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  • 発売日:2023/06/06
  • 価格:スタンダードエディション:9800円(税込)
    デジタルデラックスエディション:1万2600円(税込)
    アルティメットエディション:1万4000円(税込)
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印刷2023/06/01 08:00

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「ディアブロ IV」を120%楽しみたいアナタに贈るストーリー解説。リリスとイナリウスの愛憎劇から紐解くサンクチュアリの成り立ちとは

 2023年6月6日,Blizzard EntertainmentのアクションRPG「ディアブロ IV」PC / PS5 / Xbox Series X|S / PS4 / Xbox One)がついに発売を迎える。先行アクセスは6月2日からなので,筋金入りのファンならば先行アクセス権を片手に正座待機している頃だろう。このタイミングともなれば,最初に選択するクラスや装備掘りのことで頭がいっぱいかもしれないが,今回はあえて「ディアブロ IV」の予習を兼ねたストーリー解説をお届けしたい。

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 というのも,「ディアブロ IV」ではシリーズ定番の敵“恐怖の帝王ディアブロ”ではなく,“憎悪の御子・リリス”にスポットが当てられるからだ。今回もディアブロをぶっとばす物語になるだろうと予想していた人からすると,「サンクチュアリの創造母かぁ……それで,リリスって何をされてる方なの?」状態だろう(なんやかんやでディアブロが出てきそうな気もするが……)。

 予備知識なしに手探りで物語を楽しむのもいいが,どうせなら珠玉のダークファンタジーを120%味わい尽くしてもらいたい! ということで,本稿では「ディアブロ IV」のキーとなる憎悪の御子・リリスと,その伴侶である大天使・イナリウスのバックストーリーを解説しよう。リリスは「ディアブロ」シリーズの根幹を支えるメチャクチャ重要な人物であり,大天使イナリウスとの因縁ありまくりな物語は“サンクチュアリの歴史”を紐解くうえで外せないバックストーリーなのだ! 


それは創造主が織りなす憎悪の物語

リリスとイナリウスの出会い。その軌跡を追う


 今回フィーチャーするリリスのエピソードだが,シリーズのゲーム本編ではほとんど語られておらず,ゲーム内の収集品や公式サイトの記述,小説でのみ言及されている。それもそのはず。リリスが表舞台に立っていたのは,シリーズの祖である「ディアブロ」以前の時代。いわば前日譚に登場する人物だからだ。
 この前日譚では,神による世界の創造〜天使と悪魔の誕生〜天使と悪魔による永劫の戦い〜サンクチュアリ誕生〜ネファレムをめぐる罪悪戦争が描かれ,ひととおり読めば世界のあらましを把握できる。

 すべてを説明しようとするとかなり長く(ほんと長い)なってしまうので,以下ではリリスとイナリウスに関する部分を整理しつつ,覚えておきたいキーワードをピックアップしてみた。そもそもの世界の成り立ちや天使と悪魔の来歴に関しては,以下の記事を参考にしてほしい。

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[2012/05/21 12:00]
★手っ取り早く内容を知りたい人向けのまとめ★
・リリスとイナリウスは“敵同士ながら恋に落ち,駆け落ち同然に逃亡”
・悪魔と天使の逃避の地としてサンクチュアリが創造される
・2人はサンクチュアリを築いた創造主である
・悪魔と天使の間に生まれた種族がのちの人類となる“ネファレム”
・2人はネファレムの存続をめぐり対立し,リリスは2度も虚空へ追放
・罪悪戦争後,イナリウスは地獄の軍勢の手に渡り拷問を受ける


◆運命の出会いは永劫の戦いで起きた

 時はサンクチュアリが生まれる遥か昔。創世の時より,天使と悪魔は世界に存在するあらゆる創造物の所有権をめぐり,終わりのない争いを繰り広げていた。その火種の1つが天地創造の遺物“ワールドストーン”であり,戦場とされていたのがパンデモニウムの地だ。

