アニメ「ハイスコアガール」登場ゲームが四半世紀を経た現在の姿。シリーズ最新作あり，現行環境への移植あり，けっこう現役！

　ゲーマーな少年少女の物語を描くアニメ「ハイスコアガールII」の放映および配信が2019年10月25日に開始された。

　アニメ版「ハイスコアガール」シリーズは，2018年7〜9月に第1期「ハイスコアガール」（Round 1〜12）が放映，3月20日にNetflixおよびBlu-ray/DVDで「ハイスコアガール EXTRA STAGE」（Round 13〜15）が提供されており，「ハイスコアガールII」はそれらを引き継ぐ形でのスタート（Round 16〜）となっている。押切蓮介氏による原作漫画の連載は2018年9月のスクウェア・エニックス刊「月刊「ビッグガンガン」 2018 Vol.10」で完結しており，単行本は全10巻（「ハイスコアガール CONTINUE」1〜5巻＆「ハイスコアガール」6〜10巻）で販売中だ。

※「Round〜」は話数を示す。

アニメ「ハイスコアガールII」ROUND 16〜（全9話）

• TOKYO MX
毎週（金）25:05〜

• MBS（毎日放送）
毎週（金）26:55〜

• BS11
毎週（金）25:30〜

• AT-X
毎週（土）21:30〜／以降毎話リピート放送：毎週（火）13:30

• SBSテレビ（静岡放送）
毎週（木）26：03〜（2期のみ全9話）

※放送情報は変更になる可能性があります。

配信情報
ハイスコアガール　ROUND1〜15：Netflixにて配信中
第2期 ROUND16〜もNetflixにて最新話を毎週日曜に配信スタート

アニメ「ハイスコアガール」公式サイト

　劇中の時代は1991〜1996年。登場するゲームは当然ながら現在から四半世紀も昔のタイトルなので，今では遊ぶ手段が限られるようなタイトルも散見される。また，「ハイスコアガール」に登場するタイトルはアーケードゲームが多いが，それを稼働させるゲームセンターも，先の消費税増税にともなう経営企業倒産の懸念が帝国データバンクから報じられたりしている。

　そんな現実を前に，「ハイスコアガール」のような物語は，単なる「失われた過去」や「二度と戻らないものへのノスタルジー」と思う人がいるかもしれない。しかし，劇中に登場したタイトルには“現役バリバリ”なものも少なくないのだ。そんなわけで，本稿では劇中に登場したタイトルの，現在の姿を見ていきたい。

Round 1：「ストリートファイターII The World Warrior」

　「ハイスコアガール」のストーリーにおいて主軸となっているタイトルと言えば，やはり「ストリートファイター」シリーズだろう。小学生6年生の矢口春雄（ハルオ）と大野 晶が出会うきっかけになったのも，シリーズ第2作の「ストリートファイターII The World Warrior」だった。


　アーケードにおける最新作はTaito Type X4をプラットフォームとして提供されている「ストリートファイターV タイプアーケード」。家庭用には「ストリートファイターV アーケードエディション」（PS4 / PC）も展開されている。CAPCOM Fighter's NETWORKとNESiCAのIDを連動させれば，「アーケードエディション」で取得したコスチュームやカラーを「タイプアーケード」で使うことも可能だ。

　また，2017年には「ストリートファイターII」シリーズの最新作であるNintendo Switch用ソフト「ウルトラストリートファイターII ザ・ファイナルチャレンジャーズ」，2018年には「ストリートファイター」シリーズのアーケード向け12作品を収録した「ストリートファイター 30th アニバーサリーコレクション インターナショナル」（PC / PS4 / Xbox One / Nintendo Switch）が発売されたりもしている。「ストリートファイター」シリーズが現役なのはもちろんだが，「ストリートファイターII」シリーズだけを見てもやはり現役なのだ。


　そのほか，「ハイスコアガール」劇中でハルオが，PCエンジンで「ストリートファイターII」，スーパーファミコンで「ストリートファイターIIダッシュ」をプレイしているように，当時の家庭用ゲーム機では携帯機を含む大半のプラットフォームに「ストリートファイターII」シリーズ作品が移植されていた。そのため近年流行のプラグアンドプレイ型ゲーム機でも，任天堂の「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」では「スーパーストリートファイターII ザ ニューチャレンジャーズ」，セガの「メガドライブ ミニ」では「ストリートファイターII ダッシュプラス　CHAMPION EDITION」をプレイできる。

