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「FFXIV」ではプレイヤーのために運営継続と新生の双方を達成。目指すサービスに向けて吉田プロデューサーが語る今後の展開
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印刷2011/10/17 13:32

インタビュー

「FFXIV」ではプレイヤーのために運営継続と新生の双方を達成。目指すサービスに向けて吉田プロデューサーが語る今後の展開

 

シームレスマップを撤廃し,冒険してワクワクするようなFFらしいゾーンマップに再構築


4Gamer:
 それでは,新生FFXIVがどういうものなのか,具体的に教えてください。
 まずマップですが,現行バージョンではどこを見ても似たような景色になってしまうという問題がありました。

画像集#004のサムネイル/「FFXIV」ではプレイヤーのために運営継続と新生の双方を達成。目指すサービスに向けて吉田プロデューサーが語る今後の展開
吉田氏:
 現行のマップがどうしてああなってしまったのかというと,いろいろな意味を含めて,シームレスだったからこそというところが大きいです。それくらいストリーミングやシームレスというのは,ゲームを作る上で難しいテーマなんです。
 シームレスマップは,グラフィックス的に世界が繋がっている感覚を抱いていただくためのものです。その一方で,マップはゾーンごとにゾーンサーバーで管理しています。そのため,グラフィックス的にはシームレスでも,ゾーンとゾーンの間には見えない境界線が存在します。古くは「ウルティマオンライン」でも,その境界線上にモンスターが並んでしまうという現象がありましたが,それがFFXIVの現行バージョンでも,同じではありませんが,似たような問題が発生しています。
 とくに,境界線を挟んだバトルでは問題が発生しやすくなっており,それを解消するためには,ゾーンサーバー間通信が徹底できている必要があるのですが,これは本当に技術的に難しい。また,グラフィックス的には,順次メモリの中を読み変えて切り替えるというストリーミング技術が必要です。結果,チップのインスタンスという概念が生じ,プレイしているとさっき見た景色がまた出てくるというケースが頻発してしまったんです。

4Gamer:
 シームレスマップというと夢があるというか,無条件で良いものと思ってしまいがちですが,まだまだ課題が多いわけですか。

吉田氏:
 個人的にはそう思います。ゲームを企画/開発する上で非常にハマりやすい部分かなと。
 またFFXIではある程度チップは使っていますが,ストリーミングとゾーンチェンジでの一括メモリ入れ替えを組み合わせて,上手にマップを再現できているのですが,FFXIVではゾーンチェンジする機会が少なく,結局,同一チップによるメモリコストを削減せざるを得なかったのです。
 加えて,ローディング画面を挟まないということは,リアルな距離感まで作らなければならないという意味でもあります。結果として出来上がったのは,繋がっている感や広大さは感じられるものの,コピーしたような景色ばかりが出てくるマップになってしまいました。ですので新生FFXIVでは,シームレスマップを撤廃します。

4Gamer:
 これはまた大胆な変更ですね。

吉田氏:
 ええ。ローディングがあっても,大きくダイナミックなマップが形成できた方が大切だと考えました。
 例えば山を登る場合に,シームレスマップだと本当にふもとから頂上まで移動しなければならなくなります。でもプレイヤーはゲームで山登りがしたいわけじゃないですよね。実際には,山の頂上にあるダンジョンや大鷲の巣のようなコンテンツに挑戦するための過程でしかないわけです。
 また,きちんと山道を再現しようと考えると,メモリの都合上,通路に近い構造となります。ただの通路では退屈ですからモンスターを配置するわけですが,そうすると今度は通路が狭くなってすり抜けができなくなり,いちいちバトルする手間が発生します。モンスターがいないならいないで,やっぱり退屈になってしまいますし。

