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ファンタジーアースの状況やいかに――ゲームポットとスクウェア・エニックスの両社が答える,FEZの現状と運営体制
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印刷2010/04/12 16:00

インタビュー

ファンタジーアースの状況やいかに――ゲームポットとスクウェア・エニックスの両社が答える,FEZの現状と運営体制

 オンラインゲーマーのみなさんであれば――そうでなくても――「ファンタジーアース ゼロ」(FEZ)というタイトルを聞いたことがあるかもしれない。1万を超えるタイトルが入力されている4Gamerの注目タイトルランキングでも,常に30位以内には入っている(編集スタッフはすべてのランキングが見られるのだ),人気タイトル常連メンバーだ。

画像集#001のサムネイル/ファンタジーアースの状況やいかに――ゲームポットとスクウェア・エニックスの両社が答える,FEZの現状と運営体制 画像集#002のサムネイル/ファンタジーアースの状況やいかに――ゲームポットとスクウェア・エニックスの両社が答える,FEZの現状と運営体制

 しかしそんなFEZが,ここ最近揺れている。年明けに始まった「ラグ頻発」に加え,プロモーション上での失態,元社員と称する人物の告発文書など,ネガティブな状況が一気に噴出している様相だ。最近頻発しているラグに至っては,4月9日現在,いまだ抜本的な改善がなされていない。

 そんな状況を憂慮して,読者のみなさんからも多くの連絡をいただいた。この手の連絡は日々いくつもいくつもいただくが,今回は,数も内容も,今までのものとはちょっと違う。関連のないいくつかの(しかもすべてネガティブな)出来事が連鎖して起こり,かつてなかったほど荒んだ気配を感じさせる。
 これはさすがにただごとではないな,と思ってゲームポットおよびスクウェア・エニックスに連絡を取ってみると,案の定,両社とも対応に苦心している様子。その混乱に乗じて……というわけではないが,記事になることを前提にインタビューのオファーを出してみたら,熟考ののち「可能な範囲でお答えさせていただきます」という返事をいただいた。
 今回の混乱を,両社はどう考えているのかということを筆頭に,この一連の混乱のさなかに飛び交っている情報と状況を整理し,気になる部分についての情報を明かしてもら……う予定だったのだが,結果的にはFEZというタイトルがどのように運営されているのかという情報を中心に聞き出したインタビューとなった。当初の内容とややズレてしまったこともあり,いったんは記事の掲載をやめようかとも思ったのだが,FEZの運営体制について答えてもらったインタビューは1年ぶりだし,これはこれで価値があるとの判断を下した次第だ。

 この状況下での発言かつ,熟考のうえインタビューを受けてもらえた以上,本記事での各社の発言は,事実上の「公式発表」と同等の価値を持つものと思われる。FEZのプレイヤーであれば,ぜひ一度お読みいただき,正しい状況判断を行うときの参考にしてほしい。
 なお,本インタビュー後に,ラグ問題については大きな進展があったようだ。状況がだいぶ好転したようなので,それに伴って本文にも手を入れようかとも思ったが,あえてそのまま掲載しておく。両社の率直な返答を,お読みいただきたい。

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スクウェア・エニックス 第二オンライン企画運営部 プロデューサー 小山博典氏
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ゲームポット 取締役執行役員 安田 剛氏

4Gamer:
 本日はお時間いただきありがとうございます。
 さて,ラグ問題やカス発言,元社員と称する書き込みなど,ここのところファンタジーアースの状況はいろいろと荒れ模様でして,読者のみなさんからもそれに関する問い合わせが多くありました。なので私から「現在の状況についてお話を聞かせてほしい」と連絡させていただいたわけですが,それを受けてこうしてお集まりいただけて,ありがとうございます。
 無理矢理お時間をいただいたのは,ほかでもない,これら一連のゴタゴタについて,まとまってクリアになっている内容がどこにもないのでお聞かせいただければうれしい,と思った次第です。むろん,ゲームポットやスクウェア・エニックスに答える義務などありませんが,さまざまな要因でネガティブなことばかりが続いている状況ですので,ここらで一度状況を把握してクリアにして,正しい情報を明らかにしておくのは,結局のところみんなのためじゃなかろうか,と思った次第です。

