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[GTMF 2011]定番「Unreal Engine 3」や国産の「OROCHI」に新鋭「Unity」など,各種ゲームエンジン関連セッションまとめ
Unreal Engine 3
まずはEpic GamesによるUnreal Engine 3のデモから。世界で一番売れているだけあって,各種ゲームエンジンのなかでも,機能的な充実度は一番だろうか。ただ,同社によるUnreal Engine 3の講演は国内の各種イベントで行われているのだが,まだ基本機能の紹介が中心となっているあたりに,国内展開の寂しさがあった。しかし,そんな状況も「Gears of War 3」の発売後となるCEDEC 2011(9月6〜8日開催)では,払拭されそうだ。Gears of War 3の開発スタッフを呼んでの技術的なセッションが行われるという。
基本ツールの使い方やエンジンの機能などは割愛するとして,目立ったところをピックアップすると,まず韓国のMMORPGで使われたというツール「Land Scape」。それまであったTerrain機能では大規模な地形が作れないということで,新たに追加されたものだという。MMORPGのマップ規模の地形をシームレスにエディットできる。もっとも,Unreal Engine 3を採用したMMORPGタイトルというと限られてくるわけだが,山を越えると雪国があるあたりって,やっぱりTERAっぽい?
続いてパフォーマンス最適化やデバッグ支援機能周りを見てみよう。テストプレイ中のさまざまな統計を取る機能や,インゲームでの表示機能などが紹介されているが,取り揃えられている項目が非常に細かく,かつ実践的なものになっているのが分かるだろう。
ついでにAutodeskのセッションで行われた,Unreal Engine 3とBeastによるデモの様子も加えておこう。ライトグローブを使ったグローバルイルミネーションの設定が,リアルタイムとはいかないまでも,即座に行われる様子が確認できる。Beastは別にUnreal Engine 3専用のものというわけではないのだが,ゲームエンジンに統合化された状態でどのように使われているのかを見てみてほしい。
OROCHI
続いて,シリコンスタジオによる,国産初のオールインワンタイプのゲームエンジン「OROCHI」を紹介しよう。実は,OROCHI自体はGDCでも公開されていた。そのときはゲームエンジンではないような話を聞いていたのだが,今回のデモを見る限り,かなり現代風のインタフェースを持ったゲームエンジンに仕上がっているように思われる。
これまでの同社のミドルウェアはライブラリ形式のものが多く,機能と性能ではかなり尖った部分があったものの,統合的なゲーム開発環境を提供しているわけではなかった。海外製の多くのゲームエンジンは,ゲームエディタとエンジンを統合した開発環境を提供するようなものとなっており,プログラマでなくても使えるというか,むしろプランナーやデザイナーなどが使うことを前提にしたものが増えている。なぜか,日本ではそういったオーサリングツール風のものは少なかった。
まずは機能的な部分でのデモムービーを解説付きで見てみてほしい。
OROCHIは,同社が作り上げてきたポストエフェクトツールのYebisやBishamonほか12種のミドルウェアを基盤として,40種のツールを加え,それらを統括するような存在となっている。基本的な3Dオブジェクトなどは,Mayaや3ds MaxなどといったDCC(デジタルコンテンツクリエーション)ツールで作成してCOLLADAなどの中間ファイルで出力し,OROCHI上でゲームを作成。そして,ターゲット各機に最適化したバイナリを出力する。現在はWindows,Xbox 360,PlayStation 3に対応しており,PlayStation Vitaへの対応も進めているとのこと。
そのほか,デバッグ支援機能やゲーム内のスクリプトなどの様子を実演した映像を掲載しておこう。ちょっと長めだが,とくにゲーム内のオブジェクトがどういった状態なのかについて,AIの選択をフローチャートで示したり,ラベル表示したりと面白い試みが見える。
まだ実績という点ではなにもないのでトータルでの完成度は不明だが,サポートなどを含めると「国産」であるということの意味は大きいのではないだろうか。
Unity
すでにUnity関連の記事は掲載しているのだが,最近のUnity自体についての紹介をここで行っておこう。
ゲームエンジンとしては後発ながら,瞬く間に勢力を広げつつあるUnity。ゲームエンジンとゲームエディタを統合した開発環境は柔軟性に富み,ツール自体が無償で公開されている点も人気のポイントだろう。表現力については最強というわけではないが,必要十分なくらいのクオリティの3Dゲームを作成でき,スマートフォンなどでも十分に動くという軽さが魅力になっている。ほかのゲームエンジンでは見られない特徴としては,Webブラウザだけで実行できるUnity Web Playerの存在が挙げられるだろう。かなりリッチな3Dゲームがブラウザゲームとして動いてしまうのだ。
基本的な使用法を紹介したデモムービーを掲載するので,どんな感じのツールなのかを感じ取ってもらいたい。
また,Unityでは,昨年末にUnity Asset Storeというものが開設され,活況を呈しているという。これは,Unityで使用できるさまざまなアセット(モデリングデータやテクスチャなどのほか,エディタの拡張機能も含むようだ)をユーザーが登録して売買できるというものである。ゲームは作れなくとも,パーツを販売したり,他人が作ったパーツを組み合わせてゲームを作ったりと,「ゲーム開発を民主化する」というUnityのスローガンを具現化したようなものとなっている。開設から半年で,すでにないものは見あたらないくらいの勢いでライブラリが充実してきているそうだ。
また,Unityのエディタに組み込む機能を自分で拡張することができるのだが,その拡張機能の作成方法がUnityでゲームを作るのと同じとのことで,ゲームが作れるようになれば,ツールも拡張できるようになるのだという。
また,展示会場では,まもなく登場するというUnity 4.3が展示されており,プロシージャルテクスチャ機能などが確認できた。PCなどでは実行時にテクスチャが生成され,非常に小さなデータサイズとなっていた。スマートフォンなどではビルド時に生成されたものが組み込まれるようだ。
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Unreal Engine
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