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評価の難しい欧州・古代シム「ヨーロッパユニバーサリス:ローマ」レビュー
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印刷2008/09/20 12:01

レビュー

歴史再現性と抽象化の妙を欠くが,短時間で楽しめるローマ建国ストラテジー

ヨーロッパユニバーサリス ローマ【完全日本語版】

Text by 徳岡正肇

»  過日完全日本語版が発売された,Paradox Interactiveの「ヨーロッパユニバーサリス:ローマ」を,同社作品に詳しいアトリエサード 徳岡正肇氏がレビューする。EU3エンジンの応用例である本作,確かにローマっぽくはあるが,むしろ歴史的にはかなり違和感もある味付けであり,高く評価できるのは意外なことに,とっつきやすさの部分かもしれない。


ローマの勃興期を人材面から再現


どう見てもローマが主役だが,ゲームとしては古代地中海ストラテジー
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 「ヨーロッパユニバーサリス:ローマ」は,紀元前280年から紀元前27年までのヨーロッパを地中海世界に中心を据えて描いたストラテジーゲームである。開発はParadox Interactiveで,ゲームシステムの根幹は「ヨーロッパ・ユニバーサリスIII」(以下EU3)に依拠するが,システムの細部やプレイバランスは大きく異なる。
 プレイヤーは地中海世界(ただし地図にはスコットランドまで含まれているし,現フランス中央部にいた,いわゆる「蛮族」もプレイ可能な勢力として描かれる)に存在した国家および集団のリーダーとなって,地域に覇を唱えるなり,ひたすら国家の生存を祈念するなり,交易で巨万の富を築くなりと,みずからの設定した目標に向かって奮闘する……つまり,本作はタイトルこそ「ローマ」だが,ローマ以外の勢力でもプレイできる,古代地中海世界ストラテジーというわけだ。以下,順に作品の構造を見ていこう。

基本的なゲーム画面はすっきりとまとまっている。EU3よりも地形の凹凸がはっきり見える
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ローマ以外の国も選べる。クレオパトラとしてエジプトを指揮するもよし,ハンニバルとしてカルタゴを指揮するもよし。でもハンニバルがカルタゴの最高指導者っていうのは……?
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人物にはさまざまな特徴が付与され,齢を取る(イベントを経過する)につれて特徴が増えていく。「クルセイダーキングス」ライクなシステムだが,ときには「勇敢」かつ「臆病」になったりすることも……
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 先述したとおり,ゲームのコアはEU3に準じている。したがって,いつでもポーズ可能/進行速度可変のリアルタイム進行であり,またマップはプロヴィンスと呼ばれる便宜上の区域に分割されて管理される。オペレーションはフルマウスで,もちろんアクション性は皆無だ。

 またいわゆる「歴史イベント」も,ある年月日に自動的に起きるようなものは少なく,世界のそのときの状況に応じた偶発的なものが多い。このあたりもEU3譲りである。

新しい建設物を建てるところ。一つ一つの効果は地味だが,各プロヴィンスに建つことによる累積効果がバカにならないのはEU譲り
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 一方,当然といえば当然だが,ゲームのフィーリングはEU3とだいぶ違っている。本作で,おそらく最もプレイヤーを悩ませるのが内政,しかも人事である。
 軍隊の指揮官や外交はもちろん,各種技術の開発,支配プロヴィンスの統治に到るまで,本作では必ず担当者が必要となる。そういった各部署に配置される人物は,それぞれ多彩なパラメータを持っており,適材適所を心がけるのがセオリーである。だが,単純な適材適所が機能しないあたりが,本作の面白さの一つだ。
 人物のパラメータで重要なのは,基本的に軍事/カリスマ/技量の3種だが,ここに人望/忠誠心/汚職度および家門という要素が付加される。能力が高くても忠誠心が低ければ内乱の原因になりかねないし,どんなに優秀でも汚職度が高ければ住民の不満は高まる。ちなみに汚職度が高い総督のほうが収税効率が良かったりするのは,Paradox Interactiveらしいシニカルな見解というところか。