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小山氏:
 はい。ですので,この話を受けさせていただきました。

安田氏:
 弊社も同様です。

4Gamer:
 話は「昨今のラグ問題」「カス発言」「元社員と称する人物の書き込み」という三つに分かれると思います。その中でももっとも情報量が多い「書き込み」は,いままで表に出ず,単なる推測と噂だけでやりとりされていた情報が,曲がりなりにも真実に近いと思われる形で露見したという理由において,ユーザーさんへの影響力がもっとも大きいものだと思っています。ですので,そこをメインに聞かせていただければ嬉しいです。
 私も両方読みましたが,普通の会社であれば一社員が知り得ない情報も含まれているように思えますし,そもそも事実として書かれている部分と個人の感想の延長が混ざりすぎていて,どこまでを正しい情報と考えてよいのか分かりません。とはいえ,まさか全部が全部嘘というわけでもないでしょうし,一読する限りでは,それなりに信憑性が高そうな内容に見えるのも否定はできません。そしてむろん,私を含めユーザーさんは,事実か否かの正しい判断はできません。いろいろと答えづらいこともあるかもしれませんが,会社として公にしても問題のない範囲で,いろいろとお答えいただけると嬉しいです。
 それではまず,現在起こっている一連の問題について,改めてご説明いただけますか。

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小山氏:
 やはりまず,全ユーザーさんに影響を与えてしまっている,ラグの問題です。2月に入ってから発生しており,都度対処はしているのですが,なかなか解決できていません。
 そこに,元社員を名乗る人物からの暴露文書のようなものが登場し,相乗効果で問題が大きくなり,そのうえプロモーションでの,ユーザーさんへの誤解を与えるような展開もありまして……。

4Gamer:
 「カス発言」問題ですね。

小山氏:
 そうです。それらが積み重なったことで,FEZの運営と開発が,いったいどこを向いて進もうとしているのかという部分について,ユーザーさんに大きなご心配とご不満をかけることになってしまいました。

4Gamer:
 では,三社――ここにいるのは二社ですが――とも,その一連の大きな三つのことが,最近顕在化しているユーザーさんの不満の元である,という認識なわけですね。

小山氏:
 はい。むろん,認識だけでなく,最優先での対処という方向で動いています。実際にゲームがきちんとプレイできない状況が続いていたので,お詫びのアイテムを配ったりとか,そういう部分も含め,です。
 そして,その三つの問題のうちで「対処」の方向性が明確なのはラグ問題なのですが,あとの二つに関しては,我々が公式に何かを発言することは非常に難しく,そういう意味で,今回のオファーは大変ありがたく受けさせていただいた次第です。


目処の立たないラグ問題は,
いまだ時間が必要そうな気配


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4Gamer:
 では最初に重いものからいきます。「ラグ」問題は,結局のところ修正の目処は立ってるんでしょうか。

小山氏:
 大変申し訳ありません。いまだ理由を完全に特定は出来ていない状態です。

4Gamer:
 皆目検討もつかず,手探りな状態なんでしょうか。それとも,なんとなく想像はついているけど確証が取れていない状態なんでしょうか。

小山氏:
 さまざまな可能性を想定して,いくつものテストを延々と行っているのですが,正直なところ,いまだに特定はできていません。「これかな?」という部分はいくつか見つかりましたが,それを発表して違ったときにユーザーさんをがっかりさせるのは,さすがにこの状況ではやりたくありませんので,慎重にかつ最優先で動いています。
 判明し次第必ず発表しますので,いましばらくお待ちください。本当に申しわけありません。

※追記※
2010年4月9日20:03付けの,FEZ公式サイトの告知によれば,
「通信遅延の主な原因となる不具合を特定し,対応を行ないました」
とのこと。
文面によればまだ“完治”したわけではないようだが,公式掲示板などを見ても状況が大きく改善されたユーザーは多いように思えるし,インタビュー後に大きな進展があったようだ。今後の,さらなる改善にも期待しよう。

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「カス」という言葉は,一体誰に向けられたもの?


