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「異世界Role-Players」第7回:鱗を持つ種族〜その多様性は虹のように
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印刷2019/10/29 14:00

連載

「異世界Role-Players」第7回:鱗を持つ種族〜その多様性は虹のように

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ある日の沼地での冒険


語り部:犯人は美女……だそうだ
戦士:美女! やむにやまれぬ事情で罪を犯したか,それとも生まれつきの悪女か。どっちにしても俺の愛で救ってみせよう
魔術師:落ち着け。我々が捜査しているのは,沼地のトカゲ人集落で起こった殺人事件だ。すなわち,被害者も犯人もトカゲ人だぞ
語り部:そうとも限らん。隣の火山にはドラゴンマンが,隣接した密林には恐竜人が住んでいる。被害者はともかく,犯人はほかの種族かもしれないじゃないか!
戦士:ドラゴンマンの美女なら人間に変身できるかもしれん
魔術師:タフだな。とにかく証人に会ってみよう。で,犯人の姿について詳しく聞くぞ
語り部:目撃者は人間でいえば十代半ばの少年だね。印象に残っているのは,すらりとした美しい尻尾だそうだ。いつかあんな尻尾と尻尾を絡ませたいと熱く語ってくれる
戦士:うむ。気持ちは分かる
魔術師:何が分かるんだ!? 私には何も分からん。尻尾以外の特徴を教えろ。せめて種族は特定できるだろ
語り部:角や翼があったような,なかったような……。尻尾しか覚えていないそうだ
魔術師:こ,これが異文化……?
戦士:思春期の少年が性癖をジャストミートされて何も考えられなくなったんだろ? 人間にもよくある話じゃん
魔術師:えええ……


 さて今回は「鱗のある異種族」ということで,陸と海,それぞれの領域の鱗の種族についてお話していきます。
 陸の鱗を代表するのは3種族――まずはリザードマンですね。直立したトカゲ,といった姿をしており,多くのファンタジーゲームに登場します。その近縁として挙がるのがドラゴンマン恐竜人間。そもそも,ドラゴン自体が知性を備えた種族であることも多いですが,今回は“ドラゴンの血を引く人型種族”に限ることにします。一方,恐竜人間は太古の恐竜から進化した種族でして,ファンタジーよりSF寄りの発想です。
 続いて海の鱗,すなわち魚類系の種族です。大別してギルマン(魚人)タイプとマーフォーク(人魚)タイプがいます。日本語にしたとき,魚の字が先か後かで受ける印象がかなり異なりますな。魚人は基本的には魚に手足がついた感じ。人魚は,人間そのものの上半身と魚そのもの下半身がくっついた種族です。
 この5系統すべての共通項,思いつくのは一つくらいでして,

  • 寒さに弱い

ことでしょうかね。氷属性ドラゴンの子孫のドラゴンマンとか,例外は幾つか考えられますけど。あと,あえて挙げるならもう一つ,

  • 人間と大きく異なる価値観を持つ

というものもあるでしょう。ただし「異なる」の方向性は作品ごとに大きく違い,さらに「中身は人間と大差ない」という作品も増えてきてはおりますが。


我ら,父祖なる竜に仕えるものなれば


 リザードマンは名前そのままに,人間のような姿をしたトカゲ,といった風貌の知的種族です。ゲームに登場するときは敵であることが多いのですが,最近は純粋に邪悪な存在として描かれることは少なく,やむにやまれぬ事情で人類と敵対することはあっても,話合いによる相互理解が可能な種族として描かれるようになりました。古い作品では“野蛮で冷血な種族”として扱われがちでしたが,これは要するに,異文化に対する当時の認識の比喩であるのかもしれません。文化の違いが知性の格差ではないという認識が広がるにつれ,リザードマンの扱いも変わってきたように思います。
 リザードマンが敵として登場する場合,爬虫類のイメージから「感情のない冷血さ,損得だけで物事を判断する」面などが強調されがちですが,味方になると「心はあったかい」となる例が少なくありません。例えばライトノベルの「ゴブリンスレイヤー」はテーブルトークRPGの影響が色濃い作品ですが,同作に登場する蜥蜴人(リザードマン)は戦いを尊び,祖たる竜を信仰し,誇りを重んじる民として登場します。主要登場人物たる蜥蜴僧侶は豪放磊落(ごうほうらいらく),闊達(かったつ)な人物ですしね。とはいえ,種族全体がそうであるとは限りませんけど。