Round 2：「R-TYPE」「THE 功夫」ほか

　Round 2ではNECホームエレクトロニクス（当時）から発売されたゲーム機・PCエンジンが登場。ファミリーコンピュータやセガ・マーク3などではなく，アーケードゲームの移植に強いPCエンジンを選んだということで，ハルオのアーケード志向が強調される。ハルオが所持していたソフトは，「THE 功夫」「R-TYPE I」「妖怪道中記」「ビジランテ」「ワンダーモモ」「獣王記」「PC原人」「ダライアス・プラス」「奇々怪界」「スプラッターハウス」「源平討魔伝」の11本だった。


　まず“現役”と言えるのは，最新作「R-TYPE FINAL2」（PC / PS4 / Nintendo Switch / Xbox One）がグランゼーラによって開発中である「R-TYPE」だろう。9月に行われた東京ゲームショウ2019でようやくデモプレイ可能なバージョンがお披露目となったばかりで，リリースはまだ先になると思われるが，十数年ぶりの完全新作ということもあるので気長に待ちたい。また，初代「R-TYPE」と「R-TYPE2」の3Dリメイク版である「R-Type Dimensions EX」（PC / PS4 / Nintendo Switch / iOS）や，両タイトルのiOS/Android移植版（関連記事1，関連記事2）が販売中だ。

「R-TYPE FINAL 2」※画面は開発中のもの

「R-Type Dimensions EX」

　KONAMIから2020年3月19日に発売される「PCエンジン mini」には，「PC原人」「THE 功夫」「源平討魔伝」「スプラッターハウス」「スーパーダライアス」「R-TYPE（※）」が収録される。また，いずれもオリジナル版がベースだが，セガゲームスの「セガ3D復刻アーカイブス」シリーズで「3D　獣王記」，ハムスターの「アーケードアーカイブス」シリーズで「ビジランテ」と「奇々怪界」が発売されている。「ワンダーモモ」は2014年にShiftyLookプロジェクトから続編的なAndroidアプリ「Wonder Momo： Typhoon Booster」がリリースされたり（関連記事），10月20日に開催された「バンダイナムコエンターテインメントフェスティバル」2日目公演でフィーチャーされたりしたものの，プレイできる環境と言えばゲームアーカイブス版「ナムコミュージアムアンコール」くらしか無いのがちょっと寂しいところだ。

※当時北米で発売された「TurboGrafx-16」向けタイトルの「R-TYPE」（英語版）

Round 3：「ダライアスII」

　同級生達と共に遊園地を訪れたものの，ハルオと大野は各々抜け出し，必然的にゲームコーナーで合流する。そこで2人は「スペースガン」や「ファイナルファイト」などの協力プレイをすることになるが，最初に手を付けたのが「ダライアスII」だ。ちなみに，2人プレイ自体はRound 1において大野がプレイ中の「ファイナルファイト」にハルオが乱入するという形で行われているが，大野が率先してハルオを2人プレイに誘った（2クレジットを入れた）のは「ダライアスII」が初だったりする。

シューティングゲームが不得手ながら，ベンチシートで2人プレイが可能な「ダライアスII」にハルオを誘い，自ら2クレジットを入れた大野。ロサンゼルスの学校へ転校する前の思い出づくりとして……

　「ダライアスII」はNintendo Switch用ソフト「ダライアス コズミックコレクション」で，2画面版と海外版の「SAGAIA」バージョン1および「SAGAIA」バージョン2をプレイ可能。また，特装版の「ダライアス コズミックコレクション」およびダウンロード専売の「ダライアス コズミックコレクションCE」にはメガドライブ版の「ダライアスII」と，Sega Master System版の「SAGAIA」が収録されている。ちなみにアーケード版「ダライアスII」は2人プレイだとパワーアップアイテムが多く出現するので，共に強くなりつつ進んだり，片側を集中的に強化させつつ進んだり，あるいはアイテム争奪戦を繰り広げながら進んだりと，いろいろなスタイルでの2人プレイを楽しめる。

「ダライアスII」

「SAGAIA」バージョン1

Round 4：「熱血硬派くにおくん」

　Round 4からは中学2年生になったハルオが描かれる。ハルオは「スーパーストリートファイターII -The New Challengers-」や，革新的な3D格闘ゲーム「バーチャファイター」に熱中する一方，第2のヒロイン・小春の自宅である酒屋の店頭に設置された「熱血硬派くにおくん」など，当時すでにレトロになっていたゲームにも熱中していた。


