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鉄拳・原田勝弘氏の新スタジオ「VS Studio SNK」の設立が明らかに。SNK傘下で新たな船出を迎えた氏に,“残された時間”の使い方を聞いた
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印刷2026/05/13 00:00

インタビュー

鉄拳・原田勝弘氏の新スタジオ「VS Studio SNK」の設立が明らかに。SNK傘下で新たな船出を迎えた氏に,“残された時間”の使い方を聞いた

 2026年4月某日,SNKから1通のメールが届いた。そこには,同社が新スタジオを立ち上げることと,それを率いる“伝説のプロデューサー”による所信表明が,SNKの東京オフィスで行われることが記されていた。

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 その案内に従い,現地に赴いたメディア陣を出迎えた“伝説”は,かつてバンダイナムコエンターテインメントで「鉄拳」シリーズの開発チームをまとめ上げ,最高峰の3D格闘ゲームへと導いたゲームクリエイター・原田勝弘氏その人であった。
 2025年12月の退職以来,その後の活動が明らかにされていなかった原田氏が,なんとSNKの新スタジオ立ち上げに関わっていたのである。

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 「鉄拳」シリーズのプロデューサーを務める原田勝弘氏は,本日(2025年12月8日),2025年いっぱいでバンダイナムコを退職すると個人Xアカウントを通じて明らかにした。今後の活動方針については,改めて報告するとしている。公式は原田氏への感謝を伝えるとともに,「鉄拳」シリーズの運営および開発体制については影響のないよう準備を進めているという。

[2025/12/08 19:01]

 所信表明の場となったSNK東京オフィスには原田氏だけでなく,同じく「鉄拳」シリーズに長く携わってきた米盛祐一氏,そしてSNKプロデューサーの小田泰之氏も姿を見せ,メディア合同でのインタビューが行われた。本稿ではその模様をお伝えしていく。
 また記事の後半では,合同インタビューの後に行われた個別インタビューも掲載しているので,併せてご一読いただきたい。

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またクリエイティブに踏み込み,仲間と一緒にゲームを作りたい――VSスタジオ設立合同インタビュー


――まずは新スタジオの概要をお聞かせください。原田さんが代表を務められるわけですよね。

原田勝弘氏(以下,原田氏):
 そうです。ただ肩書は代表取締役兼CEOですけど,僕自身もクリエイティブに足を踏み入れて,仲間たちと一緒にゲームを作っていきたいと思っています。それこそ,自分が20〜30代の頃にやっていたようなことに,原点に戻って今一度挑戦していくつもりです。

――SNK内のいちチームではなく,独立したスタジオということでしょうか。

原田氏:
 子会社ではありますが,100%ではありません。独立性は保ちつつも,傘下ではあるという形ですね。今取材を受けている,このビル(SNK東京オフィス)のワンフロアがスタジオになる予定ですので,SNKと協力関係にあるのは間違いありません。
 できたてホヤホヤで,今まさに環境づくりをしている途中ですので,規模感などはまだまだお話しできませんが,僕たちのやりたいことを実現できる規模にはしていきたいと思っています。

準備中の新スタジオ
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――スタジオ名は「VS Studio SNK」とのことですが,この名称にはどんな思いが込められているのでしょうか。

原田氏:
 そうそう。通称「VSスタジオ」ですね。皆さんから“バーサススタジオ”って呼ばれて,だから「“対戦”という意味の“VS”なんだろうな」って思われるでしょうが,実は複数の意味を込めた名付けだったりするんです。
 明確なルーツを一つ挙げるとしたら,1990年代に僕が所属していた「VS開発部」ですね。そこで生まれたシリーズをずっと手がけていたので,当時からバーサススタジオって呼ばれてましたが,こちらとしては「本当はビデオゲームソフト開発部なんだけどなぁ」なんて思っていたものです(笑)。
 ほかにも“Vanguard Spirit(先駆者の魂)”とか,開発者には馴染み深い「Visual Studio」とか,それからもちろん対戦という意味のVSも含めて,色んな意味を引っ掛けたのが,今のスタジオ名になっています。

VSスタジオ代表取締役CEOの原田勝弘氏
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――SNKとはどんな形で連携していく想定でしょうか。

原田氏:
 ほんとうにゼロからスタートする新スタジオなので,まずは開発環境の基礎をお借りすることはあるかもしれません。もちろん借りるだけじゃなくて,僕らが蓄積してきたナレッジを提供する機会もあるでしょう。
 独立したスタジオでありながら,完全にスタンドアロンってわけでもないのが,この体制の良い部分だと思っています。

