レビュー
非常にお買い得感のある,オンライン専用“本格”カジュアルFPS
バトルフィールド1943
※本稿の執筆/撮影にはXbox 360版「バトルフィールド1943」を使用しています
さらに,PC版の特徴ともいえるMOD(ゲームのグラフィックスやルールを変更する拡張パックのようなもの)を多くのファンが作っており,「第一次世界大戦」「スペイン内乱」「海賊戦争」「戦国チャンバラ」「湾岸戦争」「Haloっぽいやつ」など(いずれも筆者の付けた仮称),完成度も高くオリジナリティすら感じさせるMODが多々存在している。
今回紹介する「バトルフィールド1943」(PC版 / PLAYSTATION 3版 / Xbox 360版)は,前作「バトルフィールド:バッドカンパニー」(PLAYSTATION 3版 / Xbox 360版)から1年ぶりとなるシリーズ最新作。1943年の第二次世界大戦を舞台に,米国海兵隊と日本海軍の戦いを描くオンライン専用FPSで,シングルプレイに寄ったバッドカンパニーよりは,シリーズ第1作「バトルフィールド1942」の正当な続編,リメイク作とも言える。
だが,実際にプレイした人間の感想としては,正当な続編というよりも,洗練されたスピンオフ作品という印象を受けたりもした。そう感じた理由は,これから述べる,本作の“割り切り”にあるのかもしれない。
BFのしきたりと思い切った取捨選択
ゲームの概要については「こちら」のプレイレポートを見てもらうとして,このゲームでは過去の作品(バトルフィールドシリーズ)の特徴である“兵科”“強力な乗り物”“広大な戦闘マップ”という部分がしっかりと受け継がれているのだが,それが今までにないぐらいシンプルに仕上がっている。そこに関しては,過去の作品に触れている人は気になるところだろうが,未経験の人は「そういうものなのね」と深く考えずに読み進めてほしい。
狙撃要員であれば,狙撃銃を持っている兵科を。対戦車要員であれば地雷やロケットランチャーを持っている兵科を選ぶ。「Halo 3」ではそういう概念はそもそもないし,「コール オブ デューティ 4 モダン・ウォーフェア」(PLAYSTATION 3版 / Xbox 360版)では戦場に出る前に任意の“武器”を選択する。しかし,このシリーズでは兵科を選ぶのだ。つまり遠隔起爆式爆弾を持ったライフル銃兵という自由なセレクションは存在しない。
これがバトルフィールドシリーズの面白みであり,たとえ敵を一人も倒さなくても,味方のための働きができるという特徴の一つになっている。
この兵科が,バトルフィールド1943ではたったの3種類になっている。比較的シンプルだった家庭用ゲーム機版のバッドカンパニーでも5種類だったことを考えると,限界までシンプルにしたといっていいだろう。本作に登場するのは,車両の破壊から修理までこなせる“歩兵”,中距離からアサルトライフルで活躍できる“ライフル銃兵”,狙撃もできるしリモート爆弾も持っている渋い脇役“偵察兵”の3種類だ。
■兵科/武装■
歩兵/メイン:サブマシンガン サブ:バズーカ、手榴弾、レンチ
ライフル銃兵/メイン:ライフル サブ:ライフルグレネード、手榴弾、銃剣
偵察兵/メイン:スコープ付ライフル サブ:ピストル、遠隔起爆式爆薬、剣
役割がはっきりと分かれているので,FPS初心者であっても兵科選びや立ち回りで悩むことはないだろう。歩兵で遠距離戦闘は無理があるし,ライフル兵では車両に対して涙が出るほど無力,といった具合に得手不得手がはっきりしている。シンプルに割り切ったからこそ,鮮烈なまでに個性を出すことに成功しているのだ。
※本稿で使用しているムービーは,筆者のフレンド達に許可を得て撮影/掲載したものです
マップに関してはガダルカナル島,硫黄島,ウェーク島の3種類に加えて,特定条件を満たすことでアンロックされる“制空権モード”(マップとしてはサンゴ海)がある(関連記事)。とにかくすべてのマップが南太平洋における日米間の激戦地であり,“島”だ。バトルフィールド1942が西部戦線や独ソ戦なども扱っていたことを考えると,これまたかなりシンプル。ダウンロード専用コンテンツなので容量的な問題もあるかもしれないが,割り切ったことでほかのゲームとの差別化には成功している。どこまでも青い空の下,拠点を奪い合う激戦。マップは限定された島で,周囲は見渡す限りの海。説明しなくても,“逃げる”という選択肢が当時,残されていなかったことが感じられるだろう。
猛者よりも初心者のほうが楽しめるかもしれない
では,FPSがそれほど得意ではないけれど,FPS(第二次世界大戦モノ)には目がないという層にはどうだろう。結論としては,入門用に最適である。
