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電脳戦機バーチャロン フォース公式サイトへ
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  • 発売日:2010/12/22
  • 価格:通常版:6090円(税込),限定版:1万290円(税込)
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新しい遊びを作り続ける仕事も,やっぱり必要なんですよ――9年越しの移植となった「電脳戦機バーチャロン フォース」,プロデューサー“Dr.ワタリ”直撃インタビュー
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印刷2010/12/22 00:00

インタビュー

新しい遊びを作り続ける仕事も,やっぱり必要なんですよ――9年越しの移植となった「電脳戦機バーチャロン フォース」,プロデューサー“Dr.ワタリ”直撃インタビュー

「ロボット愛」に複雑な想い。
「クロニクル 15」には富野由悠季氏との対談も


画像集#012のサムネイル/新しい遊びを作り続ける仕事も,やっぱり必要なんですよ――9年越しの移植となった「電脳戦機バーチャロン フォース」,プロデューサー“Dr.ワタリ”直撃インタビュー
4Gamer:
 ではちょっと話題を変えて。バーチャロンが代表作ということで,“ロボットもの"というジャンルにも関わりが深い亙さんですが,ロボットものへのコダワリというのは,やはり深いのでしょうか。

亙氏:
 うーん,こだわりというんですかねえ。仕事として染み付いちゃってます。今ロボットものをやらせて,まっとうに仕事ができる数少ない人間のうちの一人になってしまった,という部分はあるとは思います。でも,無邪気に「ロボ大好き!」みたいな,そういう無防備な感情が同居しているのかといえば,微妙なところがある。

4Gamer:
 ロボットものを求められるからやる,ということですか?

亙氏:
 求められているんですか? 昨今はそのへんも懐疑的になっている。そもそもロボものってあまり売れるものではないですからね。たとえば数年前だったら,50万本以上売れても不思議ではない,そんなクオリティとボリュームを持ったタイトルが,不完全燃焼に終わっている事例が珍しくない。
 会社を支えるにふさわしい,ある程度大きなビジネスをしようと思ったら,ロボットものというジャンルに取り組むのは考え直したほうがいいのかもしれません。ロボって,むしろもっとコアな,もうロボが好きで好きでしょうがないって人達に向けて作る,「小さな店だけど,ガンコ店主が気合いれて頑張ってます」みたいなこだわり芸風が喜ばれるニッチなジャンルじゃないのかな。

画像集#036のサムネイル/新しい遊びを作り続ける仕事も,やっぱり必要なんですよ――9年越しの移植となった「電脳戦機バーチャロン フォース」,プロデューサー“Dr.ワタリ”直撃インタビュー

4Gamer:
 亙さんのタイトルで,ロボットもの以外というのも,ありえないわけではない。

亙氏:
 そもそも今まで手がけたものって,ロボ以外のモノのほうが多いですからね。別段ロボットじゃないとダメだとは思ってません。
 もちろん,これは別にロボットものに飽きた,嫌だといっているわけじゃないです(笑)。愛がないとかそういう事じゃない。
 ただ心に留めておきたい点があって,プレイヤーさん側から見たロボット愛と,作り手側がモノづくりの立場でロボットに込める愛情って,やっぱりベクトルが違うんですよ。だからプレイヤーさんの側から,「うだうだ言ってばかりいるけど,そもそもロボットに愛はあるんですか?」と問われると,言葉に詰まってしまうことがある。そしてまた,それが誤解をよぶ。その辺にまつわる思いも「クロニクル 15」には書いてみました(笑)。

4Gamer:
 では詳しくは「クロニクル 15」を読んでほしいと。

亙氏:
 ある種「あ,そういう事なんだ」と思えるような,その一端は感じ取れるかもしれません。

4Gamer:
 ちなみに東京ゲームショウ 2010のステージでは,ロボットは後から勉強したとおっしゃってましたよね。中でも「機動戦士Vガンダム」がお気に入りとのことですが,Vガンダムはどのあたりが引っかかりましたか?

