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[GDC 2016]クラウドファンディングは開始3日で成否が決まる? キャンペーンを成功に導くコミュニティ形成とは
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印刷2016/03/15 22:08

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[GDC 2016]クラウドファンディングは開始3日で成否が決まる? キャンペーンを成功に導くコミュニティ形成とは

 PCゲームを完成させるには,少なからぬ費用がかかる。AAAタイトルなら必要となるお金の単位は「億」だし,インディーズ作品であっても日本円にして数千万の規模で開発されることは珍しくなくなってきた。
 このような状況にあって,現在,クラウドファンディングはゲーム開発資金を得るための,比較的一般的な手法として用いられている。

 だがクラウドファンディングは,大成功につながることもあれば,無残な失敗に終わることもある。果ては「必要な資金が集まってプロジェクトは立ち上がったが,いつまでたってもゲームが完成しない」といった案件すら目立つようになっている。
 そしてもっとも重要なのは,そういった案件が目立つ程度には,クラウドファンディングという資金調達方式が試みられる件数もまた増加しているということだ。つまり,クラウドファンディングもまた,成功・失敗をめぐって,激しい競争が行われる世界となっているのだ。

 クラウドファンディングを成功させるためには,どのようなコミュニティを形成し,またコミュニティをどう運営していけばいいのか。これまで幾多の案件を成功させてきた,Art&Craft EntertainmentのGordon Walton氏が,「Game Developers Conference 2016」初日のセッションで,その秘訣を語った。

Art&Craft Entertainment President and COO Gordon Walton氏
画像(001)[GDC 2016]クラウドファンディングは開始3日で成否が決まる? キャンペーンを成功に導くコミュニティ形成とは


正しい群衆を見つける


 まず最初にWalton氏は,クラウドファンディングは文字どおり,クラウド=群衆に依存した資金調達方法であり,この「群衆」というものに正しく注目・対応しない限り,成功は見込めないと語った。

 とくにクラウドファンディングで有名ないくつかのサービス(例えばKickstarterなど)は,あくまでも人が集まる場であって,それ自体がコミュニティを形成しているわけではないことに注意が必要だ。Kickstarterにプロジェクトをアップすれば,それで自然に資金が集まってくるということは,あり得ないのである。大事なのは,自分達のプロジェクトに適した群衆を,自分達の手で作り上げ,維持し,発展させることなのだ。

 そしてそのためには,まずは自分達のプロジェクトが魅力的でなくてはならない。「そんなものは,もう持ってる」と思われるようでは,そもそも話にならないというわけだ。きちんと差別化要素や独自要素を打ち出したうえで,その独自性を欲しがってくれる「自分達のプロジェクトにとって適切な群衆」を見つけなくてはならないのである。

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 さて,このような――あえて言えば都合の良い――群衆を見つけるには,何よりも初動が大切だとWalton氏は語る。「クラウドファンディングの成否を分けるのは,最初の3日間」なのだ。

 ゆえに最初の群衆としては,プロジェクト主の友人や家族が望ましい。Facebookでも何でも使って,投資を頼める人物には一人残さず頼みこむ。そうやって少しでも初動を盛り上げることは,想像される以上に重要なことなのだ。
 その上で,プロジェクトがもたらす製品を必要としている人,続いてそれを欲しがる人をターゲットとしていく。「現状に不満を抱いていて,何らかの解決策を必要としている人が,一番お金を払ってくれる」とは,Walton氏の言葉である。
 もしウェブ上に新プロジェクトを必要としている人のコミュニティが存在するなら,そこに売り込むべきなのだ。新しくコミュニティを作るよりは,言い方は悪いが,すでに存在しているコミュニティを「盗む」ほうが,ずっと効率が良いのである。

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調査なくして勝利なし


 こうして作り上げていく最初のコミュニティに対し(あるいは最初のコミュニティにより多くの人を引き込むために),何を提供すればいいのだろうか。
 「このプロジェクトが何をもたらすか」「我々はこのような唯一無二の価値を実現する」といった意志の表明は,もちろん重要だろう。それを見て,プロジェクトに対する魅力を感じてもらわねばならないからだ。
 だがそれだけでなく,次の情報が公開されるまでのカウントダウンタイマー,部分的な情報開示,ベータテストへの参加など,とにかく「何度もそのサイトを見に行きたくなる仕掛け」もまた,必要となる。