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 すべてを征服せんとする悪魔の軍勢に天使評議会率いる軍勢が抵抗するも,悪魔を滅ぼすことも天使を打倒することも叶わず,拮抗した戦いは常に膠着状態にあった。“永劫の戦い”と呼ばれるだけあって,この争いには勝者も敗者もいない。
 ただ,終わりのない殺戮を繰り返していたのだ。そんな戦いが長く続けば,天使だろうが悪魔だろうが辟易とするもの。その筆頭が大天使イナリウスと三大悪魔の1人メフィストの娘・憎悪の御子リリスである。この2人が永劫の戦いの中,出会うことで歴史が大きく動くのだ。

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憎悪の御子・リリス
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大天使イナリウス
リリスの父・憎悪の帝王メフィスト。「ディアブロII」アクト3のボスでおなじみ
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 そんな2人の出会いは実にロマンチック! なんたって,悪魔の捕虜となったイナリウスを余興がてらリリスが見物しに来たことで,愛のジェットコースターが走り出したのだ。なんたるアブノーマルな状況。

 「ディアブロ III リーパー オブ ソウルズ」の収集品にある2人の手記によれば,光を失いつつあるイナリウスにリリスが触れたとき,彼は息を吹き返し「この戦いから脱し,争いのない世界を創りたい」と愚者のごとく語ったという。同じく永劫の戦いに嫌気がさしていたリリスは,イナリウスの言葉を聞き彼を解放した。

 苦労して捕まえた敵をあっさり逃がすあたり,リリスが一目ぼれをしたかのような展開だが,この時点での彼女は,好意うんぬん以前にイナリウスを“利用価値のある相手”として見ていたようだ。自身の目的のためならば天使であろうと利用する,なんともしたたかな悪魔である。こうして同じ目的に向かい意気投合した2人は,同じ志を持つ天使と悪魔を連れ両陣営から離反することとなった。

 戦いから逃げたとはいえ,身を隠す場所がなければ反逆者として捕まるのは時間の問題。ならばとリリスとイナリウスは天界からも地獄からも干渉を受けない理想郷を築くことにした。ワールドストーンを盗み出した2人は,その力を使い密かに“サンクチュアリ”を創造し,天使と悪魔の目から存在を隠した。
 つまり,戦いが嫌になった天使と悪魔の逃避行の地として創られたのが,のちに人類が住まうことになるサンクチュアリだったというわけだ。

<覚えておきたいキーワード>

★天使評議会
 天使の軍勢は規律と調和を重んじており,天使評議会を中心とした組織立った動きをとる。評議会は希望の大天使アウリエル勇気の大天使インペリウス運命の大天使イテラエル知恵の大天使マルサエル正義の大天使ティラエルの5人の天使で構成されている。

 組織的な動きはするものの,大天使たちは自身に課させられた掟に則り行動しているようだ。光の化身たる天使とはいっても,人類にとっての彼らは必ずしも善なる存在ではない。戦いから逃げる者,使命を放棄する者,うっかり悪魔を復活させてしまった者,挙句には人類を滅亡させるべきと主張する者も現れる。天使は天使で怖い。

★地獄の7帝王
 悪魔の軍勢は規律を重んじる天使とは対照的で,力ある者こそが正義と言わんばかりの弱肉強食な世界。地獄の7帝王を中心に統率がとれているような,そうでないような,それぞれが欲望のままに暴れまわっている。

 地獄の7帝王は,三大悪である憎悪の帝王メフィスト破壊の帝王バール恐怖の帝王ディアブロと,地獄の四小悪である罪悪の帝王アズモダン欺瞞の帝王ベリアル苦痛の帝王デュリエル苦悶の女王アンダリエルで構成されている。メフィスト,バール,ディアブロの三兄弟は結束が固く,兄弟の誰かが封印されるとあらゆる手を使って救いに行こうとする(かわいい)。対する四小悪は,我が物顔で悪魔の軍勢を牛耳る三大悪が気に入らない様子で,虎視眈々と下剋上の時を待っている。

