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Razer独自の「緑軸」「オレンジ軸」メカニカルキースイッチは買いか? ゲーマー向けキーボード「BlackWidow」の新モデルをテスト
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印刷2014/04/19 00:00

レビュー

Razer独自の「緑軸」「オレンジ軸」メカニカルキースイッチは買いか? ゲーマー向けキーボード「BlackWidow」の新モデルをテスト

Razer BlackWidow Ultimate 2014-JP,Razer BlackWidow Ultimate 2014-JP Stealth
メーカー:Razer
問い合わせ先:MSY(販売代理店)
価格:1万9332円(税込)
画像集#002のサムネイル/Razer独自の「緑軸」「オレンジ軸」メカニカルキースイッチは買いか? ゲーマー向けキーボード「BlackWidow」の新モデルをテスト
 Razer製ゲーマー向けキーボードの主力シリーズとなるRazer BlackWidowは,2010年の初代モデル,そして改良版となる(2012年発売の)2013年モデルでも一貫して,ZF Electronics(旧Cherry)製メカニカルキースイッチを採用してきた。通常モデルでは“Cherry青軸”という通称でよく知られる「Cherry MX Blue」,キータイプ音の静粛性を謳うバリエーションモデルであるRazer BlackWidow Stealthシリーズでは“Cherry茶軸”こと「Cherry MX Brown」といった具合だ。「Razer BlackWidowシリーズは,定番のZF Electronics製キースイッチを採用するキーボード」と認識しているゲーマーは少なくないと思う。

新世代BlackWidowはRazerオリジナルキースイッチを採用
画像集#003のサムネイル/Razer独自の「緑軸」「オレンジ軸」メカニカルキースイッチは買いか? ゲーマー向けキーボード「BlackWidow」の新モデルをテスト
 そんなRazer BlackWidowの新作が,従来どおりのスイッチではなく,Razerオリジナルの「Razer Green switch」「Razer Orange switch」(以下順に,緑軸,オレンジ軸)を採用したというニュースは,かなりの注目を集めた(関連記事)。そして,そんな新モデルは2014年4月22日に下記のとおり,日本独自の製品名で一斉発売となる予定だ(※10キーレスの「Tournament Edition」は国内未発表)。

●Razer BlackWidowシリーズの国内ラインナップ第一弾(2014年4月22日発売予定)
  • Razer BlackWidow 2014
    緑軸,英語配列,価格1万4256円(税込)
  • Razer BlackWidow 2014-JP
    緑軸,日本語配列,価格1万4256円(税込)
  • Razer BlackWidow Ultimate 2014
    緑軸,英語配列,価格1万9332円(税込)
  • Razer BlackWidow Ultimate 2014-JP
    緑軸,日本語配列,価格1万9332円(税込)
  • Razer BlackWidow 2014 Stealth
    オレンジ軸,英語配列,価格1万4256円(税込)
  • Razer BlackWidow Ultimate 2014 Stealth
    オレンジ軸,英語配列,価格1万9332円(税込)
  • Razer BlackWidow Ultimate 2014-JP Stealth
    オレンジ軸,日本語配列,価格1万9332円(税込)

 果たして新型の緑軸&オレンジ軸で,Razer BlackWidowは何が変わったのか。今回4Gamerでは,日本語配列で緑色LEDバックライト付きの最上位モデルから,緑軸の「Razer BlackWidow Ultimate 2014-JP」とオレンジ軸の「Razer BlackWidow Ultimate 2014-JP Stealth」を入手できたので,発売直前となるこのタイミングでテスト結果をお届けしてみたい。


デザインと機能は2013年モデルそのままに

キースイッチをRazer独自のものへ変更


 北米のIT系メーカーで流行している“バージョン表記を入れない病”にかかったのか,Razerは,BlackWidowの新型に「2014」表記を付けていない。しかし,上で示したとおり,国内販売代理店であるMSYは2014表記を追加しており,分かりやすくなっているため,本稿でも以下,入手した2製品は「BlackWidow Ultimate 2014」「BlackWidow Ultimate 2014 Stealth」と表記したいと思う。