家門関係を一覧できる画面。残念ながら使いやすいとは言いがたい
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 さらに,家門が非常に重大な効果をもたらすことがある。栄誉ある家に生まれた人物はその栄誉を背負うため,何かと有利な補正がつく一方,そういった人物を一度は登用しながら,何らかの理由で罷免したりすれば,その家から時の政府が反感を持たれたりしてしまう。
 これ以外にも,「クルセイダーキングス」同様,個々人の性格がパラメータとして付与されており,それが統治/指揮効率に影響を及ぼす。プレイヤーが考えるべきことは見かけ以上に多い。

 経済分野には,新しい概念が導入されている。交易路と交易品である。交易路はプロヴィンスに属するパラメータで,交易路の数だけそのプロヴィンスはほかの地域との交易が可能となる。交易品は,プロヴィンスが産出する特産品で,それをほかのプロヴィンスの特産品と交換することで利益が出る。
 この利益は,金銭的なものに留まらない。交易品のなかには反乱発生率の低減効果を持つものや,特定の兵種を生産するために必要な品などがあり,幅広い物品の交易によって国家運営の選択肢もまた広がるという仕組みだ。このあたりのシステムは,「ヴィクトリア」の貿易システムを大幅に簡略化しつつ取り入れたともいえるし,「クルセイダーキングス」の文化伝播ルールの名残にも見える。もう少し一般的な例を引くなら「シヴィライゼーション」シリーズの貿易に似ているともいえるだろう。

交易システム。輸出先のプロヴィンスにもその交易品による恩恵がもたらされるので,国内交易も重要になる。交易品のボーナスはちょっと「シヴィライゼーション4」っぽい雰囲気
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 なお,本作における国家予算の管理は1か月単位である。EUシリーズでは,年頭に1年の税収のほとんどが集められ,大きな計画を立てて使っていくシステムだったが,本作ではその場その場で支出判断しても,財政破綻しにくくなっているわけだ。

 もちろん,プレイヤーは各種技術の開発にも関与する。技術は,陸軍/海軍/社会/建設/宗教の5分野に分かれ,それぞれに担当官を立てて統括させる。技術水準で他国に後れをとれば悪影響が出るので,可能な努力はすべてしておきたいというのはEU3譲りである。
 とはいえ,本作では技術開発の進行に対してプレイヤーが払える努力に限界がある。特定の分野を重点的に研究させることは事実上できないし,技術開発速度は国家の人口に比例するため,結局のところ「富める者はより富む」という構図である。プレイヤーにできることは,ほぼ担当官の人選のみである。
 そしてここにおいても,前述のとおり単に能力だけで担当官を決めると泣きを見る。担当官の交友関係,とくに国家指導者との関係が研究の進捗に重大な影響を与えるのだ。自分の政敵を担当官に据えてご機嫌を取ろうとしても,ただ単に彼らは仕事をしないだけである。

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収支が年単位でなく月単位で集計されるところは,分かりやすい。アラートの表示も親切だが,ときに的外れな警告を出すことも
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技術開発の進捗管理。研究の優先順位は当てる人材でつけるわけだが,それはつまり「どれを遅らせないか」という程度の選択である

技術の進歩によって「発明」の可能性が生じる。実際に個別の恩恵を得るには,それぞれの発明を待たねばならない。なんとなく「ヴィクトリア」あるいは「クルセイダーキングス」を思い出すシステム
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 このゲームにおけるプレイヤーの関与は,ほぼ人選に集約されている。抽象的な「国策」は成り立ちづらく,むしろ国家の現在を支えるために,適切な人材管理を行うのが,プレイの主要部分といってよい。ただし,そんな“英雄史観”が暗殺の横行に帰結する点は,プレイ要素をシンプリファイしすぎた部分かもしれない。実際,人物の能力値上限が「9」のゲームで,終盤になるとみんな暗殺されてしまった結果,例えば「2」の人を最良の選択肢として採用せざるを得ないとかいうのは,ちょっと死にすぎではないだろうか?