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テーブルトークRPG「アースドーン」では,トカゲ人間のトゥスラングがプレイヤー種族として登場します。彼らも性格は明るく,よくしゃべる種族です(リンクはAmazonアソシエイト)
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アンソロジー「モンスターコレクション・テイルズ」に収録された山本 弘さんの短編「醜い道連れ」は,リザードマンの暮らしぶりを詳細に描いた作品。読むと“人間と異なる価値観”がよく分かります(リンクはAmazonアソシエイト)

 こうしたファンタジーゲームのリザードマンにしばしば見られる特徴として,「左利き」というものがあります。これは初期の「ダンジョンズ&ドラゴンズ」で,リザードマンのイラストが左右逆転して使われたことがそもそもの発端と言われています。テーブルトークRPG「ルーンクエスト」に登場するドラゴニュート(龍人)も左利きと明言されていますし,初代「ソード・ワールドRPG」のリザードマンも,両作品のオマージュとして左利きにしたと,これはデザイナーから直接聞いております。

「剥かせて!竜ケ崎さん」(リンクはAmazonアソシエイト)
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 多くのリザードマンは人型の爬虫類なんですが,人間形態とトカゲの姿を行き来する「ワーリザード」タイプもときおり存在します。「ソード・ワールド2.0 / 2.5」の悪役種族,バジリスクがまさにこれで,石化などのさまざまな邪眼を持った,体長数メートルのトカゲに変身できます。
 このワーリザードタイプが登場する作品では,漫画の「剥かせて!竜ケ崎さん」がオススメですね。女子高生の竜ケ崎さんは普段はほぼ人間ですが,瞳に瞬膜(半透明のまぶた)があり,手がヤモリの特性を持っていて,定期的に脱皮をします。この剥かれちゃった抜け殻に執着する男の子,遊上くんと彼女が織りなすユニークな学園ラブコメです。竜ケ崎さんは,感情が暴走すると完全なトカゲモードになるんですが,これが可愛くて。

 ちなみに竜ケ崎さんはカメレオンのように舌を伸ばすこともできるんですが,こういった普通のトカゲ以外の爬虫類の特性を持つ異種族が登場する作品もあります。Z級映画には鰐人間とか,年寄りキャラが多い亀人間なんかもでてきますが,ゲームで登場頻度が高いのは蛇人間でしょう。
 蛇人間は,首が長くて手足や胴体は普通の人間というパターンと,腰から下が大蛇になっているパターンがあります。前者の代表はクトゥルー神話で語られる蛇人間,後者の代表はインド神話のナーガ族あたりでしょうか。どちらもリザードマンに比べて知能が高く,魔術を得意とします。蛇は世界各国で,神や神に対抗する存在とされることが多く,脱皮が転生に通じることから,若返りや不死のイメージを伴います。人間より優れた高位種族として扱われ,対立すればかなりの強敵です。蛇と人との組み合わせにはメデューサも含まれますが,こちらはまた別の折りにでも。


輝く鱗はどちらの印?


