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実は同い年であり,長年業界の第一線を走り続けてきた2人。ゲーム開発の原点から,AIの活用,インディーゲームシーンへの提言,そしてインディーゲームにとっても他人ごとではない「作品と商品の境界」まで,本音で交わされたトークの模様をお伝えしよう。
![]() 齊藤陽介氏 |
![]() 松山 洋氏 |
あの手この手で戦っていた時代
松山 洋氏(以下,松山氏):
本日はおじさん2人の対談ですが,進行は私,松山が務めさせていただきます。サイバーコネクトツーは今年で設立30周年を迎えました。実は,私と齊藤さんは同い年(1970年生まれ)なんですよ。同じ時代を歩んできた視点から,サクサクと進めていきましょう。まずは最初のテーマ,「ゲーム業界に入ったきっかけ」について。齊藤さんはそもそもどこから始まったんですか?
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齊藤陽介氏(以下,齊藤氏):
もともとゲームはある程度好きで,パソコンで遊んだりもしていたんですが,実はどちらかというとおもちゃのほうに興味があったんです。当時はまだテレビゲームの走りだったこともあって,「おもちゃのほうが情操教育に良いんじゃないか」という勝手な思い込みもありまして(笑)。
楽しい業界がいいなと思っておもちゃ業界を目指し,当時エニックスにあった「ドラゴンクエスト」のグッズ部門に入ったのがスタートです。
松山氏:
今なら完全にバンダイさんとかタカラトミーさんに行く流れやぞ?(笑)
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齊藤氏:
(笑)。で,エニックスで1年ほどグッズの仕事をしたあと,当時の部長であり,のちに社長になられた本多圭司さんから「ゲーム部門に来い」と声をかけていただいて,ゲーム部門に移りました。
最初はアシスタントプロデューサーとして「ミスティックアーク」や「ワンダープロジェクトJ」などのお手伝いを経て,30歳直前で初めてプロデューサーとして「アストロノーカ」という,AI(遺伝的アルゴリズム)を実装したゲームを作りまして。
その後はMMORPGの「クロスゲート」などを手がけつつ,「ドラクエの間にどういったタイトルを出していくか」をいろいろと頑張っていた時代ですね。
松山氏:
あのころはパッケージの時代で,とにかくあの手この手でいろいろな戦い方をしましたよね。お店ごとに予約特典を変えて,どんな面白いものをつけるかで勝負したりとか。
齊藤氏:
当時のゲーム会社は何でもやっていましたからね。私個人もプロデューサーと言いつつスクリプトも打ったり,アイテムの値段を決めたり。今のインディーゲームを作っている方々の作り方にも近いかもしれません。
ハマるのも苦労するのもオンラインタイトル
松山氏:
続いてのテーマは「一番苦労したタイトルとそのエピソード」です。苦労しないタイトルなんてないわけだけど。
齊藤氏:
そうですね(笑)。でも思い出深くて一番大変だったという意味では,やっぱりオンラインゲームの「ドラゴンクエストX」です。
実は,それまでのエニックスの流れとしては内製開発チームを持たず,社外のデベロッパさんと組んで作るのが基本でした。「ニーア オートマタ」もヨコオ(タロウ)さんがいて,プラチナゲームズさんがいて……という旧エニックススタイルに近いハイブリッドな作り方です。
ですが,「X」は初めて「全部社内で開発する」という挑戦をしたタイトルでした。オンラインゲームだからこそ小回りが利く体制にしたかったんですよ。
最初はわずか3人からのスタートで,そこから社内のプログラマーやプランナーの職種ごとに頭を下げて人を集め,チームをビルドしていきました。外部からは吉田直樹(現「FFXIV」プロデューサー兼ディレクター)を引っ張ってきたりもしましたが,ゼロからチームを作るのは本当に大変でしたね。
松山氏:
ちなみに齊藤さんは普段はどんなゲームを遊んでます? 「最近面白いと思ったゲーム」はありますか。
齊藤氏:
実は今,BitSummitに行きたくないなと思ってしまうくらい,家でガッツリ遊んでいるゲームがあるんです(笑)。自社のタイトルの「KILLER INN」というゲームで,アップデートでちょうど「NieR」コラボが始まったところなんですが。1ゲーム10〜15分で済むので,仕事で遅くなっても帰宅後に「ちょっとやってみよう」とつい遊んでしまいます。
松山氏:
プロデューサー業で忙しいはずなのに,本当にゲームをめちゃくちゃやり込みますよね。
齊藤氏:
ハマるとずっとやっちゃうんです。もともとオンラインゲームが大好きで,スクエニの合併前の話ですが,「ファイナルファンタジーXI」をやり続けて,会社を辞めようか本気で考えていましたからね。
松山氏:
それはヤバい(笑)。
齊藤氏:
そのあと他社作品だと「World of Warcraft」もめちゃくちゃやりましたし,最近でもレベルファイブさんの「ファンタジーライフ」のパッチが当たったときは,ものすごいスピードで全職業をカンストしました。
最初はカジュアルにのんびりやろうと思っていたら,完全にやめ時を見失いましたね。スマホでも「Slay the Spire」や「Balatro」はずーっとやっていて,「この人,本当に仕事してるのかな?」って思われるくらい遊んでます(笑)。
AI技術やインディーゲームシーンへのまなざし
松山氏:
続いては,今ホットな「AIを使ったゲーム開発に対する考え方」について。
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齊藤氏:
どこの会社も今はAIをめちゃくちゃ研究している段階だと思います。昔はゲーム開発エンジンなんて存在しなくてフルスクラッチで作っていましたが,ある時期からUnreal EngineやUnityといったツールが出てきましたよね。
AIもそれと同じで,「開発をより便利にするための重要なツールの1つ」として,今後も真剣に向き合っていかなければいけないと思っています。
「AIが全部作ればいい」という話ではなく,ミドルウェアやSDKのような位置づけになっていくはずです。
松山氏:
今週もカプコンさんのAIを使ったデバッグ効率化の事例が話題になっていましたね。人間がやったら5000時間かかるものを自動化して72時間で終わらせるような,効率化はAIの得意分野です。ただ,世間の「AI警察」のような過剰な反応を恐れて,使っていても言わないほうがいいという空気感もあります。
齊藤氏:
でも,そこで引いてしまうと,世界のゲーム市場において日本は置いていかれてしまう。どう向き合っていくかは,業界全体,あるいは国も巻き込んでルールを決めて真剣に考えていくべきだと思います。
松山氏:
では,今回の核心でもある「インディーゲームシーンをどう見ているか」については。
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齊藤氏:
実は私,BitSummitに来るのが初めてなんです。会場を見て,インディーゲームシーンの盛り上がりと,作品のクオリティがめちゃくちゃ上がっているのを感じました。
ただ,ツールが進化して「作りやすい環境」にはなっていますが,みんなが作れるからこそ,作品が埋もれてしまいやすいとも思います。
松山氏:
本当にそうですね。Steamでは1年間に約1万8000タイトルものゲームが発売されているわけですから。グラフィックスのクオリティが高いのは当たり前のなか,どうやって選んでもらい,広げてもらうかが大変です。
齊藤氏:
ただ「作って完成して幸せ」というだけでなく,ビジネスとしてやっている以上は,ちゃんと結果を出して次につなげられたほうがいい。作りやすくなったからこそ,「どう売っていくか,どう届けるか」を考えるフェーズに来ているのだと思います。
売れるゲームと売れないゲームの違いとは
松山氏:
では次はこちら,「売りたいと作りたい,どっちが大事?」。
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齊藤氏:
どっちも大事です(笑)。
松山氏:
わざわざ聞くなって話ではある(笑)。でも役割分担の話ですよね。
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齊藤氏:
おっしゃるとおりで,「作りたい(作品)」側に立つのがディレクターで,「売りたい(商品)」に寄るのがプロデューサーという。
たとえばアート的な「作品」であれば,極端な話,売上はあまり関係ないという考え方もあります。でも「商品」として世に出す以上は,結果を出さなければならない。
プロデューサーは「売りたい」を7〜8割,「作りたい」を2〜3割で考える。逆にディレクターは「作りたい」が8割,世の中のトレンドなど「売りたい」を2割くらいは考えているのが望ましいと思っています。
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松山氏:
規模が大きくなるほど,その役割分担と責任の所在をはっきりさせないと,結局売れないし面白くないものが量産されてしまいますからね。
齊藤氏:
情熱やモチベーションを高める時点では「作りたい」を全開にしていいんです。ただ,ひとりで抱えると逆に商売の視点で日和ってしまう部分も出てくるので,ビジネスを一緒に考えてくれる相棒を横に置くと,インディーゲーム開発も少し楽になるかもしれません。
松山氏:
では次。「売れるゲームと売れないゲームの違い」とは何でしょう。
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齊藤氏:
プロモーションの成否や,開発が長引いてプラットフォームの世代交代のタイミングを逃したなど,売れない要因はいろいろありえますが,私は売れなかったときはシンプルに「面白くなかったんだ」と自分を納得させるようにしています。めちゃくちゃ面白ければお客さんに届くはずだし,ゲームである以上は面白い必要がある。
松山氏:
今の現場で多いのは,「現状だと面白くないから,スケジュールを延ばして中身を良くしよう」と粘っているうちに,次世代機の足音が聞こえてきて時間切れ,というジレンマです。
サイバーコネクトツーなんて,スケジュールを守ったことがないですから。偉そうに言うことじゃないけど(笑)。
齊藤氏:
皆さん言いますね(笑)。でも,それで本当に面白いものができるなら,予算をやりくりしてスケジュールをコントロールするのがプロデューサーの仕事ではあります。
「ジャンプの手触りが気持ちよくないから1か月かけて直します」となったとき,その分のコストに見合う売上が伸びるのか。そういった判断をどこで,誰が下すのか。インディー・メジャー問わず,それが今後のゲーム作りにおいては大切になってくると思います。
スクエニが本気で挑む「ゲームコンテスト2026」
……と,実際には記事にはしにくい話も飛び交った今回のクリエイター対談。2人(特に松山氏)の発言のニュアンスを直に感じたい人は公式配信のアーカイブをチェックしてほしい。
対談の最後,スクウェア・エニックスとサイバーコネクトツーの最新情報や,インディーゲームシーンに向けたビッグプロジェクトが紹介された。
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齊藤氏は,5月20日に発表された「SQUARE ENIX GAME CONTEST 2026」について「うちとしても本気の取り組み。アイデアベースではなく,商品としてリリースできる完成度の高さを評価したい。発表済みの作品でも,未発売であれば応募可能なのでぜひ挑戦を!」と熱っぽく語り,ステージを締めくくった。
ゲームを単に作るだけでなく,商品として世に送り出したいインディークリエイターにとって,大いに刺激になる対談だったのではないだろうか。
賞金総額10億円。スクウェア・エニックスが,ゲーム開発コンテスト「SQUARE ENIX GAME CONTEST 2026」を発表。2026年12月15日に応募受付を開始予定
スクウェア・エニックスは本日(2026年5月20日),賞金総額10億円のゲーム開発コンテスト「SQUARE ENIX GAME CONTEST 2026」の開催を発表した。
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