インタビュー
なぜ新スタジオなのか。「TYPE-MOON」の新スタジオ「studio BB」設立の経緯と開発タイトルの方向性を新納一哉氏にインタビュー
そのstudio BBのスタジオディレクターとして,「Fate/EXTRA」「世界樹の迷宮」「ドラゴンクエストビルダーズ」などシリーズ作品の開発を手掛けたゲームクリエイター新納一哉氏が就任するというニュースは,瞬く間にTYPE-MOONファンの間で広まり,大きな話題となった。
「TYPE-MOON studio BB」公式サイト
月姫リメイクはどうなるのか,Fate/EXTRAの続編は出るのか。はたまた,完全新規のタイトルが生み出されるのか。そもそも,なぜ新スタジオなのか。話を渦中の人というべき新納一哉氏に聞いた。
タイトルについては現在開発中とのことで,具体的な内容は明かさなかったが,studio BBが目指す方向性や新納氏の開発に対する哲学など,興味深い話を聞けたので,それらを中心にお届けしよう。
なぜ今,新スタジオなのか。TYPE-MOONとstudio BBの関係
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。TYPE-MOONの新スタジオが誕生するというニュースが8月末に流れ,多くのファンが驚きと同時に今後の展開への期待を持ったことと思います。そこで,今回は新スタジオにまつわるアレコレをお聞きできないかと。
新納一哉氏(以下,新納氏):
studio BB設立の発表にあたっては,思ったよりも反響が大きくて驚きました。生まれて初めて個人名でTwitterのトレンド入りしたり,あちこちで知り合いに声をかけられたりで,TYPE-MOONのファンの多さを改めて実感しました。ファンのみなさんの期待にこたえられるゲームを作らなくてはと,かなりのプレッシャーを感じています。
4Gamer:
新納さんは「Fate/EXTRA」のプロデューサーをしていますので,TYPE-MOONに入るのは納得のいく流れなのですが,そもそもTYPE-MOONとどんなつながりがあったのか気になるところです。
新納氏:
アトラス在籍時に「世界樹の迷宮」を作り始めたころ……13年前くらいでしょうか。開発に携わりながらも次に制作するゲームも模索していて,個人的に「月姫」のファンだったこともあり,TYPE-MOONに月姫の関連作品を作らせてくれないかとお願いに行ったんです。これがTYPE-MOONとの最初の接点でした。
4Gamer:
新納さんからTYPE-MOONへアプローチしたんですね。
新納氏:
はい。どうやってコンタクトを取っていいのかも分からず,公式サイトのお問い合わせページからアポを取ったことを今でも覚えています(笑)。ただ,TYPE-MOONがちょうど「Fate」関連作品の開発時期だったこともあり,その時は一緒に仕事をすることは叶いませんでした。
その後,私はイメージエポックに在籍することになるのですが,その時もまた,なにか1本,TYPE-MOONの世界観のRPGを作りたいなと思っていて。当時は月姫よりもFateの方がリアルタイム感があったので,Fate関連のRPGを提案することにしたんです。
4Gamer:
それが「Fate/EXTRA」シリーズになるわけですね。
新納氏:
そうです。奈須さんが面白いこと好きなのは,前回に会ったときに分かったので,できるだけインパクトの強いタイトルを提案しようと企画を考えました。「月で発見された太陽系最古の物体―――3cm四方の立方体“タイプムーン”は,すべての願いを叶える万能の願望機だった」という……かなりSFを意識した企画書の出だしでした。タイプムーンは,その後ムーンセルという名前に変更されてしまいましたが……照れくさいから,だそうです!
ちなみに,企画のかなり初期の段階から「Fate/EXTRA CCC」の計画も提案していました。桜が大好きだったので,たくさんの桜にダンジョンで追い回されるゲームにしたい,というネタだけを考えていて(笑)。個人的には実現度50%くらいで考えていたのですが,実現できて嬉しかったです。
4Gamer:
桜と言えばEXTRA CCCでは“BB”がキーパーソンになります。スタジオ名はやはりここからに来たものでしょうか?