こちらはRazer BlackWidow Ultimate 2013の日本語配列モデル。詳細はレビュー記事を参照してほしい
画像集#004のサムネイル/Razer独自の「緑軸」「オレンジ軸」メカニカルキースイッチは買いか? ゲーマー向けキーボード「BlackWidow」の新モデルをテスト
 というわけでいきなり結論めいたことから先に述べるが,BlackWidow Ultimate 2014とBlackWidow Ultimate 2014 Stealthの外観は共通で,かつ,従来製品である「Razer BlackWidow Ultimate 2013」(以下,BlackWidow Ultimate 2013)および「Razer BlackWidow Ultimate 2013 Stealth Edition」とも同じだ。
 つや消しの黒で統一された上面とキートップ,そして緑色LEDバックライトの搭載は完全に同じ。[Windows]キーのWindowsアイコンが,2013モデルだとWindows 7のスタートボタン的だったのが,2014モデルでWindows 8のスタートボタン的になったのが,外観から見分けるための唯一の違いと言えるかもしれない。

BlackWidow Ultimate 2014を正面から撮影したカット。本文でも述べたとおり,BlackWidow Ultimate 2014 Stealthも同じ外観だ。メインのキーボード部は,右[Alt]キーと[コンテキストメニュー]キーの間に[Fn]キーを搭載するのを除けば,ごくごく一般的な日本語109キー配列となっている
画像集#005のサムネイル/Razer独自の「緑軸」「オレンジ軸」メカニカルキースイッチは買いか? ゲーマー向けキーボード「BlackWidow」の新モデルをテスト
Ultimateモデルの特徴であるLEDバックライトは,[Fn]+[F11]/[F12]キーによって輝度を20段階に変えられる
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10キーの上部は一見何もないように見えるが,つや消しされた表面の下にLEDインジケータが仕込まれている
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メインキーボードの左端に[m1]〜[m5]キーを搭載。このキーを含め,ほぼすべてのキーをカスタマイズできる

Razer製品用の統合型設定ツール「Razer Synapse 2.0」,原稿執筆時点のメイン画面。操作性や機能で,従来モデルからのアップデートはない
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 [Fn]+[F10]キーで[Windows]キーと[コンテキストメニュー]キーの有効と無効を切り替える機能など,[Fn]キーまわりもBlackWidow Ultimate 2013と同じ。ロールオーバー数が10で,10キーまでは同時押しに対応する点,そして11キー以上を同時に押下するとゴーストが発生する(が,人間の手は10本指なので実害は一切ない)点も変わらずだった。基本機能にも手は入っていないようだ。

 なので,キーボード製品としての基本仕様をもう少し詳しく知りたい場合はBlackWidow Ultimate 2013のレビュー記事を参照してもらえればと思うが,復習がてら念のためおさらいしておくと,底面部のサイズは実測で約470(W)×180(D)mm。キートップを除くキーボード面の高さは最も低い部分で実測約20mm,最も高い部分で同33mmとなっており,本体底面に用意されたチルトスタンドを立てると,最も高い部分が約10mm持ち上がる。

チルトスタンドを畳んだ状態(左)と立てた状態(右)。キーボード面の傾斜は十分かつ調節が可能で,この点はクセがないといえる
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 キートップのデザインにはステップスカルプチャ方式が採用されている。キートップの高さは[Space]キーで7mmほどだ。

