プレイレポート
仕事のふりしてゲームを遊びたい!――というわけで,「Sid Meier's Civilization: The Board Game」を遊んでみたの巻
第2戦目:運命の1ターン
2戦目の担当文明は,ギリシャ(徳岡),インド(TAITAI),中国(フジケン氏),エジプト(山本氏)。今度は各人がルールを理解し,ゲーム展開のテンポも把握しているため,序盤から腹の探り合いと牽制合戦が始まる。
ギリシャは技術開発に関して大きなアドバンテージを持っているので,宇宙船勝利と軍事勝利の両方が狙えるような発展を目指す。インドは文化勝利を志向していて,中国は文化勝利と軍事勝利を両天秤にかけ,エジプトは軍事勝利を目指して壮大な軍拡に励む。
※なお,ゲームに没頭するあまり2戦目は写真を撮り忘れたので,以後はイメージ写真でお送りします(TAITAI)
速度的にはだいたい全員同じ程度(インドがやや遅れ気味)で発展をして序盤が終わろうとする頃,最初の事件が発生する。エジプトが,偉人・レオニダス将軍を引き当てたのだ。
レオニダスの効果は,「率いる軍隊の数が敵軍より少ないと戦闘に大量ボーナス」というもの。映画「スリーハンドレッド」のレオニダスそのものである。だがこの大量ボーナスの数字が心の底から半端ないため,エジプトの軍事力は「突出」などという表現では生ぬるいレベルで跳ね上がった。
レオニダス力(れおにだすぢから)で軍事的優位を押し立てるエジプトに対し,ギリシャは得意の技術革新で対抗。最強の軍事ユニットである航空機をいちはやく開発し,技術(宇宙船)勝利への道を切り拓く。中国は着実に文化点を獲得しつつ軍隊を増強,エジプトとの対決に備える。インドは膨大な文化点を手元に蓄積,軍事的には遅れをとっているものの中国の次に文化勝利に近いポジションにあった。
ゲームも終盤に入り,最初に仕掛けたのはギリシャだった。ギリシャは航空機が1ターンに移動できる範囲内にインドの首都を収め,首都陥落による軍事的勝利をちらつかせる。同時に技術開発による宇宙船勝利も射程に収め,他のプレイヤーにプレッシャーをかけた(勝利の方向性を1つに絞ると,よほど突出したダッシュ力がない限り複数文明からの妨害に勝てないのだ)。
これに対し,エジプトが反応。インドを狙うギリシャ軍主力に対し,レオニダス率いるエジプト軍が襲いかかる。ちなみにギリシャ軍は飛行機が主力,エジプト軍はまだ槍だの弓だのが群れている。
誰がどう見ても勝ち目のなさそうなエジプト軍は,予想通りギリシャ軍に駆逐されていく――だが最後に戦場に残った戦力を互いに合計し,そこに軍産複合体などによる修正を加算,そしてレオニダス修正を加えると,なんとエジプト軍の勝利! ギリシャ空軍がレオニダスの槍の前に敗退という超展開が発生する。
ここで中国が動いた。中国はレオニダスから距離6のスクエアに軍を集中させており,そこで文化カードを使用する。その内容は「自分の軍隊から6スクエア以内の偉人などをゲームから除去する」というもの。中国の放った刺客はレオニダスを暗殺し,エジプト軍は軍としての機能を失った。
さらに中国は,レオニダスを失ったエジプトの首都に軍を突入させる。いずれの文明も中国軍の動きを妨害できず,エジプトの首都に押し寄せた人民解放軍は投槍や弓による抵抗を航空機によって排除。レオニダス亡きいまエジプト軍がこれに対抗する術はなく,中国の軍事勝利でゲームは幕を閉じた。
ちなみにこのとき,インドは偉人・ジャンヌダルク将軍を有していた。ジャンヌダルクの能力は,「自国が保有している文化点に等しい戦闘修正を得る」というもの。たとえギリシャ空軍がインド首都を攻撃したとしても,インドの首都陥落はなかったであろう。また蓄積された文化点は,そのターンにインドの手番さえ回ってくれば文化勝利を確定させるだけの量があり,中国とは1手違いで勝利を逃すこととなった。
ギリシャもまた,中国が勝利した次のターンで技術(宇宙船)勝利が可能な状況。エジプトもレオニダス暗殺さえなければギリシャを滅ぼして軍事勝利していたであろう。紆余曲折はあったし,採用した戦略はそれぞれ違っているものの,全員が勝利まで1〜2ターンの範囲にあったという,実に緊迫したゲームだったわけだ。
本作の素晴らしい点は,ゲームが収束に向かっていく過程で,だれることなく,むしろ終盤ほど緊張感の度合いが増していくという,ゲームデザイン/バランスの良さにある。また,最初に勝利条件を満たしたプレイヤー以外はすべて敗北というルールも絶妙で,突出したプレイヤーを連合で封じつつも,各国は各国で自分だけ抜きん出んとする駆け引きは非常に面白い。……まぁ,あまり酷いことをしすぎると友情にひびが入ったりするかもしれないが,そのあたりはむしろ対戦ゲームの醍醐味といえよう。ちなみに私は常に公明正大なプレイを心がけましたが何か。ええ。
「ゲームを遊んだ」という手応え
CivBGは,近年のボードゲームにおいては比較的珍しい「重たいルール・長いプレイ時間」を備えたゲームだが,その重厚さにふさわしい充実したゲーム体験が得られる作品だ。PCでのマルチプレイとはまた違った展開になるので,「PCでいいじゃない」という結論に陥る心配もない。
問題を指摘するとすれば,ゲームがアメリカンサイズなので,プレイのためのスペースを結構要求するというあたりだろうか。また今のところ日本語版が存在しないので,英語にアレルギーがないプレイヤーを集めるか,あるいは個人レベルでの日本語化(和訳したシールを貼る)といったことが欠かせない。このあたりは今後の展開(※)に期待したいところだ。
モバイルソーシャルゲームを筆頭に,コンシューマーもPCも,あるいはボードゲームやカードゲームに至るまで,ゲームが「より手軽にプレイできる」方向に進んでいるのは,世の趨勢というものだろう。しかし一方で,ゲームでしか味わえない楽しさをじっくりと味わわせてくれる作品の貴重度は,むしろ上がっているようにも思える。
CivBGは,手軽でもコンパクトでもないが,「遊んだ! 俺たちはゲームを遊んだ!」という手応えが確実に残る作品である。日常の隙間で小さな楽しさを共有するのも素晴らしいが,たまには手間を惜しまず準備して,じっくりゲームを遊ぶ時間があってもいい――そんなことを改めて思わせてくれる傑作と言えるだろう。
※聞くところによれば,現在,日本語版の発売も検討されているらしい
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シヴィライゼーション4 ウォーロード【完全日本語版】
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