企画記事
スプラトゥーンシリーズは“イカ”にして遊びやすさを保ちながら進化したのか。「スプラトゥーン3」をより一層楽しむための短期連載:第2回
2回目のテーマは「スプラトゥーンシリーズは“イカ”にして遊びやすさを保ちながら進化したのか」。2015年5月に登場したシリーズ1作目のWii U用ソフト「スプラトゥーン」で生まれた新しい遊びが,2017年7月にSwitchでリリースされた第2作「スプラトゥーン2」ではどう変わったのか。本シリーズの魅力の一つである,世界観設定やストーリーの奥深さに触れられる部分も振り返りながらお伝えしたい。
シリーズポータルサイト「スプラトゥーンベース」
「スプラトゥーン3」をより一層楽しむための短期連載:第1回。根底にあるゲームの面白さに触れ,“イカ”にして人気シリーズになったのかを考える
2022年9月9日に発売される「スプラトゥーン3」をより一層楽しむべく,シリーズを振り返ったり新作情報をまとめたりする全3回の短期連載企画をお送りしよう。初回は「スプラトゥーンは“イカ”にして人気シリーズになったのか」を,根底にあるゲームの面白さに触れながらお届けしよう。
「スプラトゥーン3」は“混沌”から生まれたのではなイカ!? これまでの情報をまとめてお届けする「スプラトゥーン3」をより一層楽しむための短期連載:最終回
9月9日発売の「スプラトゥーン3」をより一層楽しむための短期連載企画。終回となる今回は,これまで発表された「スプラトゥーン3」の情報をまとめてお届けする。初報からこれまで発表された情報をまとめていくと,「『スプラトゥーン3』は“混沌”から生まれたのではなイカ!?」という思いがあふれてくる。
遊びの基本は始めから完成していた「スプラトゥーン」
初代「スプラトゥーン」の基本となる遊び方は,分かりやすさとシューターの奥深さを兼ね備えた「ナワバリバトル」だ。このナワバリバトルが,スプラトゥーン独自の面白さ,遊びやすさを持った“入りやすくて奥が深い”ゲーム設計だったことは,連載の第1回でお伝えしたとおり(記事リンク)だ。それをさらに詳しく,ゲームのシステム面にも触れながら迫りたい。
4人対4人で3分間戦い,試合終了時のインクの面積で勝敗が決まるという基本ルールは,初代「スプラトゥーン」のナワバリバトルから変わらない。その第1作のナワバリバトルの特徴だったのが,実力差を覆す逆転要素。相手にブキを巧みに扱う凄腕のプレイヤーがいたとしても,試合のラストで塗り合いに持ち込めば勝負の行方が分からなくなる点だ。
そんな「スプラトゥーン」の逆転劇で欠かせない要素となっていたのが,強烈な威力を持つスペシャルウェポンの数々だった。
とくに「スーパーショット」は,リリース直後の性能がかなりのもので,その竜巻状のショットの乱れ撃ちで,複数の相手を一気に倒すことができるほど強力だった。あまりにも強すぎたためか,何度かのアップデートでの調整で段階的に控えめな性能になったが,それでもスーパーショットの存在感は大きく,初代「スプラトゥーン」を象徴すると言っても過言ではないほどのインパクトを放っていたのだ。
数秒だけ無敵になり,相手が居座る重要地点を強気に奪いにいける「バリア」や「ダイオウイカ」,障害物を貫通しマップの端まで撃ち抜く一撃で,遠くから相手の陣形を崩せる「メガホンレーザー」なども,実力差を埋めてくれる強力なスペシャルウェポンだった。
ほかにも,ボムを投げまくる「ボムラッシュ」,マップで指定したポイントにインクの渦を作る「トルネード」のように,広範囲を自チームのインクで染めて相手まで倒せるものもあり,僅差の試合ではこれらを使うタイミングで勝敗が決まることも多かった。
「スペシャルウェポンを使うためには,ステージをインクで塗ってスペシャルゲージを溜める必要がある」という仕組みも,後半の一発逆転を生む要素となっていた。劣勢のチームは,新規で塗り広げられる場所が少ない優勢なチームに対して“塗れる範囲”が残っているため,相手に倒されずに慎重に塗り返すことができれば,チーム皆でゲージを溜めることができるわけである。
こうしてメンバー全員がゲージを溜め,チームの1人が相手全員の位置をマーキングする「スーパーセンサー」を使い,そのサポートによってほかの仲間たちが確実にスペシャルウェポンを相手に決める。そんな終盤の一撃で,こういったシューターに不慣れなプレイヤーでも勝利の喜びを得ることができた。
このように初代「スプラトゥーン」のナワバリバトルは,プレイヤーの実力でほぼ勝敗が決まるこれまでのシューターにはない勝負の駆け引きの楽しさがあり,それが新鮮だったのだ。
初代「スプラトゥーン」からあるものと言えば,バトルに繰り返し挑んでランク10になると挑戦できるようになるモード「ガチマッチ」も忘れてはならない。
ルールは,指定されたエリアをインクで塗って確保し,それを守り抜いた時間が長いチームが勝利となる「ガチエリア」,レールに沿って進むヤグラを奪い合い,相手陣地に運び込んだ方が勝ちの「ガチヤグラ」,ガチヤグラの要領で,自由なルートで運べるホコを敵陣まで運ぶ「ガチホコバトル」の3つ。どれも“ガチ”とつくだけあって,ナワバリバトルに比べて“相手チームのメンバーを直接倒すこと”の重要度が高い,従来のシューターに近いルールとなっていた。スプラトゥーンで初めてシューターに触れた人にとっては,このガチマッチがシューターの核となる面白さをダイレクトに体験した最初の出来事にもなったはずだ。
遊びやすさはそのままに,シューターのコアな部分の楽しさが強まった「スプラトゥーン2」
すでに基本的なモードや遊び方(ルール),ゲームシステムは完成していた初代「スプラトゥーン」だが,1作目の登場から約2年,Nintendo Switchの発売から4か月ほど後にリリースされた「スプラトゥーン2」では,高い完成度を誇っていた1作目から何がどう変わったのか?