新納氏:
あのBBということで理解していただいていいかなと思います。スタジオ名を決めようと思ったときに,TYPE-MOONの名前の下に添える程度の,何気ない名前にしようと思っていたんですよ。スタジオAとか,スタジオBとか。それで「Bだったら,BBにしようかな」という感じで決めました。BBは自分としてもすごく馴染みのある言葉ですし,新しい挑戦をするときにBBという言葉に見守ってもらえるような気がしたんです。
4Gamer:
studio BB設立の経緯についてはどうでしょうか。
新納氏:
studio BBの前はスクウェア・エニックスの第三開発事業本部に在籍していたのですが,そこのボスである吉田直樹さん(「ファイナルファンタジーXIV」のプロデューサー兼ディレクター吉田直樹氏)に「TYPE-MOONと一緒にゲームを作りたい」という提案をしていたのが始まりです。
4Gamer:
あの吉田さんですか! ちょっと面白い組み合わせですね。
新納氏:
そのころ,自分がディレクターとして携わった「ドラゴンクエストビルダーズ2」の開発がそろそろ終わりで,その次の作品としてTYPE-MOONと共同開発するような企画を提案していました。吉田さんも興味をもってくださっていたのですが,会社としてのタイミングや編成の問題で,時間をかけて立ち上げることはできるが,すぐには始められない,という結論になったんです。それで,どうしようかと真剣に悩みました……。
というのも,私自身もう40歳を超えまして,引退するまでにあと何本作れるのか……あまり現役の時間は長くないので,本当に作りたいゲームを一直線に作りたいと考えていたんです。ひとまずは違う企画を立てて,またいつの日か,というのを待てなかった。
4Gamer:
なるほど。そこで,新納さんが本当に作りたかったゲームの総本山,TYPE-MOONの門を叩くことになるわけですか。
新納氏:
はい。いろいろなプランを考えてTYPE-MOONと話をしていたのですが,武内さん(TYPE-MOON代表。武内 崇氏)が「それなら,うちでやるのが早いのでは」と言ってくださって。なので,前々から計画していたわけではなく,急遽,新スタジオを立ち上げたという経緯です。オフィスを探すところからのスタートだったので,本当に初めての経験だらけで大変でした。
4Gamer:
TYPE-MOON studio BBとして人材募集も行っていますよね(※2019年12月16日に募集終了)。スタジオを見ると本当に1から始めているんだと実感します。
あと,「なぜ新スタジオなのか」が気になります。TYPE-MOONはそもそも開発を行っていますから,その中で制作することはできたはずですし。
新納氏:
TYPE-MOONは同人サークルからスタートして20年近くほとんどメンバーの変動もなくやってきている会社で,長い時間かけて作った文化があります。そんな中に,コンシューマゲームの開発者という,文法の違う会社員がすんなりと溶け込むのは難しいと思う,というのが武内さんの意見でした。また,「TYPE-MOONとして力を貸すし,一緒に仕事はするけど,開発自体は(新スタジオを立ち上げて)独自にやったほうがいいのでは」とアドバイスされたんです。それでTYPE-MOON studio BBとしてやっていくことにしました。
4Gamer:
となると,TYPE-MOONとstudio BBの開発は別々に行っていくことになるのでしょうか。
新納氏:
そうですね。TYPE-MOON本体は,今やっているシリーズを自分たちのペースで開発していますので,それとは別軸でTYPE-MOON関連タイトルを,我々studio BBが開発していく流れです。
4Gamer:
SNSなどでは,TYPE-MOONの新スタジオ発足というニュースで,「“あの”タイトルの開発が本格化するのか!?」みたいな話題で盛り上がってましたが,そういうことではないんですね。
新納氏:
ないですね(笑)。ただ,5,6年後ぐらいを目標にTYPE-MOON本体とstudio BBが総力戦で作る大型タイトルというのを思い描いていて,そこに向けて頑張りましょうと,武内さん,奈須さんとも話をしています。