キーボード面が湾曲するステップスカルプチャ方式が採用される。キートップの高さは[Space]キーで約7mmと,ここも従来モデルから変化はなかった
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本体底面は四隅と手前側左右中央部に滑り止めのゴムが貼り付けられている。1.5kg近い重量と相まって,安定感は良好だ
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 スイッチ以外で1つ,決定的に変わっているのが重量で,BlackWidow Ultimate 2014とBlackWidow Ultimate 2014 Stealthの実測重量はケーブル込みで1.49kg,参考までにケーブルを重量計からどかした状態で1.32kg前後あった。2013モデルだとケーブル込み重量が同1.18kgだったので,300gほど重くなっている計算である。
 この理由だが,キースイッチの変更による可能性はある。もちろん,安定性向上のため。内蔵する錘(おもり)を重くしたという可能性も考えられなくはない。

 実際,重量のおかげで安定感は極めて良好といえ,少なくとも筆者が使った限り,スタンドを畳んだ状態はもちろんのこと,立てた状態でも,ゲームプレイ中にガタつくことはまったくなかった。従来モデルでも十分な重さがあったので,この重量化が従来製品比で明確なメリットを生んでいるとは言わないが,安定感があるのはよいことだ。

ケーブルは布巻き仕様。先端はUSB 2.0×2と3.5mmミニピン×2になっている。USBの片方がキーボード用で,残る3インタフェースは,本体向かって右側面にUSB 2.0×1とヘッドセット接続用端子を引き出すためのものだ
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“Razer独自”の緑軸&オレンジ軸は

中国Kaihua製のカスタムモデルか


 以上,BlackWidow Ultimate 2014とBlackWidow Ultimate 2014 Stealthは,2012モデルから,キースイッチを交換しただけの製品と述べても間違いではないわけだが,では,唯一にして最大の特徴である,Razer独自の緑軸スイッチとオレンジ軸スイッチとは,いったいどんなものなのだろうか。キートップを外して,スイッチに寄って撮影したのが下の写真だ。
 軸のすぐ近くに「RAZER」の刻印があるが,それとは別に,あまり見慣れないロゴマークがあるのも目を引く

左はBlackWidow Ultimate 2014,右はBlackWidow Ultimate 2014 Stealthでそれぞれキートップを外し,緑軸とオレンジ軸に寄って撮影したカット。スイッチを包む外殻の上部にRazerロゴと謎のマークが入っている
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 ではこの謎のマークは何かという話になるが,調べてみたところ,これは中国Kaihua Electronics(凱華電子,以下 Kaihua)のロゴマークのようだ。
 Kaihuaはマイクロスイッチを手がけるメーカーで,最近はCherry MXとそっくりの――誤解を恐れず言い切ってしまえば“パチモノ”の――メカニカルキースイッチを手がけ,それが一部のメーカーで採用されている実績がある。あくまでも想像だが,「Cherry MXと似たようなキースイッチを作れるのであれば,Cherry MXをカスタマイズしたようなキースイッチも作れるはず」と,RazerもしくはKaihuaが考えて,それを実行に移した結果が,今回の緑軸とオレンジ軸なのではなかろうか。

キートップの裏側を撮影したカット。左がBlackWidow Ultimate 2014,右がBlackWidow Ultimate 2013のもので,ご覧のとおり,十字のはめ込み部分は完全な互換性がある
画像集#026のサムネイル/Razer独自の「緑軸」「オレンジ軸」メカニカルキースイッチは買いか? ゲーマー向けキーボード「BlackWidow」の新モデルをテスト
 実際,軸の色を除くと,RazerオリジナルのキースイッチはCherry MXシリーズとよく似ており,実機で確認した限り,軸の大きさと形状はCherry MXシリーズと完全に一致した。BlackWidow Ultimate 2014から外したキートップをBlackWidow Ultimate 2013にそのまま取り付けて利用できたことも確認済みだ。
 いずれにせよ,緑軸とオレンジ軸にはRazerの刻印もあるので,Razer製以外のキーボードで採用されることはないのではなかろうか。


