだ。

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 3つのテストで有意な差をつけてトップになったのは,R5 5600Xだった。次点はi5-11600Kだが,3つのスコアを平均するとi5-11600K(ABT)がわずかにi5-11600Kに及ばないのが気になるところだ。Physics testに関してはABTの効果がなかったか,あるいはわずかに逆効果だったというわけだ。
 ABTは,温度や電力の条件が整わない限り高クロックでの動作を行わないので,Physics testでは温度や電力が上がりすぎて,逆に動作クロックを抑えたのかもしれない。
 i5-11600Kとi5-10600Kの比は1.16倍,つまりスコアが16%向上したわけで,まずまずの性能向上だ。動作クロックの違いもあるので,Intelが主張する「19%の性能向上」には届かないが,前世代からは順当に向上していると言える。それでもR5 5600Xには及ばないわけだが。

 Fire StrikeでGPUとCPU両方に負荷をかけたときの性能を見る「Combined test」の結果がグラフ4となる。

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 Fire Strike Ultraのスコアは,おおむね横並びと言っていい程度だろう。Fire Strike ExtremeとFire Strikeは傾向が同じで,トップはR5 5600Xでi5-11600K(ABT)が続いている。わずかだがABTの効果が見えているのがPhysics testとの違いで,おそらくCPU負荷がPhysics testほど上がらないために,ABTにより高クロックで動作する頻度が高かったのではないだろうか。

 続いて3DMarkのDirectX 12テストである「Time Spy」を見ていこう。グラフ5が,Time Spyの総合スコアだ。

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 Time Spy Extreme,Time Spyともに傾向は同じで,i5-11600Kとi5-11600K(ABT)がおおむね横並び,ついでR5 5600X,i5-10600Kの順となっている。Fire Strikeでは競合を上回るスコアを記録してきたR5 5600Xだが,Time Spyではi5-11600Kに有意な差をつけられているのが特徴だ。

 Time SpyのGPUテストである「Graphics test」のスコアがグラフ6だ。

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 2つのテストともにほとんど横並びだが,強いて言うならR5 5600Xがほかよりやや高いスコアを記録している。理由は不明だが,GPUに対してコマンドを送るスループットに差があったのかもしれない。

 3DMarkの最後が,Time Spyにおける「CPU test」のスコアをまとめたグラフ7だ。

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 Time Spy Extreme,Time Spyともに総合スコアを極端にしたような形でi5-11600K(ABT)とi5-11600Kがほぼ横並びでトップ,ついでR5 5600Xの順となった。i5-11600KとR5 5600Xには,有意な差がついている。
 Ryzen系でTime SpyのCPU testスコアが振るわないというのは以前から見られていたもので,テストで使用している命令セットか,あるいはアルゴリズム自体がRyzenにあまり適していないのだろうと考えられる。
 一方,i5-11600Kのスコアを前世代のi5-10600Kを比べるとTime Spy Extremeで18%,Time Spyで15%の向上となっており,Intelが主張する19%には届かないものの,まずまずの結果を残したのが目立つところだ。

 3DMarkの結果をまとめると,Fire Strikeでは,R5 5600Xがi5-11600Kを上回るスコアを残すが,Time Spyではi5-11600KがR5 5600Xを上回るという,対象的な結果が得られているとまとめられるだろう。ただ,「だからi5-11600KがDirectX 12採用タイトルで有利」とは言い切れないのが難しいところだ。なぜなら,i5-11600KがTime Spyにおいて好成績を残したのはCPU testの結果によるもので,3DMarkのCPU testがDirectX 12採用タイトルにおける典型的な性能を示すとは,これまでの経験から言えないためである。
 一方,ABTについては,3DMarkではあまり効果が見られなかったと結論していいだろう。


実ゲームではi5-11600KとR5 5600Xの優劣はつけがたい


 3DMarkの結果を踏まえた上で,実ゲームのスコアを見ていくことにしたい。
 グラフ8〜10は,グラフィックス品質「最高」設定で測定した「Far Cry New Dawn」の結果である。

