インタビュー
「World of Tanks」のWargaming.netにメールインタビュー。日本オフィス設立の意図は。そして,日本人プレイヤーのメリットはどこかを聞いた
2013年5月30日に掲載した記事でもお伝えしたように,オンライン戦車ゲーム「World of Tanks」で知られるベラルーシのWargaming.netが,日本の新たな拠点となるウォーゲーミングジャパンを設立した。
今年,設立15周年を迎えるWargaming.netは,サービス中のWorld of Tanksのほか,第二次世界大戦前後の航空戦をテーマにした「World of Warplanes」,同じく過去の海戦をテーマとした「World of Warships」,そしてスマートフォン/タブレットPC向けの「World of Tanks Blitz」など,新作タイトルの準備が整いつつある。6月にロサンゼルスで開催されたE3 2013では,Microsoftのプレス向けカンファレンスで「World of Tanks: Xbox 360 Edition」を発表するなど,かなりノッている雰囲気だ(関連記事)。
今回,そんなWargaming.netにメールインタビューを行う機会を得た。もともとはウォーゲーミングジャパンの設立に関連した話を聞くという趣旨だったのだが,いい機会なので,World of Tanksのゲームデザインや運営のポリシー,今後の展開などについても質問してみた。
メールインタビューであるため,どうしても一問一答形式となり,さらに突っ込んで聞きたいが聞けないというところもあるし,翻訳を介するためニュアンスの伝わりにくい部分も出てきてしまうのだが,本格的な日本進出が決定したWorld of Tanks,そしてそれを開発,運営するWargaming.netに興味のある人はぜひチェックしてほしい。
質問に答えてくれたのは,Wargaming.netでDirector of Operating Projectsを務める,アンドレイ・ヤラントサウ(Andrey Yarantsev)氏だ。
「World of Tanks」公式サイト
4Gamer:
設立されたウォーゲーミングジャパンは,今後どのような業務を行うことになるのでしょうか。
新オフィスの業務は,出版,マーケティング,発表関係とカスタマーサービスになります。さらに,日本のWorld of Tanksプレイヤーのコミュニティを成長させたり,オンライン/オフラインのイベントを開催したりすることも仕事に含まれます。
ウォーゲーミングジャパンの設立によって,日本のWorld of Tanksコミュニティは,間もなく新たな段階に進むと思います。プレイヤーの皆さんの希望をより良く実現するために,さまざまな機会を設ける予定です。さまざまなイベントを開催し,日本の皆さんに向けて,World of Tanksの内容や特徴などをどんどん紹介していく予定です。
4Gamer:
日本に新たなサーバーを設立する計画はありますか。
ヤラントサウ氏:
現在のところありません。シンガポールをベースとしたサーバーには,アジア地域全体にゲームを提供するために十分なキャパシティがありますので。
4Gamer:
すでにゲームをプレイしている日本のプレイヤーにとって,ウォーゲーミングジャパンの設立はどのようなメリットがあるのでしょうか。
ヤラントサウ氏:
そうですね。当然ながら日本のプレイヤーの皆さんは,ウォーゲーミングジャパンのカスタマーサポートが受けられるようになります。従来に比べ,どのような問題に対しても速やかで質の良い回答が得られると思います。
コミュニティの活動も増えていくでしょう。ウォーゲーミングジャパンは日本のプレイヤーのために特別なゲームイベントを予定しています。もちろん,World of Tanksの最新情報やアナウンスが日本語で発信されることも大きいでしょう。
4Gamer:
プレイヤーの登録手続きなどは,これまでと比較して簡単になりますか。
ヤラントサウ氏:
もちろんです。ウォーゲーミングジャパンによるローカライズ管理は,最優先の業務になります。高度な専門技術を持つ彼らは,ゲーム市場における長年の経験があり,日本でのビジネスのやり方の一部始終を心得ています。
遠くない将来,日本のゲーマー向けの登録ページとダウンローダー,インストーラー,ランチャー,そしてオフィシャルのポータルサイトが用意され,NA(北米)サーバーでプレイしている日本の戦車兵の皆さん――現在,北米サーバーでWorld of Tanksを遊んでいる日本人プレイヤーは1万人以上です――は,容易にSEA(東南アジア)サーバーに切り替えられるようになるでしょう。これによってゲームがさらに快適になるほか,日本のプレイヤーがほかの日本人プレイヤーと一緒に戦ったり,日本語でチャットができるようになります。
