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Access Accepted第518回:PlayStation VRの売れ行き,データから浮かび上がるVR市場の現状
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印刷2016/11/21 12:00

業界動向

Access Accepted第518回:PlayStation VRの売れ行き,データから浮かび上がるVR市場の現状

画像集 No.001のサムネイル画像 / Access Accepted第518回:PlayStation VRの売れ行き,データから浮かび上がるVR市場の現状

PlayStation VRが発売され,さらなる盛り上がりを見せるVRゲーム。だが,なにぶん新しい市場となるだけに,プレイヤー層も今までとは若干異なっているようで,デベロッパやリサーチ会社は手探り状態で仕事を進めている。


販売台数で他を大きく引き離すPlayStation VR


 Sony Interactive Entertainment(以下,SIE)のVRヘッドマウントディスプレイ「PlayStation VR」(以下,PS VR)が発売されてから1か月ほどが経過した。現在でも品切れ状態が続いており,アメリカのゲームショップやショッピングサイトでは,おそらくSIEが重視していると思われる「ブラックフライデー」(感謝祭の翌日で,クリスマス商戦の開始日とされている)直前の11月23日まではこの状態が続きそうだ。「PlayStation Move」を含めた生産規模の拡張がどれだけ図られているか定かではないが,需要は今なお高いと言っていいだろう。

 4Gamerが毎週掲載している「週間販売ランキング+」によると,日本市場におけるPS VRの初週販売台数は5万1644台となっている。(関連記事)。
 他の市場のデータは見つけられなかったのだが,仮に日本,北米,ヨーロッパ,その他という4市場で均等配分されたとしても,全世界で20万台は販売されたということになる。全世界で4740万台が販売されているPlayStation 4が,日本市場は300〜400万台という10分の1以下の数字であることを考えれば,もっと上と見るほうが妥当だろう。

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 実際,ニューヨークを拠点とするリサーチ会社SuperData Researchは,PS VRが年内に世界で260万台を出荷するだろと予測している。これはHTC「Vive」の40万台,Oculus VR「Rift」の70万台と比べても非常に大きいものであり,この予測が正しければ,少なくともGear VRなどのモバイルVRを除くハイエンドVRプラットフォームにおいては,今後しばらくPS VR1強の状態が続きそうだ。

 一方,イギリスのリサーチ会社IHS Markitは米メディアCNBCの取材に対して,PS VRの予想販売台数を「年内に140万台」と答えている
 この数字の開きを見ても,IT系リサーチ会社すら実数はSIEの正式発表頼みということのようだ。

 ソフトウェアに目を向けてみると,SIE AmericaとSIE Europeによる両市場のPS VR向けダウンロードタイトルの公式セールスチャートがリリースされている。

順位USEU
1Job SimulatorBatman: Arkham VR
2Batman: Arkham VRPlayStation VR Worlds
3Until Dawn: Rush of BloodUntil Dawn: Rush of Blood
4PlayStation VR WorldsHere They Lie
5Here They LieTumble VR
6Keep Talking and Nobody ExplodesJob Simulator
7EVE: ValkyrieGunjack
8GunjackDriveclub VR
9Harmonix Music VREVE: Valkyrie
10Sports Bar VRSports Bar VR

 欧米におけるPS VRローンチタイトルは30ほどということもあってか,今のところプレイヤーの嗜好にそれほどの違いはないようだ。2017年1月までの“ローンチタイトル期間”になれば80タイトル近くが揃うとのことなので,その頃になれば地域差が現れてくるかもしれない。

北米とヨーロッパ,どちらの市場でも好調な「Batman: Arkham VR」。目の前にあるバットマンスーツを手に取れるが,実際に自分の服を脱ぐ必要はないのでご注意を
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市場データから読み解けるVRゲーム市場のリアリティ


EEDARの「VP of Insights」 としてVR市場の予想を担当するパトリック・ウォーカー氏。彼の講演の映像は一般公開されているので,市場データの詳細が気になる人はチェックしておこう
画像集 No.004のサムネイル画像 / Access Accepted第518回:PlayStation VRの売れ行き,データから浮かび上がるVR市場の現状
 さて,11月2日から3日にかけて,Game Developers Conferenceの運営母体でもあるUBMが,サンフランシスコにあるPark Central Hotelにおいて「Virtual Reality Developers Conference」(以下,VRDC 2016)という開発者向けイベントを開催した。