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 3840×2160ドットの平均フレームレートは,僅差だがi5-11600K(ABT)がトップとなりi5-11600K,R5 5600Xの順だ。一方,2560×1440ドットでは,i5-11600K(ABT)とi5-11600Kが並び,R5 5600Xがそれに続いた。2560×1440ドットでは,i5-11600KとR5 5600Xの平均フレームレートに10fps以上の差がついているので,十分に有意な違いと言えよう。
 1920×1080ドットになると,i5-10600KがR5 5600Xを逆転してIntel勢有利の形がはっきりする。Far Cry New Dawnでは,R5 5600Xよりi5-11600Kのほうが高フレームレートが得られると断言してよさそうだ。

 続いては,バイオハザード RE:3の高負荷設定におけるフレームレートをグラフ11〜13にまとめた。

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 バイオハザード RE:3もFar Cry New Dawnと似たような傾向で,3840×2160ドットの平均フレームレートは僅差ながらもi5-11600K(ABT),i5-11600K,R5 5600Xの順となった。1920×1080ドットは3840×2160ドットと同じ順位であるが,2560×1440ドットでは,i5-10600KがR5 5600Xを逆転している。
 CPU性能差が出やすい1920×1080ドットにおいて,i5-11600KとR5 5600Xの平均フレームレートは10fps以上開いており,十分に有意な差があるといえる。また,バイオハザード RE:3では,ABTの効果がすべての解像度でわずかだが現れているのも特徴的だ。

 グラフ14〜16は,Call of Duty: Warzone(以下,CoD Warzone)の高負荷設定におけるフレームレートをまとめたものだ。

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 3840×2160ドットの平均フレームレートはおおむね横並びである。2560×1440ドットも差は小さいが,R5 5600Xがトップで,i5-11600K(ABT)が続く。R5 5600Xとi5-11600K(ABT)の平均フレームレートは4fps程度の差があるので,小さいが有意な差といっていいだろう。
 CPUの性能差が出やすい1920×1080ドットも2560×1440ドットと同じ順位で,より差が大きくなっている。

 以上の結果から,CoD Warzoneでは,R5 5600Xがi5-11600Kよりも有意に高いフレームレートが得られると結論してよさそうだ。ただ,その差はあまり大きくないと言っていいかと思う。

 グラフ17〜19は,Fortniteのグラフィックス設定「最高」の結果だ。

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 Fortniteの平均フレームレートはどの解像度でも順位が同じで,R5 5600Xがトップとなり,i5-11600K(ABT),i5-11600Kが続いている。CPU性能差が出やすい1920×1080ドットでは,R5 5600Xがi5-11600Kを圧倒しているので,Fortniteに関しては,R5 5600Xのほうが平均フレームレートが高いと結論してしまっていいだろう。
 また,Fortniteはほかのタイトルに比べて,ABTの効果がよりはっきり出ているのも特徴的と言えそうだ。

 Borderlands 3の「ウルトラ」設定をまとめたものがグラフ20〜22となる。

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 平均フレームレートを見ると,3840×2160ドットと2560×1440ドットは2fps以内で揃っているので,ほとんど横並びと見ていいだろう。
 差が出るのは1920×1080ドットで,平均フレームレートのトップはi5-11600K,ついでi5-11600K(ABT),R5 5600Xの順となっている。i5-11600Kの2条件とR5 5600Xでは,最小フレームレートも大きく異なるのが注目すべき点で,平均フレームレートの差以上に,Borderlands 3ではR5 5600Xよりもi5-11600Kのほうが快適にプレイできると見ることができるだろう。
 ただ,Borderlands 3ではABTがわずかながら逆効果になってしまっている。CPU負荷が比較的,高いために,温度や電力などの条件がABT有効時の動作クロックを抑えてしまっているのかもしれない。

 続いて「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(以下,FFXIV 漆黒のヴィランズ ベンチマーク)を見ていこう。グラフ23が総合スコアをまとめたものだ。

