業界動向
極寒の地にゲームの熱気が沸く? 国民の2人に1人がプレイヤーのスウェーデンを,ゲーム産業を年次レポートから探る
※「Swedish Games Industry 2023 Game Developer Index」は,2022年度の会計決算情報を集計して分析する年次業界レポート。
報告によると,スウェーデン国内のゲーム会社の数,従業員数,従業員一人当たりの売り上げ高,国内でのゲーム収益,グローバル収益など,すべてにおいて過去最高記録に達している。
New Industry Report Shows Record Year For The Swedish Game Industry(英語)
Swedish Games Industry 2023 Game Developer Index(PDF)
2022年のスウェーデン国内のゲーム会社による売り上げは,YoY+13%の31億ユーロ(約4909.47億円),海外子会社を含めた売り上げは,YoY+40%の81億ユーロ(約1.28兆円)となった。
※レートはすべて,2023年10月30日の数値(1ユーロ=158.37円,1ドル=149.74円)で計算しています
「スウェーデンのゲーム会社」と聞いても,咄嗟に名が挙げられない人もいるかもしれない。
2022年の売り上げ順で挙げると,カジュアルパズル「キャンディークラッシュ」を生み出したKing,サンドボックスの土台を築いた「Minecraft」のMojang,街づくりシム「Cities:Skyline」シリーズで名を馳せたParadox Interactive(4Gamer読者的には「Hearts of Iron」の,と言ったほうが通りがよいか)が,昨年のスウェーデン国内売り上げのTop3を占めている。
ほかにも,「Battlefield」シリーズのEA DICEや,「Goat Simulator」「Valheim」などのヒット続出のCoffee Stain Publishingなどもある。
グローバルに展開している会社が,海外で上げた収益ランキングでは,1位はEmbracer Group。Square Enix EuropeやTHQなど,数多くのゲーム会社を傘下に納めている巨大企業だ。実際,Embracer Group一社で,スウェーデンのゲーム企業による海外収益全体の60%を占めている。
Access Accepted第762回:強気の買収攻勢をかけていたEmbracer Groupが大規模なリストラプログラムを発表
多数のゲーム企業やスタジオを子会社に抱えるEmbracer Groupが,大規模なリストラの実施を発表した。ここ5年ほどの間に,Gearbox SoftwareやMiddle-Earth Enterprisesなどを傘下に収めてきたが,今後はスリム化を進めながら,プロジェクトの量より質を重視せざるを得ない状況にあるようだ。
会社の所在分布については,やはり首都のストックホルムに集中しており,レポートで名が挙げられている会社のうち409社,全体の半分近くがストックホルムを拠点にしている。
レポートは,スウェーデン国内のユーザーについてもデータを提示している。
人口が約1045万人のスウェーデンは,670万人がゲームプレイヤーと推計されているので,国民の65%がゲームプレイヤーというわけで,そのうち410万人は有料プレイヤーだ。
プラットフォームごとの割合は,モバイル,PC,コンソールという順に並ぶ。500万人のモバイルゲームプレイヤーがおり,PCとコンソールは,それぞれ330万人,300万人のプレイヤー規模となる。
ほかの先進国家に比べるとプレイヤー数がさほどでもなく,スウェーデンのコンソールゲーム市場の規模が比較的小さそうに思えるが,2023年の市場規模である8.03億ドル(約1202.41億円)は,2026年には9.62億ドル(約1440.50億円)に成長するとの見込みで,プレイヤー数の少なさに対して,一人当たりの購買力が高い。スウェーデンの一人当たりの平均課金額(ARPU)は198.3ドル(約29693円)で,グローバル平均の127.1ドル(約19032円)という数値に比べて,1.5倍近いのだ。
ヨーロッパ各地のゲーム産業と比較したときにも,フランス,ドイツ,フィンランドに続いて,売り上げ4位の国となっており,日頃あまり意識しない,成長著しいスウェーデンゲーム産業を目にできるレポートとなった。やはり極寒の地は,ゲームプレイを促す最適な環境でもあるのだろうか。
Swedish Games Industry 2023 Game Developer Index(PDF)
[インタビュー]スウェーデン大使にDreamHackの楽しみ方,そして同国のゲーム産業について聞いた
日本初上陸となるDreamHack Japanが5月13日と14日に幕張メッセで開催されるが,先駆けて,本イベントをサポートするスウェーデン大使館でキックオフイベントが行われた。世界でも有数のゲーム産業を持つスウェーデンだが,今回,スウェーデン大使にDreamHackと同国のゲーム産業について話を聞いてきたのでお伝えしたい。
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- 編集長:Kazuhisa
- 編集部:S.K.Y
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