4Gamer:
 なるほど。ゲームとして収まりのいい擬似的な山道が作れないわけですね。

吉田氏:
 そうなんです。これがゾーンなら,山道に入ったらローディングを挟んですぐに山の中腹に出られるようなダイナミックな演出が可能になるんです。
 シームレスマップはオープンワールドのゲームで没入感を演出できますが,MMORPGでは必ずしも面白くなるわけではありません。オープンワールドのゲームは,その範囲内が実は限られるからこそ,遊びを詰め込めます。MMORPGの場合,あまりにもフィールドが広大すぎて,遊びの密度を徹底できない。そこで思い切って止めてしまおうという結論を出しました。圧倒的に製作スピードも速いです。
 その代わり,一つのゾーンにつき,行ってみたくなるようなランドマークを3つと,最低3つの遊びを入れて,完全に設計のやり直しを図りました。レベルデザインチームとマップ製作担当スタッフが一緒に,白地図に周辺レイアウトを決めて,僕が確認して,それぞれの方角に対して目に見える巨大なオブジェクトを設置しています。目指したのはプレイヤーがワクワクできる,ファンタジー要素の強いマップです。今はもう粗いポリゴンでモックアップを作り,実際にゲーム内で歩いてみて広さの確認をしたり,モンスターキャンプの位置を想定してみたりしています。

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4Gamer:
 拝見したイメージアートの中には,これまでのマップでは見たことのないものもありましたね。例えばグリダニアだと,樹海のようなイメージだったのに,取り残されたような建物があったりして,もう少し開けた森のように見えます。

吉田氏:
 はい,森の中に遺跡を配置したりしています。新しいグリダニアには,森を森らしく作るというコンセプトがあります。メリハリをつけてバランスよく配置して,全地域を俯瞰したときにただの通路にならないように,それぞれのゾーンを作り込んでいるという状況です。樹海を作るなら,フィールド奥の高レベル帯にするのがいいだろう,というようにですね。

4Gamer:
 ちなみに新しいマップでは,現行バージョンの要素はどのくらい継承されるのでしょうか。

吉田氏:
 アウトラインをトレースしている部分もあれば,ストーリー上の解釈によって地形が変わった部分もあります。

4Gamer:
 現行プレイヤーには今のマップに愛着を持っていて,新マップでガラッと変わってしまうと寂しいと感じる人もいると思うんですよ。そういった愛着はどこまで持ち込めそうでしょうか。

吉田氏:
 まったく別の地域になってしまうわけではありませんから,「ああ,この要素は前のマップにもあったよね」というところは残したつもりです。むしろ,「本当はこうだったんだ」と思っていただけるかもしれません。

4Gamer:
 新しいマップやグラフィックスエンジンで,どんな景色が広がるのかとても気になります。

吉田氏:
 たぶん「あの場所がなぜこんなことに!」というところも出てきますよ。ただ,そういった変更は,今後1年間のシナリオを追いかけることで理由が分かるようにしています。例えば新マップには,リムサ・ロミンサの海上にコロセウムがあるのですが,それが存在する理由とか。山岳地帯の一部は雪山になり,ベヒーモスが棲みついていたり……というのもそうですね。一つ一つにFFXIVとしてのエピソードがあり,冒険してみての驚きが存在するように作っています。

画像集#034のサムネイル/「FFXIV」ではプレイヤーのために運営継続と新生の双方を達成。目指すサービスに向けて吉田プロデューサーが語る今後の展開


UIには1ボタンで装備を変換可能にする「マネキン」機能を追加。カスタムUIの制作も可能に


4Gamer:
 次に,ゲームプレイの基盤となるUIについて教えてください。

画像集#009のサムネイル/「FFXIV」ではプレイヤーのために運営継続と新生の双方を達成。目指すサービスに向けて吉田プロデューサーが語る今後の展開
吉田氏:
 プレイヤーの皆さんに向けて一度お話しているのですが,まず「マネキン」と呼んでいるアーマリー特化のシステムを作っています。これは,マネキンに自分の装備を着せておいて,クラスを変えたら1ボタンで全身その装備にスイッチできるという仕組みで,装備アイテムをインベントリと切り離してしまおうという狙いもあります。
 またクエストなど試練をクリアすることで,マネキンの所有数を増やせるような遊びも考えています。


