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印刷2007/03/10 19:48

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[GDC07#31]魔法のクレヨンとは何か? Sporeのエディタはこうやって作られた

Sporeのエディタ部分を担当するリードデザイナー,Chaim Gingold氏
 GDC 2007にウィル・ライト氏はやってこなかった。ここ数年,GDCで最も刺激的かつ愉快な講演を行っており,それがGDCの呼び物の一つになっていただけに,個人的にも残念に思う話だ。おそらく,2007年の第3四半期内とされる,最新作「Spore」の発売に向けて追い込み状態に入っているのだろう。ご苦労様です。

 そんなSporeに関するレクチャーとして行われたのが,「Spore's Magic Crayons」(Sporeの「魔法のクレヨン」)だ。普通,どのレクチャーでもたいてい席にゆとりがあるものだが,話題のゲームだけに来場者も多く,今回は立ち見も出る盛況ぶり。スピーカーであるChaim Gingold氏は,Sporeのエディタ部分を担当するリードデザイナーで,EA/MAXIS入社以前はジョージア工科大学でゲームプレイヤーの創造性とゲームの美学について研究していたという。
 タイトルの「魔法のクレヨン」は,1955年に刊行されたクリケット・ジョンソンの絵本「Harold and Purple Crayon」(邦題 はろるどとむらさきのくれよん)に登場する紫色の大きなクレヨンに由来する。お絵かきの途中で月夜の散歩がしたくなったハロルドは,月を描き,道を描き,散歩に出かける。恐ろしいドラゴンに震えたせいでクレヨンが震え,それが海になり,おぼれそうになったので舟を描くという,想像力あふれる古典的作品だ。



 レクチャーの内容はSporeのエディタに関するもので,Gingold氏はそれを“ハロルドの魔法のクレヨン”にたとえたのである。Sporeについては,早い段階からエディタ部分がクローズアップされており,ライト氏自身もまさしく「Sporeではエディタが重要になる」とコメントしている。
 ライト氏がブローダーバンドでアクションゲーム「Raid on Bungeling Bay」(邦題 バンゲリングベイ。1984年)を作っていたとき,ゲームそのものよりゲームのマップを作るエディタに興味を持ち,やがてそれが「SimCity」になったというのは有名な話だ。Sporeもまた,エディタの面白さこそがゲームの面白さになるようだ。

講演で示された「バンゲリングベイ」(左)と「シムシティ」(右)の画面


 エディタはまた,ライト氏が訴える「プレイヤーが個別に多数参加するゲーム」において,プレイヤーとゲームとのインタフェースにもなるため,実にさまざまなことを考えて制作されている。

 Gingold氏は,Sporeに使われるかもしれないエディタを3タイプ挙げ,それぞれの利害得失を説明する。すべてのエディタには「Possibility」(可能性),「Desireble」(理想),そして「Probable」(実現性)の三つの側面があり,そのバランスが大切になるのだ。例えば「3D MAX」や「MAYA」のような3Dグラフィックスツールエディタは,ほとんどすべてのグラフィックスが作り出せるので,Possibilityが非常に高いが,操作が複雑で難しく,相対的にProbableは激減する。反対に,例えば「ネジ回しエディタ」では,出来上がる物はネジ回しに決まっており,長さや太さを決める程度でOKだ。だが,この場合スパナを作りたいと思っている人にとってのDesirebleは限りなく低くなる。



 こうした考察から,Sporeのエディタは数多くのプリミティブ(基本形)を用意し,それらを変形し組み合わせるといったスタイルが採られることとなった。しかし,この場合に問題になるのは,プリミティブの数と作りやすさがトレードオフの関係にあることだ。
 プリミティブが多すぎると,プレイヤーはその選択に迷ったり作業が繁雑になったりする。その解決には,適切なカテゴリー分けと,グループ化が必要になるが,それもまた考慮すべき要素が多い。建物のオブジェクトを作るとき,「屋根」や「壁」「煙突」などのカテゴリーに整理されているべきなのか,「一般住居」「公共施設」のように分かれていて,それらを変形させたり付け足したりしたほうがいいのか,考えるべきことはたくさんあるとGingold氏は言う。
 ビギナーに使いやすくベテランにとって自由度の高いエディタとは? 形と機能の関係はどうあるべきか? プリミティブ同士の相関関係は? などなど,考え得るさまざまな側面が考慮され,あるものは採用され,あるものは破棄されてきたとのこと。

 以上のようにエディタの話題に終始したレクチャーであり,Sporeの追加情報が聞けるかもしれないと思っていた我々メディアにとってはやや肩すかしの印象だったのは否めない。だが,個人的には“たかがエディタ”と思っていたものが,驚くほど慎重な考察のもとに作り上げられつつあることが分かって興味深かった。
 Sporeには,こうしたエディタによる物作りの面白さ,それを世界に置いたとき,何が起きるかを眺めるシミュレーションとしての面白さ,そして,プレイヤーが自分の望む方向に進化させる方法を探るパズルとしての面白さがあると語って,Gingold氏は講演を締めくくった。
 かつてない画期的なゲームとして世界中でヒットした「シムシティ」や「シムズ」シリーズ。それと同じことがSporeで起きるのかどうか,Sporeの発売がますます楽しみになったレクチャーだった。(松本隆一)

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