 リザードマンの類縁種族で,爬虫類から少し離れたところにいるのがドラゴンマンと恐竜人間ことダイノソーマンです。
 ドラゴンマンの設定はさまざまですが,たいていのファンタジー世界では優れた能力を持つ強敵として冒険者の前に立ちはだかります。例えば「ドラゴンランス」シリーズのドラコニアンは,戦闘力も知力も高く,剣技や魔術を使いこなします。始末に悪いのは死ぬときで,爆発して相手を巻き込んだり,自分を殺した武器をくわえたまま石化して抜けなくしたりと,死なばもろともの精神を発揮します。このドラコニアンという種族は……いや,止めておきましょう。その生まれ自体が,物語の謎に大きく関わっていますので。傑作小説でもあるので,ぜひ自分の目でお確かめください。

 テーブルトークRPGでは,ドラゴン系種族がプレイアブルな種族として登場することもあります。「ダンジョンズ&ドラゴンズ」のドラゴンボーンがそうですし,「ソード・ワールド2.0 / 2.5」にも,善と悪それぞれにドラゴン系種族がいます。善側のリルドラケンは,人間サイズの直立したドラゴンといった姿。悪側であるドレイクは,見た目は角が生えた人間ですが,いざという時にドラゴン形態に変身できます。

「The Elder Scrolls V: Skyrim」にも登場するドラゴンボーン。しかし,こちらはドラゴンの能力を受け継ぎ,ドラゴンの魂を滅ぼす異能を持った存在ということで,種族としてのドラゴンボーンとは異なります。見た目も人間そのものだし
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 それとは反対に,ドラゴンが人の姿をしてあらわれるエピソードも,神話や伝説にはよく見られます。とくに東洋の竜達は,人とコミュニケーションをとるときに人間の姿をとるようです。単なる竜ではなくて「竜神様」と,神の領域に入っていることも多いです。海底にある竜宮城は,その名のとおりに考えれば竜王の城のはずなので,乙姫さまもたぶん本来の姿は竜なのでしょう。

 なおリザードマンとドラゴンマンの間に,明快な境界があるとは限りません。リザードマンの上位種としてドラゴンマンが登場する作品も多いのです。「ロードス島戦記」の舞台・フォーセリアのリザードマンは,ドラゴンを信仰し,翼やブレスなどといった竜の力を授かる呪文を操ります。ライトノベル「転生したらスライムだった件」に登場するリザードマン達も,「進化」によってドラゴンマンになりましたね。


恐竜帝国の興亡


恐竜人類の登場するフィクションでは,漫画「ジャバウォッキー」「ジャバウォッキー1914」(著・久 正人)が超オススメ。進化した恐竜と人類が共存する世界でのスパイものとなっております(リンクはAmazonアソシエイト)
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 さて,もう一方の恐竜人は,20世紀前半の娯楽小説で悪役として登場するようになりました。時系列的には,むしろこちらがリザードマンの原型,とも考えられます。その元祖の一つが,地球空洞説に基づいた冒険SF「地底世界ペルシダー」シリーズに登場する翼竜人間・マハールです。飛翔能力や催眠能力で,地底世界を事実上支配しておりました。

 恐竜人にはディノサウロイド(恐竜人類)という呼び名もあります。恐竜が絶滅せずにそのまま進化して知性を獲得し,人類と呼べる存在が生まれていたら……というSF的な発想で考えられた種族です。
 古生物学者・Dougal Dixon(ドゥーガル・ディクソン)氏「新恐竜」という本は,もし恐竜が絶滅しなかったら,どう「進化していたか」を考察したものでして,コレに登場するのがディノサウロイドです。氏の著書には,このほかにも人類絶滅後に登場する生物をテーマにした「アフターマン」などがあり,空想生物,架空種族好きにはたまらないものがあります。

 ロボットアニメや特撮ヒーローものでも,恐竜人間の出番は多いですね。合体ロボットの元祖「ゲッターロボ」の宿敵が恐竜帝国ですし。特撮なら「恐竜戦隊ジュウレンジャー」がそのものズバリ。ヒーローの5人は,時を超え眠りから覚めた“古代恐竜人類”という設定でした。
 余談ですが,このジュウレンジャーはスーパー戦隊の中で唯一,公式なテーブルトークRPGが発売された作品でもあります。その名も「恐竜戦隊ジュウレンジャーRPG大百科」で,ケイブンシャから発売されていました。子供向けのシンプルなルールで,判定にはダイスではなくじゃんけんを使います。とはいえ単純なじゃんけんではなくて,「どの手で勝つかによって達成値が異なる」という要素が,面白い駆け引きを生んでおりました。