4Gamer:
 細かいところですが,装備変更の速度はどのくらいでしょう? 現行バージョンでマクロを組むと,1か所ずつ変更で非常に時間が掛かりますけれども。

吉田氏:
 全身一括で切り替わるので,さほどストレスではないという感じでしょうか。これは現行バージョンにもすぐ導入したいくらいのシステムなのですが,現行のUIがスクリプトでがんじがらめになっていて,根本から作り変えないことにはどうしようもない部分です。申し訳ありません。

4Gamer:
 Add-on,つまりカスタムUIの対応についても言及がありますよね。これは以前のインタビューでお聞きしたように,プレイヤーが作成するものも使用できるものですか。

吉田氏:
 はい。そういったAdd-onに関しては完全対応する予定です。そのために,UIのスクリプトエンジンも完全に入れ替えます。
 我々としては,ここまでは(モンスターなどの)ヘイトの状態をデフォルトUIで見せるけれどもこれ以上は見せない……というようなポリシーの線引きをします。とはいえ,パケットとしてはデータを流しておくので,それを利用してAdd-onを作りたい人はどうぞ,というスタンスですね。

4Gamer:
 言語はXMLになるんですか?

吉田氏:
 もう少し簡単にいろいろできるよう,Flashを考えています。
 Add-on導入は最終的に自己責任での導入,という形となりますが,やはりゲームを遊んでいるとヒーラーならではの,タンクならではのUIを使いたくなりますよね。世界中にいるプロフェッショナルがゲームを気に入ってくれれば,プレイヤーのために特化したUIを作ってくださるわけですから,非常にありがたい概念ですよね。
 今回,UIを入れ替えることにしたのも,Add-onの意義とそれによって形成されるコミュニティを重要視したからです。

4Gamer:
 では,ポピュラーになったAdd-onを公式認定する予定はありますか?

吉田氏:
 うーん,それは権利上の問題で,少し難しいかもしれません。ただデフォルトのUIに,そういった人気UIの機能を盛り込んでいく可能性はあります。

4Gamer:
 昔から,ポピュラーなAdd-onの機能をデフォルトUIに組み込むケースはありましたしね。人気があるということは,それだけプレイヤーが使いたいという意味でもありますから。

吉田氏:
 ええ。海外のMMORPGでは当たり前の文化なんですよね。ただ日本ではPCゲームがあまり一般的でなかった事情もあり,まだまだご存じない方も多いです。そこで用途や意図などをきちんと説明し,理解を得た上で新生FFXIVをグローバルでの王道に押し上げていきたいという意図もあります。

開発中のコンセプトスクリーンショット。新生FFXIVのクライアントでは,カスタムUIを導入することでプレイヤーが使いやすいデザインに変更できるように
画像集#018のサムネイル/「FFXIV」ではプレイヤーのために運営継続と新生の双方を達成。目指すサービスに向けて吉田プロデューサーが語る今後の展開


「新生XIV」にはPvPコンテンツも登場。PvEとは切り離された独立コンテンツに


4Gamer:
 それでは新生FFXIVの新コンテンツ「PvPフロントライン」について教えてください。

画像集#005のサムネイル/「FFXIV」ではプレイヤーのために運営継続と新生の双方を達成。目指すサービスに向けて吉田プロデューサーが語る今後の展開
吉田氏:
 大規模PvPコンテンツは,サーバーレスポンスや描画の関係から現行バージョンでは実現が難しいものの一つです。とはいえ,パッチ1.19から新しいバトルに導入したフレームワークには,PvPに必要な計算要素やヒットチェックを組み込んでいるんです。また新生FFXIVのクライアントに合わせて,すべてのキャラクターデータの持ち方を同一のデータ構造にしたことで,簡単にPvEをPvPに置き換えられる設計となっています。