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 こうなってくると「とりあえずクラウドファンディングを始めてみました」では勝負にならないというのが見えてくる。クラウドファンディングのキャンペーンを始める前の段階で,周到な準備が欠かせないのだ。

 この準備段階は,調査と根回しから始まる。

 調査すべき項目としては,まずは市場の動向がある。今から始めようとするプロジェクトに対して,市場の需要が皆無だったり,もうほかの製品で需要が完全にカバーされてしまっているなら,勝負する前に敗北が決まっている。
 そこがクリアであれば,次にプロジェクトに注目してくれる人を探しださねばならない。なかでも,YouTuberなどの強い影響力を持った人物が注目してくれるかをチェックするのは重要だ。

 また,進行中の各種クラウドファンディングのキャンペーンを調査し,そこに比較的類似したものがないかを見ておくのも効果が高い。実際,どんなにユニークなプロジェクトであったとしても,ある程度まで似た傾向を持つプロジェクトというのは,何かしら存在する。それらの動向を調査することで,キャンペーンの成功のために何が必要なのか,投資者にどんな傾向があるのかが把握できる。

 加えて,クラウドファンディングの投資者(バッカー)は,往々にして情報を共有している。ゆえに,彼らが自分の友人であるバッカーに「こういう面白いプロジェクトがあるんだ」と語りたくなるようなストーリーを構築しておくのも,高い効果があるという。

 これらの調査が終わったら,結果を踏まえて,いよいよ実際にコミュニティを作っていく。

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「仕掛け」の準備を怠らない


 さて,コミュニティを形成していくにあたっては,プロジェクトに興味を持つ人達に対して,適切な情報を,適切な頻度で提供していかねばならない。情報の提供は,できれば毎日が望ましいので,どんな情報やメッセージを提供するのかは,事前に計画し,用意しておくべきだ。

 ここで重要になるのは,ただ情報を提供するだけでなく,きちんとコミュニケーションを取り続けていくということ。言うまでもなく,目標額に到達したからといって,製品がリリースされるまで何の音沙汰もなくなるのは論外である。

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 また,情報のハブとなる専門家に対しては,公式にサポートしていくことが重要になる。正確な情報や必要とされる素材を提供するのはもちろん,彼らがコミュニティに対して為している貢献について,公の場で謝意を示す必要がある。彼らのような人物は「チアリーダーのようなもの」なのだ。

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 これと同時に,キャンペーンの前準備を進めていく。

 具体的に,作っておくべきものとして筆頭に挙がるのが動画である。それも,できるだけたくさん。長さとしては3分程度がベストらしく,あまりに長いと逆効果になることもあるという。

 また,より多くを投資した人に向けて,どんな報酬を与えるべきかも,吟味しておく必要がある。これについては,例えばパッケージゲームにおいて,通常品よりも高額な「限定版」を作ることを想定すると,分かりやすいだろう。
 クラウドファンディングに投資する人には,「こんな素晴らしいゲームなら,もっとたくさん払っても良い」と思ってくれる人もいる。その価値評価に対し,「より多く払う」ことのメリットをきちんと(そして段階的に)作ることができれば,それはつまり「より多く払いたい」ユーザーに対して,正しい投資先を作ったことになるわけだ。

 ストレッチゴール(合計金額がより多く集まったら,より大きなプロジェクト・ゴールが設定されていくという仕組み)についても,この段階で同様に吟味しておく必要がある。適切なストレッチゴールの設定は,投資家達を大いに興奮させるだろう。

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「お祭り」の始まり


 ここまで準備が整ったら,いよいよキャンペーンの開始である。

 クラウドファンディングのキャンペーンが始まったら,そこから30日間(一般的なクラウドファンディングは,30日以内に目標金額に到達するかどうかで成否が決まる)は,フルタイムのお祭り騒ぎとなる。

 この段階で「あれが足りなかった」ということが分かっても手遅れだ。クラウドファンディングの成否は,初動の勢いでほぼ決まる。準備なしに「初動の勢い」を作ることなどできないのだ。