4Gamer:
どんな作品なのか気になります。ところで,studio BBで扱うタイトルはどんな方向性のものになるのでしょうか。
新納氏:
まだ公表できる段階ではないので,あまり詳しくはお話できないのですが,現在3本の企画を考えていて,そのうち1本はすでに開発もスタートしています。それはほかの開発会社さんと共同で制作する,中規模のタイトルになります。これとは別に,studio BB内で完結できる小規模のタイトル1本を2020年の頭から動かす予定です。
どのタイトルも,先程お話した大型タイトルに向けてのステップとして,TYPE-MOONが持つ世界観の表現の追求や,studio BBの実力をつけるためのものとして捉えています。思い描く大型タイトルが,満足いく形で終わったら,引退してもいいかなあという気持ちです(笑)。
4Gamer:
いやいや……ただ確かに,自身の引退までにあと何本作れるんだろうというのが見えてくると,いろいろと思うところはありますよね。
新納氏:
武内さん,奈須さんの2人も同じような話をしていました。作れる本数は限られているので,自分たちが本当にやりたいことをきちんと見極めて,力を割いていこう。1本1本を大事にしていこう,と。
4Gamer:
いくつかのタイトルの開発が決まっているとのことですが,TYPE-MOON内のスタジオということで,奈須きのこさんの描く世界観にもとづいたタイトルが作られると考えてよろしいでしょうか。
新納氏:
もちろんです。私自身,奈須さんの描くTYPE-MOON作品のファンですので,そこは大事なことだと考えています。ただ,既存タイトルの単純な続きだとかスピンオフだとかとは,ちょっと違うかもしれません。ほぼ新作のようなゲームもありますので,そこは楽しみにしていただけたらと思います。
4Gamer:
「世界樹の迷宮」「Fate/EXTRA」「ドラゴンクエストビルダーズ」と,新納さんの携わったタイトルを見ると,おそらく新スタジオでも良質なRPGを作ってくれるはず,と期待している人も多いと思います。
新納氏:
ありがとうございます。現段階ではまだ言えることは少なくて,すいません。2020年の夏までには,何らかの具体的な発表を行えると思います。
新納氏のゲーム開発のルーツと開発のポリシーを探る
4Gamer:
新納さんといえば“RPG”というイメージを持っている人は,結構いると思うのですが,個人的に新納さんのルーツ的なものもお聞きしてみたいです。プレイヤーとしても結構ゲームを遊んでいるんですか?
新納氏:
基本的には,クリアはせずともどんどん触っていくスタイルです。年30本くらいは遊んでいると思います。最近だと「ボーダーランズ3」を楽しくプレイしてますね。ノリの良いクエストがたくさんあって楽しいです。大阪弁のキャラとか,俳句読むキャラとかがいて,翻訳したゲームとはとても思えないですよ。
4Gamer:
ボーダーランズシリーズは,セリフ回しがセンスに溢れてますし,声優陣の熱演も印象的ですよね。開発者目線で,面白いゲームかそうでないゲームなのかはどう判断しているんでしょう。
新納氏:
自分の場合は,すごく良いか,全然ダメなのかの2択で分けるようにしています。“まあまあ良い”というのをなるべく言わないようにしているんです。どんなに頑張っても,最終的には“まあまあ良い”に落ち着いてしまうことも多いので,せめて最初の判断は極端な2択にするようにしています。
4Gamer:
“まあまあ良い”では,誰にも刺さらないぼんやりしたゲームになってしまうこともあるんですね。
新納氏:
何かしら1箇所でも“すごく良い”がないと,お客さんは次の作品を欲しいと思ってくれないのではないかと思っていて……。なので,限られた開発コストをふりわけるなら,全体を“まあまあ良い”にするよりは,1箇所でも“すごく良い”にしたいと個人的に思っています。もちろん全体が“すごく良い”のが理想ではあるのですが。
4Gamer:
開発としては,常にすごく良い作品を世に出したいでしょうが,納期の問題もあるので難しいですよね。そんな限られた開発期間の中でも,これだけは絶対に“すごく良い”を目指している要素はありますか?