4Gamer:
 続いてゲームポットのカス発言についてですが,実は私は直接動画を見ていません。実際,何が起こったんでしょうか。

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安田氏:
 これはプロモーションの一環だったのですが,サオリリスという女の子がいて,FEZをやってるんです。映像中で後ろにプロレスラーのマスクをかぶった人がいて,こうやって(と,こちらに向けて紙を見せる仕草で)ボードを見せて彼女に指示を出すんですよ。
 で,その中の一枚に「はよ寝ろやカス」って書いてあったボードがあって,サオリリスはそれを見て「なにそれ私に言ってるの,ヒドーイ」って言うそういうシーンです。そのやりとりだけを見ると,確かにボードはサオリリスだけでなく視聴者にも向いているように見えるんですよね。しかも当日は,視聴者の人に見えづらかったので,ボードを多少前に出してたんです。

4Gamer:
 公式サイトのお詫び文書は私も読みました。やりたかったことはよく理解できますが,とても正直なところ,誤解されても仕方ないのでは,と思います。不特定多数の人に見てもらうものなので,気を遣いすぎるくらい遣ったほうがよいですし,あのシーンにしても,そういうキツい言葉を使わなくても,やりたいことは出来たと思いますし。

安田氏:
 今にして思えばそうかもしれません。
 しかもその日はちょうどクライアントが落ちてたりしていて,「ゲームができない俺らに向かってカス呼ばわりか」という感情を生み出し,それが一枚の写真だけで伝わり,燃え上がってしまった次第です。しかも,配信前に4Gamerさんなどにも掲載してもらったリリースを見ると「植田(編注:ゲームポット社長)は,これからやるぞ」みたいな雰囲気が出ていて,そのマスクの中は植田が入ってるんじゃないかという話にもなり。あそこは社長が「はよ寝ろやカス」という発言をしているぞ,と。

4Gamer:
 なるほど。当たり前ですが,意図してやったわけじゃないんですね。

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安田氏:
 むろんです。サオリリスのキャラ付けをするための演出だったんですが,明らかに誤解を与えてしまって,一部の方に不快感を与える結果になってしまったことを,大変申し訳なく思っています。

4Gamer:
 社内でも「カス」という用語が蔓延してると書いてありますが。

安田氏:
 いくらなんでもそれはないです。ましてユーザーさんに対してそんなことは言いません。

4Gamer:
 まぁ普通そうですよね……。しかし,タイミングも悪すぎました。

安田氏:
 そうですね。そこは否定できません。ユーザーさんがプレイできない状況で,こちらが意図しない意味をプロモーション上で与えてしまい,オマケに告発文書のようなものまで出回ってしまった。いろいろな方にご迷惑とご心配,そして不快感を与えてしまって,本当に申し訳ありませんでした。


「元社員」の書き込みの信憑性について


4Gamer:
 では,その例の書き込みの件に入らせてください。これは両社にお聞きしたいんですが,ここでの「元運営会社社員」「元開発会社社員」は,実際に社員だったんですか?

安田氏:
 はい。元運営会社社員と名乗っている書き込みについては,我々ゲームポットで確認を取りまして,直接本人とコンタクトをとった結果,本人が書いたことには間違いないという確認が取れています。

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4Gamer:
 なるほど。であれば,実はこれ,内容とは関係なく一つ気になったことがあるんですが……。

安田氏:
 なんでしょう。

4Gamer:
 「会社に迷惑をかけるような発言するなら辞めてから自由にやれ」というニュアンスの発言をゲームポットの人がしたとのことですが,もし本当なら,いくらなんでも軽率じゃないでしょうか。というよりそもそも,普通の会社であれば,辞めたあと数年,場合によってはずっと,「在職中に知り得た情報を公の場には出してはならない」という誓約書を書くなり,同様の内容を契約書に盛り込むなりして,縛りを加えると思うんですが……。

安田氏:
 まったくおっしゃるとおりで,弊社でもそういう書類はあります。

4Gamer:
 あ,そうなんですね。ゲームポットにはそういう書類がないのかと思って,かなりびっくりしました。公式サイトの告知を見る限りは,なんらかの書面はあるものなんだろう,とは思ってたんですが。
 では話を戻して,開発者とされる人物のほうはどうでしょう?