★天地創造の遺物“ワールドストーン”
 世界を創造し破壊の力をも与える遺物。サンクチュアリ創造後,悪魔に堕落させられたり,天使に砕かれたりしたおなじみの石だ。この石をもとに作られたのが,「ディアブロ」の時代からお世話になっている悪魔封じの石こと“ソウルストーン”である。

ワールドストーン
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永劫の戦いの時点で,ワールドストーンはパンデモニウムに存在していた。石の防衛にあたり,大天使ティラエルがこの周囲に砦を築いたという。それが「ディアブロII」に登場した“伏魔殿の砦”。天使と悪魔はその砦の前を主戦場としており,砦から続くエリアに足を踏み入れれば,永劫の戦いがいかに凄惨な戦いであったが分かるはずだ
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◆ネファレム爆誕が招いた破局

 理想郷を手に入れた悪魔と天使たちは,サンクチュアリで手を取り合い平穏に暮らしていた。リリスとイナリウスのように種族の垣根を越えて愛を深めた者たちも増え,次第に子を成すようになった。そうして生まれたのが,天使でも悪魔でもない新たな種族“ネファレム”であり,のちの人類である。なお,イナリウスとリリスの間に生まれた子供は“ラズマ”と名付けられたという。

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 闘争を繰り広げた2つの種族から生まれた“平和の象徴”ともいえるネファレムだが,この誕生がサンクチュアリに影を落とした。2つの種族から生まれたネファレムは,いわば天使と悪魔のいいとこどりをしたサラブレッド。幸か不幸か,彼らは天使と悪魔を凌駕するほどの強大な力を持って生まれてしまったのだ。
 この事実に多くの天使と悪魔は恐れを抱き,ネファレムを根絶やしにすべきだと主張する派閥が生まれてしまう。なんたる過激派。

 これは創造父たるイナリウスも例外ではなく,世界のパワーバランスを崩しうるネファレムの存在は,いずれ天界と地獄の目に留まることになる。そうなれば,せっかく手にしたサンクチュアリでの平穏が崩れ去ってしまうと危険視したのだ。だが,創造母たるリリスは違った。リリスは“ネファレムこそ永劫の戦いに終止符を打つ存在”であると考え,その未来に期待をかけていた。

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 夫婦でも意見が真っ二つに割れて,さぁ大変。こうしてネファレムをめぐる惨劇の幕が開くのだった。このままでは愛しい子供たちを失うことになるーー狂気に駆られたリリスは,意見の異なる天使と悪魔を(イナリウスを除いて)1人残らず惨殺してしまう。意見が合わないなら消せばいいとは,なるほど悪魔らしい。
 これが2人の離別の決定打となり,イナリウスの怒りを買ったリリスは彼の手によって虚空へと追放されてしまうのだった。

 リリスにとって愛しい子供たちを守ることは,イナリウスとの未来を守ることでもあったはずだ。それを否定したイナリウスの行動は,リリスにとっては“裏切り”に等しい行為だったのではないだろうか。イナリウスが示した未来を信じ,リリスは彼を牢獄から解放した。だが,イナリウスはリリスの示す未来を否定し,リリスを虚空という牢獄に幽閉したという,なんとも皮肉な展開である。

 仲間と伴侶を失った寂しさか,それとも子への情だったのか,イナリウスはネファレムを根絶する考えをあらため,ワールドストーンによってネファレムのパワーを抑制することにした。ワールドストーンに施された細工によって,ネファレムたちは世代を経るごとに力が弱まり,ついにはか弱き人間へと姿を変えていった。
 かくして種族を超えた愛は破れることとなり,2人の間には禍根だけが残った。このわだかまりは,のちに起こる“罪悪戦争”に持ち越され,ついには「ディアブロ IV」の世界にまで影響を与えることになる。