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 また,キャンペーンが始まったら,投資した人や,投資を考えている人々とのコミュニケーションで,完全に忙殺されるだろう。例えばKickstarterの場合,コメントが寄せられたら,理想としては15分以内にレスを返すのが望ましい。逆に24時間経過しても何らレスを返せない,返していないようでは,仕事になっていない。文字どおり,この期間は完全にフルタイムの仕事となるのである。

 ちなみに,コメントが盛り上がってくれるのは,とても望ましい状況だ。Kickstarterのコメント欄は,それだけで小さなコミュニティとも言える。が,盛り上がりが一線を超えてくると,Kickstarterのコメント欄を使って,今度はユーザー同士が議論をするようになる。Walton氏はこれを評して「1990年代のBBS(※)の悪夢が大復活だ! マジで勘弁してくれ!」と嘆いて,会場の深い共感を集めていた。言うまでもなく,こういった議論が加熱しすぎた場合,投資家のコメントに応えるだけでなく,「BBS管理人」としての仕事まで増えることになるからだ。

※Bulletin Board System(電子掲示板)。参加者自由投稿型のWebコミュニケーション,あるいはそのサービスなどを指す。1990年代後半に爆発的に広まった

Kickstarterのコメント欄に寄せられたコメント数の統計
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 また,Kickstarterのコメントだけが,クラウドファンディングにおけるコミュニティではない。YouTubeやTwitch,Facebookなどなど,現代にはSNS機能を有するサービスが無数に存在しており,そのうちのいくつかは非常に大きな影響力を持っている。

 これらの有力なチャンネルに対しても,それぞれに担当者を置いて,Kickstarterのコメント欄と同様にケアをしていくことが必要になる。この場合,それぞれの担当者の間で見解の相違が発生すると大変なことになるので,事前の意思統一は欠かせない。

 ちなみにWalton氏が成功させてきたクラウドファンディング・キャンペーンの場合,Kickstarterでプロジェクトのことを知って投資したという投資者は,全体の25%にすぎないという。残り75%は,公式サイトやGoogle検索からの流入,とくにリファラのない直接流入であったりするそうだ。これはつまり,Kickstarterのコメント欄だけに対応していたのでは,全体の25%程度の投資者としかコミュニケーションを取ることはできない,ということでもある。

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勝負の行方は最初の3日で決まる


 かくして激動の30日が経過し,キャンペーンは終わって,成功・失敗が決まる。

 失敗した場合,それでも投資者や興味を持ってくれた人々とのコミュニケーションを止めてはならない。彼らに対して謝意を示し,次に何を考えていて,どんな計画を立てているのか,情報提供を続ける必要がある。
 というのも,彼らは高確率で次回も投資してくれる人々であり,またキャンペーンの成否において極めて重要な意味を持つ「最初の投資」に寄与してくれる人々だからだ。

 成功した場合もまた,支援者とのコミュニケーションを続ける必要がある。失敗時と同じく,別のプランや計画を提示したり,また現状の進捗を報告したりすることで,コミュニティを維持していかねばならない。失敗時の場合で示したように,彼らは次のキャンペーンにおいて,「最初の投資家」になってくれる可能性が高いからだ。

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 実のところ,このコミュニケーション負荷を考えると,インディーズゲームの制作チームがクラウドファンディングを利用するというのは,存外に荷が重い仕事となることもある。小規模制作の現場では,ここまでのコミュニケーションコストを支払い続けられるだけの余力がないことが,ままあるからだ。

 さて,いろいろと具体的な数字や施策が飛び交った講演だったが,最後にWalton氏は「キャンペーンを開始して最初の3日間が勝負だ。最初の3日で目標金額の25〜40%に到達すれば,そのキャンペーンはほぼ成功する。だが25%に到達しなかったら,確実に失敗する」と強調した。現状,クラウドファンディングはそれくらい,初動が命になっているのである。

 そして今回の講演は,あくまでもクラウドファンディングの現状を踏まえたものだ。例えば2017年になって,この講演で語られたことがクラウドファンディングを成功させるにあたって有用かどうかは,誰にもわからない。そういう意味でも,クラウドファンディングの情勢からは,今しばらく目が離せそうにない。

成功したキャンペーンにおける,投資のパターン。初動とラストスパートの重みが非常に大きい
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