第20回「Moonlight Peaks」
夜の帳が下りる頃、超常の者たちの町“ムーンライト・ピークス”は目覚めを迎える。そこへ、家を飛び出した1人のヴァンパイアが行き着く。母の思い出の地であるムーンライト・ピークスで始まるのは自由気ままな農園ライフ。魔法あり、変身あり、ヘンテコ魔法生物もありな不可思議な夜を謳歌しよう。朝日が昇るそのときまで――。
人間界のゲームに心奪われた魔王・赤城朱音(あかしろ あかね)。目つきも口調も悪いが実はお嬢様な龍恩寺凛(りゅうおんじ りん)。ボードゲームとミニチュアが大好きな天然ギャル・新山穂香(にいやま ほのか)。――そこは私立四亀学園。放課後の空き教室には,今日も3人の姿があった。
もし自分が超常の存在になれるとしたら何になりたい?
超常というと,人狼とか悪魔とかの類いってことじゃな。
穂花はティラニッドかな。
いや、暗黒の遠未来じゃなくてファンタジー世界限定で!
うーん、ファンタジー……。
ほれ、ここにいるではないか! 誰もが憧れてやまない魔の血族を統べる者が!
じゃあ、ヴァンパイア。
ズコーッ! そこは「朱音ちゃんみたいな魔王になりたい」じゃろ! その昔は深夜に現れる黒装束のPKKとして崇められておったんじゃぞ!
せめてそこは魔界での武勇伝を語れよ。
それで、なんで超常の存在?
それはな、人狼や魔法使い、幽霊や人魚が暮らす町を舞台にしたライフシム「Moonlight Peaks」にハマってるからさ。ヴァンパイアになりたい穂花にピッタリだと思うぞ。
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てことは、主人公はヴァンパイア?
そうさ。プレイヤーは家出したヴァンパイアで、日光の下じゃ活動できないんだ。
ライフシムなのに日光NGて、とんだひ弱じゃな。農作物の世話はどうするんじゃ?
全部夜にやるのさ。起床は18時、そこから朝の5時まで農作物や動物の世話をしたり、住民と交流したりする。
へ〜! 日没から日の出までが活動時間なんだ〜。
じゃが、それだと活動時間が短くなるのではないか? 普通、早朝から深夜まで活動できるものじゃろ。
それな。ゲーム内の時間で見ると短いんだけど、1日を終えるまでの実時間は15分だから、ほかのライフシムとそんなに変わらないんだよ。
夜のみの活動でも1日の“濃さ”は変わらないってことだね。
ああ。町の住民も同じように夜型だから、買いものもイベントごとも不便はないぞ。
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町の雰囲気はどんな感じなの? 夜の町って、暗くて寂しそうなイメージがあるけど。
これが妖しくていいんだわ。紫がかった夜の町をランプがぼんやりと照らしててさ、ゴシック&ファンタジーが好きならむちゃくちゃ刺さるやつ。
凛ちゃんの好みドストライクだったわけだね。
住民が人狼、魔法使い、神、幽霊、人魚にヴァンパイアじゃもんな、妖しげな者たちにマッチする町でなければのう。
この町って普通の人はいないの?
一応人間がいるけど少数派だな。恋愛相手のほとんどは超常の存在だし。
わ〜、ヴァンパイア同士の恋もいいけど、神様とのロマンスも気になる……!
恋愛対象は20人以上とあるが、凛の推しは誰なんじゃ?
推しは決まってるぜ。「死」ってやつ。
死? えっと、死って、あの死?
戸惑うよな(笑)。翻訳前の名前がDeathだから、たぶん死神だと思う。
死を司る神のほうね。概念的なものとロマンスしてるのかと。
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なかなかいいやつだぞ。命が終わる瞬間を見届ける仕事をしてるからか、達観してて陰がある。だけどユーモラスな一面もあってさ。
例えば?
死神なのに、バカンス中だからって陽気なアロハ着てる。
見た目からシリアス路線を放棄しとるな。
体が骨だから飲んだものは地面にこぼれ落ちてくし。
骨って分かってるのになんで飲んじゃうの!?
それと、ゴミをプレゼントするとめちゃくちゃ喜ぶ。
好みの癖が強い。
アタシらにとってはゴミでも、死にとっては“物が終わりを迎えるまばゆい瞬間”が見られる尊いものなんだってさ。
えっ、深っ……なんかごめん。
ぶっ飛んだキャラかと思いきや、種族ごとの設定に深みを持たせるための人物像なんじゃな。
そのとーり。見てくれだけがファンタジーなんじゃなくて、設定とか言動にもちゃんと説得力があるところもこのゲームのいいところなのさ。
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ファンタジーものということは、作物や家畜もこの世界独自のものになっていたりするのか?
