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TGS2005前日特別インタビュー「Age of Empires III」:Bruce Shelley氏が語るゲームデザインのプロセス
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印刷2005/09/15 23:07

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TGS2005前日特別インタビュー「Age of Empires III」:Bruce Shelley氏が語るゲームデザインのプロセス

 つい先日体験版がリリースされ,いよいよ期待の高まる新作RTS「Age of Empires III」(以下,AoE3)。2005年9月16日から開催される東京ゲームショウ(16日はビジネスデイ)に合わせて,Age of Empiresシリーズファンにはお馴染みのシニアデザイナーBruce Shelley氏が来日したので,4Gamerでは早速インタビューを行った。

 さて2005年10月25日に(米国での)発売日を控え,先日リリースされた体験版(記事は「こちら」)でその全貌があらかた明らかになった本作だが,実は筆者としては,この体験版を遊んで,非常に大きな違和感を感じていた。というのも,以前「こちら」の記事で紹介したAoE3の注目要素「ホームシティ」の概念が,E3の時点から大きく変わっている(インタフェースもまったく違う)ことに気がついたからだ。比較的短い期間で,なぜこのような変更があったのか? 今回のインタビューでは,そのあたりの経緯や新たに加わった「カード/デッキ」システムについて重点的に聞いてみた。

 インタビュー記事に入る前に簡単に解説しておくと,「カード/デッキ」システムとは,ユニットの派兵や物資の輸送などといった特殊コマンドを行うメニューカードを,プレイヤーが自由に組み合わせていける新要素のこと。カードとは,同じく新たなフィーチャーである交易などによって増えていく「経験値」(具体的には,経験値によって得られる"輸送権")を消費することで行使できる,"プチゴッドパワー"のようなもの。本作の戦略的要素の大きな柱となっているシステムである。これまでのように文明を選ぶだけではなく,事前にデッキを組んでおくことで自分独自の戦略/戦術を組み立てていけるというのは,非常にユニークな試みだ。

左がE3時点でのホームシティ画面で,右が最近リリースされた体験版の画面。左のメニューがなくなり,全体的にかなり簡略化されたのが分かる


「ホームシティ」に見るBruce Shelleyのゲームデザイン手法

4Gamer.net(以下,4Gamer):
 こんにちは。お久しぶりです。

Bruce Shelley氏(以下,Shelley氏):
 やあ,久しぶり。E3以来だね。さて,今日は何から話したらよいだろうか?

4Gamer:
 実を言うと,先日リリースされた体験版を遊んで,細かいシステム的な部分はかなり判明してしまいました。ですから,今日は体験版では分からない箇所を聞かせてもらおうかと。

Shelley氏:
 はは,そう言うだろうと思った(笑)。

4Gamer:
 では,まずは今作の大きな目玉である「ホームシティ」システムについて教えてください。E3で見たときとはかなり変更されているようですが。

Shelley氏:
 そうだね。ホームシティシステムに関しては,かなりの試行錯誤が必要だった。なかなか満足できる内容にならなくて,何度も作り直した結果,今のような形に落ち着いたんだ。

4Gamer:
 確かホームシティという概念自体は,開発当初からのアイデアだったんですよね。

Shelley氏:
 それはそのとおり。アメリカ大陸を舞台にしようと考えた段階で,国家に本国と新世界(アメリカ)という二つの軸を設けようと思っていた。ただそこの「本国とのやり取り」という部分……,つまりはインタフェースであったりルールであったりというところが,なかなか煮詰まらなかったというのが正直なところだね。

4Gamer:
 今の形は,E3で見たときのバージョンよりかなりスリム化されたような印象を受けますね。

Shelley氏:
 よく見てるね(笑)。そう,E3の時点では,確かにホームシティでもっといろいろなことができるような設計になっていた。例えば,ホームシティ画面で表示される建物をクリックするとそれぞれでツリーが表示されて,それを選択して技術を高めたり,ユニットを獲得できたりするというような形だったんだ。

4Gamer:
 なぜ変更したのでしょうか?


Shelley氏:
 端的に言うと,「煩雑すぎた」ということになる。我々のゲームデザインプロセスとしては,やはりテストプレイを重ねて,その中で最良の形に練り込んでいく方法を重視しているのだけど,テストプレイの段階で,以前のホームシティシステムはあまりに煩雑すぎて,いわゆる「RTS画面」を見ている時間が減ってしまっていることに気がついたんだ。
 確かにホームシティでいろいろできるのは戦略に奥深さを与えるかもしれない。しかし,やはり本作はあくまでもRTSなので,その面白さをより味わえる形にしないと駄目だと考えた。

4Gamer:
 なるほど。

Shelley氏:
 本国とのインタフェースを"カード"という見せ方にし,なおかつ「ゲーム中以外に編集しておくもの」として位置づけた。そしてゲーム中のカードツリーも簡略化することで,ホームシティという要素が"RTS部分"にうまく溶け込んだと思っている。

4Gamer:
 確かに今は違和感なく「戦略の一要素」として組み込まれている印象を受けますね。

Shelley氏:
 実を言うと,このホームシティの部分は何回も練り直し/作り直しをしていて,今の形というのは実は14個めのバージョンなんだ(笑)。

4Gamer:
 え,14個のバージョンですか。それは苦労がうかがえますね……。
 ちなみに最初のほうのバージョンというのは,どういう形だったのでしょうか。今とは全然違う形だったんですか?

