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「たべごろ!スーパーモンキーボール」プロデューサーインタビュー。名作アクションが追加要素と“セガらしさ”をたっぷり詰め込んで復活
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印刷2019/10/31 00:00

インタビュー

「たべごろ!スーパーモンキーボール」プロデューサーインタビュー。名作アクションが追加要素と“セガらしさ”をたっぷり詰め込んで復活

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 2019年10月31日にセガゲームスから発売される「たべごろ!スーパーモンキーボール」PS4 / Switch / Xbox One / PC 以下,「たべごろ!」)は,ボールに入ったおサルを転がしてゴールへ向かうアクションゲーム「スーパーモンキーボール」シリーズの最新作だ。シリーズとしては7年ぶりの復活となる本作は,2006年にWiiで発売された「スーパーモンキーボール ウキウキパーティー大集合」をベースにさまざまなパワーアップを果たしている。
 また,声優の山寺宏一さん,日髙のり子さん,関 俊彦さんというレジェンド声優グループの「バナナフリッターズ」が主題歌を歌ったり,カプコンの辻本良三氏とのコラボPVが公開されたりなど,ユーザーをびっくりさせるようなプロモーションが行われていることも印象深い。

 そこで,今回4Gamerは,本作のプロデューサー兼ディレクターである城﨑雅夫氏にインタビューを実施し,開発の経緯やエピソードについて聞いてみた。

※Xbox One版は海外展開のみ,Steamは発売日,価格未定

セガゲームス「たべごろ!スーパーモンキーボール」プロデューサー兼ディレクター
城﨑雅夫
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開発期間はわずか半年。龍が如くスタジオで培われたスピード感


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。「たべごろ!スーパーモンキーボール」はシリーズ7年ぶりの新作となりますが,復活のきっかけは何だったのでしょうか。

画像集 No.004のサムネイル画像 / 「たべごろ!スーパーモンキーボール」プロデューサーインタビュー。名作アクションが追加要素と“セガらしさ”をたっぷり詰め込んで復活
城﨑雅夫氏(以下,城﨑氏):
 きっかけと言うより,セガゲームスの中では常々「スーパーモンキーボール」シリーズを出したいという声がありました。ただ,「龍が如く」シリーズや「JUDGE EYES:死神の遺言」などのタイトルを作っていたため,スタッフの手が空かなかったんです。
 「JUDGE EYES:死神の遺言」の開発が終わった後に,ちょうど僕とメンバーの手が空いたので,「今なら作れるんじゃないですか」と,立候補しました。

4Gamer:
 開発チームは何人くらいですか。

城﨑氏:
 立ち上げ当初は9人のメンバーで作り始めて,最終的には36人くらいの人間が関わっています。

4Gamer:
 「JUDGE EYES」が終わってからというと,開発期間はかなり短くないですか。

城﨑氏:
 本作はゲームエンジンにUnityを使っているんですが,その基礎研究を昨年末からスタートさせました。正式にプロジェクトが走り出したのが2019年の2月なので,約半年で完成させた計算になります。
 今回はNintendo Switch,PlayStation 4,Xbox One,そしてPCとマルチプラットフォームに展開し,かつ9言語版を同時発売するという,ゲーム業界でもあまり例を見ないプロジェクトです。自分でも良くやってるなあと思います(笑)。

4Gamer:
 それはかなりの機動力ですね。

城﨑氏:
 短期間,少人数かつ若手が主体となったプロジェクトなので,1人がいろいろな仕事を担当しなければならなかったのがプラスに働いていたと思います。
 ゲーム開発というのは,計画→実行→発売→プレイヤーからのリアクションというサイクルを経てメンバーの経験値になります。ただ,昨今のゲームは年単位で開発を続けるため,なかなかそうしたサイクルすべてを経験する機会はありません。結果的に若手スタッフの経験値を溜めることもできて良かったと思います。

4Gamer:
 半年というスピード感でうまく開発が進んだ理由は何だと思われますか。

城﨑氏:
 龍が如くスタジオは毎年何かしらの作品をリリースしているんですが,そのノウハウが活かせたことが大きいと思います。例えば,チェックやデバッグは高速化されていて,チェック専門の部署と連絡をするために特製のツールを使っています。あと,プログラマーが勘所を分かっていたのも大きいですね。ややこしそうな部分を先に作ってしまうなど,短期間で完成させるための工夫をいろいろと重ねています。