「家系」にまつわるイベントは頻発する。ここらへんのテイストは「クルセイダーキングス」にかなり近い
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これまた「クルセイダーキングス デウス ウルト」を髣髴とさせるイベントで,同様にぱっと見,敵味方が分かりづらい
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「クルセイダーキングス」ではおなじみの画面。もっとも,帝政でなく共和制のローマにおいては,あまり重要ではない

 EUシリーズといえば宗教の要素が欠かせないが,本作でもやや意外なことに,宗教が重要な役割を果たす。本作の宗教は実に即物的である。儀式を行い生贄を捧げることで社会の安定度は向上し,神への祈祷を成功させれば祈祷した神に応じたボーナスが得られる。
 もっとも,祈祷の成功率はあまり高くなく,おおむね五分五分の賭けとみていい。成功率が6割あれば,システムから「祈祷すべきです」というアラートが出るほどだ。成功すれば,技術開発速度が向上したりもするので,苦しいときだけでなく神頼みするクセをつけておきたい。

 このほか,プロヴィンスに水道橋や灌漑池といった建築物を建ててボーナスを得たり,職業軍人や奴隷解放といった国策を定めてそこからボーナスを得たりといったシステムは,時代の違いによって中身こそ異なるものの,システムとしてはEU3のものをほぼ踏襲している。

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宗教パネル。神に生贄を捧げると安定度が向上するほか,祈祷によってさまざまな加護も得られる
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祈祷に成功すると,さまざまな恩寵が得られる。失敗すると逆効果。祈祷になど頼らずとも戦える国家経営を目指したいが


国家を二分する「内乱」ルールを導入


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戦闘は士気重視のバランス。ただし戦力差が大きいと一気に敵を殲滅できることがあるので,足の速い敵は捉まえられないというEUの罠はだいぶ是正された
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部隊は戦闘経験によって強化されていく。また、指揮官に個人的な忠誠を誓うという要素も
 さて,国家を経営していけば,どこかで戦争を決断しなくてはならないこともある。本作の戦争はEU3のシステムを踏襲しており,基本的にはシンプルなものだ。軍隊は数や装備もさることながら,士気が最も重要で,会戦の帰趨は敵の殲滅よりも先に士気崩壊によって決する。
 ただし,本作では軍隊を構成するユニットの種類によって,いわゆる「相性」が設定されており,部隊の編成には国家の情勢なども踏まえた調整が必要となる。
 ちなみに,歴代のEUシリーズと比較して,遠征している軍隊が自然消滅していくペースは圧倒的に速い。時代が時代なんだから仕方ないと言われればそのとおりだが,大軍団を編成するときには,それを覚悟のうえで編成されたい。

 本作の戦争で最も注目すべきは,「内戦」という概念が加わっていることだろう。EUシリーズを通じて「反乱」はお馴染みのもので,反政府勢力が挙兵して政府転覆を企てること自体はよくある光景だったのだが,本作ではこれを一歩先に進めた「内戦」という特殊な状況が準備されている。

ローマで最も有名な内戦。このように,内戦はただの反乱とは異なり,蜂起した側に一定の領土と主権が与えられるようになっている。画面はシナリオによるものだが,もちろん忠誠心が極端に低くなった将軍が起こすケースもある
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 「内戦」が始まると国家は二分される。挙兵した勢力は国家としての機能を有し,プロヴィンスを支配してそこから利益を得る能力も与えられる。そしてこの「内戦」に負けると,なんとゲームオーバーである! 従来,反乱軍に国土すべてを制圧されて政府が転覆しても,転覆した政府を継続してプレイできるのがEUシリーズだったが,本作では「クルセイダーキングス」同様,そこでゲームセットだ。プレイヤーはあらゆる手段を講じて敵勢力を撃滅しなくてはならない。

