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レトロゲーム即売会「RETRO GAME SUMMIT Lv.3」会場レポート。ゲームと好きの気持ちがあふれ,「クレイジー・クライマー」世界大会も開催
「RETRO GAME SUMMIT」公式サイト
ゲームと好きの気持ちがあふれる空間
「RETRO GAME SUMMIT」は「レトロゲームを未来に繋げる」をキーワードに掲げ,東京で開催されている即売会だ。第3回となる「Lv.3」には101サークルが参加し,自作の本やゲームを販売した。
軒を連ねるブースにはレトロゲームへの思いを綴った本,立体物などの作品が並び,純正コンパネのテーブル筐体で動く「キューティQ」(1979年)や,メガドライブ用に開発された新作シューティング「アーシオン」などの時代を越えたゲームも集まっていた。
タイトーとのコラボ企画「『ダライアス』キャプチャー おかし釣り」や,ゲーセンミカドによる「クレイジー・クライマー 世界大会2024」といったイベントも楽しめた。来場者の年齢層は広く,出展者との距離も近いことから,どこもかしこも和やかだった。さまざまなゲームと,好きの気持ちがあふれた,温かい空間だ。
●オニオンソフトウェア
ベテランには「100円ディスク」,最近の人には研究系同人誌でおなじみのグループ。この日は研究書「Mr.Do!大百科」など同人誌の頒布に加え,純正コンパネを備えたテーブル筐体「キューティQ」が稼働していた。思わず見惚れていると,ディスプレイ関連の部品がダウンして画面が真っ暗になり,稼働は取りやめに。来場者がテーブル筐体に手を合わせていたのが印象深い。
●負けて笑顔withさあにん@山本直人
「ファミリーコンピュータMagazine」(ファミマガ)の元編集長,山本直人氏がゲームの思い出を綴った「我が青春のテレビゲーム」を頒布していた。新刊である「第4集」の立ち読み冊子も配布していた。
4Gamerでは「ファミコン通信」2代目編集長である塩崎剛三氏との対談も掲載しているので,ぜひ読んでほしい。
ファミ通VS.ファミマガの歴史。塩崎剛三氏と山本直人氏,レジェンド編集者がマイコン誌時代からファミコンブームまでを語る
元「ログイン」「ファミコン通信」編集長である塩崎剛三氏の書籍「198Xのファミコン狂騒曲」が8月31日に発売される。これを記念し,塩崎剛三氏と「ファミリーコンピュータMagazine」元編集長である山本直人氏との対談を掲載する。ファミ通とファミマガがライバルとしてしのぎを削った日々を両名が語る。
●Studio Room IMO-CEN
下部にはアーケードゲーム基板を収納するスペースがあり,天板にはアストロシティのコンパネやアケコンなど,さまざまな入力デバイスを組み込める。オーダーメイドで手持ちのデバイスに対応してもらうことも可能。また,穴のない天板をセットして通常の机のようにも使用できる。
通常のアーケード筐体は100kg近いが,このゲーミングデスクは25kgほど。部品の状態で届くため,「筐体を買ったら,サイズの問題で玄関から搬入できなかった」という悲劇も起こりにくいという。
「IMO-CEN ゲーミングデスク」紹介ページ
●キノコ国本剛章
「チャレンジャー」「スターソルジャー」などの楽曲を手掛けた国本剛章氏は,「キノコ国本剛章History Vol.4 ボンバーキング」「スターガニアン」「HABiT!」などのCDを頒布していた。
●流線堂
「いまさら聞けないあのゲーム〜ザナドゥ編」「テスト基板 まぼろしゲーム探訪」を頒布していたブース。前者はMSX版「ザナドゥ」,後者は筐体を買うとテスト用に付属する「ドットリ君」「バタリアン」などテスト基板に関する本だ。
●斗々屋
「ダークファルス」のガレージキットをサンプル展示。また,架空横スクロールシューティング「FLYING-A」の自機を頒布していた。
