インタビュー
イラストレーター岸田メルとは何者なのか。「BLUE REFLECTION TIE/帝」のキャラクターデザインから,その繊細な絵の起源を探る
本作は,2017年にリリースされた「BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣」(PS4/PS Vita/PC)の続編で,クロスメディアプロジェクトとしてアニメやスマートフォンタイトルと共に再始動した「BLUE REFLECTION」シリーズの最新作である。
このシリーズで,大きな魅力となっているのが,イラストレーター岸田メル氏によるキャラクターデザインだ。本作においても,岸田氏のキャラクターのゲーム内での再現性には,非常に力が入っているので,ぜひ注目してもらいたい。
岸田氏といえば,儚げで繊細なタッチが特徴的なイラストレーターでありながらも,インターネット上では面白おかしいネタのイメージが強い人物である。仮面を被ってデカイ剣を2本持った男性の写真を目にしたことがある人も多いと思うが,あれが岸田氏である。
また,イラストレーターでありながら,イベントで顔出ししてトークに参加したり,イベントMCを務めたりと,活動の幅も広い。岸田氏のタレント性を知れば知るほど「この人のどこからあの絵が……」と思えてくるのではないだろうか。
そこで本稿では,岸田氏とプロデューサーの細井順三氏に,本作のキャラクターデザインについて聞き,さらに岸田氏がどのような人物なのかにも迫ってみた。貴重なデザイン過程の資料を見せていただけ,内面の話も聞けて……と,トータル5時間にも及ぶロングインタビューなので,時間のある時に読み進めてもらえれば幸いだ。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
まず細井さんに。岸田さんとは「アーランド」シリーズからの長いお付き合いだと思いますが,どういう印象をお持ちですか? 普段から,いろんなイラストレーターさんとお付き合いがあると思いますけど。
細井順三氏(以下,細井氏):
締め切りを守らないけど,いいイラストを描いてくる,ずるい男だなと思っています(笑)。
いきなりそれですか(笑)。
細井氏:
皆さんは,岸田さんに破天荒なイメージがあると思うのですが,実際に会ってみると,締め切りを守ってくれないこと以外は普通すぎて驚きますよ。
岸田氏:
言っていることは普通なのに,やっていることはめちゃくちゃなのが僕です。
細井氏:
クリエイターとして,広い視野をお持ちの方だと思います。イラストの最先端だけでなく,さまざまなカルチャーの最先端も追っているので,お話ししていて「なるほど,今はこういうのが流行っているのか」という気付きが多いんです。
4Gamer:
実際,流行は意識されているんですか?
岸田氏:
たくさんの人に自分の絵を受け入れてもらえるよう,意識しています。よく細井さんとも話しますが,僕らが作っているのは,日本のオタクコンテンツの中のゲームですから,どうしても流行り廃りはあって,そこでお客さんにお金をいただこうと思ったら,流行を追うのは避けては通れません。
それとは別に,個人的にゲームと関係のない分野での流行り,例えば若者文化なんかにも興味があって,表現に取り入れたりしていますね。それは必要に駆られてやっているというより,僕が好きでやっています。
4Gamer:
岸田さんが「アトリエ」シリーズからガストさんの作品に参入したのは,どういった経緯なのでしょう。
細井氏:
シリーズのデザイン担当者が,カレンダーのイラストを発注したのがきっかけです。昔のガストには,年末のカレンダーを発注した人の中から,新作のイラストレーターを検討するという文化もあったんですよ。そこで岸田さんに,「マナケミア2」のカレンダーイラストを描いてもらったんです。
岸田氏:
今考えると,それもすごい話ですよね。次回作の開発が始まる前のイラストレーターを決める段階で,前作のキャラを描かせるって,ものすごいスピード感ですよ。
4Gamer:
確かに(笑)。
細井氏:
それで描いてもらって,この人がいいという話になったんです。当時,「アトリエ」シリーズは見直しを図っていたタイミングで,錬金術士という点にフォーカスして,原点回帰しようと考えていました。合わせて,イラストの雰囲気も変えようということで,岸田さんにお声がけさせていただき,皆さんが現在持っている「アトリエ」シリーズの初期イメージを仕上げてもらいました。
4Gamer:
儚げな女の子が,華やかな衣装を着て活躍するみたいなイメージですね。
「BLUE REFLECTION」シリーズの方はどういった企画だったんですか?
