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[CEDEC 2011]サンライズ小高忠男氏が語る「セルアニメスタイルのCG制作」。「SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors」の制作過程とは
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印刷2011/09/10 21:16

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[CEDEC 2011]サンライズ小高忠男氏が語る「セルアニメスタイルのCG制作」。「SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors」の制作過程とは

画像集#002のサムネイル/[CEDEC 2011]サンライズ小高忠男氏が語る「セルアニメスタイルのCG制作」。「SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors」の制作過程とは
 デジタルコンテンツ制作者向けに「セルアニメスタイルのCG制作」と題されたセッションが「CEDEC 2011」の2日目(2011年9月7日)に行われた。

 講師を務めたのは,テレビアニメ「機動警察パトレイバー」や,フルCG映画「FINAL FANTASY」など,数多くの作品のCG制作に携わってきた経歴を持つ,小高忠男氏だ。現在はサンライズに籍を置いており,入社の理由を「アニメっぽいCGを作ってみたくなったから」と語る。

 今回の講演では,「SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors」(以下,SDガンダム三国伝)の制作時に使用した開発ツールなどが紹介された。


「SDガンダム三国伝」はデジタル作画とCGのハイブリッド


画像集#001のサムネイル/[CEDEC 2011]サンライズ小高忠男氏が語る「セルアニメスタイルのCG制作」。「SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors」の制作過程とは
小高忠男氏
 SDガンダム三国伝は,「デジタル作画とCGのハイブリッド」と小高氏が表現するスタイルで制作された。これはメインキャラクター部分をCGで作り,それ以外の要素(サブキャラクターやエフェクト,背景など)を手描きするという手法だ。

 続いて紹介されたのは,「SDガンダム三国伝」の制作に至るまでのエピソードについて。SDガンダム三国伝を作るきっかけとなったのは,2002年から2004年まで放送された「SDガンダムフォース」だ。SDガンダムフォースはフルCGテレビアニメで,モーションキャプチャーが本格導入されたり,全編でハードウェアレンダリングが行われたりと,数多くのチャレンジがなされた。
 しかし,見た目はセルアニメなのに,動きがヌルヌルしていて違和感があったり,ポリゴン感が前面に出ている感じが気になったりと,表現の面で問題が多かったという。

 「SDガンダムフォース」の制作で,CGを使うメリットとデメリットの両方を肌で感じたそうだが,「ここで取り入れた制作手法は二度と使われなくなった」と小高氏は振り返る。

画像集#003のサムネイル/[CEDEC 2011]サンライズ小高忠男氏が語る「セルアニメスタイルのCG制作」。「SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors」の制作過程とは 画像集#004のサムネイル/[CEDEC 2011]サンライズ小高忠男氏が語る「セルアニメスタイルのCG制作」。「SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors」の制作過程とは

 また,「SDガンダムフォース」とは別に,「スチームボーイスタジオ」(現サンライズ荻窪スタジオ)で,フルCGアニメではなく,作画をCGで行うチャレンジが行われ,「新SOS大東京探検隊」(2006年)や「FREEDOM-PROJECT」(2006年〜2008年)などが制作された。とくに「FREEDOM-PROJECT」について小高氏は,「どこまでがCGで,どこまでが手描きか分からないくらいのクオリティでした」と胸を張る。ただし,これは2年間で30分の作品を7本作るという長いスパンでの制作だっため,ちょっと特殊な例になる。そして「FREEDOM-PROJECT」で得た成果を,テレビアニメの制作に取り入れられないかと考えた結果,「SDガンダム三国伝」のプロモーションビデオ(2009年作)につながり,作画スタイルのCGアニメをテレビシリーズに活かすための模索が始まったそうだ。

画像集#005のサムネイル/[CEDEC 2011]サンライズ小高忠男氏が語る「セルアニメスタイルのCG制作」。「SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors」の制作過程とは 画像集#006のサムネイル/[CEDEC 2011]サンライズ小高忠男氏が語る「セルアニメスタイルのCG制作」。「SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors」の制作過程とは

「SDガンダム三国伝」のワークフローはセルアニメと同じ

問題解決のため,さまざまな取り組みも行った


 ここで「SDガンダム三国伝」と同系列にあたる「SDガンダムフォース」のワークフローが紹介された。「SDガンダムフォース」は,絵コンテやモーションキャプチャ,データ編集を済ませると,CGアニメーションの制作に入るという流れで制作された。それに対し「SDガンダム三国伝」は,従来のセルアニメの制作と変わらない手法で作られるため,手間がかかっている。