細かな調整や追加要素を加えて,“たべごろ!”になった「スーパーモンキーボール」


4Gamer:
 「スーパーモンキーボール」は過去にも多くの作品が出ている歴史あるシリーズですが,城﨑さんは「スーパーモンキーボール」シリーズの核となる魅力がどういったところにあると考えていますか。

城﨑氏:
 「もう1回やったらクリアできるんじゃないか?」と思わせるのがすごくうまい……というところです。最初プレイしたときは「こんなのどうやってクリアするんだろう?」と思うんですけど,やってるうちにクリアできるようになるんですよね。簡単すぎず,難しすぎず,諦めようかなと思った直前でクリアできるような絶妙なバランスがキモです。
 本作の開発もまずはゲームキューブ版の「スーパーモンキーボール」と「2」をクリアして,改めてシリーズがどういうものなのかに立ち返るところから始めていきました。

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4Gamer:
 「たべごろ!」はWiiで発売された「スーパーモンキーボール ウキウキパーティー大集合」がベースになっているそうですが,公式サイトでは“リマスター”ではなく“リメイク”とおっしゃられていますね。

城﨑氏:
 ソースコードをイチから書き直したり,いろいろな要素を追加していますから。コースもバナナの配置や落下を防止する柵の位置などをいじっていますし,単なる移植ではありません。

4Gamer:
 追加要素はどういったものがありますか。

城﨑氏:
 今回「タイムアタック」モードを実装しています。動画投稿サイトを見ると,「スーパーモンキーボール」シリーズはRTA(リアルタイムアタック)をして楽しんでいる人がおられるので,そういった方に向けたモードです。またゲームの進行に応じて,オリジナル版のキャラクターに加え,「スーパーモンキーボール3D」に登場したキャラクターを使って遊べます。

4Gamer:
 ソニックの登場も,先日発表されていましたね。

城﨑氏:
 はい。今回は,頭身がゲームの雰囲気にマッチするという理由からモダンソニックではなく,旧デザインのクラシックソニックに出てもらっています。彼を使ったときだけマップに配置されたバナナがリングに変わりますし,カプセルの色も,ソニックだけは「ソニックブルー」をイメージした特別仕様になっています。

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4Gamer:
 収録されるパーティーゲームにも変更点はあるのでしょうか。

城崎氏:
 もちろんです。せっかく作るんだからもっと面白くしようと,いろいろ変えています。例えば,「ハードルそう」はオリジナル版では,ハードルの高さや置かれている間隔はどのコースも同じでしたが,今回はランダムに変わります。また「モンキースノボー」ではバナナや障害物となる雪だるまの位置をすべて変えましたし,「モンキーターゲット」は遠くに高得点の標的を配置しています。さらに,これらのパーティーゲームを10種連続で遊ぶ「デカスロン」というモードもあり,オンラインランキングで世界中の人と腕を競えます。

4Gamer:
 コースはもちろんのこと,パーティーゲームにも細かく手が加えられていると。

城﨑氏:
 あと,これは完全に僕の趣味なんですけど,パーティーゲームには「裏技」を入れてあります。

4Gamer:
 裏技……いまや懐かしい響きですね。隠しテクニックや隠しコマンドのようなものでしょうか。

城﨑氏:
 両方あります。例えば「ハンマーなげ」は,オリジナル版だと投げた後はただ見ているだけでしたが,本作はボタンを連打することでおサルたちがキャッキャと声を出します。そうすると少し飛距離が伸びるんですよ。現実のハンマー投げでは,選手が投げた後に絶叫しますよね,あれを表現したかったんです。
 また,メインメニューでは,主題歌「恋するバナナーナ」のインスト版が流れているんですが,とある隠しコマンドを入れるとボーカル入りになります。ほかにもいろいろな裏技が入っているので探してほしいですね。

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4Gamer:
 いろいろと試してみたくなりますね。リメイクするうえで苦労された部分はどこですか。

城﨑氏:
 Wiiリモコンのジャイロ操作前提のレベルデザインを,アナログスティック操作に合わせて最適化し直したところです。ジャイロより,アナログスティックで遊ぶ方が難度は下がりますから,簡単になり過ぎた一部のステージは造形自体を作り直しました。

4Gamer:
 今回ジャイロ操作を採用しなかったのなぜでしょうか。

城﨑氏:
 プレイヤーの声が大きいですね。オリジナル版に寄せられた反響を可能な限りチェックして,ほぼ共通している意見が「ジャイロ操作は遊びにくい」というものでした。
 先ほどシリーズの魅力は「もう1回やったらクリアできるんじゃないか?」感にあると言いましたが,それがジャイロ操作によって損ねられているんじゃないかと。
 また,ジャイロはコントローラごとに操作感覚も異なります。本作は4つのプラットフォームで同時に発売しますから,ジャイロで遊びやすいコントローラや,そうでないものが出てくることになってしまいます。そうなるとバランスも取りづらいので。