　最近の「熱血硬派くにおくん」シリーズは，9月5日に「熱血硬派くにおくん外伝 River City Girls」（PC / PS4 / Switch / Xbox One），10月10日に「ダウンタウン乱闘行進曲マッハ」（PC / PS4 / Nintendo Switch）がリリースされ，さらに11月7日にはスピンオフ作品「熱血硬派くにおくん外伝 イカすぜ！小林さん」（PC / PS4 / Nintendo Switch / Xbox One）が発売されたりと，今まさに新作リリースラッシュの真っ只中だ。さらにDMM GAMES PCゲームフロアでは，2018年に発売された「くにおくん ザ・ワールド クラシックスコレクション」（PS4 / Xbox One / Nintendo Switch）の収録タイトルが，個別に順次リリースされている。

「熱血硬派くにおくん外伝 River City Girls」

「ダウンタウン乱闘行進曲マッハ」

「熱血硬派くにおくん外伝 イカすぜ！小林さん」

「くにおくん ザ・ワールド クラシックスコレクション」収録タイトルより「ダウンタウン熱血行進曲 それゆけ大運動会」

Round 5：「モータルコンバット」

　中学生編から登場する第2のヒロイン・日高小春は天性の格ゲーセンスを持っており，Round 5で「モータルコンバット」に触れたシーンでは，その一端が「まぐれで究極神拳を発動」という形で発揮される。


　「モータルコンバット」は順当にシリーズを重ねており，最新作は4月23日に発売された「Mortal Kombat 11」（PC / PS4 / Xbox One / Nintendo Switch）。実写取り込み＆画像加工で演出されていたFATALITY（旧日本語版における究極神拳）は，高精細な3DCGで表現されるようになり，グロさ＆爽快さは格段に進化。また，10年ほど前から他社IPとの積極的なコラボレーションを展開していて，「Mortal Kombat 11」ではターミネーター（T-800）や「バットマン」のヴィランであるジョーカーなどが参戦する。

ただし「Mortal Kombat 11」や，シリーズ初期作を収録した「Mortal Kombat Arcade Kollection」は日本向けの正規販売が行われていない。プレイするにはソフトの個人輸入など，手段を講じる必要がある

Round 6：「じゃじゃ丸ポップコーン自動販売機」

　おいしさ弾ける出来たてのポップコーン！　君のポップコーンを“じゃじゃ丸ポップコーンの術”で，もっともっと美味しくするから，もう少し待っててね！　おいしくなぁれ，ぽこぽこぽ〜ん♪

　そんな楽しいボイスが流れる，じゃじゃ丸くん型のポップコーン自動販売機「じゃじゃ丸ポップコーン自動販売機」（そのまんま）。「スーパーストリートファイターIIX -Grand Master Challenge-」のソロ台が入荷されたショッピングセンターのゲームコーナーで，そのポップコーンを頬張りながらハルオはプレイ順を待つ（そして待ちきれず対戦台のゲーセンへ向かう）。


　今でも「じゃじゃ丸ポップコーン自動販売機」は少数の筐体が日本各地で稼働しているようだが，遭遇できる機会は稀だ。ただ，ボイスを含む「じゃじゃ丸ポップコーン自動販売機」のBGMは，シティコネクションのクラリスディスクレーベルからiTunesやAmazon Music，Spotifyなどで配信されている。


　シティコネクションは「忍者じゃじゃ丸くん」シリーズの6タイトルを収録したNintendo Switch用ソフト「忍者じゃじゃ丸 コレクション」を12月12日に発売する予定だ（PS4版は発売日未定）。ポップコーン調理機能を搭載していないPS4 / Nintendo Switchに「じゃじゃ丸ポップコーン自動販売機」を移植することは当然ながら不可能だが，同作にはオマージュ要素の「じゃじゃバンク」が登場する。

ゲームプレイで得られる「ジャレコイン」を貯めることで，楽曲や設定資料ギャラリーが解放されていく「じゃじゃバンク」

「忍者じゃじゃ丸 コレクション」に収録の「じゃじゃ丸の妖怪大決戦」には，高田馬場＆池袋ゲーセン・ミカドのマスコットキャラクターである“ミカドちゃん”が参戦する。ミカドちゃんは押切氏がデザインしているので，「ハイスコアガール」ファンとしても見逃せない新要素だ。なお初期状態では使用できず，発売後のアップデート（無償）適用による解禁を待つか，クラリスショップの店舗特典である先行解禁のプロダクトコードを使う必要がある

