インタビュー
「バイオハザード ヴィレッジ」ディレクター佐藤盛正氏にインタビュー。目指したのは“死にものぐるいのサバイバルホラー”
今回4Gamerは,開発のキーマンであるディレクターの佐藤盛正氏にインタビューをする機会を得た。本作のコンセプトやキャラクター設定,新世代機に向けた開発秘話など,気になる質問を時間が許すかぎりぶつけてきたので,本作を楽しみにしているファンはぜひ読み進め,発売まで期待に胸を膨らませてほしい。
コンセプトは「死にものぐるいのサバイバルホラー」
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。いよいよ5月8日に「バイオハザード ヴィレッジ」が発売を迎えます。今の心境をお聞かせください。
佐藤 盛正氏(以下,佐藤氏):
純粋に楽しみな気持ちです。ホラー作品を作っているクリエイター特有のものかもしれませんが,ユーザーさんの反応が早く見たいなって。発売後にプレイヤーの皆さんが遊んでいる様子も見られたら最高ですね。
4Gamer:
本作はナンバリングタイトル(VIII)でありながら,数字ではなく「ヴィレッジ」というタイトルが採用されました。これは何か理由があったのでしょうか。
佐藤氏:
「ヴィレッジ」はナンバリングの第8作に当たる作品ですが,「VIII」という数字を大きく掲げてしまうと,これまでバイオハザードシリーズを追いかけてこなかった方が入りにくいのかなと思いまして。いろいろと考えてタイトルの「ヴィレッジ」(VILLAGE)の中に「VIII」というローマ数字を潜ませることにしたわけです。
4Gamer:
息の長いシリーズですし,第8作であることが目立つと,入りにくさを感じてしまう人はいそうです。
佐藤氏:
ちなみに「ヴィレッジ」というタイトルは開発初期に付けたコードネームなんですよ。どこかのタイミングで正式名称を決めてそれに変更する予定だったんですが,「ヴィレッジ」という言葉自体が強く怖さや不気味さを感じるという意見がスタッフから出まして,検討の上,そのまま「ヴィレッジ」が採用されたわけです。
4Gamer:
ヴィレッジがコードネームだったとのことですが,そもそもなぜ村がテーマになったのでしょうか。
佐藤氏:
もっとも意識していたのは,「バイオハザード7 レジデントイービル」からのボリュームアップです。前作はベイカー邸を舞台とした「館ホラー」だったわけですが,次の作品では内容をボリュームアップさせる必要性を感じていました。そのために相応しい舞台はどこなのかと考えたとき,いろいろな家が集合している「村」がいいのではと考えたんです。村の案が出てからはそのままスムーズに決まった記憶があります。
4Gamer:
館と村とでは,恐怖の質も変わってきますよね。
佐藤氏:
「バイオハザード7」ってモダンホラーだと思うんですよ。その続編を作るにあたり,モダンホラーを継承する選択もあったのですが,それだと驚きや新鮮さが感じられない。そこで別のアプローチを考えていたときに,ゴシックホラーのテイストにするのはどうだろうかと思ったんです。村とゴシックホラーの融合でできあがったのが「ヴィレッジ」になります。
4Gamer:
それでは全体のコンセプトはいかがでしょうか。
佐藤氏:
掲げているコンセプトは「死にものぐるいのサバイバルホラー」になります。前作は「すべては恐怖のために」というコンセプトのもと,恐怖を全面に押し出したタイトルに仕上げましたが,本作ではその先を描きたいと思ったんです。恐ろしいもの,怖いもの,危険なものを死にものぐるいでどうやって乗り越えていくか,克服していくか。その経験をいかに描けるか,その先にある「なんとか生き延びた!」達成感をどう表現するのか,これらが「ヴィレッジ」のコンセプトなんです。
4Gamer:
そのコンセプトにもつながる部分だと思うのですが,リソースの管理もバイオハザードシリーズでは欠かせない重要な要素になっています。本作ではショップやカスタマイズがあり,リソース管理に幅ができたように感じています。
佐藤氏:
それらの要素については,どう恐怖を乗り越えていくのかというところで,プレイヤーの戦略に選択肢を与えたかったため取り入れました。どの武器を買うのか,どうカスタマイズしていくのかなど,「バイオハザード」の文脈の中でどれだけプレイヤーに選択肢を与えられるのか。プレイヤーによって考え方が異なると思うので,ぜひ新しいリソース管理を楽しんでもらえればと思います。
4Gamer:
体験版の実況動画などを見ると,皆さんやっていることや感想が全然違って面白いんですよね。プレイヤーの戦略に選択肢を与えるというコンセプトを強く感じました。