――SNKの傘下で活動することを決めたのは,どんな経緯だったのでしょうか。

原田氏:
 前職を辞め,「これからどうしようか」と思っていたところに,SNKさんを含めて多くの方や企業からオファーをいただいていました。
 一方で,小田さんとは前職の頃から親交があり,世代的にも近いこともあって,「何か一緒にできたら面白いね」なんて漠然と話していたんですね。その流れで,出資元の会社を交えてお話する機会をいただいて,その話の中で「これは僕の考えているビジョンと合致するな」と思えたのがきっかけですね。であればぜひやりたい,となったわけです。

――前職を退職されるときのコメントで,原田さんは開発者として残された時間について言及されていました。改めて,今のお考えを聞かせていただけますか。

原田氏:
 前職を辞したのは,単にリセットしたかったとか,やり直したかったとか,そういうことではないんです。積み重ねることでしかできないことも,世の中にはたくさんありますから。
 ただその積み重ねによって,自分の立場というか,在り方が固定されていくんですよね。50代にもなって,同じ組織の中で「一回ナシにして仕切り直したい」というのは,そりゃあ通じません。新しいことを実現したいとなったら,一度離れるしかなかったわけです。

 契機になったのは,やはり時間ですね。精神的にも肉体的にも,自分が動けるだろう時間を逆算すると,残されている猶予はそんなにないと気付いたんです。日本人男性の平均寿命って80歳くらいですし,どう頑張っても今の倍の時間は生きられない。健康寿命で考えればもっと短い。
 あともう1つ,2つ――まぁ数は分からないですが,「これだけは実現したい」というものを形にするなら,急がなくてはならない。それが新しくスタジオを立ち上げた理由といえます。

――SNKというブランドの強みを,原田さんはどのように分析されていますか。また新スタジオとして,今後SNKの既存IPを活用していくおつもりなのか,それとも差別化していくのかといった方針を教えてください。

原田氏:
 具体的にお話できる段階にありませんが……僕のキャリアからすると,SNKさんと相性が良いのは間違いないですが,培ってきたナレッジはかなり異なると考えています。似たジャンルを作ってきたように見えて,実は全然違うんですよ。だからそうしたナレッジを交換して,相乗効果を生み出せていけたらと思っています。
 IPに関しても,個人的には好きなシリーズはたくさんあるんですが,じゃあ「コレを作ります!」って今言えるようなタイミングではありません。どこかのタイミングで発表する日が来るでしょうし,そのときは皆さんをあっと言わせられるようにしたいですね。

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――では,SNKが今取り組んでいる「サムライスピリッツ」や「龍虎の拳」といったプロジェクトに原田さんが関わることはないと?

原田氏:
 ……あるんですかねぇ?

小田泰之氏(以下,小田氏):
 やります?(笑)

原田氏:
 個人的な思いで言えば,そりゃあやってみたいことはあります。とはいえ,SNKさんのものですから,あまり勝手なことは言えないですよね。これは隠してるとかじゃなくて,単に現状では何も決まってないってことです。1990年代なら気軽に手を出せたでしょうけど,今は開発に平気で4〜5年かかる時代ですから。簡単には言えないですね。

――「餓狼伝説 City of the Wolves」での意外なコラボレーションが話題となっているSNKですが,原田さんから見て,あの施策をどう思われますか?

原田氏:
 あれね! 昔から遊んでいる人はご存じだと思いますが,格闘ゲームのプレイアブルキャラクターに,格闘ゲームとはまったく無関係なIPからゲストを迎えるのって,実は僕が担当してた1990年代の“某シリーズ”が初だったんですよ。だから自分的には,「ようやく皆も追いついたか」という安心感すらあります(笑)。
 面白いのは,ああなったらもう「次に誰が出るか」予想がつかないことです。純粋に面白いと思ってもらえるか,あるいは抵抗を感じるかはそれぞれあると思いますが,いちファンとしては面白いことをしているなと思って見ています。

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[2013/11/01 15:00]

――今後,新スタジオでどんなゲームを作っていきたいですか。

原田氏:
 少なくとも,“対人戦”と“アクション”の要素は外せないと思っています。得手不得手,市場からの期待,それから出資者からの期待と,いろんな事情が絡み合っているのは確かですが,そうしたものを横に置いても,これらの要素を追究したい思いが自分の中にありますから。