細井氏:
もともとは岸田さんと,違う方向性のコンテンツをやりたいという話から始まっています。それはまた別の企画だったのですが,岸田さんとうまくスケジュールが合わなくて,進行も延び延びになっていたんです。その後,改めて「岸田さんと何か作りたい人いる?」という話が出て,手を上げたのが,当時はまだ広報担当だった私でした。
岸田氏:
確か,2013年ぐらいでしたよね。
そのぐらいです。最初の「BLUE REFLECTION」は,岸田さんは総監修として開発の根っこまで関わっています。当時ガストのあった長野で,テストプレイにも参加していたほどで,もう1から10まで見ていただきましたから。
4Gamer:
いくらガストさんでも,そこまでとなると特殊な例ですよね?
細井氏:
はい,異例です。
岸田氏:
イラストレーターが,あそこまで開発に参加しているゲームは,ほかにないと思いますよ。当時はいろいろあってあまり家に帰らず,外で仕事していたのでできたことです。時間やお金は盛大に使いましたけど,後悔はないですね。
細井氏:
ガストに岸田メル部屋がありましたからね。最初はみんな「おお,岸田さんだ」ってなるんですけど,だんだんいるのが当たり前になって慣れてしまったぐらいです。ガストの近所に,行きつけのバーをいくつも作っていましたよね(笑)。
岸田氏:
めちゃくちゃな生活でしたね。絵を描いて,夜飲み歩いての繰り返し。昭和の文豪みたいなことをやっていました。
岩瀬智至CGディレクター(以下,岩瀬氏):
長野だけでなく,市ヶ谷の開発室にも何度もお越しいただきました。背景もキャラクターも,全部実機でご確認いただいたんです。
日菜子が完成して,岸田さんにお褒めの言葉をいただいた日は,「誕生日会をやるしかない!」と飲みにいったことを覚えています(笑)。
岸田氏:
開発にあれだけ関わったからこそ,今作でもそのときに共有したものを生かしてもらえたんだなと,でき上がったゲームを見て思いました。
4Gamer:
最初の「BLUE REFLECTION」では,目指したものはなんだったのでしょうか。
岸田氏:
言語化しづらいですね……。「BLUE REFLECTION」は,魔法少女,学校という分かりやすい部分が目に留まると思うんですが,それは皆さんに作品を届ける要素,売れる要素として後からくっつけたものです。
僕達としては,女の子のもっとニッチでナイーブな部分,女子学生の日常を描きたかったのですが,でもそれだけでは売り物にならないので,キャッチーなものとニッチなものをなんとかつなげました。それが「BLUE REFLECTION」の本質だと思います。
この作りは,僕の絵や作家性ともシンクロしているんです。絵作りとしては,邦画みたいな感じ……岩井俊二監督の「花とアリス」みたいな色合いが,僕らの作りたい世界観に合っているんじゃないかという話をして,色調や質感を作っていきました。
4Gamer:
開発に深く関わっていることもあって,絵だけでなく全体的な作りからして“岸田メル感”みたいなものが吹き込まれているわけですか。
岸田氏:
かなり妥協もしましたけどね。本当に大事にしたい部分をお届けするために,いろいろな部分を削ぎ落して,最後にやりたかったことをどうにか残せたみたいな作品です。続編は,そのひとかけらを残しつつ,違うガワを被せて広げた感じでしょうか。
4Gamer:
直接の続編の「BLUE REFLECTION TIE/帝」だけでなく,3作品でリブートしていますよね。岸田さんはすべてに関わっているわけで,仕事量が大変なことになっているのでは?
岸田氏:
大変なことになっています。
細井氏:
3作品合わせたら,もう4年ぐらいデザインし続けていますよね?
岸田氏:
そのぐらいになりますね。仕事としてはすごく楽しいです。こうしていこう,これにチャレンジしようと考えることが山ほどあって,消化試合みたいな仕事にはなっていませんから。皆さんにご迷惑をおかけしながら,勝手に楽しんでいます。
主人公には,岸田氏の考える最近の学生らしさを取り入れた
「BLUE REFLECTION TIE/帝」のキャラクターデザインの話に入りますが,主人公の愛央は,開発からのオーダーが先にあったのでしょうか。それとも岸田さんの提案が先なんですか?