Shelley氏:
 今とはまったく違うものだったね。そもそも,今でこそ「Card」(カード)と呼んでいる本国からの支援インタフェースだけど,最初のうちはユニットや資源一式が詰め込まれているという意味で「bucket」(バケツ)という名称だったんだ。また今のように細かい使用条件なども考えられてなくて,普通にユニットを作ったりするのとあんまり差別化がなされてなかったようにも思う。

4Gamer:
 これまでのシリーズでも,進化の仕方などでプレイヤーがいろいろと攻略してましたが,今回は"進化手順"だけでなく,デッキに関する考察で盛り上がりそうですね。

Shelley氏:
 楽しみだね。


進化したマルチプレイシステムとAIに関して

4Gamer:
 そういえばマルチプレイに関しては,マッチングシステムのESO(Ensemble Studios Online)がかなり進化するようですね。

Shelley氏:
 ESOの新バージョンは,どちらかというとマニア向けの内容になる。ただそれだけに相当"深い"ものになる予定だよ。

4Gamer:
 具体的には?

Shelley氏:
 オートマッチングシステムとラダーの強化はもちろんだが,クランサポートなどコミュニティ的な機能も盛り込んでいく。ただまだ調整段階なので,現時点では詳しい話はできない。製品版を待ってほしいと思う。

4Gamer:
 ESO上などで,相手のデッキを覗いたりできますか? 強いプレイヤーのデッキはぜひ見てみたいと思うのですが。

Shelley氏:
 ああ,そこに関してはチーム内で議論した記憶があるね。見たい人もいれば,見られたくない人もいるだろうし……。ただESOで見られるかどうかに関しては,……忘れてしまった(笑)。

4Gamer:
 むむ,残念。思い出したら教えてくださいね。

Shelley氏:
 そういえば,地味な要素ではあるけど,今回はAIにも注力しているんだよ。

4Gamer:
 え,AIですか?

Shelley氏:
 そう,AI。これまでのような無機質なものではなくて,AIに多少「性格」を持たせてあったりする。例えばジョージ・ワシントンは戦闘を重視するだとか,エリザベス女王は貿易を重視するだとか。あとAIとの取引のインタフェースも進化していて,より複雑なやり取りも行えるようになっているんだ。フレアで攻めるポイントを指定しながら,一緒に攻めるとかね。
 
4Gamer:
 それはメニュー画面を開いて選択していくというインタフェースなのですか?

Shelley氏:
 そのとおり。あと今回のAIは非常によく"しゃべる"のも特徴だね。AIのコメントだけでも約4000ものパターンを用意している。

4Gamer:
 しゃべるというと,チャット部分に出てくるやつですか?

Shelley氏:
 そうそう,チャットのコメント。称えるものから罵るものまで,いろいろと用意されているよ。私は業務としてかなりテストプレイをこなすのだけど,このAIのおかげで今回はかなり楽しくプレイできた。

4Gamer:
 なるほど。それはシングルキャンペーンなどでうまく活用されているものだと考えてよいのでしょうか?

Shelley氏:
 それはもちろん。ただシングルキャンペーンだけではなく,マルチプレイでも利用はできるね。


雑談:Bruce Shelley氏自身について少し質問

4Gamer:
 では時間も迫ってきたので,最後に少し,Shelleyさん自身の話を聞いてもいいですか?

Shelley氏:
 はい,どうぞ。

4Gamer:
 えーと,Shelleyさんはもう何度目かの来日だと思うのですが,何か好きな日本食などはできましたか?

Shelley氏:
 おっと……,そう来るのか(笑)。
 うーん,そうだね。やっぱり日本食だと寿司が好きかな。実は昨日ちょうど寿司を食べたんだけど,そこで初めてウニを食べたよ。食べたというか,結構無理矢理"食べされられた"んだけどね(苦笑)。

4Gamer:
 そういえば,先ほどBrian Reynolds氏(「Rise of Naitions」の開発者)にも同じ質問をしたんですが,彼は「ウニがうまい」って言ってましたよ。

Shelley氏:
 ああ,でも彼はなんでも「うまい」と言うからなぁ(笑)
 この前彼に,生きてるエスカルゴをそのまま焼いて食わされたときには本当にマイッタよ。

4Gamer:
 でも仕事での来日だと,ほとんど何も出来ないでしょうね。

Shelley氏:
 大変だよ。今,AoE3のプロモーションでアジア各国を回っているんだけど,タクシーから見える風景しか見てないな……。

4Gamer:
 それは本当に大変ですね。ともあれ,Age of Empires IIIの発売が本当に楽しみです。

Shelley氏:
 それはもう,ぜひ期待していてほしい。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。


 ここ最近,AoE3関連の講演に数多く登壇しているBruce Shelley氏。今回のインタビューでは,本作の最も注目すべきキー要素であろう「ホームシティ」について詳しく聞けたのが収穫だった。体験版のリリースなども含めて,すでにかなり情報が出そろっているAoE3だが,筆者的には,今回のインタビューでより一層期待が膨らんだ次第。
 ちなみにインタビュー後,マイクロソフトの広報に日本語版の発売時期に関して聞いてみたのだが,残念ながらこちらは今のところ未定とのことであった。2005年内に発売は可能か? という質問に対しても「まだ調整中で答えられない」というコメント。人気シリーズながらも,グラフィックスとゲームシステムの両面で非常に挑戦的なAge of Empires IIIは,間違いなく2005年のRTSの目玉と言えるタイトル。ぜひ素早いローカライズを期待したいところである。(TAITAI)

  • 関連タイトル:

    マイクロソフト エイジ オブ エンパイア III

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