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2018年中に「第5世代V-NAND」や「QLC NAND」を投入するSamsungのフラッシュメモリ戦略とは
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印刷2018/07/25 12:46

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2018年中に「第5世代V-NAND」や「QLC NAND」を投入するSamsungのフラッシュメモリ戦略とは

講演を担当したChanik Park氏
画像集 No.002のサムネイル画像 / 2018年中に「第5世代V-NAND」や「QLC NAND」を投入するSamsungのフラッシュメモリ戦略とは
 去る2018年7月12日,Samsung Electronics(以下,Samsung)の日本法人である日本サムスンは,東京都内で「Samsung SSD Forum 2018 Tokyo」という独自イベントを開催した。Samsung製SSDをメインテーマにした,PCおよびサーバー業界関係者向けのイベントである。
 このイベントでは,さまざまなセッションが行われたのだが,本稿ではその中から,SamsungのNAND企画グループ長であるChanik Park氏が担当した「SSD Innovation for Future Storage and Beyond」と題するセッションを中心に,イベントの概要を紹介してみたい。


バランスの取れたメモリソリューションを展開するSamsung


 いまやSSDは,ゲーマー向けPCで定番のパーツになった。Samsungは,フラッシュメモリとSSDの最有力メーカーであり,同社の動向がSSD市場に大きな影響を与えることは疑いない。
 そんなSamsungのフラッシュメモリ戦略を,Park氏は「トレンド」「V-NAND」「SSD」「NEW ERA」(新時代)という4つのテーマに分けて説明していった。

 まず現在のトレンドだが,Park氏によると,フラッシュメモリビジネスにも人工知能(AI)技術の進展が大きなインパクトをもたらしているという。「AI技術がもたらすパラダイムシフトが,CPUセントリック(CPU中心)からデータセントリック(データ中心)への転換を加速させている。爆発的に増加するデータを活用するために,SSD需要が持続的に増加している」とPark氏は語る。

AI技術の発達により,コンピューティングはCPUセントリックからデータセントリックに移っているというのが,Samsungの見立てだ
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 現在起きているパラダイムシフトは,SSDに限らず多彩なメモリ技術が推進しているとし,「このような変化に対応するため,メモリビジネスとしてDRAMとNAND(フラッシュメモリ)のバランスの取れたポートフォリオをもっている」(Park氏)ことが,Samsungの強みであるとのことだ。

 Park氏は,SamsungのNAND型フラッシュメモリ製品である「V-NAND」のロードマップについても,簡単に言及した。氏は,「2018年中に第5世代のV-NANDが発売される」と予告したうえで,「未来のためのQLC(Quad Level Cell)メモリも(2018年中に)提供する」と述べている。
 Samsungは現在,64層の第4世代V-NANDをNANDフラッシュメモリ市場に展開しているが,第5世代のV-NANDでは,「90層以上をモノダイ(1つのシリコンダイ)に集積し1ダイあたり1Tbitを実現している」(Park氏)そうだ。

Samsungは1ダイあたり1Tbitという大容量を,競合他社に先駆けて実現したという
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 「90層以上」とややボカしているのは,注目すべきポイントと言えよう。スライドでも「V9x」と書かれており,具体的な数値は明らかになっていない。2の累乗というこれまでの例にならうのなら,96層が妥当であろう。事実,SSD市場においてSamsungのライバルであるWestern Digitalは,96層の3D NANDフラッシュメモリチップを発表済みだ。

Samsungは2018年中に第5世代のV-NANDを発売するというが,スライドでは「V9x」と書かれており,具体的な層数は明らかになっていない
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 これは筆者の推測だが,製造上の難度が高くなる第5世代V-NANDでは,96層のうちいくつかの層を予備とすることで冗長性を持たせることをSamsungは考えていて,そのために具体的な層数を明らかにしていないのかもしれない。

 第5世代V-NANDのほかに,おそらく「4bit MLC」と呼ばれることになるNANDフラッシュメモリも2018年中に発売されるそうだ。
 「MLC」(Multi Level Cell)と呼ばれるNANDフラッシュメモリは,1セルあたり2bit(4値)を,「TLC」(Triple level Cell)――Samsungは3bit MLCと称する――は1セルあたり3bit(8値)を記憶できる。Park氏が「QLC」(Quad level Cell)と呼んでいた4bit MLCは,1セルあたり4bit(16値)を記憶できる方式で,製品化されれば,より大容量のSSDが実現できるだろう。


QLCのSSDは速度より容量重視か?