青軸より浅い緑軸の操作感は青軸とほぼ同じ

茶軸より浅いオレンジ軸は今までにない操作感


 オリジナルキースイッチの出自(?)が分かったところで,緑軸とオレンジ軸それぞれのスペックをまとめつつ,実際に使ってみよう。


■緑軸(BlackWidow Ultimate 2014)

画像集#019のサムネイル/Razer独自の「緑軸」「オレンジ軸」メカニカルキースイッチは買いか? ゲーマー向けキーボード「BlackWidow」の新モデルをテスト
 まず緑軸スイッチからだが,こちらは,「押下圧が一定で,スイッチがオンになる位置にクリック感とクリック音を伴う」タイプである。BlackWidow Ultimate 2013の後継ということで,同製品に採用されていたCherry MX Blueキースイッチと近い特性を持つスイッチという理解でいい。

 公称の押下圧は50g。錘(おもり)を使った実測でも45gでは沈まず,50gで沈み込んだので,だいたい公称どおりと述べてよさそうだ。Cherry MX Blueも押下圧は50gなので,この点は変わっていないことになる。
 一方,キーストロークは公称約1.9±0.4mm,指を離したときにスイッチの反応がなくなる深さを示す「リセット距離」は0.4mmで,Cherry MX Blueの同2.2mm±0.5mm,0.7mmと比べると,いずれも浅くなった。

Razerが示している,緑軸と「Standard Mechanical Switch」の比較。Standard Mechanical SwitchのスペックはCherry MX Blueそのものである
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 筆者の手元にあるBlackWidow Ultimate 2013(のCherry MX Blue)スイッチと比べると,まず,公称値が変わっていないキーの重さはほとんど同じ。キータイプ時に指先が感じるクリック感,そして耳で聞こえるクリック音は,BlackWidow Ultimate 2013からほとんど変わっていない印象だ。先のBlackWidow Ultimate 2013レビュー時とは撮影した環境が異なるため,下に示したムービーと比較すると違った印象を受けるかもしれないが,筆者の耳で聞こえる音は非常によく似ており,「違うと言われれば違うかもしれない」程度の違いしかないように思われる。

 ちなみにこれは,Cherry MX Blueと同じように,クリック音が「チッチッチッ」と耳に付くことと同義でもある。世の中にはこのクリック音が好きな人もいるので,全面的に否定することはしないが,かなりうるさいので,人を選ぶのは確かだろう。


 一方,キーストロークの公称値で0.3mm浅くなったスイッチは,体感でも明らかに浅くなっている。BlackWidow Ultimate 2013だと1.5mm程度でスイッチがオンになるのに対し,BlackWidow Ultimate 2014ではこれが実測約1.2mm。この0.3mmという違いは,実際に打鍵してみるとすぐに気づくはずだ。

 浅く,しかもスイッチを押したとき指先にかかる適度な抵抗と音のおかげで,使い始めの“誤爆率”は低い。ぱっと使って使いやすいキーボードになっているといえるだろう。また,スイッチが入るポイントが浅いので,慣れてくると,従来のCherry MX Blueスイッチ採用モデルと比べて,やや高速に操作できるようになった印象がある。自分の腕が上がったように感じられるのは気分がいい。
 ただ,キーの重さと動作音があまりにも似ているため,BlackWidow Ultimate 2013と比べると,新鮮味がなかったりもする。


■オレンジ軸(BlackWidow Ultimate 2014)

 オレンジ軸は,「スイッチがオンになる部分に明確な手応えがなく,クリック音もなく,押下圧は一定」というタイプだ。BlackWidow Ultimate 2013 Stealthで採用されていたCherry MX Brownだと,「押下圧は一定でクリック音はないが,スイッチがオンになる部分にわずかな手応えがある」タイプだったので,特性は若干異なる。
 Razerの示しているスペック比較だと,明確にCherry MX Brown系なのだが,どちらかといえば「押下圧が一定で,スイッチがオンになる部分に手応えも音もない」タイプであるCherry MX Redに近いキースイッチと言えるのではないかと思う。