新納氏:
「え? そこ?」と言われてしまうかもしれませんが,“BGM”は大事にしている部分の1つです。ゲームに気持ちが乗っかるかどうかがかかっているので,ものすごく重要視しています。良曲であってもゲームと合わなければ採用しないですし,ハマったと思うまではリリースできないです。
4Gamer:
確かに,プレイ後ゲーム内容を思い出すとき,印象深かったタイトルほど映像とBGMがリンクしています。
新納氏:
「世界樹の迷宮」でご一緒した古代さん(編曲家の古代祐三氏)が「キャラクターの歩行速度とBGMのテンポがが合うようにしたい」とおっしゃっていて,やはりそういうところが1つ1つゲームと噛み合うのが重要なんだ,と当時感じました。BGMやSEの鳴らし方1つ変えただけで,ゲームが急に面白くなったり,遊びやすくなったりするので,影響力は大きいです。
4Gamer:
なるほど。新納さんのゲーム開発のポリシーの一端が垣間見えた気がします。話がちょっと逸れてしまったのでルーツの話に戻しますが,子供の頃どんなゲームをプレイしていたのか気になっています。
新納氏:
RPGは小学生の頃から好きで,とくにPCゲームに興味深々でしたね。でも,PCゲームって当然パソコンを持ってないと遊べないじゃないですか。なので,電波新聞社さんのPCゲームを特集した別冊などを買って,実際にプレイしたらこんな感じなんだろうなと想像しながら楽しんでました(笑)。
4Gamer:
分かります! まだPCがマイコンと呼ばれていた頃って,ソフトが本当に高かったですし,小学生のお小遣いではとうていアレコレを買うことなんかできませんからね。
新納氏:
本当にそうですよ。よく昔のゲームに詳しいと言われたりするのですが,「本では詳しい」というのが正確な表現だったりします(笑)。
4Gamer:
本で読んだゲームへの“憧れ”が,ルーツを探るうえで重要なキーワードになりそうですね。世界樹の迷宮を開発した手腕から見るに,やはり「Wizardry」も好きだったんですか。
新納氏:
実はWizardryを初めてプレイしたのはファミコン版なんです。小学生のときはそれほどピンとこなくて,もう少し年齢を重ねたときにようやく良さが分かった感じで。初代Wizardryは,キャラメイクできたり,初めてダンジョンRPGをプレイする人でも遊びやすいシンプルな構成になっていたりと,素晴らしいタイトルでした。
ですから,世界樹の迷宮を開発する際は,自分でWizardryをプレイして感じた良かった点はそのままに,ピンとこなかった部分を直すことに注力したんですよ。
4Gamer:
具体的には,どんなところに注意して開発したんですか?
新納氏:
妹がいて,よく隣でゲーム画面を見ていたのですが,ウィザードリィは「画面が暗くて嫌だ」と言うんですね。なので,暗い画面にならないよう舞台を森にしました。あとは,ロマンの部分だとは思うのですが……キャラメイクの際に,ダイスを振るのが個人的に嫌いで。というのも,結局良い目が出るまでキャラを作り直してしまうので(笑)。
4Gamer:
キャラメイクにこだわり始めると,なかなかダンジョンに入れなくなるんですよね(笑)。
新納氏:
いや,ほんとに。なので,世界樹の迷宮では初期ステータスは固定にしました。ほかにも一見分かりづらいAC(アーマークラス)の概念を止めたり,お金やアイテムをギルドの共有財産にしたり,キャラ絵を用意してイメージしやすくするなど,私が小学生の頃に挫折した経験をベースにして遊びやすさを追求しました。
4Gamer:
ダンジョンRPGは通常のRPGよりも難度が高いと言われることも多いわけですが,世界樹の迷宮ではどんなバランスを目指したのでしょう。
新納氏:
個人的に,初めて迷宮に降り立って1階を探索するときの緊張感を伴った難度が好きで,ある程度地図を埋めながら街まで帰ってきたときの達成感は単なるRPGでは味わえないものなのかなと思っているんです。だから,全体的な難度は抑えつつも,1Fのハードルだけは高めで,昔ながらのダンジョンRPGさながらの雰囲気にしています。
TYPE-MOONが次の“祭り”に向かう道を整えるための手助けを
4Gamer:
開発チームは現段階で,どのくらいの規模になっているんですか?