●ゲー夢エリア51
「パックマン」をはじめとしたナムコ作品のキービジュアルを手掛けた山下 正氏の足跡を400ページ超のボリュームで辿る「誰がパックマンを描いたのか」,ナムコの「Mr.ドットマン」こと小野 浩氏に関する「Mr.ドットマン -小野浩 全仕事-」などを頒布していた。
●ゆずもデザイン
「レ・ゲーム史」「ウィザードリィの深淵 FC版WIZの30年」「サクラ大戦の恋情」などの同人誌を頒布していた。「レ・ゲーム史」は近年のレトロゲーム関連にあった動きが紙資料として分かりやすくまとまっている。「ウィザードリィの深淵 FC版WIZの30年」「サクラ大戦の恋情」といったシリーズは,関係者へのインタビューも掲載している。
●Tookato
MZ-700用アドベンチャーゲーム「ロポコ」とMZ-80K版,PC版「ロポコ for Steam」の実機デモを展示していた。ロボットのロポコとなって研究所からの脱出を目指すコマンド入力式アドベンチャーで,MZ-700版は内蔵のプロッタプリンターでマップを出力できる。
●堕鉱人
レジンを用いたアートを展示していた。ファミコンやスーパーファミコン用ROMカートリッジの中身(基板)を金属缶に入れ,これを固めた作品は基板の緑や端子の金色が透明のレジンに映え,不思議な美しさがある。
●Mindware
「ウットイ3671」「ホバーアタック3671」などの既存作品に加え,新作ソフト「デンシライフ 2」を出展していた。
「デンシライフ 2」はフィールド上に色とりどりの「デンシ生命体」がそれぞれの習性に基づいて動いており,これにKORGの「nanoKONTROL2」で介入。「縦風」「横風」を吹かせて移動させたり,習性を変える「突然変異」などを使ったりして,指示された色数のデンシ生命体を撮影していく。デンシ生命体は放っておいても活動し,群れていろいろな形になったり,風に吹かれてふわふわ飛んだりする。
ライフゲーム的な考え方に“撮影”の要素を取り入れた不思議な作品だ。なお,通常のキーボードとマウスでもプレイできる。音楽は「ディグダグ」「ゼビウス」の慶野由利子氏が手掛けている。
●hally(VORC)
ゲーム音楽史の研究で知られる田中 “hally” 治久氏のサークルは,10月に発売された新刊「ゲーム音楽はどこから来たのか――ゲームサウンドの歴史と構造」をはじめとした書籍を頒布していた。既刊「臺灣電視遊樂器專利圖鑑(たいわんでんしゆうらくき せんりずかん)」は台湾のゲーム産業について知見を得られる貴重な1冊。
●エインシャント
古代祐三氏が手掛けるメガドライブ用新作シューティング「アーシオン」が発売に先がけて展示されていた。メガドライブをブラウン管テレビにつなぎ,さらにラジカセで音を出力するというこだわりの環境を用意し,整理券が配られるほどの盛況ぶりだった。
●細井そうし
「ソニックウィングス」シリーズの楽曲を手掛けた細井そうし氏のサークルは,その名も「細井そうし」。この日はCDの頒布のほか,会場で個人向けに曲を制作してくれるユニークな取り組みも行われた。
4Gamerでは,26年ぶりのシリーズ新作「SONIC WINGS REUNION」発表会で細井氏にインタビューを行っている。
「ソニックウィングス」シリーズが,26年を経てよみがえる。新作「SONIC WINGS REUNION」発表会&ミニインタビューをお届け
サクセスは2024年11月8日に東京都新宿区のEXBAR TOKYO plusにて「ソニックウィングス 新作発表会」を開催した。26年ぶりとなる「ソニックウィングス」の新作「SONIC WINGS REUNION」(ソニックウィングス リユニオン)について,作品の内容や開発の経緯が語られた。
選ばれしクライマーが乱数の嵐に挑む
会場では,ゲーセンミカドとのコラボ企画「クレイジー・クライマー 世界大会2024」の決勝戦も行われた。