Razerが示している,オレンジ軸と「Standard Mechanical Switch」の比較。ここでStandard Mechanical Switchのスペックとして引用されているのはCherry MX Brownのものとなっている
画像集#018のサムネイル/Razer独自の「緑軸」「オレンジ軸」メカニカルキースイッチは買いか? ゲーマー向けキーボード「BlackWidow」の新モデルをテスト

 公称の押下圧(=バネ圧)は45gながら,錘を使った実測だと,45gでは沈まず,50gでは沈んだので,その間といったところ。錘だとなかなか公称値どおりの値は出ないことも踏まえると,だいたい公称値程度の押下圧と述べていいのではなかろうか。

画像集#020のサムネイル/Razer独自の「緑軸」「オレンジ軸」メカニカルキースイッチは買いか? ゲーマー向けキーボード「BlackWidow」の新モデルをテスト
 キーストロークは公称約1.9±0.4mm,指を離したときにスイッチの反応がなくなる深さを示す「リセット距離」は0.05mmで,Cherry MX Brownの同2.0mm±0.6mm,0.1mmと比べると,いずれも浅くなった。
 ちなみに,先ほど「似ている」と述べたCherry MX Redだと,公称の押下圧は45gで,キーストロークは2.0mm±0.6mm。リセット距離の数値は公表されていないが,「スイッチ作動ポイントと同一」とされているので,リセット距離は極めて小さいことになる。この点でも,オレンジ軸はCherry MX Redに似ていると述べていいのではなかろうか。

 残念ながら筆者の手元に日本語配列版BlackWidow Ultimate 2013 Stealthがないので,従来製品との比較は行えないが,Cherry MX Brownスイッチ採用のダイヤテック製キーボード「Majestouch 2 Camouflage Tenkeyless」(型番:FKBN91M/NMU2があったため,これと比較してみると,オレンジ軸の押下圧は明らかに軽い。また,スイッチがオンになるポイントが浅くなっていることも体感できるレベルだ。
 実測してみると,手元にあるキーボードに搭載されたCherry MX Brownは,1.5mm程度押し込んだところでスイッチがオンになるが,それに対してBlackWidow Ultimate 2014 Stealthのオレンジ軸だと1mm強といったところだ。測定誤差を踏まえても0.3mmは確実に違いがあるはずで,だから体感できるのだと思われる。

 軽いバネで,浅い距離からスイッチが入るため,最初は“誤爆”が増え気味になる。指が軽く当たっただけでもキースイッチが反応するためで,その意味でいうととっかかりはあまりよくない。使いこなせるようになるまでの慣れに要する時間は相対的に長くなりそうだ。
 こちらも,実際にキータイプしている様子は下のムービーにまとめたので参考にしてほしい。



■実際にゲームで使ってみる

 では,実際のゲームにおける使用感はどうだろうか。いつものように,筆者が最も高速にプレイできるタイトルである「Enemy Territory: Quake Wars」で2製品を比較してみたが,使用感はどちらも悪くない。

 ただ,2台をとっかえひっかえ使ってみると,オレンジ軸のほうが爽快感がよいというか,キレのある印象を受けた。その理由が何なのかははっきり言えないのだが,もしかすると,オレンジ軸のほうが,「キーがオンになっている時間」が少しだけ短いからという可能性はある。
 実際,キーを押下して,その後に指を離したとき,キーが戻ってスイッチがオフになるまでの移動距離はオレンジ軸のほうがやや短かった。リセット距離が短く設定されているオレンジ軸のほうにキレを感じるのはこれが理由かもしれない。