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 3840×2160ドットは,i5-10600Kがやや低いことを除けばほぼ横並び。2560×1440ドットと1920×1080ドットは傾向が同じで,トップがR5 5600X,ついでi5-11600K(ABT)とi5-11600Kが横並びで続く形だ。
 1920×1080ドットにおけるR5 5600Xとi5-11600Kのスコア差は5%程度なので大きくはないが有意な差といっていいだろう。FFXIV 漆黒のヴィランズ ベンチマークに関しては,R5 5600Xに軍配があがると結論してよさそうだ。

 グラフ24〜26には,FFXIV漆黒のヴィランズ ベンチマークにおける平均および最小フレームレートをまとめている。

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 気になるのは,2560×1440ドットや1920×1080ドットではR5 5600Xの最小フレームレートが,i5-11600Kに比べて有意に低い点だろう。つまりR5 5600Xは,フレームレートのブレが大きいということになる。R5 5600Xは平均フレームレートこそ高いものの,実ゲームにおけるR5 5600Xの快適さはi5-11600Kとさほど変わらないかもしれない。

 実ゲームの最後はPROJECT CARS 2だ。高負荷設定における平均および最小フレームレートをグラフ27〜29にまとめた。

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 3840×2160ドットの平均フレームレートはほぼ横並び。2560×1440ドットと1920×1080ドットでは,i5-11600K(ABT),i5-11600K,R5 5600Xが横並びで,i5-10600Kが有意に低い結果とまとめられよう。
 最小フレームレートにも大きな差はないので,PROJECT CARS 2では,i5-11600KとR5 5600Xのどちらでも,ほぼ同じ快適さでプレイできると見ていいだろう。また,ABTの効果はほとんどないようだ。

 実ゲームでのテストを見てきたが,i5-11600KはR5 5600Xに対して3勝3敗1分けという結果になった。優劣つけがたいというところだろうか。
 8コア以上のCPUに比べると,6コアのi5-11600KやR5 5600Xは優劣がはっきり出るようで,たとえばIntelが有利になりやすいFar Cry New Dawnでは,R5 5600Xよりも有意に高い差をつけ,逆もまた同じという傾向が見て取れる。コア数が少ないだけに,最適化の違いが効いてくるのだろう。

 また,3DMarkではABTの効果がはっきりしなかったが,実ゲームではABTがそれなりに効果を表すタイトルが散見できた。ただ,Borderlands 3のように逆効果になった例もあるので,ABTを有効にすれば必ずゲームのフレームレートが上がるというわけではないことにも注意が必要だろう。


非ゲーム用途も甲乙つけがたい結果に


 続いては,ベンチマークレギュレーション23.2のCPU性能検証に準拠した非ゲーム用途における性能も見ていくことにしよう。
 グラフ30は,「PCMark 10」(version 2.1.2508)におけるGaming以外のスコアをまとめたものだ。PCMark 10は,本稿執筆時点でも,GPUアクセラレーションを無効化するとベンチマークが完走しない問題を抱えているため,GPUアクセラレーションを無効化せずに「PCMark 10 Extended」テストを実行している。

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 総合スコアは,i5-10600Kがやや低いが,それ以外はおおむね横並びと言っていいだろう。
 Webブラウジングの快適さやアプリケーションの起動の速さなど,Windowsの快適さを見るEssentialsでは,i5-11600K(ABT),i5-11600K,R5 5600Xの順となった。i5-11600Kは,R5 5600Xにわずかだが有意なスコア差をつけているので,Windowsの快適さはi5-11600Kのほうが上のようだ。
 オフィスアプリなどの快適さを見るProductivityは,i5-11600K,i5-11600K(ABT),R5 5600Xの順で,ここでもi5-11600KとR5 5600Xの間には優位な差がある。

 R5 5600Xがトップになったのは,Digital Content Creationのみ。Digital Content Creationでは画像処理や3DのレンダリングなどCPUに高い負荷をかけるテストが含まれている。
 以上の傾向を見るに,一般的なWindowsアプリの快適さであれば,R5 5600Xよりもi5-11600Kのほうが快適だろうと推測できる。ただ,ABTの効果はあまりはっきりしないようだ。