「クレイジー・クライマー」のアーケード版を用いて,2面をクリアした時点のスコアを競い合う特別ルールのもと,10月に行われた予選大会を勝ち抜いた4名のトップクライマーたちがぶつかりあった。アーケード版なのでBGMも当時のまま。コンドル襲来や風船を掴んだときには,著作権的にスリリングな気持ちが味わえる。
「クレイジー・クライマー」は開いた窓を手掛かりにしてビルを登り,屋上で浮遊するヘリに掴まるとクリアとなるアクションゲームだ。大きな特徴は,2本のレバーでクライマーを操る独特のシステム。レバーはそのままクライマーの両手に対応し,上に倒せば手を伸ばし,窓枠に手が触れるとこれを掴む。そしてレバーを下に倒し,身体を引き寄せて上の階に登るといった直感的な操作が可能だ。2本のレバーをリズミカルに上下させると素早くビルを登れるが,早すぎると両手の連係が乱れてしまう。
そしてクライマーの行く手には,さまざまな難関が待ち受ける。住人が植木鉢を投げ落とすばかりか,飛んでくるコンドルはフンと卵で爆撃。ビルに棲む巨大な猿がパンチを放ち,看板からは火花を散らしながらケーブルがのたくるといった具合だ。
植木鉢やフンといった落下物は両レバーを下に倒して踏ん張れば耐えられるが,クリア時に得られるボーナス点が減ってしまう。今回はスコア勝負のため,踏ん張るのではなく避けるプレイが求められる。また,プレイできるのは2面までのため,じっくり長期戦でスコアを積み重ねられない。素早く登らなければならないが,ミスも起こりやすくなる。
一番手のOGU選手は,ミスはありつつも1面をクリア。2面では鉄骨や鉄アレイが降り注ぐ中を巧みに登っていくが,ビルが狭くなっているところで再びミスしてしまった。しかし,その後は順調に歩を進め,75450点で2面を登頂しきった。
XANADU選手は「踏ん張らずに避ける」という,今大会のルールに適したスタイルで1面をすいすい登り,1ミスしつつもクリア。2面では落下物にあえなくやられてしまうが,閉まる窓をギリギリで駆け抜けていくといった攻めの姿勢を見せる。76650点をマークして,トップに立った。
TAD選手の出番では乱数の機嫌が良くないのか,1面なのに住人が激しく植木鉢を投げてくる。予選を勝ち抜いたトップクライマーだけあり,うまく避けていたが,あえなくミス。2面の鉄骨でリタイアとなってしまった。
最後に登場したNKX選手は,予選大会を1位のスコアで突破した猛者だ。クイックにビルを登っていくが,植木鉢が落ちてくる密度が高く,ミスをしつつも1面をクリア。しかし,2面の途中でミスが重なり,こちらも登頂を果たせなかった。
ビルを登っていくという基本ルールは分かりやすく,植木鉢や鉄骨を避ける際の立ち回りもすごさが伝わりやすい。あちこちの窓が激しく開閉して状況がどんどん変化するのも面白く,窓が突然閉まってコース変更を余儀なくされたり,閉まりかけた窓を強引に突破したりしていくといった見どころが随所で生まれる。2面までのスコア勝負であるため,展開が早くなると同時にミスしやすくなり,思わぬハプニングが起きて盛り上がる要因となっていた。
「クレイジー・クライマー」はプレイするだけでなく,観戦しても盛り上がるゲームであるということを再確認できた決勝大会だった。
優勝したXANADU選手には,ゲーセンミカドの経営者兼店長である池田 稔氏から賞状,サプライズとしてhally氏と古代祐三氏からグッズと植木鉢がプレゼントされた。
「RETRO GAME SUMMIT」の次回開催は,2025年3月22日に大田区産業プラザPiO 大展示ホールでの開催が予定されている。詳細のアナウンスを楽しみに待ちたい。
「RETRO GAME SUMMIT」公式サイト
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