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時計の秒針1秒ぶんのズレも我慢がならない――超高精度なモーションコントローラの誕生秘話と可能性。「PlayStation Move」開発者インタビュー
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印刷2010/11/13 10:00

インタビュー

時計の秒針1秒ぶんのズレも我慢がならない――超高精度なモーションコントローラの誕生秘話と可能性。「PlayStation Move」開発者インタビュー

現場の多くの意見から完成したデザイン


画像集#010のサムネイル/時計の秒針1秒ぶんのズレも我慢がならない――超高精度なモーションコントローラの誕生秘話と可能性。「PlayStation Move」開発者インタビュー
4Gamer:
 このPS Move本体のデザインについても,かなり苦労があったそうですね。

宮崎氏:
 苦労しましたね。カジュアルな部分とコアな部分の両方を狙っていくうえで,とくにボタンの数をどうするか,本当に悩みました。前者を狙うなら当然ボタンは少ないほうがいいし,後者なら多いほうがいいと。さらに子供から大人までが使える大きさや長さ,重量や重心の位置のバランスを考えて,デザイナーと共に協議した結果,最終的にあの形に収まりました。

4Gamer:
 そのボタンの配置にもこだわりがあるとか。

宮崎氏:
 中央にあるMoveボタンの存在は絶対で,それを押すにあたって,従来のPlayStationコントローラのダイヤモンド型配置では,下のボタンを誤って押してしまうことになったり,上のボタンは遠くて押しにくくなってしまったりと,課題がありました。その一方で,あのダイヤモンド型配置はPlayStationコントローラの象徴でもありますから,それをどのようにまとめるかについて,すごく悩みましたし議論もありました。


画像集#011のサムネイル/時計の秒針1秒ぶんのズレも我慢がならない――超高精度なモーションコントローラの誕生秘話と可能性。「PlayStation Move」開発者インタビュー
磯部氏:
 試作品はかなりたくさん作りましたね。それをすべて,ゲーム開発の現場で実際に触ってもらって,フィードバックを受けてまた作り直して……という作業の繰り返しでしたね。当然ながらそれぞれの意見は食い違いますので,その落としどころを見極めた結果,現在の形に至ったというわけです。

4Gamer:
 落しどころの見極めは,想像するだけでも大変そうですね……。

磯部氏:
 本当に大変でした。このメンバーと宮崎チームのハードウェア開発陣,そしてデザイナー達が集まって,毎週「メカ定例会議」を行っていました。そこでフィードバックを一つ一つ読んで,これはいけそう,これはダメ,と意見をまとめていたんです。

4Gamer:
 ゲームによっては,ボタンを同時押しする必要のあるものもありますが,やはりそのあたりが悩ましいところですか。

宮崎氏:
 ボタン配置をダイヤモンド型からスクエア型にすることになったときに,DUALSHOCK 3で押しやすかった□+×や△+○の組み合わせに関しては,今回のPS Moveでも指をまっすぐにすることで同時押しができるようにしました。逆に○+×のような組み合わせでは指が届かないのですが,そこは諦めざるをえなかったところですね。

吉田氏:
 あとボタンの大きさもそうですね。「MAG」や「バイオハザード5オルタナティブ エディション」のような深いゲームでは,ボタンをすべて使いますから,△○×□の四つのボタンも,大きいほうが使いやすいんです。でも大きくしてしまうと,デバイスの中央に五つのボタンがひしめいて,ものすごく複雑なものに見えるんですよ。そこでまずはMoveボタンというメインのボタンを用意して,カジュアルなプレイヤーにはそれを押してもらえばいいし,コアなプレイヤーでもちゃんとすべてのボタンが使えるという,現在のデザインに落ち着いたんです。そのへんは先ほど話にあがったたくさんの試作品を作りながら,実際にゲームを遊んで試していきました。

4Gamer:
 どのような試作品があったのかが気になります。

磯部氏:
 本当にたくさんありますよ(笑)。今のデザインとは逆にすごく角張ったものとか,持つところがゴロッと塊になっているものとか,リングの真ん中部分を持つものとか……。

