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4Gamerをご覧の皆様こんにちは。クッキングエンターテイナーの大西哲也です。
ゲームに登場する料理をプロの料理人が本気で再現し,プロ目線で勝手に検証する「俺のコラボカフェ」。今回もよろしくお願いします。
さて,今回扱うのは「モンスターハンターワイルズ」です。ゲーム飯といえばモンスターハンター,という人も多いでしょう。巨大な肉を豪快に焼く「肉焼き」は,ゲームをやったことがない人でも見たことがあるほど有名です。ところが「俺のコラボカフェ」も連載90回を数えるなかで,実はこれまで一度もモンハンを扱ってきませんでした。
ということで,今回は満を持しての登場です。そもそもモンスターハンターの第1作がPlayStation 2で発売されたのは,2004年3月。今から20年以上前です。当時は,今ほどオンラインゲームが一般的ではありませんでした。そこでカプコンが考えたのが,みんなで巨大なモンスターを狩るというゲームです。
モンスターを倒して終わりではありません。倒したモンスターから素材を剥ぎ取り,その素材で武器や防具を作り,さらに強いモンスターを狩りに行く。今ではおなじみのゲームシステムですが,この「狩る→作る→また狩る」という循環と,複数人で巨大な敵に挑む面白さが,一部のプレイヤーを熱狂させました。初代は爆発的なヒットというほどではありませんでしたが,ここから口コミでファンを増やしていきます。カプコン自身も,初代は荒削りながら協力して狩る楽しさが支持された,と振り返っています。
そして大きな転機になったのが,PSPで発売された「モンスターハンターポータブル」です。さらに2007年の「モンスターハンターポータブル 2nd」,2008年の「2nd G」と続き,友達同士がPSPを持ち寄って一緒に狩りに行くという遊び方が大流行しました。オンライン上の知らない人と遊ぶゲームだったものが,学校や職場にゲーム機を持ってきて一狩り行こうぜと遊ぶコミュニケーションツールになったわけです。これがいわゆる「モンハン現象」です。
その後もシリーズは,ただモンスターを増やすだけではなく,狩猟そのものを変化させていきます。「モンスターハンター3」では水中という環境まで狩場にし,「モンスターハンター4」では段差や高低差を使った立体的なアクションが増え,「モンスターハンタークロス」では狩猟スタイルや狩技によって遊び方そのものを選べるようになりました。そして2018年の「モンスターハンター:ワールド」で大きく方向転換します。
それまで区切られていたフィールドを,よりシームレスで巨大な生態系として描き,モンスターを戦うために置かれた敵ではなく,その場所で暮らしている生物として見せるようになりました。これが海外でも大ヒットし,モンハンは日本の国民的ゲームから世界的なゲームへと変わります。ワールドは拡張の「アイスボーン」を含めて3000万本を超え,シリーズ全体では2026年6月30日時点で1億3100万本に達しています。
2021年の「モンスターハンターライズ」では,翔蟲やオトモガルクによって移動と戦闘がさらに高速化しました。そうして20年間積み上げてきたものを,さらに「その世界に本当に生きている感覚」へ進めたのが,2025年2月28日発売のワイルズです。
ワイルズでとくに重要なのは,モンスターだけではなく環境そのものが変化することです。モンスターたちが群れ,食料を奪い合う過酷な時期から,異常気象を経て,植物や生物が一気に増える豊かな時期へとフィールドが変貌する。つまり今回は「どこにモンスターがいるか」だけではなく,なぜこのモンスターがここにいて,何を食べ,どう生きているのかまで含めて世界が作られています。
カプコンが掲げているのも,時間や気候が精緻に表現された生態系と,途切れることのない没入感です。そして,これが今回の本題である料理にもつながってきます。
実は料理も,モンハンと一緒に20年以上進化してきました。初代から存在する象徴的な料理が,あの「肉焼き」です。生肉を肉焼きセットに乗せると,おなじみの音楽が流れます。焼き色を見ながらタイミングよく止めれば「こんがり肉」,早ければ生焼け,遅ければコゲ肉。つまり最初のモンハン料理は,メニューから料理を選ぶものではなく,プレイヤー自身が火加減を見極める料理だったわけです。