 続けてPark氏は,SamsungのSSD戦略を説明した。
 氏によると,Samsungは,データセンター向けの低遅延ストレージソリューションである「Z-SSD」から,価格対容量比に優れたQLCを採用するPC用SSDまで,幅広いSSD製品を手がけているという。

 Z-SSDとは,メインメモリに使われる揮発性のDRAMと,不揮発性のNAND型フラッシュメモリの間を狙うソリューションだ。はっきり言えば,IntelとMicron Technologyの不揮発性メモリ技術「3D XPoint」に対抗するための製品である。Z-SSDでは,「Z-NAND」と呼ぶNAND型フラッシュメモリの一種とDRAM,独自のコントローラ技術を使うことで,読み込み遅延をμ秒単位まで短縮しているのが特徴であるそうだ。

Z-SSDは,TLCのSSDよりも読み込み時の遅延が5.5倍も高速であるという
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 Park氏によると,現行の第1世代Z-SSDは,顧客から好意的な反応を得ているそうで,「2018年には,第2世代のZ-SSDを出荷する」という。もっとも,Z-SSDはデータセンター向けに位置付けられており,一般消費者向けに展開する計画はないそうなので,ゲーマーが目にすることは当分あるまい。
 一方,一般消費者向けのSSD製品に大きな影響を与えそうなのは,QLCを用いたSSDだろう。Park氏は,QLC採用SSDについて,「サーバー向けとクライアントPC向けの双方開発する」と述べていた。とくに同容量かつ同性能のストレージシステムを構築する場合,サーバー向けのQLC採用SSDであれば,HDDと比べて66%もTCO(Total Cost of Ownership,総所有コスト)を削減できるそうだ。

QLCを用いたサーバー向けのSSDは,HDDに対して66%もTCOを削減できると主張するスライド
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 一方のクライアントPC向けSSDについてPark氏は,QLCを使って「1TB以上の容量で,Serial ATA 6Gbps(以下,SATA)の読み書き性能における最大速度を実現する」と,興味深いことを述べた。つまり,Samsungが製品化を予定しているQLC採用SSDは,記憶容量1TB以上のSATA対応タイプで,現行のSATA対応SSD並みの性能を有することが推測できる。
 一方で,QLCタイプのフラッシュメモリを,SATA対応SSDよりも高速なNVM Express(NVMe)対応SSDに採用することは,少なくとも短期的には予定していないのかもしれない。

クライアントPC向けのQLC採用SSDは,現行のTLC採用SSDと同程度の性能を持ち,1TB以上の記憶容量を持つ製品になるという
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 というわけで,ゲーマーとしては,第5世代V-NANDを搭載する製品がどんな形で登場するのか,そしてQLC採用SSDの容量と価格がどの程度になるのかが,気になるところとなりそうだ。


DeToNator代表の江尻氏は,ゲームPCにおけるSSDの重要性を語る


DeToNatorを率いるGamingD代表取締役の江尻 勝氏
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 Samsungのイベントでは,SSDを活用する企業や組織の代表が登壇したのだが,その中の1人として登壇したのが,プロゲームチーム「DeToNator」を運営する江尻 勝氏だ。
 4Gamer読者でDeToNatorの名を聞いたことがないという人はまずいないだろうが,SSD関連のイベントとなると,来場者のほとんどはゲームやeスポーツに馴染みがない。そんな事情もあって,江尻氏のセッションは,eスポーツやDeToNatorの紹介といった4Gamer読者には自明の内容が多かった。