佐藤氏:
遊ぶ人がそれぞれ異なる体験をできるようなゲームを目指しましたので,そこを感じてもらえるのは,とてもうれしいですね。
いつの間にかイーサンを1人のキャラクターとして扱うようになっていた
4Gamer:
本作ではイーサン・ウィンターズが,前作に引き続き主人公として登場します。イーサンは素顔も公開されていませんし,クリスやレオンとは立ち位置の違う主人公だと思えるのですが,スタッフの皆さんにとって,イーサンはどのような存在なのでしょうか。
佐藤氏:
「バイオハザード7」はアイソレートビュー(一人称視点)なので,イーサンは言ってみればプレイヤーの分身,カメラのような位置づけだったんです。なので,彼自身がどうであるかよりは,彼がプレイヤーの代わりにリアクションしてくれればいいかな? くらいの感覚の中で生まれたキャラクターだったんです。無色透明のような。
4Gamer:
なるほど。
佐藤氏:
とはいえ「7」という作品において,彼自身のキャラクター性が生まれたのは確かで,いつの間にか私たちもイーサンを1人の人間として見るようになっていました。そして「7」のエンディングを迎えた後,「イーサンはこれからどうなってしまうんだろう」って思ってしまったんですよね。この声は遊んでいただいたプレイヤーの皆様からも聞こえていましたし,自分自身も気になってしまっていたんです。ですので,本作では1人の人間であるイーサンがどういった道を歩んでいくのかというところにも焦点を当てています。
4Gamer:
「バイオハザード ヴィレッジ」にはクリスも登場しますが,トレイラーを見る限り,イーサンとは敵対関係になっていると感じました。クリスに何があったのでしょうか。2人の関係性も気になります。
佐藤氏:
クリスがなぜあのような行動に及んだのかは,本作の核心に迫る部分ですので,今お答えするのは難しいです。ただ1つ言えることは,彼の行動には彼なりの理由があるということです。ぜひゲームをプレイして確かめてみてください。
4Gamer:
本作のクリスは「ハウンドウルフ隊」という特殊部隊を率いていますが,こちらはBSAAとは違う組織なのですか?
佐藤氏:
BSAAという大きな組織の中にクリスの直轄部隊としてハウンドウルフという精鋭部隊があります。ですので,正確にはBSAA内の一部隊になります。
4Gamer:
ハウンドウルフという言葉ですが,メインビジュアルを見ると半身が狼になったクリスと関係性があるように思えます。
佐藤氏:
こちらもお答えできませんが,ぜひゲームをプレイして確認していただければと思います。
ドミトレスクが290センチもの高身長になったわけ
4Gamer:
「バイオハザード7」に引き続き,敵キャラクターのインパクトが強烈です。ドミトレスクやハイゼンベルクらはとくに注目されていると思いますが,彼らがどのような発想から生まれてきたのでしょうか。
佐藤氏:
本作はゴシックホラーがコンセプトの1つなので,クリーチャーもクラシックなゴシックホラーの怪物たちをモチーフにしています。例えば,ライカンは狼男,ドミトレスクは魔女や吸血鬼といった感じですね。それぞれにモチーフとした怪物があります。
ただ,それをそのまま出してしまっては「バイオハザード」らしくないと思いまして,再解釈した結果,今の形になりました。誰が何をモチーフにしているのか? は具体的に挙げないでおきますね。プレイしていろいろと想像してもらえると嬉しいです。
4Gamer:
そのなかでもとくに,ドミトレスクが発表当初から大きな話題と人気を集めています。身長が290センチとのことですが,この設定は最初から決まっていたのでしょうか。
佐藤氏:
ドミトレスクに関しては,住居である城にふさわしい妖艶さや気品さをホラーと共存させたいと考えていました。当初は醜いクリーチャーにするという案もあったのですが,それは違うだろうと。ただ,恐ろしさや異様さは当然必要ですので,そこで着地点として長身の貴婦人という設定が生まれたわけです。
ただ補足として,290センチという数字は最初の設定にはありませんでした。高身長の貴婦人という設定のみを公開したところ,とあるメディアさんから「身長はいくつなんでしょう」と聞かれたことがきっかけとなり,ゲーム内の実測値を計ってみたところ,290センチだと判明したわけです。我々も「こんなでかいんだ!?」って驚きましたよ(笑)。
4Gamer:
290センチという数字もものすごいインパクトがありますよね(笑)。また,トレイラーを観ると,ドミトレスクら“四貴族”は,そこまで仲がよくないようにも見えました。彼らの関係性についてもお聞きしたいです。