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 SDガンダム三国伝を制作するうえで問題となったのがツールだ。SDガンダム三国伝は,秒間12コマや8コマ程度で描かれるのだが,これに3DCGソフトウェア「MAYA」の標準機能が対応していなかった。
 そのため小高氏は,「SDガンダム三国伝」専用のツールを開発することから始めた。これによって作画スタイルのワークフローをサポートできるようにしたり,色換えのシステムを用意したり,タイムシートデータをMAYAに読み込ませることで,不規則なコマ打ちへの対応を行ったそうだ。

 また,スタッフ用に掲示板を用意し,制作チームごとに情報を共有する仕組みを作ったり,マニュアルを整備したりと,細かいサポートも充実させた。


開発ツールやカスタムシェーダを用意し満足できるクオリティに


画像集#009のサムネイル/[CEDEC 2011]サンライズ小高忠男氏が語る「セルアニメスタイルのCG制作」。「SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors」の制作過程とは
 ここで実際に「SDガンダム三国伝」の映像が流され,小高氏は「どこが作画なのか分からないくらいのできになっていたと思います」と述べた。そして「『SDガンダムフォース』のときに発生したシェーディングの汚さは解消し,意図したクオリティに達したと思います」とコメント。

 作業段階ではラインテスト動画,CGチェック動画,撮影(コンポジット)動画という3つの工程を踏んで完成に近づけ,最終的には各素材を合成し,必要な特殊効果などを追加し完成させるのだという。

CGチェック動画と撮影(コンポジット)動画の比較図。モビルスーツ2体がCGモデルなのに対し,背景や手すりが手描きの原画であることが分かる
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標準フレームサイズに対し横長になっているそうだが,これは撮影時にトリミングして動きをつけるそうだ
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開発ツールの中では「フレームエディタ」が一番手間がかかった部分だという

モデルデータ(約8万ポリゴン)とレンダリング時(約33万ポリゴン)の比較図
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 「SDガンダム三国伝」の主要キャラクターや馬,戦艦などのCGモデルは約40体あるが,その作成には,さまざまな技法が用いられた。
 ここでは劉備ガンダムがピックアップされて紹介されたが,モデルデータ自体は約8万ポリゴンで,レンダリング時に33万ポリゴンにまで増やしたという。
 また,キャラクターの顔の動きや口パク,武器装着などセットアップに関する部分や,キャラクターモデルの色換えの仕組みは,ツールにより自動化,もしくは半自動化され作業効率を上げたそうだ。

 ほかにも,キャラクターを指定した状態(汚したり,縛られる,傷をつけるなど)で呼び出す「キャラクターローダ」や,各種アニメーションに関連する「フェイシャルマネージャ」,タイムシートを読み込んだり,レンダーレイヤを設定する「フレームエディタ」,タイムシートのデータから口パクキーを自動的に設定する「自動口パク」など,制作時に使用したツールが次々と紹介された。

アニメ用の開発ツール「フェイシャルマネージャ」では,キャラクターの表情や口パクをプリセットされたデータから選ぶこともできる
画像集#016のサムネイル/[CEDEC 2011]サンライズ小高忠男氏が語る「セルアニメスタイルのCG制作」。「SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors」の制作過程とは 画像集#017のサムネイル/[CEDEC 2011]サンライズ小高忠男氏が語る「セルアニメスタイルのCG制作」。「SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors」の制作過程とは

 CGのレンダリングツールもデフォルトでは不便だったそうで,カスタムシェーダを用意し,満足できるクオリティを出せるようになったとのことだ。

 「SDガンダム三国伝」のプロジェクトを終え,反省点も見えたという。良い点は「作画素材とのマッチングは予定通り上手くいき,リミテッドアニメ独特のメリハリを実現できた」こと。小高氏は「『SDガンダムフォース』での悪い点は完全に払拭できたと思います」と述べていた。

用意されたカスタムシェーダと,使用した際の実例
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Furryballを用いて,「SDガンダム三国伝」のモデルデータ3体(約24万ポリゴン)をレンダリングしたムービーも公開された。こちらは画面全体で約54万ポリゴンになったという
 悪い点は,「ワークフローが非常に複雑」ということだ。制作時は作画やCGを繰り返すような状態になっており,作業スピードは最初から最後まであまり変わらなかったという。ほかにもデジタル作画に対応していないチームがあり,データを直接やり取りできず,CG線画をプリントアウトするなど,アナログな作業を強いられたという。
 シェーディングは「SDガンダムフォース」より改善されたそうだが,「フレームごとに色が極端に変わってしまう問題が発生し,手作業で対応するなど,新たな課題も生まれた。

 最後に小高氏は「レンダリングの高速化を図り,時間短縮できた部分をアニメーション制作の方に向けたい」と今後の課題に触れ,講演を締めた。

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