 参加者は750人程度で,この手のイベントとしては小規模だったが,Oculus VR,HTC,Fove,Google,Microsoft,Intel,Qualcommといった企業が参加した。4Gamerでもいくつか取材記事を掲載している

 ただ,このイベントに前後してOculus VRの「Occulus Connect 3」やValveの「Steam Dev Days」といった自社イベントも開催されており,12月には「PlayStation Experience 2016」も控えているタイミングでの開催で,まだ散漫なVR市場を映しているようにも見える。

 話が少々横にそれてしまったが,このVRGC 2016において,リサーチ会社EEDARの市場予想担当官であるPatrick Walker(パトリック・ウォーカー)氏が,VR市場の現状について語っている。

 EEDARが行った消費者調査は,サンプル数が200人ということなので,誤差はそこそこありそうだが,PC向けVRデバイス所有者の平均年収は6万ドル程度,平均年齢は29.9歳であるという。男女比率は72対28で,ウォーカー氏によるとスマートフォン向けゲームなら男女比率は半々程度,コンシューマゲームは6対4くらいとのことだ。

VRデバイスのアーリー・アダプターとなったのは,時間的・資金的な投資を厭わないコアなゲーマーたちだ
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 ViveやRiftのようなハイエンドVRデバイスを動かせるPCを持っているのが前提なのだから,市場がコアゲーマー寄りになるのは言うまでもない。調査によるとVRデバイス所有者がVRソフトウェアの購入に使う金額は1年あたり157.92ドル(1万7000円程度)となっているが,ウォーカー氏は「本当にVRゲームで長時間遊びたいと願っているのは,時間はあるけどお金がないもう少し若い層」とのことだった。

 ウォーカー氏の講演で興味深かったのが,Vive,Rift,そしてPS VRのソフトウェア発売に関する状況を紹介するスライドだ。3月から10月までの半年ほどで,すでに多くのVR向けゲームソフトがリリースされているが,期間を短く区切っても,まるで「どれくらいの価格なら購入するのかを確かめている」とでも言いたげに,どのプラットフォームでもさまざまな価格帯のソフトが発売されているのだ。

VRコンテンツの適正価格は手探り状態
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 またウォーカー氏は,Steamのデータを基にVRゲームのヒットタイトルを紹介した。そこで挙げられたのは,Vive向けのローンチタイトルであり,初の収益100万ドル突破作品と言われたFPS「Raw Data」(現在までに150万ドル)をはじめとして,「Audio Shield」「Virtual Desktop」「Hover Junker」「Space Pirate Trainer」など,インディーズデベロッパのタイトルばかり。
 「EVE: Valkyrie」などのように,名のある企業が手がけてローンチ前から話題となり,認知度が高いはずのタイトルが入っていないというのは肩透かしな印象で,前述したPS VR向けタイトルのランキングと比較すると,かなり差があるように見える。

Steamのレビュースコアの高さとVRゲームの販売状況はかなりの精度で一致しているというのがウォーカー氏の見解だ
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 また,150万ドルの収益を達成したとはいえ,「Raw Data」の価格は39.99ドルで,セールの対象にもほとんどなっていないため,単純な割り算では4万本弱という販売本数になる。
 Viveが現時点で40万台前後であることを考えると,ちょうどユーザーの10%という妥当な数字になるのだが,今後4〜5万本のセールスを目安にゲーム開発を行うというのは,果たして資金回収の面では果たして正しい判断なのだろうか。大手や中堅のパブリッシャを見つけ,長期的なセールスを狙うというのが,とりあえずのセオリーになっていきそうだ。

 過去の新型ゲーム機のローンチ後120日間でリリースされたタイトル(PS VRは予定されているもの)の数も紹介されたが,ここではVive,Rift,PS VRいずれも数の多さに驚かされた。おそらく,3つのVRデバイスが間を置かずに登場したことで,タイトル数を競うような状況になっており,デベロッパもマルチプラットフォームを採用しがちになっているのだろう。

ローンチタイトルの数。昔はローンチ日にリリースされるタイトルだけを“ローンチタイトル”としていたが,最近では「当初120日間」にまで広げられる傾向のようだ
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 言ってみれば小さな池に大量の鯉を泳がせ,エサの取り合いをさせているような状態で,開発者にとってはそれほど旨味がないと思われる。VRの未来を信じてやまない熱心な開発者へのサポートや,“池の大きさ”を広げるために,VRデバイスの低価格化が望まれるところだ。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。

  • 関連タイトル:

    PlayStation VR本体

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