「スプラトゥーン2」のナワバリバトルで感じたのが,基本ルールはそのままながら,初代に比べて“塗りを広げることだけではなく,撃ち合うことの重要性が高くなった”こと。その大きな要因となったのが,種類が一新されると同時に性能も見直されたスペシャルウェポンだろう。
一定時間,相手の攻撃を防ぐアーマーを味方全員に付与する「インクアーマー」は,役立つものの決して無敵になるわけではなく,相手からの集中攻撃やダメージが大きい一撃を受けるとやられてしまう。耐久力の高いボールに入って転がりながら塗りを広げ,最後に爆発して周囲にインクを広げる「イカスフィア」は,距離を取られたり爆発を回避されたりすると,とたんに不利になる。
ほかにも,上空から相手を攻撃できる「ジェットパック」や,ジャンプしてから自分の周囲を攻撃する「スーパーチャクチ」は,それぞれ着地を狙われたり無防備な空中で撃墜されたりするリスクが高いなど,どれも一長一短のある性能となり,一撃で試合がひっくり返るようなケースが少なくなった。それゆえ,ここぞという場面で効果的なスペシャルウェポンを“重ね掛け”できるかという,仲間同士の連係の重要性も高くなっている。
このように,スペシャルウェポンは全体的に,相手を直接倒すものではなく,相手を有利なポジションから動かしたり,隠れている相手をあぶり出したりするときに使うものになった。これによって高まったのが“撃ち合うことの重要性”。あぶり出した相手との撃ち合いを制するための,メインウェポンを扱うテクニックだ。
スペシャルウェポンの変化により重要性が増したメインウェポンだが,こちらは全体的に初代よりも射程が短めに調整された。さらにスライド移動によるフェイントや回避が可能な「マニューバー」,カサを開いて相手の攻撃を防ぐ「シェルター」といった武器種の登場によって新たな攻防が生まれ,近距離〜中距離での戦いが重要となっていく。
ナワバリバトルのステージも,「スプラトゥーン2」のプレイ感の変化に影響を与えたものの一つだろう。新規だけではなく前作のものを改修したステージも収録されており,それらは細かい障害物や遮蔽物が増えたことで,長射程のブキに一方的にやられることはなく,視界に入らないよう接近して倒すといったこともしやすくなった。このステージの調整も,近距離〜中距離での撃ち合いの重要性を高めた大きな要因になっている。
そして,初代「スプラトゥーン」と「スプラトゥーン2」の違いと言えば,コントローラでの操作に触れないわけにはいかないだろう。
メイン操作がWii U GamePadだった「スプラトゥーン」と,Joy-Conの2本持ち,Joy-Conグリップ,携帯モード,Nintendo Switch PROコントローラーといったさまざまな操作方法に対応した「スプラトゥーン2」。そもそもの形状が違うし,初代「スプラトゥーン」はWii U GamePadの画面にマップや戦況が表示されるので,確認するためにメインのテレビやモニターから一瞬視線を外す必要があるため,ふつうに考えて全然違うと思うはず。
だがしかし,操作する感覚は実はそんなに大きく変わっていない。主に左右のスティックとL,R,ZL,ZRボタン,そしてジャイロを使った操作自体が初代「スプラトゥーン」から変わっていないからだ。
実際,いまあらためてWii U GamePadで初代「スプラトゥーン」をプレイしたところ,(さすがにJoy-Conの2本持ちは感覚が違うが)コントローラ操作や携帯モードでの“イカ独特のジャイロ操作”の感覚は「スプラトゥーン2」をプレイしているときとそれほど変わらない。つまり,プレイスタイルの選択肢は増えたが,根本の操作方法はそのままなのだ。このあたりも,あらためて1作目の完成度の高さを感じる。
このように「スプラトゥーン2」は,初代「スプラトゥーン」の遊びやすさと操作性はそのままに,主にブキやスペシャルウェポンの調整によって“撃ち合うことの重要性”と,チームメンバーの位置を把握して連係を取るというシューター的な戦術面の楽しさが高まったゲームになった。
ワイワイ楽しめる部分を削ることなく“プレイの上達が勝利に貢献できる喜び”が感じられる,よりコアなオンラインシューターの楽しさを打ち出したゲームへと進化したわけだ。