4Gamer:
 なるほど。思い切った采配ですね。

城﨑氏:
 ゲームを取り巻く状況も刻々と変化していて,今はカジュアルにサクサク遊べて,楽しい瞬間がすぐにやってくるゲームが受け入れられる傾向にあります。それなら,操作方法の変更によって多少難度が下がってポンポンとクリアできたとしても,現在のトレンドには合っているんじゃないか……と考えたんです。そもそも,アーケードゲームの初代「モンキーボール」はバナナ型のジョイスティックとジャンプボタンで操作するゲームでしたし。ジャイロにこだわる必要はないのかなと。

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4Gamer:
 もともとの遊び方に立ち返ったということですね。

城﨑氏:
 ほかには,短い期間でゲームを完成させなければならなかったこと,現行機のコントローラに合わせて,100あるステージのバランスをいかに取るかというところも苦労しましたね。

4Gamer:
 テストプレイやバランス取りについては,チェックやデバッグのような高速化はなされているのでしょうか。

城﨑氏:
 これに関しては,作ってはテストプレイ,作ってはテストプレイを愚直に繰り返すしかないですね。専任の者を1人置いて「発売日の時点では,お前が世界で一番うまい状態になってくれ」とお願いしたうえで取りかかってもらいました。

4Gamer:
 「世界で一番うまい」状態というオーダーはどういう意図があったのですか。

城﨑氏:
 しっかりと遊び込んだ人間にバランスを取ってほしいという意味ですね。「東京ゲームショウ2019」で出展した体験版は,幅広い年齢層の方に遊んでいただけただけでなく,海外の方にも多く遊んでいただけました。
 会場でのクリア率はわずか6%と難しめだったんですが,プレイしている皆さんの表情を見ると笑顔で遊んでくれていて良かったです。ちゃんとシリーズの魅力に触れてもらえたのかなと。

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4Gamer:
 先ほどのお話しにあった「もう1回やったらクリアできるんじゃないか?」感ですね。

城﨑氏:
 そうですね。生みの親である名越が作ったものをうまく継承できたと思います。

4Gamer:
 ところで,城﨑さんの目の前にあるゲームパッケージは,黄色のイメージカラーを強く押し出しているのに目を引かれますね。公式サイトも,黄一色でした。

城﨑氏:
 パッケージを黄色くしたのは目立たせたいからです。ゲーム屋さんで棚を見ると,青か赤を基調にしたデザインのパッケージが多いんですよ。その中に入れて目立つ色は……と考えて黄色にしました。
 パッケージは細かな部分もかなりこだわっています。例えば,「バナナが中に入ってます!」という感じに演出したくて,PS4版のディスクには実写のバナナをプリントしています。本当はバナナの香りがする紙も入れたかったんですが,品証(品質保証部門)から「ほかの商品に香りが移る」と駄目出しされてしまいました(笑)。

4Gamer:
 ははは(笑)。

城﨑氏:
 Switch版はゲームカードの収納部分をおサルが持っているようなデザインにして遊びを入れたり,バーコードの部分も変わったデザインにしたりしています。あと,このゲームはボールを傾けて遊ぶゲームなので,ロゴやパッケージの画面写真まで,みんな傾けてナナメにしてあります。

パッケージ裏にあるバーコードが特別なデザインになっている
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4Gamer:
 聞けば聞くほど,いろいろな部分にこだわりが見えますね。テーマソングに「バナナフリッターズ」が起用されているのも驚きましたが,きっかけは何だったのでしょう。

バナナフリッターズ。メンバーは山寺宏一さん,日髙のり子さん,関 俊彦さんというレジェンド声優
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城﨑氏:
 知人から「バナナの着ぐるみで歌っている人たちがいる」と教えてもらったのがきっかけでした。「これはもう『スーパーモンキーボール』シリーズを歌ってもらうためにいるようなアーティストさんじゃないか」と思ったんです。
 メンバーが超有名な声優さんたちなのでダメもとでお願いしてみたんですが,なんと快諾いただけて。リマスターやリメイクでこんなタイアップをすることはなかなかないんですが,こういった取り組みができて良かったです。