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ちなみに,こんがり肉は単なる演出ではなく,狩猟中に低下していくスタミナの最大値を回復する実用品でもあります。シリーズを通じて,食べることが狩るための準備になっているという関係が,最初から組み込まれていました。
その後,「モンスターハンターポータブル」では「アイルーキッチン」が登場します。今度はアイルーたちが料理を作り,2種類の食材をどう組み合わせるかによって,体力,スタミナ,攻撃力,防御力などが変化するようになりました。料理が,肉を焼いて食べるアイテムから,狩りの戦略を組み立てる食事へ進化したわけです。
その考え方はどんどん複雑になります。たとえばモンスターハンター4では2種類の食材に加えて調理法まで選び,その組み合わせによって一時的なステータスボーナスや「食事スキル」が変化しました。今日は何を狩るのかを考えて,その前に何を食べるか決める。完全にアスリートの試合前の食事みたいになっています。
そして料理の映像表現が一気に進化したのが,モンスターハンター:ワールドです。巨大な肉を焼く。魚を調理する。野菜を山ほど盛る。アイルーたちがものすごい勢いで料理を作り,最後にはテーブルいっぱいの料理が並ぶ。カプコン自身も発売当時,ゲーム内の料理がおいしそうだと注目を集め,実際に再現する人まで現れた,と紹介しています。
ここでモンハンの料理は,能力値を上げるためのシステムであると同時に,見ているだけで腹が減るエンターテインメントになりました。
そしてワイルズ。ここで料理は,もう一度大きく変わりました。今回の主役は「焚き火料理」です。ハンターは携帯焚き火台を持ち歩き,フィールド上で火を起こして,その場で料理をして食べることができます。
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さて,この焚き火料理を見ていて,料理研究家として非常に面白いと思ったのが,その組み立て方です。焚き火料理は基本的にスキレットひとつで作られ,主食材+副食材+トッピングという非常にシンプルな構成になっています。ゲーム内の正式な分類では「携帯食料+追加食材+仕上げ食材」ですが,料理として考えれば,何を主役にするか,何を組み合わせるか,最後にどう味や香りを足すか,ということです。
これは,現実世界で普通の料理を考えるときとまったく同じなんですよね。料理というと,レシピを見ながら何種類もの材料を正確に量らなければ作れないように思われがちですが,本来はもっと単純です。主役になる食材を決めて,それを引き立てるものを加え,最後に味と香りを整える。この考え方さえ身につけば,極端な話,世の中の料理の8割くらいはかなりおいしく作れるようになると思っています。
ただし。こと肉料理については,もうひとつ絶対に考えてほしいことがあります。それが「火の入れ方」です。家庭で肉料理がうまくいかない原因の代表格は,火入れです。とくに,必要以上に加熱してしまうことで肉を硬くしているケースは非常に多いように感じます。
肉料理の火入れは,大きく2つに分けて考えると分かりやすくなります。ひとつは,ステーキのような料理。表面には強い火を当てて,しっかりと香ばしい焼き色をつける。一方で,中心まで必要以上に高温にしてしまわないようにする料理です。もちろん安全に食べられる状態には加熱しますが,肉の中心まで外側と同じようにガチガチに火を通す必要はありません。
もうひとつが,ビーフシチューや角煮のような煮込み料理です。こちらは逆に,短時間では柔らかくなりません。しっかり加熱しながらも,強火でグラグラ煮続けるのではなく,穏やかな温度を保ちながら長時間火を入れる。そうすることで,筋や結合組織の多い肉が,だんだんとほぐれてトロトロになっていきます。
なぜ同じ肉なのに,一方は火を入れすぎてはいけないのに,もう一方は長時間火を入れなければいけないのか。これは,筋肉を構成するタンパク質と,肉のなかにあるコラーゲンなどの結合組織では,加熱したときの変化が違うからです。
詳しいタンパク質変性の話を始めると,それだけで一本の記事になってしまうので今回は割愛しますが,短時間で焼いて仕上げる肉と,時間をかけて柔らかくする肉がある。まずはこれだけ覚えておいてください。