 (戦争に利用しようとしていたとはいえ)リリスはネファレムを愛し,その可能性を信じていた。それに対し,自分の平穏な暮らしと子供の命を天秤にかけていたイナリウスは,かなりのダメ男だったようだ。とはいえ,リリスへの愛は偽りではなかったようで,彼は反逆行為に出たリリスの命までは奪わず,虚空へと追放する選択をしている。愛という名の深い情がそうさせたのだろう。

<覚えておきたいキーワード>

★イナリウスとリリスの子“ラズマ”
 ラズマは強大な力を持つネファレムの第一世代であり,人類最初のネクロマンサーでもある。死霊術の祖たるその名は後世に語り継がれることとなり,生と死の力を操るネクロマンサーは“ラズマの使徒”とも呼ばれている。シリーズファンにとっては,その名を冠したセット装備でおなじみだろう。

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★イナリウスの書き残しとリリスの手記
 この2つの手記は,リリスとイナリウスの出会いからネファレム誕生直前までの2人の心情が綴られた収集品で,「ディアブロ III リーパー オブ ソウルズ」の伏魔殿の砦内で入手できる。手記は短いながらも,イナリウスが「ティラエルは全然分かってない!」と愚痴をこぼしていたり,リリスが父であるメフィストを無能だと嘆いていたりと,当時の2人の心情を考えてみたくなる興味深い内容が書かれている。

 たとえば,イナリウスの書き残しには彼の人となりが分かるエピソードが多めだ。筆者なりの解釈だが,イナリウスは天界から離反したことに自責の念を抱いており,リリスとの平穏の日々を送りながらも心に暗い影を落としていた。いつか平穏を失い,責め苦にあう未来が訪れる。そうなれば英雄として称えられた自身の栄光が地に落ちるだろうと,彼は不安に駆られていたようだ。自分の保身ばかり考えているあたり……ダメ男説は濃厚かもしれない。

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◆罪悪戦争での再会

 リリスとイナリウスの離別後,サンクチュアリは再び平穏な日々を取り戻した。しかし,それも束の間。地獄の帝王らがサンクチュアリの存在に気づき,永劫の戦いの戦力として利用すべく“罪悪戦争”を仕掛けてくる。地獄の三大悪は人類を掌握すべく“三位一体教団”を立ち上げ,長い年月をかけて人々を悪の陣営へと引き込んだ。

 これに対抗すべくイナリウスが立ち上がり,彼は地上の予言者を装い“光の大聖堂”たる教団を組織して,天界の教義を説いた。2つの教団によって,サンクチュアリが天界と地獄の勢力に分かれたその様相は,皮肉にも永劫の戦いを再現しているかのようだった。

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 膠着した光と闇の勢力争いは,リリスの帰還によって終止符が打たれる。リリスはネファレムの力を抑制するワールドストーンの仕掛けを解き,彼らにかつての力を取り戻させた。そして,リリスに導かれたネファレムらは,三位一体教団と光の大聖堂に反旗を翻す。
 しかし,ワールドストーンによってネファレムが強大な力に目覚めると,天界までもがその存在に気づき,三つ巴の戦いへと発展してしまう。辛くもネファレムによって天使と悪魔の軍勢は退けられ,リリスはイナリウスの手によって再び虚空へと追放されるのであった。

 ネファレムの窮地を救いにきたリリスが再び追放とは,なんとも不憫な展開だと言いたいところだが,彼女はネファレムを支配するために行動していただけで,決して善なる存在ではなかった。甘言を弄して人々を扇動し,意のままに操れない者はネファレムであろうと命を奪う。
 ネファレムの可能性を信じ,愛していたとはいえ,彼女はやはり根っからの悪魔なのだ。犠牲を厭わない彼女を野放しにしていたら,いずれ人類を滅ぼしていたかもしれない。

<覚えておきたいキーワード>

★三位一体教団
 地獄の三大悪が結成した古の教団。決意,創造,愛を司る慈悲深き三柱の神々に扮した三大悪は,多くの人々を悪の道へと誘った。罪悪戦争時代の闘争に敗れはしたものの,教団の残党は姿を変え,今もなお邪教として存続している。