――手掛けるタイトルの規模について,今言えることはありますか。

原田氏:
 規模感を言ったら金額感もバレるんで,何も言えないですね。スタジオとしての理念は「Beyond tradition, crafted to perfection. 伝統に挑み、極限を創る。」なので,もちろんできるだけ良いものを作ろうと思っています。規模に関わらず,まずは中身に集中しなくてはなりません。

――新スタジオでは,これまでの経験をどのように生かしていくおつもりですか。

原田氏:
 僕自身もそうだし,前職の仲間もそうでしたが,確かに積み上げてきたナレッジは大切です。でも,この業界は新しいテクノロジーに敏感であることが求められるので,過去の成功体験に囚われすぎないよう,気をつけなくてはなりません。
 これまでの経験は,ベース(基礎)として役立てたいと思っていますが,新たな勉強と探求に時間を割きたい気持ちが強いですね。プレイヤーが何を求めているのかを,もう一度見つめ直すことから始めたいと思っています。

――新たなタイトルを世界規模でヒットさせるための作戦は,何か考えていますか。

原田氏:
 これは難しいですね。あんまり偉そうなことは言えませんが……現代はマーケティングやプロモーションといった“届け方”で差が付く時代です。そうした複合的な要素を満たす必要があって,単に面白いゲームを作るだけでは難しいのが実情です。
 とはいえ,タイトルそのものに芯が通っていなければ売れないのも確かなので,まずはモノづくりとして,現代にフィットした新しい体験を,知恵を出し合いながら作っていく。現時点では,これしか考えていないのが実情です。

 ただ,これまでも自分の力だけでタイトルを作ってきたわけではないですし,“売る”ことについても同様だと考えています。新しい時代に向けた売り方を,SNKさんと一緒に模索していきたいと思います。

――とはいえ,前職で担当されたシリーズを,世界一のフランチャイズに導いた経験は,SNKでも生かされるのではないでしょうか。

原田氏:
 当時は「自分がチームを率いてやってるんだ!」ぐらいの感じを出してましたけど,実際はたくさんの人の助力があって,それではじめて結果に結びついたわけです。僕一人が出ていって「こうすればうまくいきます」なんて,そんなおこがましい話があるわけないじゃないですか。
 もちろん,いい意味での成功体験は自分の中に残っていますし,開発としての勘所は宝として今も持っていると自負しています。ヒットのセオリーや法則なんてものはありませんが,そういったコツのようなものは,SNKとも広く共有していきたいですね。

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 僕としては,むしろ小田さんやSNKの皆さんからいろんな話を聞きたいと思っていますよ。こういう開発者同士の会話では,細かいノウハウよりも「こうなったら面白いよね!」みたいな熱意のほうが重要だったりするんです。ここのワクワク感って,この年齢になるとなかなか出てこないじゃないですか。

――原田さんは,SNSで積極的にファンと交流するクリエイターとして知られています。こうした活動は,今後も続けられるのでしょうか。

原田氏:
 以前ほどの頻度かは分かりませんが,コミュニティとはなんらかの形で接触していきたいと思っています。ファンの皆さんの温度感というのは,誰かから間接的に受け取ったデータやレポートで見るものではないと,個人的に考えていますので。
 マジョリティの意見でなく,マイノリティの声が心に刺さることも,たまにあるものです。手厳しい言葉も含めてね。ときにはそれが,アイデアやモノづくりのヒントになって,「やってやろうじゃねぇか」ってモチベーションにつながることもありますから。

――昨今のeスポーツ界や格闘ゲームシーンを,原田さんはどのように見ていますか。

原田氏:
 もはや20年前では考えられない規模ですよね。僕個人としても「ここまで来たか」という気持ちで見ています。ただ,eスポーツシーンは業界がシステマチックに生み出したものではありません。もちろん公式側が動いた部分もありますが,中核にあるのはコミュニティの力です。それがうねりのようになって,今の状況に至った背景があります。

 コミュニティの盛り上がりがあって初めて成立する文化なので,メーカーの側からどうアプローチするかは難しいところです。金銭面を支援したとしても,それが良い結果に結びつくとは限らないので,うまい方法は引き続き模索していきたいと思っています。なのでどんなゲームを作るにしても,コミュニティとの協力関係は構築していきたいな,と。