東京ゲームショウ 2010でのバーチャロンステージ
画像集#018のサムネイル/新しい遊びを作り続ける仕事も,やっぱり必要なんですよ――9年越しの移植となった「電脳戦機バーチャロン フォース」,プロデューサー“Dr.ワタリ”直撃インタビュー

亙氏:
 「作り手もやはり人間なんだな」というところですかね。たとえば富野語録なんて面白おかしくいわれますけど,Vガンダムに出てくるセリフって,明らかに今までの富野語とは異質な響きがあると思う。歳を経て失ったものの代わりに,新たに掴もうとしている何か。まさにその抗っている瞬間の生々しさとでもいいますか。そういう苦々しさ,渋さ,抗う生命力の魅力が,あの作品にはあると思います。

4Gamer:
 「クロニクル 15」には,富野さんとの対談も再録されると聞いています。個人的にもすごく楽しみにしているんですが。

亙氏:
 再録されています。あれは富野対談史上,これほどスリリングな流れはないといっていいくらいのものだったと思う。収録時期は96年。原稿ではかなり圧縮してますけど,収録時間はかなり長かった。17時くらいから始めたんですが,7時間以上かかって結局電車がなくなっちゃって。夜明かしして帰ったという(笑)。


アーケードで新作はありえるのか。
そもそもシリーズ完全新作の可能性はいかほど?


公式サイトでは,アンケートの結果も公表されている
画像集#027のサムネイル/新しい遊びを作り続ける仕事も,やっぱり必要なんですよ――9年越しの移植となった「電脳戦機バーチャロン フォース」,プロデューサー“Dr.ワタリ”直撃インタビュー
4Gamer:
 オラタンの発売に前後して,公式サイトでアンケートが実施されましたよね。その中に,「新作については,どのような方向性が良いと思いますか?」という項目がありました。ファンとしては,やっぱり完全な新作バーチャロンにも期待してしまうんですが。

亙氏:
 どうなんだろうなぁ。ニーズがどれだけあるのか。

4Gamer:
 選択肢の中には,RTSやMMORPGなんてものもあって,かなり気になったんですが。可能性としては,アクション以外というのもありえるんでしょうか。

亙氏:
 ありえるとは思いますが,なんともいえないですね。その時できることしかできないですから。

4Gamer:
 やっぱりフォースの売り上げ次第,ということですか?

亙氏:
 もちろんそれはあります。ただ,今のXbox 360って,国内的には厳しい市場なので,どう考えても9年前の移植タイトルが10万本も売れるなんてことはありえないですよね。だからといって1万本未満の結果だったら話になりませんが。
 そしてフォースがどれだけ売れるかも大切ですけど,さっきもお話しした,新しい遊びの提案が可能で,その枠組としてバーチャロンが最適だって話になれば,それはフォースの売り上げがどうこうとは別に,やるべきだと思っていますし,提案していきます。それはもしかしたらアクションかもしれないし,アクションではないかもしれない。そこは本当に何を思いつくかによって変わるし,どうなるか分からないですよね。

画像集#032のサムネイル/新しい遊びを作り続ける仕事も,やっぱり必要なんですよ――9年越しの移植となった「電脳戦機バーチャロン フォース」,プロデューサー“Dr.ワタリ”直撃インタビュー

4Gamer:
 でも以前と比べて,バーチャロンがかなり盛り上がってきてると思うんですが。

亙氏:
 そうなのかなあ。僕は疑ってますが(笑)。十年来のファンです! みたいなありがたい言葉をいただくことはあるし,実際感謝しきりですが,その一方で初めてプレイしました! みたいな話を聞く機会は少ない。ある種の新陳代謝みたいなものがないと,コンテンツが生きていると言う意味での盛り上がり感をイメージしにくくありませんか?