画像集#012のサムネイル/時計の秒針1秒ぶんのズレも我慢がならない――超高精度なモーションコントローラの誕生秘話と可能性。「PlayStation Move」開発者インタビュー
宮崎氏:
 剣のような形や,魔法の杖の形のものまでありましたよ。スフィアが先端に浮いているイメージで,その間に透明の棒を入れて(笑)。あとスフィアにカバーを着けようという案もありました。ウルトラマンの変身スティックみたいな形で。カバーは認識に支障があるので,すぐに候補から外れましたけれど。

4Gamer:
 そのうちいくつかは,実際に製品化してみるのも面白いような気がします(笑)。しかし,話をお聞きすると,現状のデザインにもあるスフィアの存在は必須だったんですね。

吉田氏:
 そうですね。最初にお話したとおり,スフィアがあることを前提にデザインしていました。

宮崎氏:
 このスフィアの大きさも試行錯誤しました。現状では45φなんですが,認識のことを考えると大きいほうがいいんです。ところが大きくしてしまうと,今度は均一に光らなくなってしまうんですね。そのどちらの要求も満たすように検討した結果が,今の45φというサイズなんです。

4Gamer:
 意外と知らない人も多いと思うんですが,このスフィア,柔らかいんですよね。

画像集#013のサムネイル/時計の秒針1秒ぶんのズレも我慢がならない――超高精度なモーションコントローラの誕生秘話と可能性。「PlayStation Move」開発者インタビュー
宮崎氏:
 スフィアはシリコン製です。柔らかくしているのは安全性という部分だけでなく,押したり潰したりしたときに,常にこの球の状態に戻す必要があるからなんです。あとこの球は,真っ白ではないんですよ。かといってくすんでもいない色で,光っていないときにチープに見えないよう注意しました。
 あと開発中の面白い話としては,会社の喫煙所にこのスフィアを数か月放置して,ヤニがついた状態でも,ふき取れば綺麗になるような素材を選びました。ふき取った状態で使えば認識に影響がないよう,そのあたりもちゃんと確かめました。

4Gamer:
 それと,本体底面の端子も個人的には気になるのですが。

磯部氏:
 本体底面のUSB端子がある場所にもうひとつ,電気的な拡張端子をつけているんです。これを使うと,多くのボタンを用意した別の入力装置などを接続したり,△○×□のボタンをほかの入力装置に変換したりできるので,将来的にはさらに面白いこともできるかもしれません。そのへんは今後を楽しみにしていてください。

吉田氏:
 ユーザーの皆さんからのアイデアなども募集中です(笑)。

4Gamer:
 わかりました,強調しておきます(笑)。


新しい手応えのある作品が次々と現れるPS Move専用タイトル


画像集#016のサムネイル/時計の秒針1秒ぶんのズレも我慢がならない――超高精度なモーションコントローラの誕生秘話と可能性。「PlayStation Move」開発者インタビュー
4Gamer:
 PS Move対応の各種ソフトウェアについては,具体的にはどのタイミングから作り始めていたのでしょうか。

吉田氏:
 最初にもお話したように,一部のチームは,PS Moveの検証の頃から開発に参加していました。具体的には「スポーツチャンピオン」の開発チームですね。2007年のまだPS Moveの形がない段階の,さまざまな試作ハードを試している頃からスタートしています。他のチームは,PS Moveの形が見えてくるにつれ,順に開発が始まっていきました。実際に今年PS Moveと同時もしくは直後に発売される専用タイトルに関しては,2008年頃からスタートしたものが多いです。
 結果としてですが,ゲームが同時に動いていたから,PS Moveがいいハードになったということも言えるんですよ。ほとんどのジャンルをカバーしている開発チームが,ゲームを作りながらPS Moveの途中のバージョンを評価していましたから,“このジャンルには使えない”という問題を抱えることがなかったんですよね。

4Gamer:
 PS Moveをソフト上でどう使うかというのは,各開発チームにお任せなんでしょうか?