そして,火入れと同じくらい大切なのが肉の部位選びです。ステーキに向いているのは,もともと筋や結合組織が比較的少なく,短時間の加熱でも食べやすい部位です。反対に煮込みに向いているのは,スネやスペアリブのように筋や結合組織が多く,時間をかけて加熱することで真価を発揮する部位です。
つまり,どう焼くかを決めてから肉を選ぶのではなく,この肉はどう加熱すればおいしくなるのかを考えることが重要です。
高級なステーキ肉を何時間も煮込めば最高の煮込みになるわけではありませんし,煮込み向きの筋の多い肉を絶妙なミディアムレアに仕上げれば,必ず柔らかくなるわけでもありません。食材には,それぞれ「おいしくなる火入れ」があります。
ということで今回は,ワイルズの焚き火料理にならって,スキレットを使った2つの肉料理を作ってみます。ひとつは,表面を香ばしく焼き,中心には火を入れすぎないステーキ。もうひとつは,弱い火でじっくり加熱し,骨から肉が外れるほどトロトロに仕上げる煮込み料理です。
これから涼しくなって,キャンプやBBQが楽しい季節になります。せっかくいい肉を買ったのに硬くなってしまった,という悲しい事故を焚き火の前で起こさないためにも,この2つの火入れを実際に作りながら解説していきましょう。
牛肩ロースのガーリックハーブステーキ
まずは牛肩ロースのガーリックハーブステーキです。ワイルズの焚き火料理でいうと,肉+シルドニンニク+ワイルドハーブの組み合わせ。今回はシルドニンニクをそのまま大量のニンニクに,ワイルドハーブをローズマリーに置き換えて作ってみます。
それでは,一狩り行こうぜ!
◆材料
牛肩ロース肉(厚さ約3cm):1枚
シルドニンニク(ニンニク):1玉
ワイルドハーブ(ローズマリー):3〜4本
塩:肉重量の約1%
油(牛脂または植物油):30g
使うのはこれだけ。厚さ3cmの牛肩ロースに,ニンニク1玉とローズマリー,そして塩
牛肉の表面の水分をキッチンペーパーでしっかり拭き取り,塩を全体へ振ります。スキレットを強火でしっかり熱して油を多めに引き,肉を入れて,両面にしっかり焼き色をつけます。
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弱火にし,1玉分のニンニクとローズマリーをドサッと投入。
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蓋をして,ニンニクとローズマリーの香りをまとわせながら,弱火でじっくり中心まで熱を伝えていきます。3cm厚の肩ロースなら,ここから5分前後がひとつの目安です。
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まだ足りないかな? くらいの火入れで大丈夫。余熱で火が入って完成です。
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肉の大きさ,冷蔵庫から出したときの温度,スキレットの厚さ,焚き火の強さによって火の入り方は大きく変わります。なので,本当に重要なのは「5分」という時間ではありません。中心に火を入れすぎないことです。
肉に火を入れると,中心温度が上がるにつれて筋肉のタンパク質が変性していきます。もちろん適度な加熱は必要なのですが,温度を上げすぎれば筋肉は強く収縮し,水分がどんどん失われていきます。だからステーキでは,表面には強い火を当てる。しかし中心には必要以上に火を入れない。この2つを同時に成立させることが重要なのです。
中心温度計を持っているなら,ぜひ使ってください。私が料理として狙うなら,中心が50℃台に入ったあたりから火の入り方を注意深く見て,火から外したあとの余熱で53〜55℃を目指します。今回はしっかりとした赤身の肉を使ったのですが,火入れに気を使うと硬くなりません。しっかりと噛み切れて,噛むほど味が出てくる極上のステーキに仕上がります。
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豚スペアリブとマッシュルームのチリ煮込み
続いて2品目。こちらはワイルズでいう,肉+ゴチソウダケ+モンスターチリをイメージした,豚スペアリブとマッシュルームのチリ煮込みです。先ほどのステーキとはまったく逆で,時間をかけて火を入れることでおいしくなる肉料理です。