細井氏:
愛央だけでなく本作のキャラクターは,最初からシナリオとだいたいの登場人物が土台にあって,ただ各キャラクターが持つ要素や容姿は決まっていないというところから,デザインしていただいています。
岸田氏:
シナリオが決まっていたので,じゃあビジュアルどうしよう,どういう風にキャッチーさを出していこうと決めていった感じですね。要素として決まっていたのは,使う武器ぐらいでしょうか。
そのせいか,今回は過去最高にリテイクがありませんでした。愛央のビジュアルと変身後の衣装を多少やり取りしたぐらいでしょうか。前作の日菜子や「ルルアのアトリエ 〜アーランドの錬金術士4〜」のときは,頭がおかしくなるぐらいデザインを出しましたけど。
細井氏:
これが「アトリエ」シリーズであれば直していただきたいところを密に調整するのですが,「BLUE REFLECTION」シリーズは原作から岸田さんが関わっていますから,ビジュアル感は私よりも岸田さんのほうがしっかりと持っておられるんです。岸田さんも,ガストのオーダーに沿って作るというより,自分がリードするIPだという自負で動かれていると思います。
実際,岸田さんは作品ごとに描き方を全然変えてくるイラストレーターですから,今回は,私からは良いか悪いかの印象ぐらいしか伝えていません。
4Gamer:
「アトリエ」シリーズとは絵の作り方からして違うんですね。
細井氏:
そもそも岸田さんは,私が「こうしたほうがいい」と言っても,自分の中で咀嚼できないと絶対そのとおりに出してこないタイプなんです。言ったものと全然違うものが上がってきたりしますし,途中稿も全然送ってくれなくて,いきなり彩色稿がポンと出てきます。
4Gamer:
キャクターデザインって,彩色前に詳細を詰めていくものではないんですか?
岸田氏:
迷っているときは見せますし,「アトリエ」シリーズなら0から組み立てることになるので共有の機会は増えます。ただ「BLUE REFLECTION」は,細井さんの中にもデザインの答えがありませんから,ある程度完成までもっていってから吟味した方がいいので,彩色までしてしまいますね。
細井氏:
もちろん,作業中に電話で話すとか,細かいやり取りは昼夜問わずずっとしていますよ。ただ,定例でミーティングを設けましょう,みたいなことはありませんでした。
岸田氏:
普通のゲーム会社さんとイラストレーターのやり取りと比べたら,意味分からないぐらいミーティングをしていません。
細井氏:
関係性が薄いイラストレーターさんでは,できない作り方だと思います。
4Gamer:
初期の愛央はどんなデザインだったのでしょう。
岸田氏:
最初期はこれですね。オーダーとしては,鎌を使うのと,「何の取り柄もない普通の女の子」みたいな設定があったぐらいです。普通の子って言われても,美少女を描かないことにはどうしようもないよな,みたいなところが大変でした。
4Gamer:
このイラストですと,スカートがめちゃめちゃ短いですね。
岸田氏:
僕,やりすぎちゃうんですよ。前作では,リアリティのある制服を,なるべく誇張表現を使わずに描いていました。例えば,あまりボディコンシャスじゃない,リアルな感じの布感やサイズ感にしたりとか。透けている制服とかは,よそでやりつくされているので,同じことをやっても面白くないと考えたんです。
4Gamer:
そこから一気に変わったのはなぜでしょう。
岸田氏:
嘘くさくてもいいから,あえてピッチピチなのをやろう! と思ったんですよね。女子高生とかの文化として,「チープなのも可愛いじゃん」みたいなのがあって,それを取り込んだら面白いんじゃないかなって。
ただ,ここまでやると3Dモデルが全然変わってしまいますし,ゲームに登場させるうえでいろいろと問題が起きるので,いくらなんでもやりすぎました。最終的には,これと前作の中間ぐらいになって,明るい色のスカートなどは残っています。
設定画としての完成稿はこちらですね。
4Gamer:
今回,途中稿がないというお話ですけど,細井さんからすると,いきなりピッチピチの子が提出されてきたわけですよね。
細井氏:
そうですね。
4Gamer:
細井さんは最初にこの愛央を見たとき,どういう反応だったんですか?