4Gamer:
 なるほど。しかしPvPとなると,遠くの敵プレイヤーを素早く視認できるかどうかも大きなポイントですから,サーバーと描画に課題の残る現行バージョンでは,やはり実現が難しいですね。

吉田氏:
 ええ。逆に,そうしたクライアントの制限が緩和される新生FFXIVでは,PvPを好む人ほど,よりハイエンドPCを用意する傾向が強まるのではないでしょうか。

4Gamer:
 たしかに,いかにデータを早く読み込み,ラグがなく表示できるかは,対人戦でのキモになりますね。逆にラグが多少あるくらいのPCで,索敵していた人もいましたが(笑)。

吉田氏:
 敵か味方のデータが読み込まれたときの負荷を索敵に利用してましたよね(笑)。ちなみにPvPは,大規模なPvPフロントラインと,コロセウム型の狭いマップで少人数で戦うものとの2種類を用意しています。

4Gamer:
 コロセウムは,いわゆるスポーツライクな個人戦ですよね。もう一方の大規模なPvPフロントラインは,おそらくグランドカンパニーによる3すくみの大規模戦争,RvRなどで表現されるものになると思うのですが,このマップは通常マップとは切り離されているんですか?

吉田氏:
 グランドカンパニーが絡むかどうか,RvRかどうかは濁しておきますが……。ええ,MAPは通常フィールドと完全に切り離されます。というのはデータ上,PvPを好むプレイヤーは,アジア地域を除いた世界全体と日本を合算しても全プレイヤーのおおよそ15%くらいの割合でしかないので。

4Gamer:
 まあ,対人戦は好きな人はとても好きだけど,という類のコンテンツですよね。

吉田氏:
 そうですね。PvP独自のラダーや成長軸,そして報酬は用意しますが,これらの要素は完全にPvEとは切り分けて,PvPをやりたくない人には必要のないものに設計します。

4Gamer:
 逆に,PvPメインでレベルを上げていくこともできるのですか?

吉田氏:
 できます。ただしある程度のレベルがないと,PvPコンテンツには参加できないので,最低限のエオルゼアのルールを知ってからご参加ください,という感じです。それ以降はPvPのみでも,レベルは上がるようにしたいと思っています。
 その一方では,自分ではPvPをしないプレイヤーであっても同じ勢力のPvPプレイヤーを支援できる要素も入れたいと考えています。例えば,勝利側の勢力のみがアクセスできるコンテンツを用意するとかですね。

4Gamer:
 PvPは好きじゃないけど「うちの勢力のみんな,頑張れ!」みたいな(笑)。
 ところで個人的には,現行バージョンでのキャラクターの移動も含めたスピード感は,あまりPvPに向かないと感じています。新生FFXIVでは,リファインがなされるのでしょうか?

吉田氏:
 これからアクション部分の改修を加え,パッチ1.21でジョブシステムを搭載します。それ以降「Ever Quest」でいうところのSoW──Spirit of Wolfの概念も必要だろうと。マウントに乗らなくても,キャラクターのスキルやアビリティよってスピードを可変したり,パーティ全体の速度を上げたりということができるようにしていきたいな,と。
 僕自身,「Dark Age of Camelot」のプレイヤーでしたから,そうしたPvP周りはきちんと実現したいところです。

4Gamer:
 なるほど,先日の「FFXIVプロデューサーレター LIVE」で話していた吟遊詩人がその役割になるんでしょうかね……。そういえば,PvPでチョコボに乗ることはできるんですか?

吉田氏:
 チョコボの場合は,騎兵戦のような専用コンテンツを予定しています。そのために,いずれチョコボを成長させられるようになりますし,ゆくゆくはフェローシップとして一緒に戦うこともできるよう設計しています。ファイナルファンタジーにおける“チョコボ”は,ほかのマウントペットとは違う特別な存在ですからね。

画像集#020のサムネイル/「FFXIV」ではプレイヤーのために運営継続と新生の双方を達成。目指すサービスに向けて吉田プロデューサーが語る今後の展開
 
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