半々ってところだな。じゃがいもとかブドウとかおなじみの作物が多めだけど、家畜に関しては完全にファンタジー寄り。
家畜の定番っていえば、ニワトリと牛だよね。あとはバッファローとか、羊、アルパカあたりだけど、どんなのがいるの?
いわゆるニワトリはチーキン、牛はカウキュラだな。アタシ的にはピッグゴートって家畜がおすすめ。
ははーん、豚(ピッグ)と山羊(ゴート)をミックスしたコロッとかわいい生物じゃろ?
そうそう、これがけっこうかわいくてさー。
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わぁ、絶妙なラインを攻めてるね。
かっかっか! 単眼生物をぶっ込んでくるとはな!
それでいったら、ペット枠のヘルキティは三つ目の猫だし、出荷用のボックスも複眼のモンスターだぞ。
あっ、えっと、ファンタジー世界っていうより魔界のほうが合ってるかも。
いや、ちゃんとファンタジーさ。農場の水やりとか木の伐採は、魔法でちょちょいのちょいだしな。
おおっ! 専用の道具を使わずとも、魔法でこなせる的なやつか!?
そそ。まぁ、発動にはマナが必要だから使い放題ってわけじゃないけど。
へ〜、水やり、木の伐採、岩の破壊、収穫……農園の作業を楽にしてくれる魔法が多いんだね。
あと、次の日の天気を雨にする魔法もあるぞ。
天候操作じゃと!? さすがにチート過ぎんか。毎日雨じゃったら、プレイヤーは何をして過ごすのじゃ?
釣りに採掘にゴーストの捕獲、あとヴァンプスターの回収とかかな。なんなら住民とカードゲームもできるし、水やり以外にもやれることが多いから、雨が降ったぐらいで暇にはならんさ。
ほう、ライフシムとしての定番を踏襲して遊びごたえは十分ってことじゃな。
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やれることは多いけど、ゲームとしての難度は易しめな印象だな。
ライフシムって何をしてもいいから、そもそも難度とかなくない?
なんていうのかな、そこまで苦労しなくても安定した収支を成り立たせられるっていえばいいかな。
そういうことか〜。どのゲームも序盤は地道にコツコツなイメージがあるね。
季節をいくつかこなして、加工品を量産できるようになると世界が変わるんじゃよな。
そそ。それでいうとこのゲームは、1年目の春時点から加工品のワインを量産できるから、苦労せずに大きい金額を稼ぎやすいんだ。
じゃあ、ただ夜な夜な畑を耕すのがメインのゲームじゃないってこと?
そうかもな。クエスト仕立てのストーリーも用意されてるし、ストーリー進行ありきのゲームともいえる。
ほう、クエストは次に何をすべきかの指針になるからのう、ライフシム初心者向きの設計なのかもしれんのう。
クエストのために町に繰り出すと住民と交流するきっかけになるし、アタシは嫌いじゃないぜ。
たしかに、クエストの縛りがないと、馬車馬のように働く“過労ライフ”を極めちゃうから、ライトに遊ぶにはちょうどいいかも。
体験版が配信されてるから、まぁまずはお試しで遊んでみてよ。翻訳の完成度とか、住民の人柄もライフシムものだと重要視されるし、そのあたりを見てから買うのがいいかもな。
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さて、そろそろいい時間だし、リアル帰宅クエストをこなすとするか。
あっ、そうだ! 帰り道でヴァンパイアごっこしよ! 日光を浴びたら灰になるルールね。
ペナルティが怖すぎ。却下。
え〜、残念。じゃあカーテン開けるね。よいしょー! 食らえ西日ダイレクトアタックー!
ギャアアアア! 目が、目がァァァ! 西日がワシの網膜をオオゥゥ!!
おっ、朱音ちゃん迫真の演技だね。これはやっぱりヴァンパイアごっこをやるべきじゃない?
いや、これガチだろ。引きこもりゲームオタクが西日に耐えられてないだけだ。
ひ、光の暴力じゃあ……。ワシもムーンライト・ピークスに移住するぞ〜!


