吉田氏:
 PS Moveを使ったあらゆる企画が開発から出る中で,それを絞り込む際にこれという形を決めて作るのではなく,3か月から半年程度かけて試作品を作った時点で,思ったような効果が得られるかを確認するんです。その時点であまり効果の得られなかったものについては,開発をやめてしまったものもありました。PS Moveは新しい操作系なので,実際にやってみないと面白さがわからないのは作り手も同じなんですよね。

開発チームが確かな手応えを感じているという「無限回廊 光と影の箱」は,2010年12月23日に発売される予定だ
画像集#015のサムネイル/時計の秒針1秒ぶんのズレも我慢がならない――超高精度なモーションコントローラの誕生秘話と可能性。「PlayStation Move」開発者インタビュー

4Gamer:
 「無限回廊 光と影の箱」なんかは,PS Moveで操作しているのを見て「おっ!」と思わされました。

画像集#017のサムネイル/時計の秒針1秒ぶんのズレも我慢がならない――超高精度なモーションコントローラの誕生秘話と可能性。「PlayStation Move」開発者インタビュー
吉田氏:
 あれはとくにシリーズ作品なので,PS Move専用にすることで一体どんな内容になるのか想像がつかなかったんです。営業的にはPS Move専用ではなく,ワイヤレスコントローラでもプレイできるようにしてほしいという声もありましたが,チームのメンバーはPS Move専用でいけると考えて設計しているので,実際に作らせてみたんです。試作品が完成してみると「おっ,これは違うな」という手応えが感じられたんですが,PS Moveの場合はこれまでにないコントローラですので,そんな「おっ」という手応えが感じされるタイトルが出てくる率が高いですね。
 E3で「Sorcery」という,サードパーソンのアクションアドベンチャーのデモをお見せしたんです。そのタイトルでは,PS Moveをポーションのビンに見立てて,手に持って振ると画面の薬の色に合わせてスフィアの色が変わり,飲むポーズをとると画面のキャラクターがそれを飲んでネズミに変身するんですよ。そういったすごく楽しそうなアイディアが出てくるのがPS Moveであり,それを求めて日々いろいろな試作を作り続けている最中ですね。

4Gamer:
 そういったPS Move専用のタイトルの一角として,本格的な大作があるとすれば,どのようなものが考えられますか?

吉田氏:
 なかなか鋭い質問ですね(笑)。お答えしにくいところではありますが,PS Move専用の大作があるとすれば,非常に面白いものができるのではないかと考えています。先ほどの「Sorcery」なんかはまさにそれですよね。まずはその前に「バイオハザード5オルタナティブ エディション」等の“対応”大作タイトルで遊んでいただいて,次を想像していただければと思います。

画像集#014のサムネイル/時計の秒針1秒ぶんのズレも我慢がならない――超高精度なモーションコントローラの誕生秘話と可能性。「PlayStation Move」開発者インタビュー

4Gamer:
 楽しみにしています。では最後に,4Gamer読者に対して,みなさんからひと言ずついただければと思います。

磯部氏:
 いよいよ発売となりまして,今年の年末はぜひご家族で楽しんでいただきたいですね。これまでご自分の部屋で遊んでいた方も,これを機会にリビングにPS3をお持ちいただいて,みなさんで遊んでみてください。

吉田氏:
 発売後ということで,ユーザーのみなさんからの反応も多くいただいております。それを拝見して,我々としてはこれまでとはまた違う新しい体験を作り出すことができたと確信していますので,まだ未体験の方は,何も考えずにとりあえずご自身で試していただいて,評価していただければと思っています。

宮崎氏:
 今までのコントローラは,プレイヤーが指示を与えるものでしたが,今回我々がPS Moveで目指したのは,ユーザーの皆さんがあたかも自分の手のように動かすことを目指した,本当に直感的かつリアルな体験ができるコントローラです。ユーザーの皆さんも本気で楽しめるものになっていますので,たくさんたくさん遊んでほしいですね。

4Gamer:
 ありがとうございました。

「PlayStation Move」公式サイト



  • 関連タイトル:

    PlayStation Move モーションコントローラー

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