インタビュー
DMM GAMES 10周年インタビュー。代表の村中悠介氏と設立のキーマンである川端祐喜氏に聞く,DMM GAMESのこれまでと今後の展望
DMM GAMESの始まりは2011年12月。一事業所のPC用プラットフォームとしてサービスがスタートし,2018年3月には独立,分社化し合同会社DMM GAMESに。2020年4月には社名をEXNOAと改め,PC,ブラウザ,コンシューマ,スマホなどさまざまな形で国内外のゲームをパブリッシングするゲームブランドとして幅広いサービス展開を見せている。
そんな同ブランドの10周年を記念し,DMM.com最高執行責任者(COO)で現在のEXNOA代表の村中悠介氏と,DMM GAMES立ち上げのキーマンである川端祐喜氏にインタビューを行い,立ち上げから現在,そして今後の展開を語ってもらった。
DMM GAMES 10周年記念ポータルサイト
DMMの強みを活かし,ゲームで新たなサービスを
4Gamer:
10周年おめでとうございます。さっそく“DMM GAMESの10年の歩み”をテーマに話をうかがいたいと思います。
現在は合同会社EXNOAのゲームブランドとして展開するDMM GAMESですが,その始まりはDMM.comの一事業所でした。そもそもなぜゲーム部門を立ち上げたのか,その経緯を教えてください。
川端祐喜氏(以下,川端氏):
当時はMobageやGREEなどのガラケー(フィーチャーフォン)向けゲームサービス全盛の時代で,DMMも自社の強みを活かしたゲームコンテンツを揃えて,何かできるのではないかと。
4Gamer:
なぜ川端さんが立ち上げに関わることになったのでしょう。
川端氏:
当時,デジタルコンテンツのマーケティング責任者をやっていたのですが,直属の上司がゲーム事業の起案者ということもあり「創業メンバーとして一緒やらないか?」と声がかかったことがきっかけとなりました。
4Gamer:
プラットフォームとしてまず必要なのがコンテンツです。DMM GAMESに関わり,仕事として初めてゲームを取り扱うことになったかと思うのですが,それらはどのように揃えていったのでしょうか。
先ほど“DMMの強みを生かしたゲーム”という話がありましたが,立ち上げ時はどうだったのでしょう。
川端氏:
DMMは多くの事業やコンテンツを持つ企業なので,それらを活かしたゲームを主力にコンテンツの充実を図っていきました。新参のプラットフォーマーとして,まずはサービスの認知を広げることが重要で,そういう意味でも,ゲームサービスの以前からある“DMMプラットフォームの資産”を活用していこうというのがありましたね。
4Gamer:
村中さんはDMM.comの取締役に就任された時期だったかと思いますが,当時のDMM GAMESの動きをどのように見ていたのでしょう。
村中悠介氏(以下,村中氏):
直接関わってはいませんでしたが,グループにとって大きなプロジェクトでしたし,今後への投資という意味でも重要な事業だったのでもちろん注目していました。私もエンターテイメント系の事業やコンテンツに関わってきていたので,そういう点でも気にはしていましたよ。
艦これのヒットやコンテンツの充実で,DMMグループにとって重要なプラットフォームへと成長
4Gamer:
DMM GAMESの名が広まるきっかけとなったのが,2013年4月にリリースされた「艦隊これくしょん -艦これ-」の大ヒットだったと思います。それによってDMM GAMESを取り巻く環境も大きく変わったのではないでしょうか。
「艦隊これくしょん -艦これ-」の正式サービスが本日スタート。100隻以上の艦娘(かんむす)を育成して,無敵の連合艦隊を作り上げるのだ
角川ゲームスとDMM.comは,艦隊育成ゲーム「艦隊これくしょん -艦これ-」の正式サービスを本日開始した。プレイヤーは,100隻以上の艦艇を集めて,艦隊を編成したり近代化改修(合成)を施したりして無敵の連合艦隊育成を目指すことになるのだが,それぞれの艦艇が少女に擬人化された艦娘(かんむす)であるところが最大のポイントだ。
川端氏:
確実に変わりましたね。大きいところだと,プラットフォーマーとして,それまで以上に多くのゲームをサービスできるようになったことです。パブリッシャー様側の立場になると当然なのですが,ゲームプラットフォーマーしては認知もトラフィックも他社実績もなかったので。
4Gamer:
コンテンツを揃えるため,メーカーに「DMM GAMESでゲームを出しませんか?」と提案をしに行くことがあると思うのですが,そのあたりは反応が大きく変わっていそうです。
川端氏:
そうですね。それまでは門前払い……というとちょっと大げさかもしれませんが,なかなか話を聞いてもらえなかったんです。それが,艦これのプラットフォームとしてDMM GAMESが認知されるようになってからはスムーズに話が進むようになり,メーカー様の方から声を掛けていただくことも増えました。
村中氏:
グループ内に与えた影響も大きかったです。DMM GAMESはもともとコンテンツ事業のなかでも重要度の高いものでしたが,艦これの登場でさらにそれが増した感はありました。
4Gamer:
2015年1月には「刀剣乱舞-ONLINE-」がリリースされ,これも艦これ同様にゲームファンに留まらない大きな話題作となりましたね。個人的にはその前年(2014年)の東京ゲームショウ初出展にも驚かされました。
川端氏:
艦これがキラーコンテンツとなり,ほかにも人気のあるタイトルが出揃ってきた時期ですね。コンテンツが揃ってきたことで,それをアピールするプロモーションに注力し始めたころでもありました。
TGS出展はゲームファンの皆さんへのアプローチはもちろんですが,ゲーム業界内でのつながりを広げる意味でも重要でした。国内のメーカーだけでなく,海外のパブリッシャやデベロッパにDMM GAMESを知ってもらえたのは思いがけない収穫でしたね。
4Gamer:
そこから少し後の話になりますが,2016年6月の「エルダー・スクロールズ・オンライン」を皮切りに,同年8月の「War Thunder」や2017年12月の「PUBG: BATTLEGROUNDS」,2018年11月の「IdentityV」(第五人格)といったように,海外タイトルの国内サービスを担当するようになりましたね。
そのあたりも,TGS出展がきっかけになっているのでしょうか。
川端氏:
影響はあったと思います。世界的に注目度が高い,日本を代表するゲームイベントなので,やはりブース出展へのモチベーションも高かったようで,海外メーカー様へのアプローチの1つとして提案させていただくこともありました。
そういった例だと,PUBGは海外版リリース直後からアプローチを始め,国内でも流行し始めたeスポーツを意識し,当初から大会運営も考慮した提案をしました。日本でプロリーグができたのも,そういった営業の賜物です。
4Gamer:
ブラウザゲームの話に戻りますが,2015年から2017年までの期間に,「FLOWER KNIGHT GIRL」「御城プロジェクト:RE〜CASTLE DEFENSE〜」「文豪とアルケミスト」といった,現在も人気のタイトルを含む,多くの話題作やヒット作がリリースされました。
この時期って,社内はいったいどんな雰囲気だったのでしょう。
川端氏:
右肩上がりで業績が伸び,6期連続増収増益を達成したことによってかなり勢いがありましたね。「もっと良いゲームをたくさん出そう」と盛り上がっていて,実際,多くの方々に満足いただけるタイトルを世に送り出すことができ,コンテンツを充実させることができました。
4Gamer:
2017年11月には,コーエーテクモゲームスが開発を担当する「DEAD OR ALIVE Xtreme Venus Vacation」のサービスが始まりました。当時は驚かされましたが,のちに「刀剣乱舞無双」(PC / Switch。2022年2月発売予定)につながっていくとなると,いちゲームファンとしても感慨深いものがあります。
川端氏:
DOAXVVはDMM GAMESのユーザー層とマッチした部分もあり,高い評価をいただけました。これによって信頼をいただけたと思いますし,ビジネスとしてもその先につながる重要なタイトルとなりました。
会社全体で課題に向き合い,より信頼されるプラットフォームを目指す
4Gamer:
2018年3月に一事業部から独立,分社化し合同会社DMM GAMESが設立されました。引き続き多くのブラウザゲームタイトルの運営を行いながら,2019年7月発売の「キングダムカム・デリバランス」(PC / PS4)あたりからオンラインゲーム以外にも海外タイトルのパブリッシングが増えていきます。
そして2019年5月には,村中さんがDMM GAMESのCEOに就任されることになります。初めてゲーム事業に関わることへは,どのような思いがあったのでしょう。