Round 7：「ワールドヒーローズ2 JET」

　新声社のアーケードゲーム情報誌「ゲーメスト」を読みつつ昼飯を食べ，当時の格ゲーブームに乗って現れた数々のタイトルに思いを馳せるハルオ。そこで浮かび上がっていた格ゲーの1つが，ADKがMVS向けに開発した「ワールドヒーローズ2 JET」だった。


　現在，ヒーローズが刊行する漫画雑誌「月刊ヒーローズ」で，「ワールドヒーローズ」のコミカライズ版が連載されている。執筆はADKで「ワールドヒーローズ」シリーズの企画・開発に携わっていた横尾公敏氏が自ら行っている。


　ゲーム自体はハムスターの「アケアカ NEO GEO」シリーズで全作（初代，2，2 JET，パーフェクト）が配信中。また，「SNKヒロインズ Tag Team Frenzy」（PS4 / Nintendo Switch / PC / AC）」にジャンヌが参戦している。

「アケアカNEOGEO ワールドヒーローズ2 JET」

「SNKヒロインズ Tag Team Frenzy」

Round 8：「バブルボブル」

　修学旅行を抜け出して参加した大阪の「スーパーストリートファイターIIX」大会で大野を下して優勝するが，その勝利が大野側のコンパネ不調によるものだと知り，それを訴えなかった大野に激昂するハルオ。そして帰路の河原で行われる2人の殴り合い……と言うより，気遣いを解さないハルオに対する，大野によるほぼ一方的な制裁。2人が殴り合う（と言うか大野が殴り続ける）夜の河原に人通りは無く，その様子に慌てふためくのは「バブルボブル」のバブルンなどゲームキャラクター達だけ。


　ゲームプレイのシーンは描かれないものの，「バブルボブル」はこういった形で節々に登場するので，ハルオ的にはお気に入りらしい。その最新作であるNintendo Switch用ソフト「Bubble Bobble 4 Friends」が，ヨーロッパで2019年11月19日，北米で2020年Q1に発売される予定だ。欧米向けのプレスリリースによると，ヨーロッパ先行なのは現地で「バブルボブル」の人気がとくに高いためであるとのこと。開発は国内で行われているようだが，日本国内での展開についての告知は今のところ出されていない。こちらにも期待したいところだ。

Round 9：「カラテカ」

　ハルオが進学について悩みながらプレイし，スタート直後に後退して転落，ゲームオーバーという演出でハルオの心境を現していた「カラテカ」。少し前の話ではあるが，2012年にLiquid Entertainmentによるリメイク作品の「KARATEKA」（PC / PS3 / Xbox 360）がリリースされている。


　ハルオがプレイしているファミリーコンピュータ版「カラテカ」からして，目線を外さないタイプのお辞儀をしたり。コンドルがふよふよ飛んでいたりと珍妙な雰囲気が醸し出されているが，リメイク版はヒロインのマリコ姫に惚れ込んだ修行僧と巨漢（どちらも空手家ではない）も悪党・アクマ討伐に馳せ参じるなど，珍妙ぶりがパワーアップ。ちなみに初代「カラテカ」のAtari ST版では，和風な世界なのに主人公やマリコ姫が金髪だったりもしたので，おそらく分かってやっているジョークなのだろう。

複数のプラットフォームでリリースされているが，日本からはSteamでの購入が一番わかりやすい，リメイク版の「KARATEKA」

　なお，リメイク版では後退が行えず，崖から落ちることもできない。開発者のジョーダン・メックナー氏は海外メディアのインタビューに対して「can't surprise people twice the same way（同じ手段で人々を二度は驚かせられない）」と語っており，旧作と同じジョークを繰り返すことを意図的に避けたようだ。

どうしても冒頭で後退して崖から落ちたいなら，DotEmuが販売している「Karateka Classic」（iOS / Android）をプレイしよう。これはApple II版の移植なので，好きなだけ後退したり崖から落ちたりできる

Round 10：「THE KING OF FIGHTERS '94」

　高校1年生になり，セガサターンを入手したが，高ランク校の不合格を引きずってゲームの腕もゲーセンで戦う心も鈍ってしまったハルオ。ゲーマーとして成長した日高に「THE KING OF FIGHTERS '94」などの対戦で完敗したことで，格ゲー再修行を決意する。