セガらしさは,職人気質とゲーム愛。「たべごろ!」にもそれは詰め込まれている


4Gamer:
 話題は変わるのですが,インタビューに臨むにあたって城﨑さんの経歴を拝見しました。これまで,龍が如くスタジオの作品だけに関わっておられたのかと思いきや,「J.LEAGUE プロサッカークラブをつくろう!6 Pride of J」や,モバイルゲームの「サンリオキャラクターズ ファンタジーシアター」(iOS / Android)といったものに広く関わっておられて驚きました。

城﨑氏:
 そうですね。入社後に「龍が如く 見参!」と「龍が如く3」に参加して,「サカつく6」「クロヒョウ」シリーズにも携わりました。
 その後は「龍が如くモバイル for GREE」と「サンリオキャラクターズ ファンタジーシアター」というモバイルゲームを担当し,「JUDGE EYES:死神の遺言」を経て,今に至ります。

4Gamer:
 コンシューマゲームからモバイル,コアからカジュアルまでかなり幅広いですね。

城﨑氏:
 「龍が如く6 命の詩。」や「北斗が如く」でもヘルプに入っていますから,龍が如くスタジオで作れそうなたいていのものは作ったんじゃないでしょうか。まさかキティちゃんのゲームを手がけることになるとは思ってもいませんでしたが(笑)。

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4Gamer:
 たまたま「サンリオキャラクターズ ファンタジーシアター」の発表会見も私が取材していた(関連記事)んですが,城﨑さんがデモプレイで,楽しそうにハイスコアの出し方について語っていたのをよく覚えています。

城﨑氏:
 ゲームが好きですし,特に作るのが好きなんです。特定のジャンルを作り続けるより,やったことのないものに挑戦したいという性分ですね。

4Gamer:
 では,プラットフォームやジャンルへのこだわりはないと。

城﨑氏:
 そうですね。ただ,コンシューマゲームとモバイルゲームの両方を経験して「これは完全に違う仕事だな」ということがよく分かりました。お金を払って遊んでもらうコンシューマゲームと,無料で遊んでから課金するモバイルゲームの開発は似ているようで全然違います。例えるなら,家庭用ゲーム機が映画で,モバイルが連続ドラマといったところでしょうか。
 映画だと,お金を払ってから見てもらうので,盛り上がるところまでタメ……というか沈み込みを意図的に作ることができます。一方で連続ドラマはタダで見られるので,早い段階でピークを作らないとそもそも見続けてもらえません。

4Gamer:
 モバイルの方は話題性が重要だとよく言われますよね。

城﨑氏:
 あと余談ですが,打ち上げの雰囲気が違いますね(笑)。コンシューマゲームはプロジェクトが終われば打ち上げになりますが,モバイルの打ち上げ=サービス終了なので,解放感を味わうというよりは「次こそは!」と雪辱を期する反省会のようでした。

4Gamer:
 開発中の心構えも違うのでしょうか。

城﨑氏:
 モバイルの時は毎日が文化祭前日,終わらないマラソンのような感じでした。家庭用ゲーム機は手塩にかけて育てた娘を嫁に出すというか,リリースされた後は自分のものでなくなってしまう感覚がありますね。同時に,短距離走的でもあると思います。

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4Gamer:
 なるほど。

城﨑氏:
 また,モバイルは計画したものが世に出て評価されるというサイクルが非常に短いので,経験値は早く稼げます。ただ,コンシューマゲームを作っているときの方が,時間をかけてより深く考えていけると思いますね。

4Gamer:
 開発者としてのパラメータも,コンシューマゲームとモバイルでは育ち方が違うということなんでしょうか。
 モバイルゲームの運営に関わられて得られた教訓はありますか。

城﨑氏:
 「100円を稼ぐ大変さ」というのが身に染みて分かりました。モバイルゲームはコンシューマゲームと違って毎日の売上が出ますから,少額のお金を稼ぐということを強く意識するようになるんです。やはりコンシューマゲームを作っていると,どうしてもゲームバランスの調整やゲーム内容といった部分に目が行きますから。

4Gamer:
 「たべごろ!」にもそういった教訓が活かされている部分はありますか。

城﨑氏:
 「お客様にゲームを知ってもらう,人を振り向かせるためにはどうすればいいだろう……」というところは意識しています。
 だからこそ,「たべごろ!」では「売り場での陳列で目立つようにパッケージを黄色にする」「海外市場を意識して,ソニックに出演してもらう」「バナナフリッターズさんに曲を歌っていただく」など,あらゆる手を尽くしました。モバイルの経験がなければ,予算とスケジュールの範囲内で無難なものにまとめていたと思います。