4Gamer:
 例えば,最近だとバンダイナムコゲームスさんの「スーパーロボット大戦」(以下,スパロボ)にバーチャロンのキャラクターも出ていますよね。そこで初めて知ったという人は,多いのではないですか。

亙氏:
 そういう人は確かにいますけど,そこからバーチャロンにデビューしたという人は,そう多くはないのではないでしょうか。

4Gamer:
 確かにアーケードに行かなければプレイできないとなると,ハードルが高いですね。

亙氏:
 でも普通そうだと思いますよ。例えば,スーパーロボット大戦で気に入った作品があるとするじゃないですか,だからといって即,DVDボックスを買おうとする人が続出するとは考えにくい。スパロボはスパロボとして作品的に完結してるので,そこからスピンアウトしたニーズを期待するのは,難しいんじゃないかな。

4Gamer:
 でもスパロボのおかげで,DVDがレンタルされるというのはよく聞く話です。

亙氏:
 もちろん,そういうこともありますよ。でも一般化はできないですよね。それにレンタル数が伸びたからといって,そのコンテンツが往事の勢いを取り戻すということにはならない。バーチャロンがスパロボに参加できたのは,それ自身を喜ぶべきことであって,それ以上のものを期待するのはちょっと筋が違うように思う。悲観的という文脈とはちがいますが,もっとシビアに見たほうがいいんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 ちなみに現状のアーケードについてはいかがですか。今のアーケード市場と昔のフォースがあった頃との一番違いって何でしょうか?

画像集#029のサムネイル/新しい遊びを作り続ける仕事も,やっぱり必要なんですよ――9年越しの移植となった「電脳戦機バーチャロン フォース」,プロデューサー“Dr.ワタリ”直撃インタビュー

亙氏:
 店が少なくなったことですかね。市場が縮小した。

4Gamer:
 では,仮にバーチャロンの続編を作るチャンスがあったとして,アーケードという市場を選びますか?

亙氏:
 そのチャンスがどういうチャンスかってことにもよります。市場が大きくなって新しい遊びを求めている,そんなチャンスなのか。あるいは単純に,アーケードにバーチャロンを入れるようなスペースができましたよ,なにか作りませんか,っていうチャンスなのか。前者だったらやる価値があるように思えますが,後者だとしたらいまさらやっても……という気がします。

4Gamer:
 現在のアーケード市場を考えると,後者ということになりそうですが,それでは魅力を感じない?

亙氏:
 ゲームセンターに,何か新しいショックバリューを求めて通うような流れが,今は乏しくなってきていませんか。バーチャロンのコンセプトの大元にあった,今まで見たことのない新しい遊びや製品を作り出そうという意気込みに対応できる状況,リスキーなチャレンジを許容できる市場やチャンスが,乏しいように思えます。
 だったらリスクを極力抑えて,今のお客さんが安心して長く遊べるようなものを定期的に投入する。そういうコンテンツに場を譲ってあげるべきなんじゃないかという考えも成立してしまう。プライズものとかね。そもそも今のゲームセンターって,もう6割型プライズセンターですし。

4Gamer:
 ビデオゲームが占めるインカムは,1割以下と聞きますね。

画像集#030のサムネイル/新しい遊びを作り続ける仕事も,やっぱり必要なんですよ――9年越しの移植となった「電脳戦機バーチャロン フォース」,プロデューサー“Dr.ワタリ”直撃インタビュー

亙氏:
 インカム面でも専有面積面でも,付け足しみたいなものになっています。ビデオゲームをわざわざやりにゲームセンターに行こうなんて人は,少数派になってしまった。

4Gamer:
 とくに今となっては,ネット対戦だってあるわけですし。

亙氏:
 携帯ゲーム機や携帯電話のゲームの簡便さが強い。ちょっとやりたくなったときに,すぐできてしまうので,わざわざゲームセンターに行って遊び込もうというモチベーションが起きにくい。そのような積極的プレイヤーの人口は,90年代からガクンと落ちてしまいました。