佐藤氏:
四貴族は村の重要人物として並び立っています。ただ,一枚岩ではないんですよ。彼らはただのクリーチャーではなく人格と意思を持った存在なので,派閥や仲違いはあります。詳細は話せませんが,彼らの関係性にもぜひ注目していただきたいですね。
4Gamer:
あの村は四貴族を束ねるマザーミランダが統治しているとのことですが,ずっとあの体制でやってきた村なんでしょうか。自分ならすぐにでも逃げ出してしまいますが。
佐藤氏:
その通りです。なぜあのような存在が村を統治しているのかという部分も含めて「ヴィレッジ」の物語になっていますので,それもプレイの中で確かめてほしいですね。
4Gamer:
武器商人のデュークの存在も気になります。彼もまた村の住人なのでしょうか。
佐藤氏:
詳細は控えさせていただきますが,彼もまた重要な存在だということは確かです。彼なしでこのゲームは存在しないと言えるほどに。
4Gamer:
そこまでの重要な人物なんですね。ただ,ゲーム中にデュークに会うとホッとしますよね。見た目も声も癒やし系と言いますか(笑)。
佐藤氏:
実はその部分は意識していまして,「バイオハザード7」をプレイした方から寄せられた声に,「怖すぎてプレイできない」というものが多くありました。ですので,怖さをどのようにコントロールするかも本作の課題の1つだったんです。
前作を気に入っていただけた方のためにぶっ飛んだインパクト,ピークの怖さは同等以上に残しつつも,あまりに緊張感が続くと耐えられないという方への配慮を考えた結果,デュークをセーフルーム的な役割に据えたわけです。見た目にも安心してもらいたいためにあのような造形にしています(笑)。
新世代機向け「バイオハザード」の開発で感じたこと
4Gamer:
「バイオハザード ヴィレッジ」は新世代機向けとしては初めての「バイオハザード」になりました。開発で苦労した部分はありましたか。
佐藤氏:
苦労というよりは,「こんなこともできるんだ!」といった驚きのほうが強かったですね。強いて挙げるなら,リトライする時にロード時間がなくなってしまったことでしょうか。もちろん良いことではあるんですが,これまではリトライ時に一息つけていたのに,それがない。プレイヤーにとっては緊張感が続くことになるので,そこをうまく調整する必要性が出てきたわけです。
4Gamer:
また,「バイオハザード ヴィレッジ」は当初,PS5とXbox SeriesX,PC向けの発表でしたが,途中でPS4とXboxOne向けにも発表されました。こちらはどういった意図があったのでしょうか。
佐藤氏:
実は当初から現状のラインナップを予定していたのですが,すべてのプラットフォームで高い品質のプレイ体験を提供できるかどうかは試行錯誤中だったんです。ですので,PS4版とXboxOne版のクオリティが発売できるレベルのものでないと判断されていれば,お蔵入りになっていた可能性はありました。ただ,そこはスタッフががんばってくれて,PS4とXboxOneでも満足いくものに仕上がりましたのでご安心ください。
4Gamer:
プラットフォームごとのパフォーマンスはいかがでしょうか。フレームレートやロード時間が気になる人もいるとは思いますが。
佐藤氏:
フレームレートに関しては,現在発表しているものがありますので,そちらをご覧いただきたいと思っています。また,ロード時間ですが,PS4版とXbox One版は新世代機と同じとは言えないですが,インプレイの間はなるべくロードを感じさせないような工夫を施しています。
出力解像度と想定フレームレート
PlayStation 5:4K HDR/60fps
PlayStation 5:4K HDR/45fps(レイトレーシング選択時)
PlayStation 4 Pro:1080P/60fps
PlayStation 4 Pro:4K HDR/30fps(高解像度モード選択時)
PlayStation 4:900P/45fps
Xbox Series X :4K HDR/60fps
Xbox Series X:4K HDR/45fps(レイトレーシング選択時)
Xbox Series S:1440P HDR/45fps
Xbox Series S:1440P HDR/30fps(レイトレーシング選択時)
Xbox One X:1080p/60fps
Xbox One X:4K HDR/30fps(高解像度モード選択時)
Xbox One:900P/30fps
4Gamer:
PS4版とXboxOne版は無償で新世代機版にアップグレードできるとのことですが,こちらはなにか条件などはあるのでしょうか。
佐藤氏:
とくに条件はありませんが,注意点としてディスク版を購入した場合,新世代機へのアップグレード対応はディスクドライブ搭載モデル限定となります。デジタル版であればディスクドライブ搭載・非搭載どちらでも対応できますのでご安心ください。
4Gamer:
新世代機の購入を検討している人も先にPS4やXboxOneで遊べるわけですね。ちなみにセーブデータの移行も可能でしょうか。
佐藤氏:
もちろんです。ディスクドライブの有無だけ気を付けていただければスムーズに移行できます。
前作でザ・マーセナリーズを収録できなかったことが心残りだった
4Gamer:
本作には,クリア後のエクストラゲームである「ザ・マーセナリーズ」が収録されることが発表されています。実に「バイオハザード6」以来の収録となります。
佐藤氏:
ファンの方も毎回ザ・マーセナリーズを期待していることはわかっていたんですが,「7」では実装できなくて僕自身もそれが心残りでした。ただ本作ではアクション面が強化されたり,ショップシステムが導入されたりしましたので,ザ・マーセナリーズが実装されることは開発の早い段階で決定していました。
4Gamer:
ザ・マーセナリーズが発表された時のプレイヤーの反応はかなりのものでした。ザ・マーセナリーズ目的で買うと言っている人もいたくらいです。
佐藤氏:
やっぱりみんな期待してくれてたんだなって思いましたよね。実装した甲斐があります。
4Gamer:
今回は初めて一人称視点でのザ・マーセナリーズになります。開発で苦労した部分はありましたか。
佐藤氏:
そもそも一人称視点でザ・マーセナリーズが作れるのか,という課題が最初にありましたが,その点はとくに問題にならなかったように思います。ザ・マーセナリーズの基本は「敵をどんどん倒してコンボをつないでいく」という部分に集約されますので,一人称でも三人称でもその点はあまり変わらないのかなとも感じました。
また,ザ・マーセナリーズでは,本編では絶対出てこなかった場所で,出てこなかった組み合わせの敵が登場することもあります。本編をやりこんだ方ほど新鮮さを感じられる作りになっていますので,ぜひ繰り返し遊んでほしいですね。
苦労もあったが得るものもあったコロナ禍での開発
4Gamer:
REシリーズや「7」に引き続き,本作でもRE ENGINEが採用されています。当初のRE ENGINEよりかなり改良されていると思われますが,開発面で何か変化した部分はありましたか。
佐藤氏:
「7」のころからRE ENGINEのチームとは密にやり取りをしており,日進月歩で開発環境はよくなっています。そのおかげで大幅に開発スピードも上がっていますし,作業自体もしやすくなっている。その分,もっと作り込めるようになりました。実は「ヴィレッジ」の開発中に大きな仕様変更が発生したんですが,RE ENGINEだからこそうまく対応できた気がしています。
4Gamer:
また,現在コロナ禍ということもあり,開発にも少なからず影響が出ていると思います。苦労した部分はありましたか。
佐藤氏:
当たり前ですが影響は大きかったですね。一時期,開発を休止せざるを得ない時期もあったんですよ。ただ,一旦休止したことが実はいい方向に働いたのも事実でして,少し開発現場から距離を置けたことで,「ヴィレッジ」の現状について,スタッフそれぞれが冷静に分析できる時間が生まれたんです。
開発が再開した時に意見交換をするわけですが,そこでいいアイディアが生まれることもありました。大変だったのは間違いありませんが,その中で得るものも少なからずあったと今は感じています。
4Gamer:
ピンチのなかにもチャンスがあったわけですね。それでは最後に,発売を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。
佐藤氏:
「バイオハザード ヴィレッジ」は概ね4年間に渡り,わたしたちが取り組んできた自信作です。最高の「死にものぐるいのサバイバルホラー」を用意しましたので,シリーズを遊んでいる方も,本作からプレイする方もぜひ発売日を楽しみにしていてください。ぜひイーサンと共に,物語の結末を見届けてください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「バイオハザード ヴィレッジ」公式サイト
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