 続くグラフ31は「ffmpeg」(Nightly Build Version 20181007-0a41a8b)を用いた動画のトランスコード時間を比較したものだ。

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 H.264,H.265ともに,R5 5600X,i5-11600K(ABT),i5-11600Kの順となった。R5 5600Xとi5-11600K(ABT)の差は,H.264で約30秒,H.265で約40秒もある。PCMark 10におけるDigital Content Creationの結果と合わせて考えると,CPUを酷使するメディア制作用途では,R5 5600Xが有利になるようだ。
 i5-11600Kでは,ABTの効果がはっきり見えるのも興味深い。トランスコードはCPU負荷が高いため,逆にABTの効果が出にくいと予想していたが,そうでもないようだ。

 グラフ32は,DxO PhotoLabシリーズの最新版「DxO PhotoLab 4」(Version 4.2.0 Build 4522)を用いたRAW現像時間の計測結果だ。

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 順位はffmpegのトランスコードと同じで,やはりCPUに高負荷がかかるメディア制作用途では,R5 5600Xが有利になる傾向を裏付けている。一方,ffmpegとの違いは,ABTの効果がはっきりしない点だ。わずか2秒差なので有意と言えるかは微妙だろう。

 続いて,3Dレンダリングベンチマーク「CINEBENCH R23」の結果を見ていこう。CINEBENCH R23では「Advanced Benchmark」を選択したうえで,「Minimum Test Duration」設定を「10 minutes」としてテストを実行している。結果はグラフ33のとおり。

画像集#041のサムネイル/6コアCPU対決レビュー「Core i5-11600K」対「Ryzen 5 5600X」。ゲームに向いた6コアCPUはどっちだ?

 i5-11600Kのスコアは,シングル,マルチともにR5 5600Xを上回ったが,ABTの効果ははっきりしなかった。計算上,クロックあたりの性能ではR5 5600Xが上回るようだが,動作クロックが低いことがスコアに反映されたことになる。
 ffmpegやRAW現像のようにCPUを酷使する用途では,R5 5600Xが良好な成績を残したが,同じようにCPUを使うCINEBENCH R23でそうならなかったというのは興味深い。CINEBENCH R23はスレッドごとの独立性が高い,つまり実行スレッドが相互に依存していないようなので,それがスコアに関係しているかもしれない。

 非ゲームテストの最後は,「7-Zip」(Version 19.00)の結果である(グラフ34)。

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 このテストでは,有意な差をつけてR5 5600Xがトップとなり,ついでi5-11600K,i5-11600K(ABT)の順となっている。ABTはむしろ足を引っ張った。

 非ゲーム用途でのベンチマーク結果を見てきたが,ここでもやはりi5-11600KとR5 5600Xは甲乙つけがたいと言えそうだ。一般的なWindowsオペレーションはi5-11600Kのほうが快適そうであるが,CINEBENCH R23は例外として,やはりCPUを酷使する用途では,R5 5600Xのほうが短時間で作業を終えることができるようである。
 つまり,ユーザーの用途に応じて選ぶのが正解というわけだ。Webブラウジングや一般的なアプリの快適さを重視するならi5-11600K,写真や動画を扱うことが多いPCユーザーならR5 5600Xが適していると言えるのではなかろうか。


i5-11600Kの電力対性能比はかなり厳しい


 ゲーム,非ゲームともに甲乙つけがたい結果になったので,鍵を握るのは消費電力ということになる。今回もベンチマークレギュレーション23.2に準拠した方法で,CPU単体の消費電力と,システム全体の最大消費電力を計測しているので,その結果を見ていくことにしよう。

 まずは,各テストにおけるEPS12Vの最大値と,無操作時にディスプレイ出力が無効化されないよう設定したうえで,OSの起動後30分放置した時点(以下,アイドル時)の計測結果を,ゲーム系テストはグラフ35に,ゲーム以外はグラフ36にまとめている。