4Gamer:
 では,そういうプレイヤー達が戻ってこない限りは,アーケードは難しいと。

亙氏:
 戻ってくるというか,そういう趨勢が見えるようなタイミングを見計らいたい。ただ受け身に待つばかりで,客足が戻ってきてから腰を上げても手遅れになりますから。開発っていうのは,今求めれられているものよりも,数年後に何が来るかっていう読みで動きます。モノって作りだすと3〜4年後にようやく世に出せる,そのぐらいのタイムスパンですから,今求められるものを作る発想だと,その時点でもう時代遅れ,負けてるんです。
 手がけるべきものは3年後の趨勢に相応しい何かであって,これまでのバーチャロンではないかもしれない。そういう意味では,従来型のバーチャロンを,無理にアーケードにねじ込む必要性を感じません。

「電脳戦機バーチャロン」(PS2版)
画像集#035のサムネイル/新しい遊びを作り続ける仕事も,やっぱり必要なんですよ――9年越しの移植となった「電脳戦機バーチャロン フォース」,プロデューサー“Dr.ワタリ”直撃インタビュー


ゲーム業界はお先真っ暗? バーチャロンシリーズの次なる展開は……


画像集#013のサムネイル/新しい遊びを作り続ける仕事も,やっぱり必要なんですよ――9年越しの移植となった「電脳戦機バーチャロン フォース」,プロデューサー“Dr.ワタリ”直撃インタビュー
4Gamer:
 ではゲーム以外のバーチャロンってのは何かありませんか? 例えばアニメとか……漫画とか。

亙氏:
 アニメは手間とお金かかりますからねえ。そもそもアニメがどうこうというより,バーチャロンというコンテンツ自身,ニーズがあるのかどうかっていうのを見極めないといけないですよね。

4Gamer:
 ニーズを届ける,「俺はこんなにバーチャロンが好きだ!」というのを亙さんに伝えるには,我々はどうしたらいいんでしょうか。

亙氏:
 僕に伝えていただくのもありがたいのですが,ニーズとしてのマスパワーな側面を伝えるのは,またちょっと違う考え方が必要かもしれない。例えばプラモデルが出ますよね。そのプラモデルがこれだけ売れているとか,買った人が商品のどこに価値を見いだしているのかってあたりを汲み取っていけるといいですよね。そのあたりが,なかなか伝わらなくて。
 公式サイトのコラムでもお伝えしたんですが,今発売中のニュータイプ1月号には,カトキハジメさん描き下ろしのイラストが載ってます。じゃあこういう絵をこれからも見せていく場が求められてるのか? となったとき,やはりダイレクトな反応が起きないと,動きにくい。雑誌とかであればアンケートハガキなどでリアクションを起こしていただければいいのかもしれない。それが1000通,2000通とか,そういった数になってくれば,雑誌のほうでも注目せざるを得ないでしょう。

4Gamer:
 では新しい何かを見たいなら,雑誌を買ってアンケートはがき出してほしい。フォースも買って,アンケートはがきをぜひ,と。

亙氏:
 皆さんの側にある手段として,アンケートはがきというものがありますよ,という提案です,あくまでも。誤解してほしくないのは,売れないからやらない,やれないと決めつけているわけではないということ。仮に売れないものがあったとして,それは我々の力が及ばなかっただけのことで,プレイヤーさんのせいにするという意図もない。
 ……しょっぱいことばかり言ってますね。ただ例えばフォースであれば,少ない予算の中で,むしろやり過ぎなんじゃないかと思えるくらい頑張らせて貰いましたよ。

4Gamer:
 いやもう,オラタンにフォースまで出ただけでも,我々は大喜びですから。

亙氏:
 そういっていただけるとありがたいですが。

画像集#028のサムネイル/新しい遊びを作り続ける仕事も,やっぱり必要なんですよ――9年越しの移植となった「電脳戦機バーチャロン フォース」,プロデューサー“Dr.ワタリ”直撃インタビュー
4Gamer:
 海外市場というのはどうでしょう。売れるものなのでしょうか。