このゲームの目的は旗の奪い合い。相手を殺すことでもないし,殺されないように立ち回ることは必ずしも重要ではない。激戦区を避けつつ,ボートで裏を取って占領……という戦い方に徹するのもアリだし,楽しそうな前線に参加しつづけてもいい。1回や2回死んだところでペナルティはほぼないのだから,強くなるまで何度でも死にまくれる。
このゲームでいう“旗の奪い合い”は,バッドカンパニーにおける“コンクエスト”であり,CoD4でいうところの“ドミネーション”である。一定時間旗の周囲にいることで,旗を占領するという仕組みだ。
殺し合いをメインにしていないというゲーム性は,実際に遊んでみるとかなり面白いのだが,最大同時プレイ可能人数(12対12の最大24人)の問題とも相まって,若干盛り上がりに欠けることがある。
というのも,このゲームは一般的なFPSに比べるとマップが広い。その広いマップで5か所の旗を奪い合う。つまり戦力の分散が確実に起こるわけだ。このゲームは,さまざまなオブジェクトを破壊できるなど派手な戦闘が好評だったところもあるので,激戦区が発生しにくいこのルールは,少々もったいないようにも思える。隠密プレイに長けた占領のスペシャリストとして,一発も発砲しないで闘うことも可能だというところはいいのだが,激戦区でドンパチしやすいルールやマップがあっても良かったのではないだろうか。
今作品では旗を取ることが行動のモチベーションになるのだが,マップが広いので敵と出会わないことが普通にあるし,出会っても戦力が分散されていることが多いので,数人倒せば周辺をクリアできる。しかもミニマップに自分が写ってしまう条件が「敵にダメージを与えられた状態であること」なので,積極的に動くことを強要されにくい。敵から逃げ回りこっそりと占領したり殺害したりという,隠密プレイがうまい人間を多く抱える陣営が有利なシステムといえる。
つまり,ゲームの舞台は第二次世界大戦の南国なのに,「戦闘」をしている感覚が薄いのだ。勝利条件の旗集めにしても五つもあるので,一つくらいは「だれも守っていない」状態だったりする。戦闘をするだけがゲームではないのだが,あまりにも戦闘を避けることに対するペナルティがなく,戦うメリットが感じられないのだ。
せめてプライベートマッチでは,旗の数を減らして遊びたい……と思っている人は多いだろう。旗の取り合いルールで旗の数が少なければ,いやが応にも激戦区が生まれる。生まれるからこそ,裏を取る行為にも大きな意味を持たせることができるはずだ。
個人的には追加マップ,もしくは追加ルールがくれば製品寿命は格段に延びるのではないかと感じている。今後のダウンロードコンテンツ展開に期待したいところだ。
無視できない問題
このゲームを語る上で触れないわけにはいかないのが,サーバー問題だ。Xbox 360のゲームであれば,オンライン対戦は100万人以上が同時にプレイしても問題がない(と言われるほど)強力なMicrosoftのサーバーを利用することになる。しかし,Electronic Artsのソフトウェアは例外なくEAのサーバーを利用している。だからこそ利用できるWebサービスもあるのだが,本作発売のタイミングで,このサーバーが不具合を起こした。
配信開始から数時間で,予想以上の人数がバトルフィールド1943をプレイ。サーバーのキャパシティを完全にオーバーしてしまい,ランクマッチはおろか友人を集めてのプライベートマッチすら遊べない状況が続いた。EAとしては嬉しい誤算だったかもしれないが,オンライン対戦専用のソフトでこのような状況を招いてしまったという事実は,本作を楽しみにしていた購入者達にとっては,非常に悲しい出来事だった。
現在,EAおよび開発元のEA DICEによる,サーバーの増強や認証サーバーの調査などが功を奏し,プレイ環境は徐々に安定してきているが……スタートダッシュの失敗が,プレイヤー予備軍に余計な不安を与えていないことを,祈るばかりである。
「オフ専」以外は買ってみる価値あり
ロード時間も気にならず,サーバーさえ元気ならば快適に遊べるし,オンラインでの遊び相手にも困らない。乗り物を駆使して戦局に混乱をもたらしてもいいし,抜刀部隊として茂みに潜んでも良い。何をやってもチームが勝てばいいのだから,できれば楽しく遊んで,楽しんだついでに勝ちを狙ってみるというプレイスタイルもアリだろう。
バトルフィールド1942直系の続編でありながら,相当カジュアル寄りの仕上がりになっているバトルフィールド1943。ルールやマップ,同時プレイ可能人数の上限などに物足りなさを感じるし,サーバーに対する不安も若干残ってはいるのだが,これは遊んでおいて損はないタイトルだ。
動画撮影機材:トムソン・カノープス HDRECS
動画編集用ソフト:トムソン・カノープス Edius Pro 5
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