けろけろうぉーう,それは波間からやってくる


そしてある日の海辺での冒険


戦士:いやー,昨日は大ガニのモンスターが出たおかけで,保存食が節約できたな
魔術師:モンスターを食べるその神経が分からん
戦士:とりあえず,普通に釣った魚なら食うだろ?
魔術師:見たこともない魚だ。毒でもあったらどうする
戦士:その時は毒抜きの呪文をよろしく
語り部:というように,砂浜で君達が焚火をして,戦士くんが釣った魚をぺろりとたいらげた時だ。海中から美女がざばりと姿をあらわす
戦士:溺れてるのなら,泳ぎ寄って助けるぞ
魔術師:落ち着け。海中から登場したならモンスターのたぐいだろう。人魚かなにかじゃないか?
語り部:正解だ。彼女は,迷子になった弟を探しているのだが,何か知らないかと聞いてくる
戦士:(そそくさと魚の食べ残しを隠して)さあ?
魔術師:幼い人魚って,魚そっくりだったりするのか?
語り部:さてね。確かめる方法は一つある。人魚の肉は食べた者を不老不死にするので,心臓を刺して死ねば無罪,生きていれば有罪という……
戦士:できるかーっ!
魔術師:そうだな。さすがに死んでは取り返しがつかん。そこでどうだろう,腕を斬り落として試すのは?
語り部:彼女も納得したようだ。ちなみに彼女の爺さんはこのへんを統治する海神だそうだから,逃げても無駄だよ
戦士:ひーっ!


 半人半魚の鱗系種族は,境界線がはっきりしている者が人魚,はっきりしてない融合型が魚人と呼ばれます。半人半魚で最も古い鱗系種族は,古代メソポタミアの神話に登場するオアンネスでしょう。紀元前300年頃の文献に登場するのですが,ここからさらに古い神話にもさかのぼれるようです。オアンネスは海からやってきて地上の人間に文明を授けたとされているので,つまり人間より優れた技術や知識を備えていたわけですな。海からの異種族は,人類よりも高い文明を持っているものなのです。

 いまや最もメジャーな「魚めいた異種族」といえば,クトゥルー神話の“深きものども(ディープ・ワンズ)”かもしれません。彼らもまた「人間には理解できない」ものの,海底に壮麗な都を築いており,人類とは異なるベクトルではありますが,高い文明を持った存在です。理解しようとすると,狂気に陥るたぐいの文明ですが。
 太古,人類発生以前にやってきて地球を支配した邪神クトゥルー(クトゥルフ,ク・リトル・リトルなど発音はお好みで)の眷属である深きものどもは,魚めいた,あるいは蛙めいた容貌の,不老不死の種族です。半人状態におけるぎょろ目の容貌や,さまざまな作品における役どころで(文字どおり)雑魚扱いされがちですが,実のところ,知能は高いし,永遠に生き続けて成長すれば神レベルに達するほどの種族なんですよね。

 こうした高い知能を持っていたはずの魚人達が,あまり賢くなく,技術も持たない種族になってしまったのは,1954年に大ヒットした映画「大アマゾンの半魚人」の影響かもしれません。2017年に公開された映画「シェイプ・オブ・ウォーター」の元ネタの一つとも言われる「大アマゾンの半魚人」ですが,この映画の中のギルマンは,進化の過程のどこかで人類と袂を分かち,水中を生活の場とした原始人として描かれていました。とはいえ,水中で撮影された半魚人の表現は見事で,美しくすらあったのですが。
 ともあれ「高貴なる蛮人」であったギルマンは,この映画で一躍人気キャラクターとなり,その後もあちこちで類似のモンスターが生み出されていきます。曰く,汚染物質や放射能で突然変異した魚が正体だとかのB級C級,Z級映画がぞろぞろ出回るようになり,それが今度はゲームに輸入されて……結果,どんどん頭の悪い種族になっていったのです。
 ゲームの例では,「ダンジョンズ&ドラゴンズ」に登場するサフアグン(sahuagin)が有名ですね。基本的に悪役ですが,「アリアンロッドRPG 2E」ではサハギンの名前で,プレイヤー種族として選択できるようになっています。