戦争は和平交渉をもって終結するのもEUルール。敵地を占領したからといって,そこがすぐ自国領になるわけではない
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敵方に退路なしの戦いではあったが,大差がつく戦闘のときはこれくらい損害に差が出る
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海戦もEUシリーズそのまま。ただしあくまでもプレイした感触だが,拿捕率は高いようだ


蛮族の侵入。蛮族の部隊を完全に撃滅すると,このように奴隷と資金が手に入る。他国を略奪したあと,調子に乗ってこちらにまで攻めてきた蛮族だったりすると,収益は大きい
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 そして「内戦」と事実上セットになっているのが,指揮官の論功行賞である。忠誠心が極端に低下した指揮官が率いる軍隊については,進軍先などの指定こそできるが,再編成は行えなくなる。「こいつもうダメっぽいから兵隊を引き抜こう」という選択肢は,本作にはない。
 忠誠心を上げるためには,将軍の功績を讃え,祭典を開くことでご機嫌を取るということになるが,この祭典自体,1年に1回しか実行できない。また,こういったご機嫌取りは,戦争できちんと活躍した将軍に対してしか実行できない――何もしていない将軍の忠誠心を,とにかく上げるためといった理由は通らないのだ。
 結果として,指揮官の数を無闇に増やすのは危険が大きいし,大国をプレイするときはとくに,どの将軍にどの戦争を食わせてやるかを慎重に考えねばならない。本作において戦争は貴重な資源であり,浪費は許されない。

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近世を舞台としたEUだと,隣接国のいない辺境=安全,だが,本作ではこのように,蛮族の襲撃が頻発する危険地帯
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蛮族を同化させるイベント。このほか,奴隷や自由民といった区分で人口を管理するあたりははプチ「ヴィクトリア」だ


共和制ローマの再現……にはなっていない


ハンニバルを追い詰め(彼はこのあと捕えられてローマの客将に),カルタゴとの戦争が一段落着きそうな頃,国内では汚職騒ぎが
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 本作は,厳密な歴史考証に耐える設計ではないが,「古代地中海世界ってこんな感じだったのかもしれないな」という“雰囲気”は満喫できる作品である。描かれるファクターの歴史的な正確さについては,基本的には期待しないほうが無難だ。筆者としても,正直これは共和制ローマではないな,という感想を抱かざるを得なかったものの,ある種ローマっぽく感じられる雰囲気は確かにある。

 実際,ローマを選択してプレイしたなかで,忠誠心よりも能力優先で将軍を登用し,戦功を挙げた将軍よりも執政官のほうが民衆に人気があることを妬まれると「そんなのは当然だ,俺のほうがカリスマがあるんだよ,文句あるか」と突っぱね,和平においては一切の妥協を許さず,しかして徹底交戦を叫ぶ死兵を前にしたならば,その死兵をバックアップする外交ルートからこれを切り崩し……といった「いかにもローマ」プレイに徹したところ,

1.戦争終結と同時に北から蛮族が侵入
2.南方戦線の軍を北に回して,なんとかこれを撃退
3.南方の英雄が活躍できずに不満タラタラ
4.執政官に嫉妬の嵐→「文句あるか」
5.反元老院の旗を掲げて将軍が決起
6.でも執政官派の貴族が続々と国家に私兵を寄付
7.圧倒的な数的優位を背景に反乱将軍を討伐
8.ふくれ上がった軍の維持費が払えない
9.仕方ないのでガリアに突撃&国庫をはたいて軍を解散