――SNK側への質問になりますが,SNKとしては今後も国内のクリエイターに向けた投資を行っていく予定でしょうか。まさに今回の新スタジオのような。

SNK プロデューサーの小田泰之氏
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小田氏:
 投資……というと大げさですが,規模とケースによってはあると思います。ただ,今回の原田さんの新スタジオはちょっと特例ですね。この規模のものがポンポン続くかというと,それはないと思いますよ。SNKの内部だけで考えても,かなり多くのプロジェクトが進行していますし,それらの多くにおいては外部のスタジオとも協力して開発を進めています。そういう形での協業は,引き続き行っていくつもりです。

――新スタジオのスタッフは,すでに十分に集まっているのでしょうか。それともこれから募集するのですか。

原田氏:
 僕がフリーになったときに,「どうすんの?」「次どこ行くの?」という感じで,先輩・後輩に関わらず声を掛けてもらいました。なので,連絡は多くいただいています。体制作りはこれからなので,そういうところから少しずつ仲間を集めていきたいですね。

――スタジオとして,「こういう人が欲しい」といった基準のようなものはありますか。

原田氏:
 ……それで言うと,まさにここに集まったメディアの人たちとか,イイと思うんですけどね。言い方が難しいですけど,その経験は開発にも生かせるはずなんですよ。もちろん専門的なスキルも必要ですけど,重要度でいえばそれは3番手か,2.5番手くらい。誰に言われるでもなくゲームを探求していく情熱と,知識を蓄えているメディアの皆さんは,実は開発者に向いているんじゃないかって。

――開発の経験よりも情熱,ということでしょうか。

原田氏:
 もちろん,若いクリエイターと一緒に作りたいとも思っていますよ。でも情熱を失っていない歴戦のクリエイターや,長らくゲームに関わってきた業界人なんかも,ぜひ参加してほしいです。そういう人って,開発者として異様にいいものを持ってたりするものなので。
 というのもね,クリエイターの中にもゲームへの情熱を失っている人って,けっこういるものなんですよ。時間や体力が失われると,興味も薄れていく。一方で,50歳過ぎてもずっとゲーム好きな人だっているじゃないですか。そういう人とこそ,僕らは一緒に働きたい。もし我こそはという人は,ぜひ声をかけてもらいたいです。XのDMでも構わないので。

――ありがとうございました。



いま欲しいのは“ゲーム1本”でやっていくスピリット――VSスタジオ設立個別インタビュー


 ここからは,合同インタビュー後に行われた,メディア毎の個別インタビューをお届けする。答えてくれたのは合同インタビューから引き続いての原田氏と小田氏,そして新スタジオでCCO(チーフ・クリエイティブオフィサー)を務める米盛祐一氏だ。

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4Gamer:
 お時間をいただき,ありがとうございます。改めて,今回の新スタジオについて整理させてもらいたいのですが,これは独立した原田さんが立ち上げたスタジオに,SNKが出資した,という理解でいいのでしょうか。

原田氏:
 そうそう。ここの二人(原田氏と米盛氏)が資本金を出し合って,「一緒に何かやろうよ」って感じでスタジオを立ち上げたのが最初です。その後いろいろオファーがある中で,SNKさんと,そのバックにあるグループ(Electronic Gaming Development Company)からお声がかかり,増資を受けて子会社になったという経緯です。

4Gamer:
 では,原田さんと米盛さんがコアメンバーなんですね。

原田氏:
 いや,出資者のエンジニア(旧ナムコ)がもう1人いて,その3人が初期メンバーですね。

4Gamer:
 米盛さんには,確かアーケードの「鉄拳TAG TOURNAMENT2」の頃に,インタビューさせてもらったことがありました。以降はあまり表に出られなかったように思いますが,チームを離れていらしたんですね。

米盛祐一氏(以下,米盛氏):
 いや,離れたのはそうなんですが,実はそんな昔の話ではないのですよね。「7」まではしっかり関わっていて,家庭用が動きだすところまでは見ていたので,2010年代後半までは原田さんと一緒に仕事していました。その後は別の会社に所属になりましたが,今回また合流した形です。

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[2011/05/13 00:00]

原田氏:
 前に出る仕事が僕に集約されるようになって,米盛は引っ込んじゃったけど,裏ではしっかり仕事していたんですよ(笑)。

4Gamer:
 なるほど。それで原田さんが一番に声をかけたと。

原田氏:
 やっぱり,かつての感覚を共有していたメンバーと一緒にやりたかったんですよね。さっきもちょっと話したけど,「ゲームへの情熱や好奇心をこの年齢まで持ってるのは,もしかして僕だけなのか?」という不安が,自分の中でずっと燻っていたんです。
 だから,まずはそれを払拭してくれる仲間がほしかった。「昔は良かった」じゃあないけれど,1990年代初頭の,“ゲーム一本”でやっていくんだっていう,あのスピリットを持った人間が。