村中氏:
4Gamer:
エンタメ枠で見れば,未知のものではなかったと。
村中氏:
そうですね。あと,DMM GAMESができてから,全く関わっていなかったわけでもなくて。とくにアニメはゲームと連動して展開することも少なくないので,直接ではないにしてもゲームに関連したものはそれまでにもあったんです。
4Gamer:
たしかに,メディアミックス展開の一つのような形でブラウザゲームがリリースされたアニメ作品がいくつかありますね。
村中氏:
はい。あと,そもそも私自身がゲームが好きなんですよ。子どものころからこれまで,各時代のいろいろなコンシューマ機で遊んできましたし,オンラインゲームやソーシャルゲームもプレイしていましたから。
会社内に「Call of Duty」のサークルみたいなものがあって,仕事が終わったらゲームの世界で社内の人間とまた集まって……みたいなこともしていました(笑)。
4Gamer:
“社内のゲームサークル”と聞くと,なんかこう,ガチな感じがあります(笑)。
村中氏:
そういったわけで,いちユーザーとしても,ゲームはエンタメの中でも独特の面白さや魅力があるものだということはよく理解していたんです。
あと,川端とはだいぶ長い付き合いですし,ほかのDMM GAMESのメンバーも見知った面々という感じでしたから。そういった意味でもやりやすさはあったかなと思います。
4Gamer:
では,そんなゲームの心得ありな村中さんは,DMM GAMESのCEOとなってまずどのようなことをされたのでしょう。
村中氏:
ゲームに関わる各セクションのリーダーを集めた合宿ですね。そこで,これまでの課題と「これから何をすべきか」を話し合いました。運営やサービス中のタイトルなどをしっかり見直し,今後に向けて何を改め,何に力を入れていくかを考え直すべきだと思ったんです。
4Gamer:
勢いのある雰囲気だったという2015年から2017年まではもちろん,それ以降も多くのタイトルがリリースされ順風満帆に見えるのですが,このときはいろいろと課題を抱えていたのですか。
村中氏:
「順風満帆で羽振りもよさそう」みたいに見られがちですが,そんなことはないですよ(笑)。プラットフォーマーとして今あるコンテンツを充実させながら,一方で新しいものも生み出さなければいけないわけですから。
川端氏:
先ほどもお伝えしたとおり,立ち上げから2017年までの6期,右肩上がりで業績を伸ばしてきたのですが,そこからは横ばいが続いていたんですね。以前と同じ手法では業績を上げるのが難しくなってきたんです。
村中氏:
ゲームの開発期間はだいたい2年くらいと考えると,私がCEOに就任した2019年というのは,勢いのあった時期に動き始めたタイトルがリリースされた年です。
開発が始まったのがそういう時期なので,まずシンプルに,かなり数のタイトルが動いていたのですが……こう言ってはなんですが,やはり数が多くなるとそのぶん,クオリティの面で見直さなければならないタイトルも増えるのだと感じました。
4Gamer:
リリース本数に対しての一つ一つのクオリティという点は,たしかにユーザーも敏感に反応する部分かもしれません。
村中氏:
はい。たくさんのコンテンツを揃えるのは重要なことですが,ある程度そのあたりはクリアできた。このあたりで“量より質”をもう少し考えるべきではないか感じたのが,合宿を行った理由の一つとなっています。
実際,この合宿以降に,開発中のものを一度止めて作り直すところから始めたタイトルもいくつかあります。リリース時期を延期することは忍びないのですが,良いものを届けるためにはと思い決断しました。
“過去のDMM GAMESに勝つ”べく,新たな強みを持ったコンテンツを生み出す
4Gamer:
開発期間がだいたい2年という話で言うと,今年(2021年)がまさに合宿の成果が出た年となるわけですね。
パッと思いついたところだと,リアルチャットでキャラクターと会話する「プラスリンクス 〜キミと繋がる想い〜」や,ブラウザゲームならではの遊びやすさがありながら硬派なゲームシステムを持った「れじぇくろ! 〜レジェンド・クローバー〜」はかなり印象的でした。
川端氏:
ありがとうございます。そうですね。2021年にリリースされたゲームは,それぞれで異なる作風やアピールポイントがあって,それをしっかり打ち出した形でリリースできたと思います。