作品をより深く楽しむうえで欠かせない,世界観設定とイカ(とタコ)の歴史
ここからは,これまで触れていなかった“ストーリーを感じられる要素”について紹介したい。スプラトゥーンの大きな魅力となっているのが,世界観設定の奥深さ。初代「スプラトゥーン」と「スプラトゥーン2」のどちらも,さまざまなゲームモードや街のちょっとした一場面,キャラクターの会話などにそれらを感じさせるものが散りばめられており,それを知ることで,スプラトゥーンの面白さはさらに広がるのだ。
人類滅亡からしばらく経ったころ,突如として出現し,地上への上陸を開始した高度な知能を持ったイカたち。ヒトへと進化した地上のイカたちによって,古くから行われていたというナワバリバトル。イカとタコ(オクタリアン)という種族間の複雑な関係と,地上のナワバリの奪い合いという形で勃発した大ナワバリバトル。時代によって人気の街やアーティストが変化する,流行に敏感なイカたちの習性(?)など,それらの設定はかなり細かく,そして考察しがいがあるものとなっている。
そんな本作の世界観やイカたちの歴史を,一人(?)のイカの視点で追いつつ自身の操作の腕を磨くこともできるのが,ステージクリア型のシングルプレイ専用モード「ヒーローモード」だ。
このヒーローモードでは,大ナワバリバトルに敗れて地下で生活するタコたちがとある事件を引き起こし,それを解決するため戦う“名もなきヒーロー”の物語が描かれる。「スプラトゥーン」と「スプラトゥーン2」で時代と場所は異なるが,共通するワードやキャラクターも登場し,シリーズを通してプレイすることでその変化を楽しむこともできるものとなっていた。
世界観設定の奥深さを生かしたモードが,「スプラトゥーン2」の「サーモンラン」。海から押し寄せるシャケの軍団を攻撃し,エネルギー資源である「金イクラ」を集めるという,2人〜4人で挑戦するPvEコンテンツだ。
謎に包まれた「クマサン商会」が取り仕切る“危険かつ怪しいバイト”で,凶暴な種族であるシャケが住む隔離区域に足を踏み入れなければならない。そんな設定が,ただポップでカラフルなだけではない,ブラックなユーモアのある部分も魅力なスプラトゥーンの“らしさ”を感じさせてくれるものにもなっているのだ。
「スプラトゥーン2」の有料追加コンテンツ「オクト・エキスパンション」も,スプラトゥーンの世界や歴史をより深く知るうえで欠かせないものだ。
その主人公となるのは,何とイカではなく,“タコのような見た目の若者”。何かのショックで記憶を失くした主人公“8号”は,地下に広がる実験施設のような謎の場所を,「深海メトロ」を乗り継ぎながら移動し地上を目指す。ヒーローモードのようなステージクリア型のシングルプレイ専用モードで,歯ごたえのある難度が特徴のオクト・エキスパンションは,本編では描かれていない,意外な展開を見せるその物語自体も見逃せないものとなっている。
シリーズの基本的な楽しさを確立した初代「スプラトゥーン」に,1作目の遊びやすさはそのままにコアなゲーム性を打ち出した「スプラトゥーン2」。そして両作品にさまざまな形で取り入れられた,深みを感じさせる世界観設定と物語。それらを押さえておくことで,「スプラトゥーン3」を迎えるまでの心構えも大きく変わることだろう。
果たして「スプラトゥーン3」はゲームとしてどういった部分が進化し,どのような“物語の続き”が描かれているのか。短期連載の第3回(最終回)は,これまで発表された「スプラトゥーン3」の情報をまとめ,その解説や考察(妄想?)をお届けしたいと思う。今回は,「スプラトゥーン2」のテンタクルズ風に「ぬりたく〜る…テンタクル!!」の一言で締めとしよう。
「スプラトゥーン3」公式サイト
シリーズポータルサイト「スプラトゥーンベース」
- 関連タイトル:
スプラトゥーン3
- 関連タイトル:
スプラトゥーン2
- 関連タイトル:
Splatoon(スプラトゥーン)
- この記事のURL:
キーワード
(C)Nintendo
(C)2017 Nintendo
(C)2015 Nintendo