小山氏:
 書き込みの人はマルチタームの社員と名乗っているんですけど,こちらに関しては確認がとれていません。

4Gamer:
 スクウェア・エニックスサイドとしては現時点でどのような判断ですか?

小山氏:
 書かれたものを見る限り,内容が憶測の域を過ぎていないので、少なくとも中心メンバーではないだろうと考えています。三社会議などにも出席したことがない人かと。

4Gamer:
 であれば,内容の信憑性にも疑問が出てきますね。

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小山氏:
 これはゲーム業界に限った話ではありませんが,「関係者」というのがどこまでの範囲を指すかによりますよね。極端な話,例えばスクウェア・エニックスなどでも,プロジェクトに関わってない別部署のスタッフでも,一時期アルバイトをしていたから関係者だ,って言い張れば関係者ですし。

4Gamer:
 そうですね。「関係者」という言葉は,ちょっとエリアが広すぎます。

小山氏:
 そうです。確かに関係ない部署でアルバイトをしていた人も「広い意味での関係者」ではあろうとは思いますが,ではその人が,プロジェクトの内情まで詳細に知っているかどうかというのは全然別な話です。

4Gamer:
 ……そういえば,なんで確認が取れてないんだろう,とさっき思ったんですが,そうか,いまマルチタームってNHN Japanに吸収合併されてたんでしたね。

小山氏:
 そうです。それもあって,ちょっと調べようがないのです。

4Gamer:
 なるほど。状況は理解できました。
 先ほどもちょっと申し上げましたが,この手の「告発文書」のようなものは,やはりユーザーさんにはまったく内容の判断がつかないのが大きな問題だと思っています。真実も嘘も,一緒になって「既成事実」として伝わってしまいがちですから。
 ですので,ユーザーさんのためにも,むろん両社のためにも,そしてFEZというプロジェクトそのもののためにも,気になる部分を細かく聞かせてください。

安田氏:
 お答えできる範囲であれば。


2000万円以上もらえない鬼の契約


4Gamer:
 ではまず,これはスクウェア・エニックスさんに対しての質問になりますが,契約周りが,それはもうひどい状況であるとの書かれ方をしていますが……(全員苦笑)文書を読むと「7000万以上を売り上げたら2000万が支払われる。7000万を超えなければゼロ。逆に,いくら売れても2000万固定」という,相当鬼な契約ですが,こんな契約が実際に結ばれることあるんでしょうか。

小山氏:
 「7000万売り上げなければ開発に支払われるのはゼロ」って,常識的に考えて,そんな契約を受けてしまったら,開発会社はつぶれてしまいますよね。

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4Gamer:
 おっしゃるとおりです。

小山氏:
 ですので,この条件を,仮にいくら弊社が強気で交渉したとしても,飲む会社は存在しないと思います。

4Gamer:
 もしこの条件じゃないと開発契約を結んでくれないのであれば,スクウェア・エニックスとの仕事はしないほうがいいですね。

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小山氏:
 契約の基礎にある考え方として,両社がWin-Winの関係になるのが望ましいと思っており,弊社としては,このファンタジーアースというプロジェクトを長期運営させることが最優先事項であると考えています。例えば,この文書では「当初は赤字続きで」と書いてありますが,弊社のPlayOnlineでサービスしていた時期でも,収益化はなされていました。
 ただ,今後の展開を考えるにあたって,アイテム課金というのはやはり増えていくとしか思えない状況でしたし……。

4Gamer:
 当時のオンラインゲームの情勢の話ですね。

小山氏:
 そうです。そういう状況に変わり始めたときに,月額課金モデルで,今後どう伸ばしていけるのか,ちゃんと維持できるのか,そういう部分でやや疑問が生じていたことは否定できません。
 ですので,やはりアイテム課金モデルにシフトしよう,と。で,ビジネスモデルを変えるにあたっては,やはり経験のあるところがよいということで,ゲームポットさんに運営を任せるという話になりました。