これはゲーム性といった話だけではなく,サービスもですね。近作ではブラウザだけではなく,PCとスマホにも向けたマルチプラットフォーム展開を行っていて,それは今後スタンダードなスタイルになる予定です。
4Gamer:
スマホでゲームをする層にもリーチしますね。あと,データ連動できるタイトルだと,家ではゆっくりPCで楽しみ,移動中はスマホでキャラ育成のための周回プレイをこなすといった形でゲームを進められるのが嬉しかったりします。
川端氏:
スマホはスマホに適した操作方法があって,スマホならではの遊びやすさを大事にしなければならないと考えると,ブラウザ版やPC版をそのまま持ってくるわけにもいきませんから。
4Gamer:
そこも質の面を考慮し,各プラットフォーム向けにしっかりと遊べるものを作ることを試行錯誤されていると。
そんな,さまざまな時期や状況を迎えながら成長したDMM GAMESですが,あらためてこれまでの歩みを振り返ってみていかがでしょう。
村中氏:
この10年でのDMMグループ全体への貢献度は相当なものだと思います。
というのも,DMM GAMESのサービスによって,会員者数が一気に伸びたんですよ。DMMには,アニメや漫画といったゲームに近しいエンタメコンテンツがたくさんあり,それらがゲームと同じアカウントで利用できるわけで,DMM GAMESはDMMというプラットフォームにとっての大きな“入口”となってくれたんですね。
人がいないとプラットフォームとしては成り立ちませんから,その立ち位置は立ち上げ当時からこれまで変わることなく,グループの中でも重要なコンテンツの一つです。
川端氏:
立ち上げからこれまで経験したことは本当に貴重なものばかりです。それらは私自身のスキルにもなっていて,実際にDMM GAMESで得た知見をほかの事業に活用することもできているので,そういった意味でもグループ全体に貢献できているかなと思います。
4Gamer:
最後に,現在はどのような目標を持っていて,これから何を目指していくのかを聞かせてください。
村中氏:
「過去のDMM GAMESに勝つ」ですね。おかげさまをもって長期で人気を誇るタイトルがたくさんあり,それはとてもありがたいことではあるんですが,プラットフォーマーとしては,それらの人気タイトルを超えるものを作ることが命題としてあるかなと。これからも,新しい強みを持ったコンテンツを生み出していきます。
川端氏:
先ほど話をした,スマホでの展開にも注力していきます。今まではPCメインのコンテンツ作りでしたが,いかにスマホでも手軽に遊べるようにしてPCとスマホを両立させるかは,これからの大きな目標の一つとなっています。
村中氏:
DMMグループのほかのコンテンツを見ても,やはり今はスマホからアクセスするユーザーの方が多いんですよ。ただ,ゲームは技術的な問題もあって,ほかの動画や書籍といったコンテンツに比べると,スマホへの展開は遅れていて。
もちろん,PCブラウザを切り捨てるというわけではありません。川端が言ったように,両立させることを前提としたスマホへの展開に力を入れていきます。
川端氏:
今でこそPCゲームのプラットフォームとしては国内最大規模と言えるレベルまできたかなというのはありますが,幅広い層での認知というとまだまだだなと感じる部分はあると思います。
ゲームファンの皆さんはもちろん,より広い層に。そして,パブリッシャやデベロッパからも選ばれるプラットフォーマーになるという点は,今後も変わらず我々が目指すものですね。
村中氏:
「質にこだわる」ということも,引き続き大事にしていきたいです。
“本物か,本物じゃないか”って,いまの世の中では簡単にユーザーの皆さんに見抜かれますし,そういった判断が下されるのもあっという間です。手を抜いたところがあれば指摘されますし,逆にほんの些細なこだわりであっても,それに気づいてくれる人たちがたくさんいます。
これまでは各タイトルのプロデューサーに託している部分が多かったのですが,少しでも品質を上げられるよう,会社としてもこれまで以上に1タイトルずつしっかりフォローしていきたいと考えています。2022年はこれまで以上にDMMグループ全体で勝負していくと思うので,ぜひ注目していてください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。今後の展開にも期待しています。
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