岸田氏:
ふーん,って感じで,事務的な反応です。細井さんはだいたいそんな感じで,いいときには「いい」とだけ言って,後はノーリアクションみたいな。ふつうなら傷つく人もいそうな対応ですけど,付き合いが長いので「今回はとくに問題ないんだな」と理解できるわけです(笑)。
細井氏:
キャラクターデザインは,パッと見で判断したくないんですよ。1日か2日置いた後に,もう1回見たいんです。いただいたときは,「なるほど,こういうアプローチなのか」と思いつつ,お礼だけ伝えて時間を置くようにしています。
愛央に関しては,後々電話で「さすがにやりすぎです」と伝えましたが,岸田さんは「やりきらないと絶対ダメです」という反応で,今作は違うデザインラインにしたいんだという強い意志を感じました。
岸田氏:
最終的には,受け入れやすいキャラクターになったと思います。
話は変わりますけど,僕は昔カチューシャが大嫌いでした。昔のアニメキャラって,よくカチューシャを着けていましたが,実際にこんな子いないだろと思っていたんです。でも今は逆に,そういう子はふつうにいるので,それならアリかなと意識が変わり,今回は愛央にカチューシャを着けました。
4Gamer:
ほかのキャラクターはいかがでしょう?
岸田氏:
今作では,デザインの進め方として,誰を主人公にするかを決めずに,最初になんとなく3〜4人並行してデザインしていきました。前作は,日菜子が中心にいて,その両サイドに夕月と来夢というのは最初から決まっていましたが,今回はメインキャラ全員が,並べたときにそれぞれ違った良さがあって,誰かが誰かを引き立てる感じではないというところを心がけています。
靭こころ |
金城勇希 |
宮内伶那 |
岸田氏:
中でもこころは,案を出した瞬間に決定して,そこから何も変わっていません。だからラフも何も残ってないんですよね。
岸田氏:
この子は,伶那と勇希の原型のキャラです。
細井氏:
岸田さんが,髪形がウェーブのキャラがほしいとおっしゃってデザインされたのですが,性格や立ち位置の都合で,2人に分かれることになりました。
岸田氏:
分かれたあとの伶那はむちむちのお姉さんだったんですが,完全にボツなデザインでした。さすがに地味すぎます。
細井氏:
何より,この伶那を採用するとむちむちキャラが多くなりすぎるんです。すでにこころが決定していたので,「4人中2人がむちむち!?」と社内で揉めました(笑)。
伶那と勇希に分かれる前のデザイン |
分かれたあとのむちむち伶那 |
岸田氏:
勇希は,黒髪ぱっつんの子を1人は入れたくてデザインしたキャラです。僕はけっこう,目の描き方を「こうするほうが可愛いから」と勝手に変える傾向があって,それでガストさんを困惑させることがあります。今回もキャラによって全然違っていて,愛央や伶那は今までと同じ表現なんですが,こころと勇希は今までまったく描いていなかった目です。
それなのに,開発チームが完璧に意図を汲んでくれて驚きました。勇希の3Dモデルはマジで可愛くて,自分で描いたのに感動したぐらいです。僕が見てきた3Dキャラの中で,史上最高に可愛いですね。
岩瀬氏:
勇希が可愛くできすぎて,先に作っていた愛央を後から一生懸命調整することになりました……。
岸田氏:
前作のときは,「3Dモデルはここをもっとこうしてください」みたいなやり取りをしましたけど,今作ではほとんど言うべきことがありませんでしたから,本当にすごいなって。
4Gamer:
前作で密にやり取りした経験が活きているのでしょうね。
前作からガラリと変わったリフレクターのデザイン
4Gamer:
リフレクターについても聞きたいのですが,前作では魔法少女でしたけど,今回ではまったく異なるデザインラインです。これは細井さんの指示なのか,岸田さんのデザインなのか,どちらなのでしょう。
細井氏:
どちらもです。1作目でやりきったので,違うラインにしようという認識をお互いがしていました。
最初に少しお話ししましたが,前作の魔法少女は,やりたいことをお客さんに届けるために後から用意したものなんです。今回は,やりたいことも届けたいものも違いますから,同じアプローチをする理由がありませんでした。もちろん,前作から続けて登場する日菜子や,アニメの設定を引き継いでいる陽桜莉は,魔法少女として登場しますけども。
4Gamer:
では,今回のリフレクターはどういったコンセプトなのでしょう。全体的にダークな雰囲気ですよね。
岸田氏:
愛央の設定的に,白ではなく黒にしようというのはすぐに決まりました。武器も鎌ですし,ヒロイックな感じよりは影があるほうが,ユーザーさんに「何かあるな」と感じてもらえると思ったので,こうしたデザインにしています。
最初は,殻のような巨大な装甲を背負っている案もあったのですが,これはSFチックだし,鎌を使うのに邪魔だろうとボツになっています。これをベースに,ファンタジー寄りにしたのが今のリフレクターのデザインです。
4Gamer:
制服のチェックが変身後に残っているのも特徴的ですね。
岸田氏:
制服といえばチェック,みたいなところがありますが,前作では変身後にあまり残さなかったので,今回は多めに使ったデザインにしてみました。
4Gamer:
脱線しますけど,前作の日菜子は大変だったというお話なので,詳しく聞いてみたいです。
岸田氏:
日菜子自体のデザインはすぐにできたんですが,リフレクターが地獄のようでしたね。
細井氏:
おしゃれというか先鋭的というか,岸田さんの中に何か新しい要素を取り込みたいという気持ちがあって,そこに対して試行錯誤し続けていた印象があります。
4Gamer:
最終的には,きらびやかな魔法少女ですけど,もっといろいろなバージョンがあったんですか?