4Gamer:
 確かに当時,スクウェア・エニックスには月額課金モデルしかなく――今もですが――ましてやPlayOnline上でのサービスでしたね。

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小山氏:
 そうですね。当時の社内でも「月額課金でもう少し様子を見るべきだ」という話はあったのですが,結局のところ,やはり早くビジネスモデルにうまく乗せることが,ファンタジーアースというコンテンツの競争力を上げることにつながるわけです。
 アイテム課金モデルのタイトルもどんどん増えている状況で,シフトが遅れれば遅れるほど,競争力が下がり,成功の可能性も低くなっていくわけです。そんなこんなで,早期にアイテム課金化するべきだろうという判断を下しました。

4Gamer:
 その細かいいきさつって,どこかで公にされてましたっけ。不勉強かもしれませんが,ちょっと記憶にありません。

小山氏:
 きちんとお話ししたことはない気がします。

4Gamer:
 ――あくまでも,普通のユーザーさんから見たときの一つの見え方の話なんですが,スクウェア・エニックスで始まったファンタジーアースのプロジェクトは,スクウェア・エニックスでは大して儲からなかったので「だめだこりゃ」という烙印を押された,と。そもそもPlayOnlineに乗ってるもう一つの作品といったら「XI」(ファイナルファンタジーXI)なわけでして……。

小山氏:
 いやあ,さすがにXIと比較されるとちょっと厳しいですが……。

4Gamer:
 そりゃそうですよね。でもまぁ比較されてしまったときに「これはだめだ」と。で,もう捨てようぜとなったところをゲームポットが拾った,と。なんの先入観もなしに普通に想像すると,もしかして少なからぬ人の認識は,そういうものだったんじゃないでしょうか。

小山氏:
 なるほど……意外とそうなのかもしれませんね。
 ではせっかくですので,もしそういう誤解があるのならこの機会に解いておきたいのですが,ファンタジーアースと同時期に何タイトルかのオンラインサービスが開始されましたが,その中での「経営的な」成績は良いほうでした。そもそも我々も,当時から「魅力あるコンテンツだった」という認識なのです。
 だからこそ,まだ体力と勢いがあるうちに,アイテム課金モデルという,当時ではまだ新しいものだったモデルにシフトして勝負がしたいと思ったわけです。

4Gamer:
 まぁ確かに「競争力がない」と本当に判断したのなら,プロジェクトをなくせばいいだけですよね。事実スクウェア・エニックスはそういうやり方もしていますし,それ自体は,ユーザーさんや開発者の方の感情的なものや気分的なものを置いておくならば,とくに間違ったことではないと思います。

小山氏:
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 そのあたりは私からはノーコメントとさせてください。
 そしてアイテム課金モデルに移行するにあたって,当時マルチタームさんと,どういった契約にしましょうか,という話なりました。とても当たり前の話なんですが,我々で開発をしていない以上,開発会社さんが潰れてしまっては元も子もないのです。プロデュースとか運営とかっていうのは,実際に「モノを作る」わけではないですからね。
 なので,売り上げが低くても確実にお金が入るような形にしました。売り上げが低い時点では開発会社の取り分の料率を高く設定して,売り上げが伸びていったら,逆に弊社側の取り分の料率が上がっていく,と。

4Gamer:
 割とよく聞く手法で,開発への「投資」として捉えるパターンですね。

小山氏:
 むろん細かい条件はここではお話できませんが,そういった座組みを組んでやっています。三社で合意してることですし,どんなに弊社が無理矢理ねじこんでも,さっき出てきたようなそんな条件で契約書にハンコを押す開発会社さんはいないと思うんですよね。

4Gamer:
 ……見れば見るほどちょっと普通じゃない条件ですよね。

小山氏:
 私自身は開発会社の人間ではないので,あくまでもこの業界のビジネスの通例からの判断ですが,あまりに条件が合わないとか,手間とギャラがあまりに見合わないとか,自分達で夢が見られないとか,そういう条件で契約のハンコを押すっていうのはないと思います。
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