★光の大聖堂/光の聖堂
 地上の預言者たる大天使イナリウスを聖父とし,天界の教義をとく教団。「ディアブロ IV」ではイナリウスを最高指導者に据えた軍事陣営と化し,実務に関してはプラヴァという人物が取り仕切っている。教団の説くありがたい預言は,実はイナリウスが私利私欲のために歴史を改変し編纂したものらしい。


 天界と地獄の勢力を跳ね除けサンクチュアリに平穏が訪れると,天使と悪魔の間で休戦協定が結ばれる。それは,両陣営ともにサンクチュアリへの手出しを禁じ,人類が歩む道を彼ら自身に選ばせるという不可侵条約のようなものだ。この協定が結ばれる裏では,天使と悪魔である取引が行われている。

 地獄の軍勢もといメフィストは,イナリウスの引き渡しを締結の条件とし,天界側がこれを承諾した形だ。こうして罪悪戦争の幕は閉じられ,メフィストの手に渡ったイナリウスは,長きにわたり壮絶な拷問を受けたという。メフィストからすれば娘をたぶらかしたあげく,虚空へと追放した張本人なので,まぁ,拷問されても仕方がない。

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 (もともとダメ男っぽいが)罪悪戦争時代のイナリウスは,正気を欠いた行動が目立っていたように思う。人類のためではなく“理想の平穏”のために戦う彼が絶対的な正義であったかと言われると,微妙なところかもしれない。本来は手を取り合うべきネファレムらとは相容れず,同盟を申し入れたラズマさえも拒絶していた。命を奪わなかっただけマシかもしれないが,自分の子供を手にかけようとする行動はとても正気の沙汰とは思えない。そんな彼も「ディアブロ IV」の世界で再び登場するのだが,いかにして地獄からの脱出を遂げたかは不明だ。

 前日譚で語られるリリスとイナリウスの物語はここで幕を閉じる。物語の表舞台から姿を消した2人がどのような経緯でサンクチュアリへと帰還し,再会を果たすのか,楽しみでならない。



◆その後もなんやかんやあって「ディアブロ IV」の世界へ

 2人が表舞台を去ったあとも,サンクチュアリは天使と悪魔の干渉を受け,人類はそのたびに存亡をかけた戦いを繰り広げてきた。悪魔からすれば休戦協定なんてものは建前でしかなく,三大悪のサンクチュアリへの追放を契機に悪魔との闘争が始まり,ホラドリムの賢者らによって悪魔らが封じられる。
 ここで長い前日譚は終わりを告げ,「ディアブロ」から続く戦いの歴史へとつながっていく。そうして「ディアブロIII」から50年が経過し,虚空へと追放されたはずの悪魔リリスが“血の儀式”によって帰還を果たすのだ。


 「ディアブロ IV」でのサンクチュアリは,強大な力に目覚めし悪魔ディアブロと死の天使・マルサエルとの戦いによって大きく傷ついていた。ワールドストーンなき世界では,その傷跡が癒えることなく荒廃の一途をたどる。人類を長らく守護してきた魔術師の組織“ホラドリム”も,もはや抜け殻同然の状態になり,絶大な力を持つ支配者が存在しない世界はカオスの様相を呈していた。
 その暗黒ともいえる時代に降り立った人類の母は「愛しい子らよ,地獄の帝王が世界をむさぼろうと迫っている。救いは光になく己が内にある……」と甘くささやく。

 リリスの降臨は瞬く間に人々の精神を浸食し,サンクチュアリに混乱をもたらした。イナリウスを聖父と崇める軍事陣営“光の大聖堂” がそれに抗うなか,プレイヤーはかつてのホラドリムのメンバー・ロラスの助言により,リリスの痕跡をたどることになるのだ。

 リリスを止めなければ世界が終わる――イナリウスの裏切りと,二度の追放を受け,憎悪のまっただ中にいるリリスが目論むのは世界の救済か,それとも破滅か。憎悪と怨嗟にまみれた救いのないダークファンタジーが魅せる物語が始まる。

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