4Gamer:
ところで,Wargaming.netはロシアとCIS(独立国家共同体)で,eSportsに対する施策を積極的に進めていますが,日本での展開について,何らかの計画をお持ちでしょうか。
私達は日本のWorld of Tanksチームが,2012年の「Ural Steel Championship 2012 Grand Finals」で示した腕前に大きな感銘を受けました(関連記事)。SEAサーバーの代表として参加した彼らの活躍は強く印象に残っており,私は,彼らが情熱を抱き続けて腕前に磨きをかけ,これからもいい戦いをしてくれることを願っています。
2013年に私達がアナウンスしたWargaming.net Leagueですが,日本も対象地域であり,ウォーゲーミングジャパンは日本人プレイヤーの参加を奨励することになるはずです。ぜひWargaming.net Leagueに参加してください。Wargaming.net Leagueは2014年春からスタートする予定になっています。
4Gamer:
日本のプレイヤーの好みなどは,ゲームに反映されるでしょうか。
ヤラントサウ氏:
World of Tanksの原則の一つは,すべての地域において同じゲームを提供するということです。すべてのプレイヤーが同じ体験ができることは,何よりも重要だと考えています。
難度については,ビギナー向けのチュートリアルがすでに用意されておりますし,World of Tanks Wikiには,システムやゲーム内経済に関すること,そして用意された戦車や戦術などが詳細に書かれています。これらはすべて,日本語に翻訳されることになっていますし,さらに我々は日本のプレイヤーに向けた特別のチュートリアルを用意するつもりでいます。
我々Wargaming.netは,グローバルコミュニティを尊重し,プレイヤーの希望に沿うことに力を尽くしています。プレイヤーは,フォーラムやほかのフィードバックチャンネルを通じて我々に要求を伝えることで,ゲームの発展に参加しているのです。
4Gamer:
過去,多くの海外ゲームが日本市場への参入を決め,最終的に撤退することになりました。今回,日本にオフィスを設立しようと思ったきっかけはなんでしょうか。
ヤラントサウ氏:
日本にオフィスを設立するのは,World of Tanksを遊んでくださる日本人プレイヤーが増え続けていることに対する当然の反応です。ウォーゲーミングジャパンを設立することで,日本のコミュニティにより質の高いサービスを提供できるはずだと考えています。
Wargaming.netは現在,ラインナップの多様化を積極的に図っています。我々はマルチプラットフォーム向けのデベロッパ/パブリッシャを目指しており,さまざまなジャンルのゲームを開発していく予定です。それに伴い,各地域でプレゼンスを発揮することは,会社の成長に必須になります。
日本のゲーム市場は,世界のゲーム産業において重要な位置を占めていると我々は考えており,我々の存在を多くの人に知ってもらう必要があります。それには,日本の皆さんにさまざまなタイトルを提供し,合わせてサービスを向上させていくという方法しかありません。
4Gamer:
なぜ日本のパブリッシャと手を組まず,自社でサービスしようと思われたんでしょうか。世界のゲーム市場において日本は特殊な市場とされており,日本市場および日本のプレイヤーをよく知る既存のゲームメーカーの力を借りたほうがリスクも低く,成功の可能性が高いと思われますが。
ヤラントサウ氏:
Wargaming.netはゲームの開発もパブリッシングも自分自身でやります。そうしないと地域的な制約を受けてしまうからです。また,自分自身で開発したゲームであるだけに,一般のパブリッシャに比べて作品に対する情熱があり,ゲームをより良くしていくためのさまざまな要素を積極的に取り入れていきます。
これまで,どんな地域であってもすべて直接コントロールすることで,最大限の効果を上げてきました。これは,我々が新しい地域でオフィスを設立するとき,その地域で何年も経験を積んだ専門家で運営チームを作るからです。ウォーゲーミングジャパンのスタッフは,少なくとも6年以上ゲーム産業で仕事をしてきた経験を持つ人達です。
また現在もゲームのエキスパートや専門家を集めていますので,我こそはと思う人はぜひ応募してください。
4Gamer:
分かりました。ところで,各国のWorld of Tanksに何か特徴があれば,教えてください。
ヤラントサウ氏:
中国バージョンは特有のものです。地域の制約を受けなくてはならず,ゲームプレイに影響せざるを得ないのです。そのほかの地域では,World of Tanksはすべて同じです。
4Gamer:
World of Tanksがここまで成長した理由はどこにあると思われますか。