　「THE KING OF FIGHTERS '94」は，「餓狼伝説」と「龍虎の拳」のキャラクターが共演し，さらに「怒」や「サイコソルジャー」のキャラクターもセルフオマージュ的に登場，しかもキャラクター数が（当時としては）膨大とあって，ネオジオファンに衝撃を与えたタイトルだ。KOFシリーズの最新作は2016年にPS4版がリリースされた「THE KING OF FIGHTERS XIV」（PS4 / PC / AC）で，グラフィックスが3D化されたり，新キャラクターのシュンエイをはじめとした新機軸のストーリーが展開されたりと，大幅なリニューアルが図られている。

　そのほか，3Dアニメ化，漫画化，乙女ゲーム化，ギースが「鉄拳7」に参戦，舞とクーラが「DEAD OR ALIVE 6」に参戦，テリーが「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」に参戦，庵が異世界に転生など，スター揃いのKOFファミリーは今日も（ツッコミどころを節々に作りつつ）大活躍だ。アバター系のコラボも「ファンタシースターオンライン2」や「荒野行動」などで，幅広く行われている。

1990年代初頭は「龍虎の拳2」のギースや「餓狼伝説SPECIAL」のリョウといったゲスト参戦ですらインパクトがあり，まして「KOF94」での正面対決は衝撃的だった。あと2010年の生身で空飛ぶ「KOF SKY STAGE」も，別の意味で衝撃的だった

Round 11：「真SAMURAI SPIRITS 覇王丸地獄変」

　格ゲーの再修行に勤しみ，まず逆さ視点プレイでの「イーアルカンフー」100面突破を達成したハルオは，続けて同級生から借りたネオジオCD版「真SAMURAI SPIRITS 覇王丸地獄変」に挑む。しかしネオジオCDと言えば，今でも語りぐさなのがローディング時間の長さ。アニメ版「ハイスコアガール」では，実尺でローディング画面が放映され，当時を知る人達を中心に話題となった。

絵合わせのアニメーションが延々映し出される，「真SAMURAI SPIRITS 覇王丸地獄変」の長いローディング。ただ，初期にリリースされたネオジオCD用ソフトのローディング画面はサルがお手玉をするだけだったので，それよりは多少退屈が紛れるだけマシだ。ちなみに“ロード画面でお手玉する猿”は，最新作の「SAMURAI SPIRITS」（PS4 / Nintendo Switch / Xbox One/AC）でも鳥獣戯画風になってオマージュされたりもしている

　今思うとネオジオCDの仕様はいろいろと無茶が感じられるが，すべてはアーケードゲームを安価で家庭に届けるという熱い想いのため。そんな家庭用ネオジオの系譜を受け継ぐのが，2018年7月に発売された「NEOGEO mini」だ。40タイトルが収録されていて，ステイトセーブ/ロード機能などもあるうえ，価格はなんと1万1500円（税別）。かつてのROM版NEO・GEO（AES）のカセットは1本で3万円以上したので，それに比べれば微々たる額とさえ言える。

「NEOGEO mini」の「サムライスピリッツ限定セット 覇王丸 ver.」このほか，「ナコルル ver.」と「橘右京 ver.」，さらに黒子をイメージした「サムライスピリッツ特別限定セット」も発売された

　「NEOGEO mini」は，カラー/収録タイトル違いの製品として，クリスマス限定モデルや「サムライスピリッツ」限定モデルが発売されているのもユニークなポイントだ。そのほか，「NEOGEO mini」やPCのコントローラとしても，単体のプラグアンドプレイ機としても使える，「NEOGEO Arcade Stick Pro」が今秋発売となる。

Round 12「Dの食卓」

　相変わらず格ゲーの腕前では大野にも日高にも敵わないハルオだが，再修行の成果もあり，両者に抱いていた苦手意識を克服。そして，もうすぐリリースされる「鉄拳2」の前にやりこんでおきたいからと，日高からPlayStationと家庭用「鉄拳」を借りることになる。