亙氏:
 まったく売れないですね。

4Gamer:
 それはやはり「ロボットものである限りは」ってことでしょうか。

亙氏:
 ロボットものというよりも,非常に乱暴ないい方になりますが,ガンダムチックなキャラの立ったアニメ風ロボって,海外ではまだ受け入れがたいみたいですよ。

4Gamer:
 ではバーチャロンで世界市場を狙う,というわけにもいかなそうですね。

亙氏:
 バーチャロンで世界を取るというのは,なかなか大それた考えなんじゃないかなあ。そもそもバーチャロン以前に,セガ的な会社が,セガ的な体力で,セガ的なものを作り続けていくしかない状況で,たとえば世界で5〜600万も売れるようなディスク形態の何ものかを,それこそ何本も作れるのか,作るべきか,ということ自体を検討すべきです。

4Gamer:
 うーん,アーケードも厳しくて,あっちもこっちも厳しいみたいな。

亙氏:
 そうです(笑)。現状は厳しいんです,とても。厳しくないところなんて実は一つもない。自己憐憫に耽るつもりはないですが,日本のゲーム市場の未来は,少なくともバラ色ではないことは確かです(笑)。

4Gamer:
 いやそれはもう,プレイヤーもある程度は感じてるとは思いますよ。

亙氏:
 4〜5年先のイメージなんて,描けないですよね。ゲーム業界がなくなってても不思議じゃないって,本気で思えますし。

4Gamer:
 しかしゲーム業界以外でお先真っ暗じゃないところがあるのかといえば,それはそれで微妙だと思いますが。

亙氏:
 ええ。日本,お先真っ暗です。明るい話題がないな〜。

4Gamer:
 ……いやいや,それで締めちゃっていいんですか? ここはぜひ,何か希望を見出していただきたいと思ってるんですけど(笑)

亙氏:
 希望って(笑)。一ゲーム屋に国家レベルの希望とかいわれても,なんか違うような気もする。仮に業界レベルの話に戻したところで,そこでサービス精神旺盛な人だと「いやー我々やりますよ!」みたいなノリで景気の良いこというかもしれませんが,その場しのぎのインチキですよね(笑)。

(一同笑い)

亙氏:
画像集#014のサムネイル/新しい遊びを作り続ける仕事も,やっぱり必要なんですよ――9年越しの移植となった「電脳戦機バーチャロン フォース」,プロデューサー“Dr.ワタリ”直撃インタビュー
 ただバーチャロンに関してだけいうなら,今国内に残っているバーチャロンプレイヤー,数万人くらいでしょうか。でもその数万人という存在は,我々にとっては過ぎた幸運,財産だと思っている。非常に熱いバーチャロン愛を持ってくれていて,9年間お待たせしたフォースが移植されるという話で,こんなにも喜んでいただける。しがない我々にエールを送ってくれるありがたい数万人の方々が,我々の味方についてくれている。味方というか,もうある種の仲間ですよね,こうなると。そしてその事実は非常に重い。
 無理して世界で通用するようなタイトルを作ろうとして,鼻血出してぶっ倒れるようなリスクをおかす必要があるのか検討すべきっていう先ほどの話についても,答えはこの辺にあるのかもしれない。日本で日本人が作るという前提で考える限りにおいては,やはり国内のプレイヤーあってのコンテンツなんです。
 しかもこれだけ趣味が多様化したいま,数万人規模の小さな個別市場のほうが当たり前で,その数万人をどれだけ大切にしていけるかというのが,ある種の日本的コンテンツのあり方として重要なんじゃないかという気がしています。

4Gamer:
 バーチャロンのコンテンツのあり方としては,それが理想的なのかもしれませんね。

亙氏:
 お得意様を大切にするっていうのは,商売の基本じゃないですか。そういう小さなお店の鉄則を,ゲーム屋は忘れかけているんじゃないか。そういう自省の念を込めて,精進していくのが当座のバーチャロンスタイルなのかな,と。いいんですか,こんなしょぼい話で(笑)