画像集#022のサムネイル/Razer独自の「緑軸」「オレンジ軸」メカニカルキースイッチは買いか? ゲーマー向けキーボード「BlackWidow」の新モデルをテスト
 そんなオレンジ軸が抱える難点は,先ほども述べた“誤爆”だろう。BlackWidow Ultimate 2014 Stealthを使っていると,たとえばFPSでの前進中,意図せず左右へズレるようにスライド移動してしまう,ということがあった。[W/A/S/D]キーのホームポジション近くに集まった左手の指が,[W]キーの押下中に,[A]キーや[D]キーに意図せず触れて,しかもそれでキースイッチがオンになってしまったために生じる問題,というわけだ。
 もちろん,時間をかけてキー操作に慣れていけばこういった誤操作は減っていき,素直にキレのある操作感を味わえるようになる。初心者向けではないかもしれないが,個人的にはかなり好みの操作感だ。

 一方の緑軸は,「ほとんどCherry MX Blue」なので,Cherry青軸が好きな人なら違和感なく使えるはずである。

 「キースイッチが中国メーカー製に変わったこと」による品質の低下を心配する読者はいると思うが,少なくとも入手した個体では,品質の悪いキースイッチにありがちな押下圧のバラツキは感じられなかった。完全に押し込んだときのグラ付き方もCherry MX BlueやCherry MX Brown採用キーボードと変わりなし。この点は「良くも悪くもCherry MXシリーズに似ている」ことのメリットといえるかもしれない。


ゲーマー向けキーボードの差別化ポイントは

機能からスイッチに移行する?


製品ボックス
画像集#023のサムネイル/Razer独自の「緑軸」「オレンジ軸」メカニカルキースイッチは買いか? ゲーマー向けキーボード「BlackWidow」の新モデルをテスト
 ゲーマー向けキーボードはここ数年で,耐久性に優れるメカニカルキースイッチ採用モデルが中心となった。そのスイッチもCherry MX Blueや,Cherry MX Brown,Cherry MX Black,Cherry MX Redのいずれかになり,ロールオーバーや同時押し,あるいは追加のボタンやキーといったところも全体的に完成度が高まっており,結果として,どれも判で押したように似た製品になるという状況になってしまっていた。
 もちろん「突き詰めると,どれも似たようなものになる」のは収斂進化ともいえるわけで,妥当といえば妥当だ。とはいえ,メーカーにとっては自社製品を差別化しづらくなり,ゲーマーにとっても選ぶ楽しみ,キーボードを変える楽しみが減るということにもなってしまう。

画像集#021のサムネイル/Razer独自の「緑軸」「オレンジ軸」メカニカルキースイッチは買いか? ゲーマー向けキーボード「BlackWidow」の新モデルをテスト
 そんな市場にあって,いかにして差別化を行うか。それが今回の「従来にないメカニカルキースイッチの投入」ではなかったかと筆者は見ている。キースイッチの出自が出自だけに,Cherry MX Blueの2000万回,Cherry MX Brownの5000万回を超えるという,6000万回の打鍵に耐えるというスペックが謳い文句どおりであるかどうかなど,時間が経たないと最終判断を下せない部分はあるものの,こうしてRazerが一歩踏み込んだことで,「キースイッチの設定」は,今後のゲーマー向けキーボードにおける,主要な差別化ポイントとなり,また,メーカーごとの思想が出てくるポイントになる可能性もあるだろう。

 最後にキーボードとしての評価をあらためてまとめておくと,緑軸採用のBlackWidow Ultimate 2014は,Cherry MX Blue採用のBlackWidow Ultimate 2013と,操作感にそう大きな違いはない印象だった。一方オレンジ軸採用のBlackWidow Ultimate 2014 Stealthは,“Cherry赤軸風”ながらも,いままでにない感触が得られる。最終的には好みの問題になると思うが,個人的にはオレンジ軸がお勧めだ。
 Ultimateモデルは価格が2万円近いだけに,10キーレスモデルであるTournament Editionの早い市場投入にも期待したい。

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BlackWidow Ultimate 2014製品情報ページ

BlackWidow Ultimate 2014 Stealth製品情報ページ

Razerの緑軸&オレンジ軸解説ページ(英語)

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