4Gamer:
 ええ,よく分かるお話です。

原田氏:
 あの頃のあの雰囲気,あのスピリットをなんとか現代に蘇らせたい。この願いに共感してくれるのは誰だろうと考えたとき,パッと頭に思い浮かんだのが,何年も僕の右腕として動いてくれていた米盛でした。それで「今からもう一回,そういう環境が作れるとしたら,どうだい?」って声をかけたわけです。
 もう家庭もあるし,お互い社会に根っこが生えてしまっている二人だけど,そうしたものを一度横に置いて,こっちに来てみないかってね。そしたら二つ返事で了承してくれて。……こりゃあイケるぞって(笑)。

4Gamer:
 米盛さんとしては,原田さんから声をかけられて,どう感じましたか。

VSスタジオCCOの米盛祐一氏
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米盛氏:
 素直に楽しそうだと思いました。まっさらな状態から,新しいものを好きに作れる環境に恵まれることなんて,そうはありませんから。なにより原田さん含めた,昔なじみの仲間と一緒に働いてる光景が頭に浮かんできて,なんて面白そうなんだと。昔みたいに,笑い合いながら作れるのなら,これはもう参加しない手はない。だから,今はとてもワクワクしています。

4Gamer:
 ということは,集結しつつあるスタッフにはすでに当時のメンバーが多く含まれているんですね。

原田氏:
 もちろんです。具体的な規模や人数は言えませんが,僕が独立したことを知って,共鳴してくれた人がどんどん集まってきています。

4Gamer:
 小田さんとしては,新スタジオについて知ったのはいつ頃だったのでしょうか。

小田氏:
 具体的な話を聞いたのはけっこう最近で,2か月くらい前でしたね。雑談ベースではいろいろ話していましたけど。

原田氏:
 「こういう体制が作れたら,ゲーム開発が面白くなるんじゃないか」みたいな話は,ずっとしていたんですよ。そんなことを言ってたら,本当に同じ場所でやることになって,僕も驚いてます。

4Gamer:
 原田さんがご近所に引っ越してこられたことについて,小田さんはどういうお気持ちなのでしょうか。

小田氏:
 とにかく,これはスゴいことになってきたって思いましたね。原田さんのビジョンが,SNKの上層部に響いたってことなんでしょうけど,この年齢になって,これだけ面白い状況に巡り会えるとはね。だってSNKの看板の前に原田さんが立ってるだけで,もう面白いじゃないですか(笑)。

原田氏:
 エイプリルフールの嘘写真みたいだよねえ(笑)。

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4Gamer:
 (笑)。実は今回,一番お聞きしてみたかったのは,原田さんが「なぜSNKを選んだのか」ということでした。オファーはいろいろあったでしょうし,しがらみなく独力でやる選択肢だって,原田さんならあったのではないですか?

原田氏:
 そう……まず自分にとって大切なのは,ゲームを作ってファンに喜んでもらうことであって,社長になることではない,というのが一つ。
 そう考えたとき,何が一番のネックになるかといえば,やはり時間です。完全にゼロから積み上げようとすれば,ヘタをすればスタジオを軌道に乗せただけで引退,なんてことにもなりかねない。できるだけ早く,いろいろなことを実現しようと思ったら,自分の力だけではとても追いつかない。この時点で,単独でやる線はなくなりました。

4Gamer:
 ……なるほど。

原田氏:
 そしてなにより,出資を受けるならほとんどゲームだけが主軸の会社からにしたかった。ビデオゲームが大好きで,情熱があり,さらに長期的なビジョンを持つ会社を選びたかったわけです。ありがたいことに,オファーは本当に数多くいただきましたが,こうやって絞り込むと,意外とそう多くはなかったんですよね。

4Gamer:
 ああ。ゲーム業界内のオファーに絞るとなると,確かに選択肢は限られそうです。そこはこだわりだったんですね。

原田氏:
 はい。これは当初からすごく気にして,こだわってきた部分です。そうしたことを総合して,これからのことを全ベットできる――不安やリスクを吸収してくれて,やりたいことに最短でたどり着かせてくれる会社をと考えたときに,これならいけると確信できたのがSNKさんだったんです。そしてその確信は,今も変わっていません。

4Gamer:
 順番が前後しますが,やりたいことが明確であるなら,それこそ前職のまま,立場を生かして挑戦することもできたのではないですか。外から見ている限りでは,原田さんならそれも不可能ではなかったように思えます。