こちらも調味料は塩だけ。味付けそのものは非常にシンプルですが,肉,キノコ,唐辛子をそれぞれしっかり加熱することで,かなり複雑な味になります。
◆材料
豚スペアリブ:600g
ゴチソウダケ(マッシュルーム):200g
モンスターチリ(メキシコ産乾燥唐辛子):適量
塩:スペアリブ重量の1%
熱湯:300ml
油:適量
スペアリブ,マッシュルーム,メキシコ産の乾燥唐辛子。味付けは塩だけだ
まずスペアリブに,肉重量の1%の塩をすり込み,30分ほど置いて塩をなじませます。並行して,乾燥唐辛子に熱湯300mlを注ぎ,10分ほど戻しておきます。
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スキレットを強火でしっかり熱したら,スペアリブを入れ,両面にしっかり焼き色をつけます。
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両面に濃い焼き色がついたら,スペアリブを一度取り出し,肉から出た脂が残ったスキレットにマッシュルームと唐辛子を加えて軽く炒め,唐辛子の戻し汁もすべて投入します。
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スペアリブを戻し入れて蓋をしたら,140℃に予熱したオーブンで3時間じっくり火を入れます。
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これが,とんでもなくうまい。
スペアリブは,骨をつまむとスルッと抜けるほどホロホロ。肉をフォークで触れば簡単に崩れるのですが,ただ柔らかいだけではありません。
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3時間の加熱で肉から出た旨味とゼラチン,マッシュルームの旨味,そして唐辛子の戻し汁が全部ひとつになり,肉の周りにぎっしりまとわりついています。唐辛子をこんなに入れたらめちゃくちゃ辛いのではないか,と思うかもしれませんが,実際にはそこまで強烈な辛さではありません。スモーキーな香りと,果実のような厚みのある風味が残ります。
このスペアリブがここまで柔らかくなった理由こそ,今回覚えてほしいもうひとつの火入れです。スペアリブは骨の周囲に結合組織が多く,短時間焼いただけでは硬い肉です。ところが,強すぎない温度で長時間加熱すると,その結合組織に含まれるコラーゲンが少しずつゼラチン化していきます。
中心に火を入れすぎないステーキとは反対に,適切な温度で十分な時間をかける煮込みでは,長く火を入れることがおいしさにつながるわけです。
今回作った2品は,どちらも肉を火にかけるという意味では同じです。でも,牛肩ロースのステーキは火を入れすぎない。豚スペアリブは時間をかけて徹底的に火を入れる。正解がまったく逆なんですね。
だからこそ,肉料理では何分焼くかを覚えるより,その肉をどんな状態にしたいのか,そのためにはどの温度で,どれくらいの時間を与えるべきなのかを考えることが重要です。
それにしても,どちらも本当に傑作でした。絶対にキャンプでやりたい。
ワイルズを遊んでいたはずが,気がつけばリアル焚き火料理の新しい定番メニューができてしまいました。皆さんもぜひトライしてください。
面白いと思ったり,実際に作ったりした人は「#俺のコラボカフェ」「#COCOCORO」といったハッシュタグを付けてSNSに投稿してくれると嬉しいです。
それでは,またお会いしましょう。したっけ!
■■大西哲也(クッキングエンターテイナー)■■ あるときは料理研究家,またあるときは「COCOCOROチャンネル」のYouTuber。しかしてその実体は……料理を通じて多くの人を喜ばせたいクッキングエンターテイナーだ! ちなみに今回,20年以上にわたって進化を続けてきたモンスターハンターシリーズを振り返り,自分も料理人として20年後にちゃんと進化していたい,と妙に刺激を受けたそうです。新しい食材,新しい技術,新しい料理。これからも一狩りどころか,何狩りでも行くつもりのようです。
※次回の掲載は2026年9月26日を予定しています































