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ジャンクハンター吉田のゲームシネシネ団:第37回「『007/慰めの報酬』国内発売記念! 最強の007ゲーム大特集!(2)」
前回に引き続き今回も,スクウェア・エニックスより本日(3月26日)発売されたシネマゲーム「007/慰めの報酬」をピックアップ! とくに今回は,リリースに至るまでの背景などを掘り下げていく。
なんでもActivisionは,TreyarchがDreamcast向けに開発したコミック版「Spider-Man」の完成度を評価し,傘下に収めることを決めたのだという。
以降,コミック版だけでなく映画版「Spider-Man」シリーズのゲーム化を手掛けたり,スティーヴン・スピルバーグ監督のSF映画「マイノリティ・リポート」を「Minority Report: Everybody Runs」というタイトルでゲーム化したり(トム・クルーズ氏が肖像権の使用を認めなかったため,主役のジョン・アンダートンは映画とまるで別人になっている)と,いくつものシネマゲームを手掛けてきた。
2006年5月,Activisionは映画会社MGMの子会社で,デジタルコンテンツ管理を行っているMGM Interactive,そして007シリーズの映画全般を制作しているロンドンのEON Productionsから,2014年まで有効な007シリーズのゲーム化権を独占的に取得した。
実はActivisionは,以前から007シリーズのゲーム化に意欲を持っていたようだが,Electronic Artsがジェームズ・ボンド役の前任であるピアース・ブロスナン氏の肖像権と,007のゲーム化権を2011年頃までの契約で握っていたため,手を出せないでいたのだ(1980年代から現在に至るまで,007ゲームの総売り上げは3000万本を超えているとか。Activisionが魅力を感じていたのも,うなずける話だ)。
ここでActivisionが名乗りを上げ,007シリーズのゲーム化権を,ダニエル・クレイグ氏ら出演者の肖像権を含めた形で獲得したのである。そしてその第一弾が,「Call of Duty 4」(以下,CoD4)のエンジンを採用した,慰めの報酬というわけだ。
ひょっとしたら,なぜカジノ・ロワイヤルのときにゲーム化しなかったのか,気になる人もいるかもしれない。この疑問に対する答えは非常に明快で,Activisionがゲーム化権を取得したタイミングではすでに,映画公開に合わせてゲームを完成させるだけの時間がなかったのである。
ただ,ActivisionはMGMやEON側から,カジノ・ロワイヤルと慰めの報酬が,前後編的な作品として作られるという情報を知らされていた。そこで,慰めの報酬のゲームの中にカジノ・ロワイヤルの物語を付け加える形で開発することになったようだ。
それでもゲームのタイトルに,慰めの報酬としかつけられていないのは,海外で慰めの報酬が劇場公開されるタイミングでのリリースが決まっていたからだという。
かくして,プレイヤーをゲームの最中に先入観なくカジノ・ロワイヤルの劇中へ飛び込ませ,その世界を慰めの報酬と地続きのものとして体験させようという狙いのゲームが,完成したのである。
ところで,CoD4エンジンを採用した慰めの報酬を,Treyarchが開発していることを不思議に思った人もいるのではないだろうか。なんせCoD4の開発元は,2003年にActivisionに買収されたInfinity Wardである。となれば,Infinity Wardが慰めの報酬を開発していたとしても,決して不自然ではない。
実はTreyarchとInfinity Wardは,Activision傘下に入ってから,それぞれCoDシリーズの開発に携わってきている。そのため,互いに技術やノウハウの共有が行われているのだそうだ。
Activisionとしては,全世界で1000万本以上を売り上げたCoD4のエンジンをベースとしつつも,シネマゲームの開発経験では勝るTreyarchに,本作を開発させたかったのだろう。
そしてこのActivision采配は,見事に的中。CoD4エンジンは,Treyarchの手によって,カバーアクションやスニーキング,さらには接近戦で敵をテイクダウンできるという,007にピッタリなシステムへブラッシュアップされ,慰めの報酬はシネマゲームとしてトップクラスのクオリティを持つゲームとして誕生したのだ。
なお,英語版の慰めの報酬では,ダニエル・クレイグ氏,オルガ・キュリレンコ氏,ジュディ・デンチ氏,エヴァ・グリーン氏,マッツ・ミケルセン氏,マチュー・アルマリック氏ら,映画のオリジナルキャストがCGキャラクターの声を演じている。
一方,スクウェア・エニックスから発売された日本語版では,テキストだけでなく音声も日本語化されており,それぞれ小杉十郎太氏,林佳代子氏,此島愛子氏,岡寛 恵氏,中多和宏氏,青山 穣氏ら,これまたカジノ・ロワイヤル日本語吹き替え版と同じキャストが声を担当している。
欲を言えば,オプションで音声の言語切り替えに対応してほしかったところだが,日本語版は日本語音声のみ。英語版のキャストの声を楽しみたい場合は,筆者のように海外版も買うしかないだろう。
■ドブ漬けゲームスープレックス(37)
PC / Xbox 360 / PLAYSTATION 3
「アローン・イン・ザ・ダーク」(エレクトロニック・アーツ)
2008年のクリスマスに日本で発売された「アローン・イン・ザ・ダーク」は,映画「スリーパーズ」の原作者である作家のロレンツォ・カルカテラ氏が,完全書き下しストーリーを書いているということで,いまさらながら遊んでみた。
この作品は,何世紀もの間,ニューヨークのセントラルパークに隠され続けてきた闇の世界の秘密を解き明かすのが目的。1992年に発売された初代作と比べ,演出のテンポも非常に良く,劇的な進化を遂げていることに感心。
ゲームプレイ中,さまざまな視点に切り替えられるのも嬉しい。「バイオハザード」ライクな視点やFPS視点を,自在に切り替えられるのは3Dゲームならではだ。なんとなく,ほかの3Dゲームもこういう風に,視点をバリバリ切り替えられるといいのに……なんて思ってしまった。
日本語版で一通り楽しんだあとは,英語版も購入してプレイ。英語だけではさすがに難解な部分があり,日本語版をプレイしていた経験で,なんとか切り抜けられたシーンが多々あったのはご愛敬。
ちなみにエドワード・カーンビーの声は,国内版では「プリズン・ブレイク」で主役のマイケル・スコフィールド役を吹き替えた東地宏樹氏だが,英語版ではゲーム「Max Payne」でMaxの声を演じている俳優ジェームズ・マキャフリー氏だった。そのため今遊んでいるゲームがなんなのか,頭がこんがらがったりもした。
そうそう,エレクトロニック・アーツがリリースしたMax Payneの日本語版では,Maxの声をクレイグ版ボンドの声を吹き替えた小杉十郎太氏が演じていたことも,付け加えておこう。
あ,あとカプコンがPlayStationに「Alon in the Dark: The New Nightmare」をローカライズしていたがお蔵入りしたことと,ウーヴェ・ボル監督の映画版「アローン・イン・ザ・ダーク」が予想どおり悪い意味での恐ろしい作品になっていることは,この際なかったことに。
「アローン・イン・ザ・ダーク」公式サイト
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