 江尻氏の講演で取り上げるべきなのは,SSDとeスポーツの関わりについての話だ。江尻氏によると,DeToNatorでは「ゲーム配信や練習のために,ほぼ24時間,PCはつけっぱなしの状態」であるという。そのため,「PCの速さや耐久性が,安定した配信や練習環境に直結する」ため,そこで重要なパーツとなるのがSSDというわけだ。
 「たとえば,試合中にゲームが落ちてしまったというとき,選手はできるだけ早くゲームに復帰したい。そんなときにSSDとHDDでは,OSの起動時間に雲泥の差がある。OS起動の速さという点でも,選手からは(PCにSSDを搭載してほしいという)要望があり,SSDが競技シーンでは重要と考えている」と,江尻氏は具体例を挙げて,そのメリットを紹介した。そんな事情もあって,DeToNator推奨のPCは,SSDを標準搭載するように切り替えたそうだ。

江尻氏が上げるゲームにおけるSSDの利点
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 ちなみに,2015年からスタートしたDeToNator推奨のゲーマー向けPCは,年率にして20〜30%ほど販売が増えており,現在は「年間400〜500台ほど売れている」(江尻氏)とのこと。

2015年から始めたDeToNator推奨PCは,SSDを標準搭載している
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 ゲーマー向けPCの販売が伸びている背景には,「ストリーマー」と呼ばれるゲーム実況者の存在が大きいと江尻氏は述べる。DeToNatorでも,5名のストリーマーがゲーム実況を行っているそうだが,ゲームの安定した実況配信にも,SSDが必須になっているそうだ。

ゲームの実況配信を安定して行うためにも,SSDは必須のパーツになっていると江尻氏
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 また,江尻氏自身は,eスポーツを周知して推進していくために,「若い世代に(PCへの)入口を作り,PCパーツに興味を持ってもらうことが必要」と考えているそうで,そのために草の根的な運動をやっていきたいという。そして,最後に江尻氏は,「PCがなければゲームは成り立たない。PCパーツ市場の拡大に応じてプロゲームチームの活動はワイドになっていく。SSDは,その中でも非常に重要なパーツとして,広めていきたい」とセッションを締めくくった。

PCをプラットフォームとするeスポーツの普及には,若い世代にPCパーツへの興味を持ってもらうことが重要で,DeToNatorでは,そのための草の根的な活動も行っているという
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SDカードも読み込めるUFSカードアダプターの展示も


 イベント会場では,Samsung製SSDや関連製品の展示も行われていた。
 大半は発表済みの製品だったが,まだ市場に出回っていない新たなメモリカード「UFSカード」の実物と,開発中というUFSカードアダプターが展示されていたので簡単に紹介しておこう。

 UFS(Universal Flash Storage)カードとは,ストレージ規格の団体であるUniversal Flash Storage Associationと,メモリ技術の標準化団体であるJEDECによって規格化されたメモリカードである。現行のmicroSDカードとほぼ同サイズながら,インタフェースの物理層にPCI Expressを採用して,500MB/sを超える読み書き性能を実現するという。簡単に言えば,ものすごく速い次世代のメモリカードだ。

展示されていたUFSカード(左)。見た目はmicroSDカードそっくりだ。裏面にある端子の配置は,microSDカードとはまったく異なるので互換性はない(右)
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 UFSカードとmicroSDカードに互換性はないが,Samsungでは,microSDカードの読み書きもできるUSB接続型のUFSカードアダプターを開発中であるという

microSDカードの読み書きもできるUFSカードアダプターの試作機
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 ちなみに,SDカードの規格化団体であるSD Associationも,PCI Expressを物理層として使う規格「SD Express」を定めている。両規格に互換性はないが,SamsungはUFSカードを推していくとのこと。
 その理由をSamsungの担当者に聞いたところ,UFSカードはJEDECで標準化された規格であり,スマートフォンなどのSoCがすでに対応していることと,Samsung製スマートフォンの内蔵ストレージは,すでにUFSベースになっているからだそうである。

 なお,韓国では2018年中に,UFSカードと対応PCが発売されるとのこと。ただ,国内展開の予定は今のところないそうだ。「日本を始めとする各国では,UFSカードに対応するスマートフォンやデジタルカメラの動向を見て,発売を検討するのではないか」と,担当者は語っていた。

 今のところゲームとは直接関係しないものの,今後登場するであろう新しい記録メディアとして,UFSカードやSD Expressを記憶に留めておく価値はあるかもしれない。

SamsungのSSD製品公式Webページ

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    Samsung SSD

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