　そのお返しとして，ハルオは日高にセガサターンと数本のソフトを貸す。その中の1本は，ワープが開発し，アクレイムジャパンが発売した「Dの食卓」だった。同作は，プロデュース＆ディレクションを故・飯野賢治氏が務めた3Dアドベンチャーゲーム。今の目で見るとゲームとしては厳しいところは否めないが，新進気鋭の若手（当時の飯野氏は25歳）クリエイターが，3DCGムービーという目新しいものを使って，これまでの世の中に無かったスタイルのゲームを作ったということで，ゲーム業界に大きな衝撃を与えた。セガサターンやPlayStationの時代は，新規参入のゲームスタジオや新機軸のゲームジャンルが多く，良くも悪くもカオスな雰囲気が醸し出されていたが，その時代性を代表するタイトルのひとつである。



　そんな「Dの食卓」の，海外で当時リリースされたMS-DOS版を現代の環境に移植したものが， Throwback Entertainmentによって2016年にGOG.comとSteamでリリースされている。日本語は収録されておらず，DOS版ということもありグラフィックスはより“当時感”のあるものとなっているが，飯野氏の鬼才ぶりを現在でも気軽に味わえるのは嬉しいところだ。

いろんな意味で“当時感”があるPC移植版。なお“PlayStationを借りたお返し"の1つがセガサターン版「Dの食卓」というのは，飯野氏の次作「エネミー・ゼロ」が辿った変遷を思い返すと，ジワジワとした笑いがこみ上げてくる

Round 13：「ぷよぷよ」

　自宅でのゲームプレイを禁じられている大野に対し，専属ドライバーのじいやはゲームギアとカーアダプタ（シガーソケット用給電器），数本のソフトを提供する。それは大野の家庭教師・業田萌美に発見されるまで，大野にとって貴重な憩いの場だった。ソフトのラインナップは「餓狼伝説スペシャル」や「サムライスピリッツ」などの格ゲーと「スペースハリアー」，そして「ぷよぷよ」だ。

真っ先に大野がプレイしたのは「モータルコンバット 神拳降臨伝説」なのだが，モータルコンバットは先に取り上げたので，このRoundは「ぷよぷよ」にフォーカスしたい

　先述の「ストリートファイターII」同様，「ぷよぷよ」も大ヒットにより当時のゲーム機の大半に移植されていた。ゲームギア版は，ぷよの形状が簡略化されていたり，まんざいデモが省略されていたりするものの，当時「どこでも遊べるカラーのぷよぷよ」はこれしかなく，唯一無二の魅力があった。

※画像はニンテンドー3DS向けバーチャルコンソールのゲームギア版「ぷよぷよ」のもの

　「ぷよぷよ」シリーズの最新作となるのは，対戦に特化した「ぷよぷよeスポーツ」（PS4 / Nintendo Switch / AC / PC）だ。本作は「全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2019 IBARAKI」で「小学生の部」が設けられるなど，低年齢層でも比較的気軽に参加できるeスポーツ種目として各種イベントで活用されている。また，ゲーム機1台での対戦が可能なうえ，Nintendo Switch版ならJoy-Conを2つに分けることでおすそわけプレイが可能なので，「どこでも遊べるeスポーツ」として，今もまた唯一無二の魅力を発揮している。

Round 14：「首領蜂」

　大野が徹底的なゲーム＆交友禁止令で窮地に立たされる一方，ハルオは日高から交際をかけた3本勝負を挑まれ，別の意味で窮地に立たされる。ハルオは辛くも激闘を制する（そして顔面に掌底を食らったうえ，しこたま殴られる）が，大野が来なくなったゲーセンはやるせなく，手慰みにいろいろなゲームをプレイしてみる。その1つがケイブの「首領蜂」（どんぱち）だった。


　ケイブのシューティングゲームは弾幕の濃密さが有名だが，第1作である「首領蜂」は旧来的なシューティングゲームのスタイル（と言うより東亜プランのテイスト）を素直に継承しており，“弾幕シューティングらしさ”は萌芽が見られる程度だ。ただ，ショットボタン押しっぱなしで発射するレーザーや，スコア稼ぎに重要なコンボシステム，高得点アイテムの蜂などは，この時点ですでに確立されている。

　「ゴシックは魔法乙女〜さっさと契約しなさい！〜」（iOS / Android）のスコア稼ぎで重要なコンボシステムも，大元は「首領蜂」だ。「首領蜂」そのものではないが，シリーズ第2作「怒首領蜂」のTYPE-A自機およびTYPE-B自機が美少女になったキャラクターや，「怒首領蜂大復活」のエレメントドーター達などが参戦していたりもする。