4Gamer:
 いやいや,本音の部分を聞けて,大変ありがたく思います。プレイヤーに伝えておきたいことは,ほかにありますか。

亙氏:
 うーん,あんまりないなー。でもここでないっていうと,プレイヤーへの愛がないのかみたいに思われちゃうのが辛い。そういう意味ではないので。自分としてはもう,かなり決死隊みたいな行動をしてるつもりなんですよ。なかなか伝わりにくいのですが,フォースの移植が実現しただけでも,今のご時世,本当に奇跡なんです。「なにつまらんことやってるんだ」的冷たい視線の中にあって,それでも敢えてやるって,確かに愚かしいかもしれないが,なかなかできないことでもある。サラリーマンにあらざる態度で頑張る僕らです(笑)。

4Gamer:
 個人的には,ぜひフォースの次を見てみたいと思ってますので,ぜひ。アクションでなくても,RTSなんか面白そうですけどね。

画像集#006のサムネイル/新しい遊びを作り続ける仕事も,やっぱり必要なんですよ――9年越しの移植となった「電脳戦機バーチャロン フォース」,プロデューサー“Dr.ワタリ”直撃インタビュー
亙氏:
 実はRTSもお金がかかるんですよねえ。

4Gamer:
 ライデンやVOX系を一列に並べて,ビームやミサイルの雨あられ,なんてやりたいです(笑)。

亙氏:
 倉庫一個分くらいのサーバーを,無償で提供してくれるような神様が現れないかなぁ(笑)。

4Gamer:
 ではやっぱりアクションで?

亙氏:
 もちろんアクションもお金がかかるんですよねえ(笑)。

4Gamer:
 どっちもかかるんじゃないですか!

亙氏:
 そうなんです。ちなみに初代OMGって,2億かかってないんですよね。2億かけなくてもあれくらいのゲームはできるという事実。でも今時のグラフィックスにしようとすると,軽く10倍以上はかかってしまうという現実。やり辛い時代です。という状況を直視しつつ,隙あらば,楽しい何物かをやらかしてみたいですね。

4Gamer:
 うう,興味が尽きないお話ばかりなんですが,残念ながらお時間のようです。ぜひ続きは,12月26日の「4Gamer.net Presents『電脳戦機バーチャロン』編年史(仮)」でお聞かせ願いたいと思います。本日は,ありがとうございました。



 現状をシビアに分析したうえで,決して楽観的なサービストークを行わない亙氏。近年はメディアで見かけることが少なかった氏ではあるが,その発言は今なお鋭く,冷静で,多くの示唆を含んだ,刺激的なものであった。とくにモノづくりに関する情熱,姿勢については,大きな転換期を迎えつつあるゲーム業界にとって,古くからの“ゲーム屋”の業を伝える,貴重な証言といえるだろう。

 アーケード版からのファンである筆者としては,いささか緊張していまい,もう少し踏み込んだ話まで,話を展開できなかったのが悔やまれるところ。氏には今後いっそうの活躍を期待し,ぜひ次の機会にも臨ませていただきたい。

 なお本文でも触れているとおり,この週末の12月26日には,東京・新宿のロフトプラスワンにて,本作の発売を記念したイベント「4Gamer.net Presents『電脳戦機バーチャロン』編年史(仮)」が開催される。すでにチケットは完売してしまっていて,これから参加したいという人には申し訳ないが,イベントの様子は後に4Gamerの誌面でもお伝えする予定だ。そちらも楽しみにしていてほしい。

画像集#031のサムネイル/新しい遊びを作り続ける仕事も,やっぱり必要なんですよ――9年越しの移植となった「電脳戦機バーチャロン フォース」,プロデューサー“Dr.ワタリ”直撃インタビュー

「電脳戦機バーチャロン フォース」公式サイト


――2010年12月13日収録

 
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    電脳戦機バーチャロン フォース

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