細井氏:
ありました。最終的にこれに落ち着いた理由が,けっこう地味な方向に行きかけて,岸田さんが「自分に求められているのはロロナやトトリみたいなきらびやかな衣装だと思うんです」とおっしゃったからなんです。
登場人物が学生なので,統一感があって地味ですから,その対比としてリフレクターは求められているものにしようと。
岸田氏:
きらびやかな衣装にも,フリフリのアイドルみたいな案があったんですが,これじゃ戦えないよねとボツになり,魔法少女になりました。ただ,魔法少女で,制服モチーフでとなると,セーラー服から抜け出すのが本当に大変だなと思いましたね。ある程度「セーラームーン」みたいに残しておくべきではないか,みたいな議論もありました。
そういえば,夕月のリフレクター衣装のパンツが見えているのか見えていないのかで,細井さんと1回喧嘩しかけましたよね。
細井氏:
しましたね(笑)。
4Gamer:
ええ……。
細井氏:
見えていたら萎えちゃうでしょ,いやいや見えているのがいいんです,みたいな。
岩瀬氏:
当時は,今よりそのあたりの制限が厳しくありませんでしたからね。今では絶対に無理ですけど……。
4Gamer:
キャラクターデザインの立場から,今作で注目してもらいたいポイントはどこになりますか?
岸田氏:
表情ですね。前作からめちゃくちゃ良くなっているので,前作をプレイした方にはぜひ注目していただきたいです。あと,どこから見ても3Dモデルが本当によくできています。変身後の衣装もいいので,バンバン変身させてあげてほしいです。
細井氏:
スタッフとしても,史上最高に可愛い3Dモデルになったんじゃないかと思っています。今のガストブランドの全力を込めて作りました。
触っていただければ,「岸田メルのキャラクターってこんなに可愛いのか」と思ってもらえるものになっていますので,ぜひプレイしていただきたいです。
岸田メル氏は何者なのか
4Gamer:
こうして改めて岸田さんのイラストを見ていると,ネット上のあの面白おかしいイメージの男性から,どうしてこの淡くて繊細なイラストが生まれるんだろう,という気持ちになりますね。岸田さんのTwitterをフォローしている人なら,多くは同じ感想を持つのではないかと思うのですが(笑)。
細井氏:
岸田さんは,いち早くタレント性を発揮してきたイラストレーターさんですよね。
岸田氏:
今はVTuberの登場で変わってきましたけど,確かに男性だと限られています。
僕は演劇をやっていたので,たまたまイラスト以外のこともできただけです。
細井氏:
岸田さん,自分がイラストを描いていないゲームのイベントで,MCに呼ばれたこともありましたよね?
4Gamer:
そんなことあるんですか!?(笑)
岸田氏:
イベントのキャスティング会社からの仕事でMCすることになって,イラストの発注とは関係がなかったことはありました。コロナ禍で,そうした顔出しは減っちゃいましたけども。
4Gamer:
岸田さんの絵といえば,繊細で透明感のあるタッチですが,あれはどこから出てきているものなんですか?