美少女になった最終鬼畜兵器や，美少年になったゴットヴィーン・ロンゲーナー大佐も登場した。なお美少年大佐は強化するとロマンスグレー大佐に戻る

Round 15：「RPGツクール-SURER DANTE-」

　ハルオはゲーセンで接触してきた大野の姉・真から提案を受け，スーパーファミコンの「RPGツクール-SURER DANTE-」で“大野のためのゲーム”を制作し，大野に贈る。萌美は大野がプレイしている様子に気付き，ソフトもハードも捨ててしまうのだが，悲嘆に暮れる大野の姿を見て自責の念に駆られて単なる“邪魔者”として見ていたハルオに改めて向き合い，大野とハルオの接触を消極的ながら容認するようになる。


　結果的には大野とハルオを再会させることになった立役者である「RPGツクール-SURER DANTE-」。PC-98用ソフト「RPGツクール Dante98」の簡易版であり，機能や容量に乏しかったうえ，作成したゲームのシェアすらハードルが高かった（ソフトを直接貸すか，周辺機器「ターボファイルツイン」が必要）が，それでも「自作ゲームを誰かに遊んでもらう」という希少な体験をゲーマーに与えてくれた。

「ゲームってスゴイね。ただ遊ぶだけじゃなくって，これだけ人との関係値ができちゃうんだもの」と語る大野姉

　「RPGツクール」の最新作は「RPGツクールMV」で，素材追加DLCのリリースは前作「RPGツクールVX Ace」に向けたものも並行して行われている。また，アクションゲーム制作向けの「アクションゲームツクールMV」や，ビジュアルノベルゲーム制作向けの「ラノゲツクールMV」も販売中だ。

　「RPGツクール95」以降のPC向け「ツクール」シリーズは制作物の商業利用が可能となっており，Steamなどで多くのツクール製ゲームが販売されている。「RPGツクール-SURER DANTE-」では“友達に遊んでもらう”のが関の山だったが，今は全世界の人々に自作RPGをプレイしてもらうことが可能だ。

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　ここまで見てきたように「ハイスコアガール」登場作は，単にIPの版元が健在というだけでなく，けっこうな割合で新作や最新環境に対応したバージョンが現在も作られ続けている。劇中の時代背景は約25年前だが，“リアルタイム世代ながら記憶はおぼろげ”という人よりも，最新のゲームを幅広く追っている人のほうが，グッと来る場面が多いのではないだろうか。

　ただ，ゲーム自体は存続していても，ゲームを取り巻く環境は大きく変わった。もしハイスコアガールの現代版があったら，「ゲームセンターのストVタイプACで邂逅し，前世代ハードながらアーケード移植が豊富なXbox 360を楽しみ，ダライアスバーストACで思い出を作り……」というシチュエーションもを考えられなくもないが，そうなるとマニアックさの方向性がちょっと違ってくる。「ハイスコアガール」の物語は，やはり1990年代だからこそ成立するものだ。

　そんな時代を背景にハルオや大野が繰り広げる戦いは，1996年の「スーパーストリートファイターIIX」全国大会と，その後の“ラストバトル”を経てゲームオーバーとなる。結末では，原作読者もご存知のように“ひとつのステージが終わる”ことになるのだが，あのCPシステムIIやMVSに彩られた恋（いと）しさ溢れる時代が，物語と共に終わることにはせつなさも否めない。

　今もまた目まぐるしい栄枯盛衰の真っ只中にあるゲーム業界ではあるが，「フォートナイト」の世界大会で16歳のKyle Giersdorf氏が優勝し，TGS 2019の“パズドラチャンピオンズカップ”では中学生のゆわ氏が優勝，「鉄拳7」でも高校生のB氏が日韓対抗戦で大活躍するなど，新世代ゲーマーの隆盛には未来への心強さを感じる。選手でなくとも，今の若きゲーマー達がいつか漫画家や小説家になって，「PS4やNintendo Switchといったレトロゲームの時代に黎明期のeスポーツ選手を目指す少年少女の物語」などが生まれることもあるはずだ。そして，ゲーマーがいる限りゲームは続いていく。

　そう，ゲームとゲーマーの物語は“恋（いと）しさと せつなさと 心強さと”を繰り返し，どこまでも続いていくのだ。……「ハイスコアガール」の主軸が「ストII」なだけに！　「ストII」なだけに!!