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4Gamer:
 モバイルで人の目を惹きつけることについて意識の変化があり,それがコンシューマゲームにもフィードバックされたと。

城﨑氏:
 人って,「何と言われて品物を渡されるか」で感じる価値が変わると思うんです。即席麺を提供するとしても,ただ手渡しただけでは普通に食べるだけでしょう。でも,「新垣結衣さんが作ってくれた」って言ったら,お客さんは全力で食べますよね(笑)。
 なんといっても僕らはエンタメを作っているんですから,受け取った人が理屈抜きで「何それ!」って驚いてくれることをやっていきたいんです。

4Gamer:
 ゲームの質を上げるのはもちろん,振り向いてもらえる仕掛けも考えると。

城﨑氏:
 お客様への口説き文句というか,振り向いていただけるきっかけをたくさん入れて,「これならお金を払っていいな」と思ってもらえるものにしたいです。いいものを作るのはもちろんですが,それだけじゃダメなんです。内容がいいのにセールスの数字が上がっていないゲームは多々ありますが,そこにあるのが「何と言われて品物を渡されるか」の違いじゃないかと思っています。

4Gamer:
 ところで,セガに入社したときは,学校の先生が勝手に願書を出されたというのは本当なんですか? なんでも「お前はセガっぽいから,セガに願書出しといたぞ」と言われたそうですが(関連リンク)。

城﨑氏:
 本当です。実家が関西なので,関西以外のゲーム会社を受けるつもりはなかったんですが,勝手に願書を出されてたんです。
 最初は乗り気じゃなかったんですが,たまたまセガゲームスが関西で一次試験だけしていると知ったので,「一次試験だけなら受けてみようか」と思ったらあれよあれよと通って……。学校の七夕祭りで,短冊に「内定が欲しい」と書いたら,7月7日に内定が来たのはびっくりしましたが(笑)。

4Gamer:
 運命的なものを感じますね(笑)。そんな城﨑さんが考える“セガらしさ”とはどういったところでしょうか。

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城﨑氏:
 自分の責任の範囲なら自由にやらせてくれるところですね。社内政治で物事が決まるようなこともないです。その代わり作ったゲームが面白くなければ,ものすごく文句を言われます(笑)。「お前がいいと思うんならやってみれば? そのかわり,ちゃんと責任は持てよ」というのが“セガらしさ”なのかなと。
 あとは死ぬほどゲームが好きで,情熱を持った人が多いことですね。普段はシャイなのに,ゲームの話をし出すともう止まらない。プログラマーやデザイナーに相談するときでも,デスクの上に置いてあるゲームの話題をうかつに振ってしまうと,すさまじい勢いで話し始めて本題に移れない(笑)。

4Gamer:
 容易に想像できますね(笑)。

城﨑氏:
 みんな,ちゃんとゲームを遊んでいるんです。なんといっても,ゲームを遊んでいると褒められる職場ですからね(笑)。まあ,僕らがゲームを遊ぶのは,野球選手が素振りをするようなもの。当たり前なんですが。

4Gamer:
 その当たり前ができるというのが大変なんですよね。

城﨑氏:
 スタッフの情熱やゲームにかける思いはすごいと思います。「たべごろ!」も半年とはいえ,開発は当初の予定からかなりボリュームアップしました。追加要素を入れるぞと言うと,最初は不満の声が上がるんですが,いざ動き始めたら自主的に改良案を出してくれるんです。そのうえ,自分の中に設定したハードルが高い。「こんなんじゃだめだ!」という言葉は開発中によく聞きましたし,職人気質の人間が多いんですよ。そういう意味でも“セガらしさ”が十分に入ったタイトルになったと思います。

4Gamer:
 「たべごろ!」にもたくさん“セガらしさ”が詰まっていると。
 最後に本作を楽しみしている読者にメッセージをお願いします。

城﨑氏:
 ファンの皆さんを長くお待たせしてしまいましたが,その分期待を裏切らない内容になっています。新しく生まれ変わった「スーパーモンキーボール」を遊んでいただき,シリーズの新しい未来を一緒に作っていければ嬉しいです。DLCも現時点では予定しておらず,お買い上げいただければすべての要素が楽しめます。100ステージ入っていて,お値段も2990円(税別)とお求めやすいので,ぜひ手に取ってください!

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

「たべごろ!スーパーモンキーボール」公式サイト

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