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強烈かつ不可解な体験の洪水。「Dome-King Cabbage」をTGSでプレイしてみた[TGS2024]
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印刷2024/09/29 18:34

プレイレポート

強烈かつ不可解な体験の洪水。「Dome-King Cabbage」をTGSでプレイしてみた[TGS2024]

 世の中には「奇妙」という言葉で表現するしかないゲームというものが,少なからず存在する。TGS 2024のインディーコーナー,HYPER REALブースに展示されていた「Dome-King Cabbage」もまた,そんなゲームのひとつだ。

 「子供の頃に遊んだポケモンの思い出などを踏まえ,改めて『ポケモンとは何か』などといった哲学的な問いに踏み込んでいったゲーム」という,これだけ聞いてもかなり攻めている感があふれるコンセプトを持つこの作品。実際にプレイすると,良くも悪くも予想や期待を裏切られる体験が得られる。

画像集 No.027のサムネイル画像 / 強烈かつ不可解な体験の洪水。「Dome-King Cabbage」をTGSでプレイしてみた[TGS2024]


なるほど,分からん。だが面白い。


 本作は,ジャンルとしては「ビジュアルノベル」となっている。そして確かに,一般的なビジュアルノベルのように,静止画とテキストで展開する部分もそれなりに存在している。だがTGS 2024の会場で試遊できたデモの範囲でいうと,ムービーであったり,JRPGライクな探索・会話・戦闘画面であったりのほうが,強く印象に残った。

 とはいえ近年では,ノベルゲームの合間にそのような演出が挟まるのは,けして珍しい話ではない。本作最大の違いは,そこで展開される動画そのものであったり,語り口であったりする。端的に言って,それらが「イカれている」のだ。
 こればかりは言葉で説明しても説明しきれないので,実際に画面を見ていただこう。

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 おそらくこの写真を見た読者の感想は「なるほど,分からん」だと思われる。安心してほしい,筆者の感想も「なるほど,分からん」だった。
 だが,これらはただ単に脈絡のない動画ではない。「脈絡がなさそうでありそうな,とてもクオリティが高く,見ていて飽きない動画」なのだ。ゲームのムービーシーンはしばしば「退屈なのでスキップ」という選択がなされがちだが,本作のムービーはショートフィルムとしての完成度が高く,純粋に映像作品として楽しめる(森美術館の展示でよく見るタイプの作品,と言えば分かってもらえるはず)。

 凝っているのはムービーだけではない。RPGパートもしっかりと作られている。これまた写真で見ていただこう。

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 ……どこかで見たような村に,どこかで聞いたような選択肢,そしてどこかで見たような王様。一方,ではこれが本作のメインなのかというとそうではなく(ビジュアルノベルなのだから当然だ),次の写真のようなメタ展開へとつながる。

画像集 No.007のサムネイル画像 / 強烈かつ不可解な体験の洪水。「Dome-King Cabbage」をTGSでプレイしてみた[TGS2024]

 なんだ,よくある展開じゃないかと思うかも知れないが,この直後の展開も完全に予想の斜め上にいくので安心だ。実際,このすぐ後に待っているのは……

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 なるほど,分からん。ともあれライターとして言えば「どんな写真を掲載してもネタバレにならない」という点はとても素晴らしい。
 なおビジュアルノベルと言えば選択肢だが,本作が最初にプレイヤーにつきつける選択肢は実に強烈だ。

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 なるほど,分からん。

 とにかく「分からん」が連打される本作だが,プレイフィールは最高で,テンポも素晴らしい(RPGパートは「お約束」が分かっていないとちょっともたつくかもしれないが)。
 「ゲーム(ないし娯楽作品)において『分かりやすさ』は最も重要であり,作品が提示するすべての表現はプレイヤーが即座に理解できねばらなない」という信条をお持ちの方には絶対にオススメできないが,そうでないなら間違いなく楽しめる作品と言える……はずだ。たぶん。

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 ちなみに本作はテキストも非常にハイブロウで,ぶっちゃけると「何いってんだコイツ」となることが多い。この難解なテキストを流暢な日本語に翻訳した翻訳者には頭が下がる,と思ったら,翻訳担当は4Gamerにも執筆している「いはらりえ」氏だった。個人的に筆者はいはら氏とは知り合いで,なんだか最近元気がないなと思っていたのだが,こんなテキストを翻訳していたのであれば納得である。

 本作は現状,50%くらいまで完成しているそうで,Steamページもできている。ページに掲載されたRock Paper Shotgunの「何が起こっているのか見当もつかないが,面白そうだ」という評価は,本作を的確に表現したものと言える。



 ただ本作の表現についての説明で「サイケデリック」という言葉が多用されているが,個人的にはこれをサイケデリックという言葉で表現すべきかどうかは悩ましいと感じた。これもまた,実際に体験してもらうしかないものではある。

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 個人的には,現代のゲーマーはあまりにも「分かる」ことを重視しすぎているように感じる。「分からない」ものを「分からない」まま楽しませてくれる本作は,「分からねばならない」という強迫観念にも似た思いから,プレイヤーを自由にしてくれる。
 本作を通しで体験し終えたとき,自分の中にどんな感情が残るのか,今から楽しみだ。きっとそれはけして言語化できない思いであろうし,本作はおそらく,そういうゲームなのだ。

「Dome-King Cabbage」公式サイト


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