新納氏:
現在,自分を含めて7人です。ディレクター,プランナー,シナリオライター,プログラマ,2Dアート,3Dアート,プロジェクトマネージャーの各1名です。3Dのゲームを作れるスタッフを揃えると大所帯になりがちなので,小規模で2Dゲームがきっちり作れる編成にしました。一旦求人は終了しますが(※2019年12月16日に募集終了),プログラマはあと3人くらい増やしたいなあ……と思ったりしています。その10人でスタジオとしては完成だと思っています。
4Gamer:
この記事を読んで気になったプログラマはTYPE-MOONとstudio BBの求人情報をチェック! という感じにしておけばいいんですね(笑)。
新納氏:
ええ,そうですね(笑)。
4Gamer:
TYPE-MOONとも連動して開発を進めていくとのことで,どんなタイトルが誕生するのかは本当に楽しみなんですが。
新納氏:
studio BBとしては当然,奈須さんと武内さんとガッチリ協力してゲームを作っていきたいのですが,TYPE-MOONファン一個人としては,その2人は本体のゲームに集中してほしいと思っています。計画を立てて,慎重にバランスをとるべきでしょうね。
4Gamer:
それは……ありますねぇ。「月姫リメイク」だったり,「魔法使いの夜」の続編だったりを心待ちにしているファンは本当に多いですから。
ところで,開発タイトルのプラットフォームについては決まっているのでしょうか。
新納氏:
できるだけ多くの方に遊んでほしいので,あまり決め打ちせずに広くやっていきたいと思っています。現状ではPlayStation 4,Nintendo Switch,PCを予定していますし,Xbox Oneやスマホ,クラウドなども検討しています。
4Gamer:
studio BBでの新納さんの立ち位置は,プロデューサー兼ディレクターという形に?
新納氏:
そうですね。ひとまずは兼任でやっていきたいと思いますが,だんだんと若い子にバトンタッチして,まかせる部分はまかせていきたいです。私はとにかく企画が書きたいので,それが集中できる体制になるといいなと思っています。
私の憧れはドラクエの堀井雄二さんで,きっちり要点を絞って指示すべき部分は指示して,教えるべき部分は教えて,そうじゃないところは任せる,みたいなスタイルにできたら素晴らしいと思います。
4Gamer:
後進の育成をしつつですね。引退後,こんなゲームを作りましたと,自分好みのゲームが送られてきたら,やっぱり嬉しいでしょうし(笑)。
新納氏:
さんざん遊び尽くした後で,あーだこーだと言ってやりたいですね(笑)。
4Gamer:
一方で,TYPE-MOONのファンとしては,深く関わりたい気持ちもあるのではないでしょうか。差し支えなければですが,TYPE-MOON作品の中でとくにここが好きという要素があれば教えてください。
新納氏:
うーん,個人的には月姫読本を買ったのがTYPE-MOONファンの真の始まりだった気がするので,やっぱり死徒ですかね。「Fate/stay night」のスピンオフ「ロード・エルメロイII世の事件簿」というTVアニメでアインナッシュ(の仔)が出てきて,「おー。ここで登場するんだ!」と感動していました。あと,「Fate/Grand Order」(以下,FGO)で彷徨海が出たときとか。
4Gamer:
「ここでその名前が出てくるんだ!?」という驚きは,TYPE-MOON作品の面白さの1つでもあります。
新納氏:
そうですね。奈須さんは世界観を重要視しているので,ゲームを作る側としては,キャラクターや世界をどう使っていくのか難しくもあり,楽しい部分でもあります。
4Gamer:
いわゆるTYPE-MOON用語も膨大になっていますし,シナリオ面で気を遣うことも多くなりそうです。
新納氏:
studio BBで作るゲームに関しては,雰囲気を壊さない程度にTYPE-MOON用語を1つ1つ分かりやすく説明しようと思っています。最近ファンの方も増えてきたようですし,自分自身も把握できいてない設定が広がっているので,新しいファンの方と一緒にTYPE-MOON世界を1から勉強しよう! というくらいの考えでやっていきたいです。
新しく入ったシナリオの塚田くんも,TYPE-MOON作品のライターとしては新規参加なので,勉強が大変だろうなあと思います。
4Gamer:
シナリオの話題が出ましたので,シナリオライターの塚田さんからもお話を聞かせてください。急に話を振ってしまいましたが,お席で話を聞かれていたと思うので(笑)。
塚田耕野氏(以下,塚田氏):
はい(笑)。シナリオライターの塚田耕野です。よろしくお願いします。
4Gamer:
新納さんとはどのようなつながりで一緒にお仕事をされることになったのでしょうか?