岸田氏:
僕は,ありふれたものに対しては,いち消費者としてテンションが上がらないタイプなんです。なので,美少女イラストやオタクコンテンツが好きな人に向けて絵を描きつつも,ほかの好きなものや興味があるものを,自分のフィルターを通して届けようとした結果,こんな絵になっています。派手でカッコイイ表現よりは,ナイーブなものが好きなんでしょうね。
ただ,「これをフィーチャーしよう」とか「これが大好きで」みたいなのがないので,その都度その都度,好きなものとかから拾っています。言語化が難しいですけど,「ああ,いいな」とそのとき思っているものがにじみ出ているんだと思います。
4Gamer:
岸田さんが女の子を描くときに,一番こだわる部分や,描いていて楽しい部分はどこでしょうか。
岸田氏:
描いているときは何も楽しくないですよ。常に試行錯誤しっぱなしで,しんどいです。
あえて言えば,ラフや線画で「これ,もしかしていい感じじゃないか!」と確信が生まれたときは楽しいですけど,それが錯覚だったということも多いんですよね。
こだわりも絵によって違います。例えばこの絵なら,それぞれのキャラがぱっと目に入ってくることを目指しました。
岸田氏:
僕としては,この絵の見どころは,勇希の目の前にこころのおっぱいがあって邪魔そうなとこです。
4Gamer:
(笑)。
細井氏:
岸田さんは,そういうことをしますよね。この複製原画の絵もそうです。
岸田氏:
ポイントはネクタイが挟まっているところなんですけどね。でも,みんな太ももにしか目が行ってなくて,,そっちのほうが好きなんだなって思いました。下はあまり狙っていなくて,なんとなくスカートをひるがえしただけです。
僕はセクシーなポーズを描くことにまったく抵抗がないんですが,ここまであからさまにやっても印象に残らないんだと,勉強になります。
太ももですと,こっちの絵も話題になりましたよね。
4Gamer:
太っ! ってなりますよ,これは。
こうして見ると,「アーランド」シリーズの頃よりかなりむちむちになりましたね。
岸田氏:
ネットではいろいろ言われていますが,「ライザがウケたから太もも太くしよう」とかそんな話じゃないです。
もちろん,肉感的な表現のほうが今は受け入れられるから,ある程度肉感はほしいというオーダーは受けています。ただ,それと同時に,僕もいい加減おっさんなので,ガリガリの子よりはむちむちしている子のほうが好きになってきて,自分の表現にどう取り入れるかチャレンジしている最中なんですよ。
4Gamer:
岸田さんといえば儚げな少女を描くイラストレーター,みたいなイメージなので,単純にむちむちが好きと言われるとちょっと意外です。
どのぐらいのボリュームが自分にとってもユーザーにとってもいいのかは,調整しきれていませんけどね。
絵って,とにかくたくさんの人の目に触れて興味を持ってもらえれば成功だと思いますから,いろいろ描きたいです。
4Gamer:
岸田さんってそういうタイプなんですか。独特の絵を描かれる方ですから,「描きたいものを描く」というタイプで,我々はその独自性に惹かれているのだと思っていました。
岸田氏:
見られてなんぼですよ。みんなに面白いと思ってもらうために,自分が好きな要素を入れているだけです。自分の中でめちゃくちゃ表現したいものがあって,それを見てもらいたいみたいな気持ちは,あんまりないです。
顔の描き方や目の描き方にも,さほどこだわりはなくて,だから絵によって簡単に描き方を変えちゃうんです。キャラクターにもほとんど愛着がなくて,本当の意味で思い入れがあるのは日菜子ぐらいだと思います。「アトリエ」ならトトリかな。もちろん,仕事としての愛着はありますけど。
4Gamer:
キャラクターへの愛着がないのは,ご自身がデザインしたかどうかに関わらずですか?
岸田氏:
はい。二次創作で自分の好きなキャラクターを描いて楽しいみたいなオタク心もまったくないです。アニメとかも話で見るので,キャラクター単位だと見られないんですよね。
逆にトトリへの愛着はどこから来ているんです?
岸田氏:
何の障害もなく,スっと出てきたデザインなんですよ。僕がその時に何となく好きだった要素,こういう子がいたら可愛いなみたいな要素が集まってできているんです。
4Gamer:
でも,それだけはっきりと愛着がないと自覚している岸田さんから,可愛い女の子が出てくるのは不思議ですね。
細井氏:
岸田さん,K-POPは好きですよね。
岸田氏:
ああ,けっこう長いこと好きですね。一時期は日本の地下アイドルにハマっていたんですけど,それが自分の中で落ち着いて,入れ替わる形で2014年ぐらいから追いかけています。K-POPにハマってからの“好きな要素”は,今の絵に出ていると思いますよ。
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