レビュー
雰囲気に引き込まれる「アンリアルライフ」を紹介。記憶を失った少女が,信号機をはじめとする個性的なキャラクター達の力を借りて旅をするADV
筆者は,第24回文化庁メディア芸術祭の新人賞の受賞をきっかけに,その雰囲気がひと目で気に入って購入したのだが,実際にプレイしてみると,思っていた以上の満足感を得られた。これは絶対に紹介したいと思い,発売から日は経っているが,本作を極力ネタバレなしで紹介していく。
アドベンチャーゲーム「アンリアルライフ」が第24回文化庁メディア芸術祭の新人賞を受賞。3月18日から記念セールを開催
room6は本日,hako生活が開発したアドベンチャーゲーム「アンリアルライフ」が,第24回文化庁メディア芸術祭の新人賞を受賞したと発表した。また,これを記念したセールが,2021年3月18日から2021年4月1日まで開催される。
※スクリーンショットはPC版のものを使用している
記憶を失った少女が目覚めて最初に出会ったのは,無線式の信号機AI「195」
パッと見,ただの信号機にしか見えない195なのだが,物語のなかでハルの大事な相棒になっていく。
ハルは,気になるところを「Z」キーで調べることで,キャラクター達と会話をしたり,ヒントを得ることができる。旅を続けるなかで,文字を読めるようになるハルだが,最初は文字を読むことすらできない。だから,最初は文字からヒントを得ることはできない。
195に言われた通り,ハルは自分が倒れていた方向へと進むのだが,道中で「青いクツ」を見つける。触れようとすると,ハルは何かを思い出すのだが,ノイズまみれでよく分からない。
これをきっかけに,ハルは物に宿った過去の記憶が読み取れるようになる。彼女はどうやら「サイコメトラー」らしい。
青いクツの記憶に残っていたのは「先生」という人物の姿。ハルはこの先生を知っているようで,195と共に先生を探す旅に出ることになる。
個性的な従業員が集まる不思議な旅の宿「くじら」
ハルと195が出会った道路を進むと,アパートが見えてくる。このアパートのドアを開けると,再び何かを思い出すのだがやはりノイズだらけでよく分からない。
再び気を失ってしまったハルは,なぜか海の見える部屋で目をさます。195いわく,いままでいた町は“海に面していない”らしく,なぜアパートの1室から海が見えるのか謎だ。
部屋にはエレベーターがあり,それに乗って広間にいくことができる。
広間で出会うのは不思議な姿をした支配人を名乗る人物で,ここが旅の宿「くじら」であることを知らされる。なぜアパートのドアが「くじら」につながっているのかは謎だが,ここで過ごす日々はハルに大きな影響を与える。ハルと話してくれるのは,奇妙な姿をした従業員達だが,誰しもがハル達に優しく,温かい。
ここでは「くじら」で出会う個性的なキャラクター達を紹介する。
■支配人
頭がぐるぐる回っている。見た目は怪しいが,倒れていたハルを運んで,休ませてくれていた優しい人物。「くじら」の広間で必ず会えるので,ついつい話しかけたくなるような存在だ。
■マリー
食事ができるカフェテリアで働くおしゃべりなシェフだが,まさかのマリモ。買い出しに行っているらしいが,どうやって移動しているのかは永遠の謎だ。彼女が提供してくれるご飯に,プレイヤーもなんだかほっとするはず。
■しゅたいん
おしゃべりなマリーとは真逆で,寡黙な職人ねずみ。かわいい見た目からは想像もできないほどに頭が良いようで,195と難しい話をたくさんする。マリーほどは語らないが,ハルと195を見守ってくれる心強い味方だ。
■カセリ
従業員ではないが,くじらで出会うことになるペンギンの駅員。とある事情からくじらにたどり着き,途方に暮れていたところ,ハルと出会った。元いた駅に戻りたいようで,ハルに協力をお願いしてくる。
彼らの協力を得たハル達は,先生のあとを追うような形で,カセリの運転する海の上を走る電車に乗ってくじらから旅立ち,さまざまな地を訪れることになる。
独特の雰囲気と物語の展開が気になって,遊び始めると止まらなくなる
すでにスクリーンショットでも伝わっているかと思うが,本作はピクセルで描かれており,独特の雰囲気がある。ブルーとピンクを大胆に使った色使いもその雰囲気を形づくる要素だ。特に水の表現が素晴らしい。ピクセルで表現された水が美しくて,最初見たときは思わず声をあげた。
本作で筆者がとても気に入っているのは,ゲームを進行するうえで必要な機能が本作の雰囲気を崩さないような形で導入されていることだ。
たとえば,これまでのやり取りが確認できる「会話ログ」については,ハルが記憶を忘れやすい状態にあるということを理由に,195が代わりに記録しているという形で閲覧できるようになっている。
持ち物に関しても,ハルのカバンに収納され,確認するときもカバンを開けて,なかに収納されている状態から選択することになるので,アイテムを使うたびに世界観から引き離されるようなことはない。
また本作では,会話中に出てくる重要な言葉が必ずオレンジ色の文字で表示されるので,見落とすようなことも起きない。地味に思えるかもしれないが,アドベンチャーゲームを遊ぶうえで安心してゲームを進められることはとても大事なことなのだ。
物語は,進行するにつれて先生の正体や,ハルが無くした記憶に迫っていく。ときには謎を解きながら,先生のあとを追うハル達にはさまざまな地で頼もしい味方が現れ,その個性的な姿に思わずほっこりしてしまうことも。
そして何より続きがとても気になる。時折挟まる不穏な映像が果たしてどういう意味を持つのか。ハルがどうなってしまうのか,気になって気になって,筆者は結局1回も休むことなく最後までプレイしてしまった。
本作は,前述のとおり,第24回文化庁メディア芸術祭の新人賞を受賞した。受賞理由は「ピクセルアート作品としての完成度や緻密な設計,高い物語性といった点」とされているが,まさに本作を簡単にいうとそういう作品なのだ。
なお受賞記念として,本日から4月1日までの期間,ニンテンドーeショップとSteamでセールが開催される。
この機会に,ぜひ細部まで作り込まれた不思議な世界を体験してほしい。
公式サイトでは,本作の購入を悩んでいる人にむけて,開発者のhako 生活氏が影響を受けた作品が公開されている。本稿を読んで気になったという人は,こちらのページもぜひ参考にすると良いかもしれない。
「アンリアルライフ」公式サイト
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