塚田氏:
初めてお仕事をさせていただいたのは「ドラゴンクエストビルダーズ1」のときです。予期せず自分1人ですべてのシナリオを書くことになり,新納さんとがっぷり四つで組ませていただくことになってしまいました。
4Gamer:
なってしまった,というのは?
塚田氏:
自分は新納さんとご一緒するのは初めてでしたし,派生作品とはいえドラゴンクエストのシナリオを書くということで,最初は「自分一人でいいのか?」という思いがありました。自分がやらなければやる人がいないと吹っ切れてからは楽だったのですが,新納さんとは開発中に散々ぶつかりもして,とにかく大変な現場だったので……。
4Gamer:
それだけぶつかった新納さんと,今もご一緒されているんですね。
塚田氏:
ぶつかりはしましたが,自分としてはお互いがいいものを作ろうとする上での衝突だという感覚がありました。ビルダーズ1の開発が終わった直後,「もし2があったらまた一緒にやろう」と言ってもらえたので,新納さんも同じ思いでいていただけたんだろうなと。studio BBの話が出たときも真っ先に声をかけてくださり,ご一緒させていただくことになりました。
4Gamer:
ビルダーズ1,ビルダーズ2を経て,studio BBでも新納さんとご一緒されるわけですが,あらためて今のお気持ちはいかがでしょうか?
塚田氏:
新納さんはシナリオへの造詣が深く,指摘も厳しいので,また大変な日々が始まるな,というのが率直な気持ちです。また,母体となるTYPE-MOONには,かの奈須きのこさんがいらっしゃるので,そういった意味でも,ものすごいプレッシャーを感じています。
4Gamer:
TYPE-MOON作品ということになれば,よりシナリオに期待を寄せるファンも多いように思います。
塚田氏:
はい。ただ奈須さんからは「プレッシャーが多いほうがライターとしての経験値が上がるよ」というお言葉をいただいたので,それを励みに,皆様にご満足いただけるシナリオを書いていきたいと思っています。
4Gamer:
先ほど塚田さんは「プレッシャーを感じる」とおっしゃっていましたが,新納さんも今までとはまた違った重圧があるのでは。
新納氏:
そうですね。古くからのTYPE-MOONファン,Fate/EXTRAやFGOから入った比較的新しいファンなど,ファン層が広いので,開発者としては考えるべきことが多く難しくなることは間違いないでしょう。
4Gamer:
同人サークル時代の「空の境界」や「月姫」から数えれば,それこそ20年の歴史があるわけですし。
新納氏:
Fate/EXTRAの企画を持って行ったとき,「Fateシリーズの最終作にしてもいいから,好きに作ってほしい」と言われたのが印象的でした。 Fate/EXTRAの発売が2010年ですが,それからもずっと人気は衰えていないんですよね。
4Gamer:
Fate/EXTRAの発売は,「Fate/stay nightの流れを汲まないタイトルを作ってもいい」と世に示したことも大きな意味があって,シリーズの大きな分岐点になった気がします。その後さまざまなスピンオフ作品が発表され,世界が広がっていきましたし。そして,FGOでさらに広がって,ある種の祭りのような状態になっています。
新納氏:
ただ,終わらない祭りはないわけで。さらに10年後に祭りを行うならば,今から次の祭りへと向かう道を整えなければなりません。studio BBとしては,新規タイトルを作ることで,その手助けができればとも考えています。
4Gamer:
10年後,TYPE-MOONの世界がどのような広がりを見せているのか。今から楽しみですね。ともあれ,まずは2020年の夏になるという次の発表を楽しみに待ちます。本日はありがとうございました。
「TYPE-MOON studio BB」公式サイト
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