人魚の歌声は月光に響く


 魚の特徴を持った異種族で最も有名なのが人魚(マーメイド)でしょう。とくに童話の「人魚姫」の影響が大なのですが,ファンタジーゲームにおいては,さらにさまざまな伝承が入り混じった形で登場します。ライン川の魔女・セイレーンが混じって歌の魔力を操る力を備えていたり,ビショップ・フィッシュ(和風に言えば海坊主でしょうか)や海神ポセイドンと合わさって厳ついひげ面になったりと。近頃のゲームでは,海の種族としてマーフォークと呼ばれることも多いようです。
 ただ,やはり下半身が魚という身体的ハンディは大きくて,海を舞台にした冒険以外では,どうしても活躍しづらい。なので,人魚がプレアブルな種族である場合は,なんらかの手段で人間形態にもなれる,という設定も多いです。
 「ソード・ワールド2.0」では,「異種族としての身体的特徴が一般の同族より弱くしか出なかった変異体=ウィークリング」として,二本足のマーマンのキャラクターを作ることができます。また同じくテーブルトークRPGの「ゲヘナ〜アナスタシス」では,人間形態−人魚形態−光の羽による飛行形態の3つの姿を行き来できる「海の民」という種族が登場します。なおこの海の民,変身時に困らないよう,基本的にパンツは履かない設定です。……なんか他人事みたいに言ってますけど,この設定作ったの私なんですよね。

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 一方,東洋の人魚は上半身が人間というより猿に近く,どちらかというと醜い姿をしています。「人魚の肉を食べると不老不死になる」という伝承もあって,これがしばしば物語のネタになることも。人魚を食べて800年を生きた八百比丘尼という女性の伝説も有名ですね。人魚の肉と不老不死をめぐる物語では,高橋留美子さんの漫画「人魚」シリーズがありますし,最近読んだ中では,峰守ひろかずさんの小説「妖怪解析官・神代宇路子の追跡」も面白かったです。
 今挙げた2作品はシリアス目な作品ですが,洋の東西を問わず人魚が登場する作品となると,比較的最近のものとして「深海魚のアンコさん」が可愛くてオススメ。下半身がどんな種類の魚かによって,異なる特殊能力を持った人魚達が,地上へ留学してくる設定のお話です。あとパッと思いつくところでは「崖の上のポニョ」のポニョとか,手塚治虫先生の「海のトリトン」のトリトンとか。トリトンは女性が人魚型,男性が人間型の海洋種族でした。“海洋に適応した種族”というところまで広げると,DCコミックのアクアマン,マーベルコミックのサブマリナーとかも入るでしょうか。ほかにもいっぱいあると思いますが,挙げればキリがないので今回はこのへんで。


鱗系種族の要は尻尾にあり!


 種族的な違いが大きいため,鱗系のロールプレイをひとまとめに語るのは難しいんですよね。獣人と違って,語尾でそれっぽくする,というわけにもいきませんし。両生類系蛙人間なら「〜でケロ」で分かりやすくキャラが立つんですけれども,爬虫類や魚類だとそうもいきません。「〜でギョ」とかいう魚人も……たまに居ますけど。