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 ざっと見ると,やはりi5-11600Kの最大消費電力はかなり高めだ。実ゲーム実行時では,i5-11600K(ABT)で最大を記録したのはBorderlands 3の約127W,i5-11600KはFar Cry New Dawn実行時に,なぜかABT有効時よりも高い約141Wを記録している。
 非ゲーム実行時だと,i5-11600K(ABT)はRAW現像時に約214W,i5-11600KはCINEBENCH R23実行時に同じく約214Wを記録した。すべてのテストで最大100W以下に収まるR5 5600Xに比べると,正直驚くほど高いといえる。

 ただ,ABT有効と無効の差は,意外に少なかった。8コア16スレッドのCore i9-11900Kでは,ABTを有効にすると信じられないほどの最大消費電力を記録していたが,今回はそうでもない理由はよくわかっていない。レビュワー向けのUEFIが,無理矢理に性能を上げる設定になっていたという可能性が考えられなくもないのだが,未検証だ。
 同様に,UEFIのアップデートが影響を与えていそうなのはアイドル時の消費電力で,Core i9-11900Kはアイドル時も異常なほど消費電力が高かった。だが,i5-11600Kでは,10Wをしっかり切っている。
 とはいえ,R5 5600Xはアイドル時の消費電力が4W台まで下がるので,それに比べれば少し高めと言える。

 最大値は最大風速のようなものなので,実際に利用していくうえで重要になるのはアプリ実行時の典型的な消費電力を示す中央値だろう。グラフ37がゲーム実行時の,グラフ38は非ゲーム実行時における消費電力の中央値を記録したものだ。

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 i5-11600Kでもっとも中央値が高かったゲームタイトルはPROJECT CARS 2で,i5-11600K(ABT)で約84W,i5-11600Kで約85Wを記録した。非ゲームではRAW現像時がもっとも高く,i5-11600K(ABT)が約146W,i5-11600Kが約148Wだった。ABT有効時のほうが低いという現象がここでも発生している。
 i5-11600Kの公称TDPは125Wなので,ゲーム実行時には公称TDP以内に消費電力中央値が収まったのはまずまずの結果と言えるが,CPUを長時間酷使するRAW現像時に,消費電力中央値が公称TDPを大きく上回ったのは少し厳しいという印象だ。競合のR5 5600Xの消費電力中央値はRAW現像時でさえ約69Wに収まるのとは対象的で,やはり電力あたりの性能はR5 5600Xが圧倒している。

 消費電力の最後に,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,各テスト実行時点におけるシステムの最大消費電力をグラフ39グラフ40にまとめている。

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画像集#048のサムネイル/6コアCPU対決レビュー「Core i5-11600K」対「Ryzen 5 5600X」。ゲームに向いた6コアCPUはどっちだ?

 大まかに言うと,ゲーム実行時におけるi5-11600Kの消費電力は,R5 5600Xに比べて10〜30Wほど高いようだ。一方,非ゲームになると,CINEBENCH R23でR5 5600Xがi5-11600K以上の最大消費電力を記録しているのが面白い。データに異常はないので,可能性としては電力消費の大きいX570チップセットの影響が考えられるが,コンポーネントごとに消費電力を計測する手段はないので明確な理由は不明だ。
 とはいえ全体的に見れば,システムの消費電力もi5-11600Kのほうがやや大きいとまとめていいだろう。


性能は互角だが扱いやすさでR5 5600Xに軍配が上がる


 ベンチマークテストの検証で述べたように,i5-11600KとR5 5600Xの性能は互角と見ていい。得意不得意はあるが,どちらの製品も同程度の快適さで利用できると思われる。
 しかし,i5-11600Kの最大の問題はやはり消費電力だ。R5 5600Xに比べると消費電力が大きく,つまり発熱も大きいということで,扱いやすさではR5 5600Xが圧倒的に上と言えよう。

 現時点で6コア12スレッド対応のCPUを選ぶのであれば,R5 5600Xが無難だ。ただ,消費電力の増大を気にしないのであれば,i5-11600Kを選ぶのも悪くはないだろう。

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