原田氏:
 一般論としてですけど,同じ組織に長く居ると,求められる立ち振る舞いが固定化されていくんですよ。よく“根っこが生える”なんて言いますけど,その荷物を降ろさないことにはできないことってあるものなんです。
 もちろん,これまでイヤイヤやってきたとかじゃあないですよ? でも立場を維持したまま“求められない行動”をとり続けるのは,積み上げたものを崩してしまうことになる。新しい道を歩むのなら,自分から荷物を置いて,新しい荷物を背負いこむ必要があったんです。ゲーム事業だけを主軸にしたいというこだわりもありましたし。

4Gamer:
 分かります。とはいえ“期待される”ということは,やはりあるわけじゃないですか。ファンであったり,あるいは出資元であるSNKだったりが原田さんに期待するモノというのが。となれば新スタジオでこれから生み出されるタイトルも,作りたいモノというより,周囲からの期待に応えるモノになるのでは?

原田氏:
 そりゃあ20代の頃だったら,僕も「絶対に自分が作りたいものじゃなきゃヤダ!」って言ったと思いますよ。でも年の功でバランスがとれてきて,今は考えが変わりました。
 かつては「自分で遊びたくなる」「友達と遊んだら楽しい」タイトルを作ろうとだけ思ってましたけど,今は友達やファンの皆さんを幸せにしたうえで,自分を支えてくれる社員や株主を含めた全員がハッピーになれる道を探したい――というかその方が面白いと思うようになったんです。
 だから,SNKの傘下に入った今の状況は,それを成立させるにベストな,理想の環境だと思っています。

4Gamer:
 合同インタビューでは,「新作は対戦ゲームになるだろう」とおっしゃってましたが,それがつまり“皆が幸せになる”ための道ということですか。

原田氏:
 確かにそれはあります。でも,ただ求められるからやろうってだけじゃないですよ。例えば2年後になって,例えば超絶美少年が出てくるターン制RPGとか発表したらどう思う? そりゃ意外性はあるかもしれないけど,「原田どうした?」ってなるじゃないですか。

4Gamer:
 ……まあ,「サマーレッスン」のときに思いましたけど。

原田氏:
 だよねぇ! あれは当時,どうしてもやりたかったんだよ(笑)。

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4Gamer:
 原田さんご自身は,自分に向けられている期待について,どう認識されているんでしょうか。

原田氏:
 うーん,期待とは少し違うかもしれないけど,少なくとも「ここだったらこういうゲームを作ってくれるだろう」といった信頼感は感じています。アクション性が高くて,真剣にも遊べるけど,カジュアルに楽しむことも許容してくれるというような。そういった信頼感には,きちんと応えていきたいですね。
 まあ僕が作るとマニアックになるので,超カジュアルとまではいかないけど。できるだけ多くの人を巻き込めるものにしたいなと。

4Gamer:
 なるほど。個人的にはなにも対戦ゲームだけが原田さんのオリジンではないように思うんですよ。もちろんいち格闘ゲームファンとして,新しい対戦ゲームには期待するところが大きいですが,同時にそこに止まってほしくもないというか。
 どちらかというと,新しい技術をいち早く採り入れて,未知の驚きを届けてくれる。「サマーレッスン」がそうだったように,まだ誰も見たことのないものを作ってほしいという思いもあります。

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[2014/11/14 19:43]

原田氏:
 そういうのをやるなとは言われてないし,選択肢の一つとしてないわけではありません。かといって,あちこち手を出して全部中途半端ってのが一番良くないわけで。だから最初は可能性は探りながらも,どこかでギュっと絞って進んでいく方向にはしたいですね。

4Gamer:
 期待しています。立ち上げ直後ということで,ファンとしては続報を楽しみに待ちたいところですが,いつ頃になりそうとかはヒントをいただけたりするでしょうか。

原田氏:
 「喉元過ぎれば熱さ忘れる」じゃないですけど,どう期待してもらったところで1〜2年やそこらでモノが出てくることはありません。だから,あんまり座して待ってもらうのも忍びないですね。情報が出せるのはだいぶん先になりますので,いったん忘れてもらうのがいいんじゃないかと思います(笑)。

4Gamer:
 残念ながらそろそろお時間のようです。ゆったりお待ちしますので,SNKとのシナジーから生まれる新タイトルに期待させてください。

原田氏:
 じゃあ次は,パズルゲームの発表会でお会いしましょう!

4Gamer:
 (笑)。本日はありがとうございました。

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