カエル人間といえば思い出されるのが「EverQuest」のこの人,Froglok。最初はNPC専用でしたが,後にプレイアブル種族に昇格を果たしました。こんな見た目ながら,なにげにTank適性が高いという武闘派です
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 リザードマンやドラゴンマン,恐竜人間という括りであれば,実は大きなポイントが一つあります。それは尻尾を使いこなすこと。大きな尻尾は,これら種族の最大の特徴です。見た目だけではなく,戦闘においても重要な武器ですし,これを使った攻撃は,多くのゲームでかなりの威力を誇ります。こういった身体構造の違いは,日常の行動にも反映されるものなので,前回の獣人の回でも触れましたが,そこに“らしさ”を盛り込むのがコツかもしれません。
 想像力を働かせてみましょう。リザードマンの尻尾は,背後に伸びる3本目の腕なのです。きっとずいぶん便利でしょうし,例えば「ちょっとそれ取ってよ」と言われたときに,ひょいと尻尾でわたしてみたらどうでしょうか。もちろんプレイヤーは「尻尾でわたすよ」って口で言うだけなんですけどね。
 もしリザードマンが複数いるのなら,一方がそういう描写をしたときに,それに乗っかって「やめろ,行儀が悪い」と叱ってみたり,「俺にもとってくれ」と尻尾をのばして先端で触れあったり,といった描写を重ねるのも良いでしょう。前者ならリザードマン社会の礼儀作法が垣間見えてきますし,後者なら人間における「指が触れあう」みたいな,人間に近い感性を表現できるかもしれません。

 こうした身体構造に根ざしたロールプレイの考え方は,ギルマンやマーフォークといったほかの種族にも転用できます。それぞれの特徴や,住環境を意識してみるのです。冒頭の「寒さに弱い」というのも,種族の特性としてルールブックに記載がある(氷系の魔法に弱いとか)場合もありますが,あってもなくてもうまく利用してみてください。例えば,気温や湿度にぶつぶつ愚痴ってみたりとか。砂漠や雪山のような過酷な場所での冒険は,こうした生理的な違いをうまく表現するチャンスと言えましょう。

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 あと,これは世界設定次第なので,各々が遊んでいるゲームのワールドガイドを確認していただきたいのですが,リザードマンや爬虫類系種族の文化としてよく登場するのが,「転生思想」「戦うことを尊ぶ文化」です。
 先にもちょっと触れたように,爬虫類の脱皮というのは,古来,不死性や生まれ変わりのメタファーとして神秘視されてきました。多くの作品でリザードマンが「魂は転生するもの」という宗教観を持っているのは,このあたりが影響しているのではないかと思います。であればこそ,自らの命を「使いつくす」ことを厭わずに,戦いで散ることを人生の華と考えるのかもしれません。
 さらに「生き続ける限り大きくなる」という爬虫類の特徴や,巨大な「恐竜」が実在したことから,リザードマンは長く生きればいずれドラゴンになる,という設定もよく見られます。魂の不滅と輪廻を信じ,そして魂の修行によっていつか超常の存在へ辿りつけると信じるリザードマン達は,一部の仏教思想に通じるところもあります。日本人が好むリザードマン像がこういった味付けになっていったのも,ある意味必然なのかもしれません。

 さて,次回なのですが,毛皮,鱗ときて,次は羽毛……とも思ったんですが,それは先に回すことにしまして。いささか羅列的に語る回が続きましたので,次はじっくりと吸血鬼と,それに関連したアンデッド種族に触れようかと思っております。掲載は11月26日の予定です。またよろしくおつきあいください。

■■友野 詳(グループSNE)■■
1990年代の初めからクリエイター集団・グループSNEに所属し,テーブルトークRPGやライトノベルの執筆を手がける。とくに設定に凝ったホラーやファンタジーを得意とし,代表作に「コクーン・ワールド」「ルナル・サーガ」など。近年はグループSNE刊行のアナログゲーム専門誌「ゲームマスタリーマガジン」でもちょくちょく記事を書いています!(リンクはAmazonアソシエイト)
  • 関連タイトル:

    EverQuest

  • 関連タイトル:

    EverQuest II

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