ヤラントサウ氏:
ご存じのように,World of TanksはFree-to-Playモデルを利用しています。ゲームは無料でプレイでき,マネタイズシステムは,無料プレイの人と,少額のお金を支払う人のバランスを維持するようにデザインされています。
最近,我々は革新的な「Free-to-Win」という要素を先駆けて導入しました。これは,プレイヤーが参加した戦闘で稼ぐクレジットでのみ,特別の砲弾や弾丸を購入できるというシステムで,プレイヤーが仲間と共に戦いたいという意識をさらに高めるものだと考えています。
我々のポリシーは(これは,コミュニティの希望に沿ったものでもありますが)つまり「買えば手に入る」アイテムを減らしていくことです。我々にとってすべてのアイテムは,継続した忍耐強いプレイによって手に入れるべきものであって,一瞬で得られるものではいけません。我々は,プレイヤーが何年もの間,ずっとゲームを続けてくれることに興味を持っており,そのための方法を常に探しているのです。
ゲームデザインについて言えば,World of Tanksは比較的簡単にゲームに参加することができて,プレイヤーの腕前が上達するにつれて,さらに楽しみが広がるように作られています。
最近の多くのMMOG(大人数参加型オンラインゲーム)と同様,World of Tanksも繰り返し型のミッションを提供していますが,展開の早さが際立っています。プレイヤーの多くが,1分以内にマッチに参加できるという仕様をとくに気に入っています。最初の画面が表示されるまで5分以上もかかるほかのMMOGとは異なり,World of Tanksはうんざりする要素をすべて省いて戦場に直行できるのです。
この簡便さによって,ゲームは繰り返し何度でも遊べ,人々を夢中にさせるものになり,何百万人もの戦車兵を引きつけているのだと思っています。
4Gamer:
ところで日本では「Girls und Panzar」という,女子高生が戦車で戦うアニメが大変人気です。ルールがWorld of Tanksととても似ているのですが,コラボなんて,どうでしょう。
ヤラントサウ氏:
それはすばらしいですね。我々のゲームにいい影響を与えてくれることを願っています。ですが,我々が現時点で最優先するのは,ウォーゲーミングジャパンを発展させ,サービスを開始することです。残念ながら,今の時点でコラボレーションについて言及するのは時期早尚でしょう。
4Gamer:
分かりました。どうもありがとうございました。
約6000万の登録アカウント数を誇るWorld of Tanksは現在,30以上の言語にローカライズされ,ヨーロッパや北米,東南アジアなど,世界230か国でプレイされている。ヤラントサウ氏によれば,バチカン市国にもプレイヤーがいるほか,南米ではコミュニティが育ちつつあり,小規模ながらアフリカでもコミュニティ活動が行われているとのこと。
Wargaming.netはWorld of Tanksによって,2012年には2億1790万ユーロ(約281億円)の売り上げを記録し,うち610万ユーロ(約8億円)の純益を得たという。2010年のロシアでの正式サービス開始以来,わずか数年で驚くほどのタイトルに成長したわけだが,そうなった理由のほんの一端を垣間見られたような気分になれた。
ヤラントサウ氏によると,World of Tanksはこの6月に新しいアップデートが適用され,新たな自走砲がソビエト,ドイツ,フランス,そしてアメリカのツリーに加えられたという。自走砲のパラメータにも調整が加えられ,さらに各国の戦車向けに新しい迷彩パターンも用意された。さらに「Sacred valley」と呼ばれる新しいマップが導入され,プレミアム戦車として,イギリスの重戦車A33エクセルシオール(Tier 5)が登場した。
気になる日本の戦車だが,現在Wargaming.netの歴史コンサルタントが日本の技術ツリーを準備中とのこと。すべての戦車の詳細がまとまり次第,制作が開始されるとのことなので,期待が高まるところだ。続報を楽しみにしたい。
「World of Tanks」公式サイト
- 関連タイトル:
World of Tanks
- 関連タイトル:
World of Tanks: Xbox 360 Edition
- 関連タイトル:
World of Tanks Blitz
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World of Warplanes
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World of Warships
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