実兵力+財務的に国防が薄くなったところでカルタゴから宣戦

マリウスの改革からのスタートするシナリオ。開始時点におけるヒストリカルセッティングは充実している
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 ……と,一見してなんともローマっぽい展開が発生してくれた。だが,これがポエニ戦争前(つまりシチリアの属州化や,マリウスの軍制改革前)に発生しているのだから,ローマ史に詳しい方であれば小首を傾げるどころでは済まないと思われる。
 まあ「職業軍人」の国策を設定する=マリウスの軍制改革のようなことをした,であると解釈すれば,それはそれで納得するしかないのだが,このゲームはローマだけじゃなくて,同じシステムでセレウコス朝シリアやマケドニアもプレイする仕組みである。なんというか,各時期における各国の特徴を包括的に再現し得ないシステムは,一定のメリットがあったとしてもEUシリーズに求められるものとは違う気もする。

国策の選択画面。EU3と同じシステムだが、個人的にはちょっと違和感を感じる部分でもある。ことローマにおいては,こういった制度改革こそが国の歴史を作ってきたという部分があるのだが,そこがあまりにも大胆にオミットされてしまった感じ
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画面左上のカスタマイズ可能なショートカットメニューは健在。便利に使える
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 インタフェースは一見すると洗練されたように思えるが,長時間プレイしているとEU3のほうが使いやすかったような印象が強くなっていく。全体にボタンが小さくなったこと,ボタンの配置が画面の両端に寄せられてしまい,カーソルの移動距離が大幅に伸びたことが,その原因だ。また,あまり使わないし,別途自分でショートカットボタンも設定できるとはいえ,キーボードショートカットがほぼ全廃されてしまっているのも気になる。スペースバーによる「一時停止」が維持されているのはせめてもの救いである。また,プロヴィンスを右クリックしても簡易メニューが開かなくなった点は非常に痛い。
 Paradox Interactiveの開発作品に良好なインタフェースを望むことの是非はあろうが,改悪だけはいただけない。ただし,この点に関しては拡張パックでの改善がすでにアナウンスされているので,それに期待する余地はあろう。その拡張パック「Vae Victis」は,2008年の第4四半期にParadox Interactiveから(当然ながら英語版が)発売されるという。拡張内容の中心である家門関係については,いろいろ押し問答が続いている最中なので,とりあえずそうした予定があると思っておくに留めたい。

 総合的に見たとき,テーマの気宇壮大さと,時代/地域の区切り方にはParadoxらしさが感じられるものの,インタフェースやゲームバランスなど,随所に未完成な部分が目立つところにも,後ろ向きの意味でParadoxらしさが感じられてしまう,というところだろうか。

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チュートリアルは比較的分かりやすい。無理に詰め込みすぎておらず,必要十分な情報が提供される
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こういうイベントを見ると,実際には帝政以降も視野に入れて作られていたのでは? という気もする

 とはいえ,ゲームが面白くなってくるまでに割と時間がかかるParadox諸作品のなかにあって,本作はプレイを始めてすぐに「それっぽい歴史ゲームらしさ」「パラドゲーらしいジレンマ」を感じられるようになっている。そこは画期的であり,特筆すべき利点だ。
 また,チュートリアルは必要な部分だけをきっちりまとめたもので,情報の洪水にプレイヤーがあっぷあっぷになるようなことはない。プレイを始めれば,ほとんどの表示パラメータにはオンマウスで簡易ヘルプが付くし,国政関連の各種表示ウィンドウでは,国家にとってあまりよろしくない事態が生じているとき,それを逐次報告してくれる。初心者に優しい構造になっているのは確かだ。

 濃い歴史ファンや,ヘビーなパラドゲーマニアにはお勧めしづらいし,「Paradox作品の入門編」といえるだけの奥深さ,適切な抽象化の手際は持ち合わせていない。むしろ本作は,忙しくてあまりゲームをプレイする時間が持てないけれど,歴史モチーフのゲーム全般が好きだという方に,より強く勧められる作品といえるだろう。

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    ヨーロッパユニバーサリス ローマ【完全日本語版】

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