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[GDC 2011]シンプルで挑戦しがいのあるものを。「LIMBO」のデザイナーが明かす「パズルの作り方」
開発元のPlaydeadは,デンマークの首都・コペンハーゲンを本拠に,わずか11名の開発者で構成されるインディーズ系開発チーム。その処女作であり出世作となったLIMBOの開発中,3年にわたって繰り返されたという試行錯誤の内容がGDC 2011で語られたので,紹介してみたい。
Carlsen氏によれば,
「既存のゲームは,ただ『デザインされたとおりの道筋でパズルを解いていく』だけだったり,『あてずっぽうな実験を繰り返す』だけだったりし,プレイヤーが集中して考え込むような要素が欠如している。だからPlaydeadでは,モノトーンをベースに,ゲーム世界の構成要素を極力最小限に抑えながら,いかにして『複雑な思考を要求するパズル』にできるか」
これこそが,LIMBOにおける大きなテーマになったとのことだ。
セッションではこの後,LIMBOのためにC++ベースで自社開発したレベルエディタを使い,実際に会場でレベルを作って見せながら,「どのようにPlaydeadが制作を進めていったのか」の説明がなされた。
そこで最初に紹介されたのが,「チェーンを使って,電気の流れるコンベアを飛び越える」というパズル。Carlsen氏は,プレイヤー側の心理と行動を想定しながら,プレイヤーが,フラストレーションを溜めることなく,挑戦的な気持ちでパズルを解いていける方向性を検討&検証したという。
Playdeadの考える「プレイヤーがパズルを解いていく流れ」は,以下のとおりだ。
- まず,コンベアのある場所まで行く。そこでチェーンにぶら下がるか,コンベアに落ちて感電するかして死ぬ
- その後,チェーンの現在地から,セーフゾーンまでの距離が足りないのを理解して,いったん後戻りする
- 戻った場所にある装置を発見し,押してみると,チェーンが遠ざかるように動き出すのが見える
- プレイヤーは,動き出したチェーンに飛び移ろうとするが,すでにチェーンは手の届く距離から離れていて落下。やはり感電して死ぬ
- ここで,プレイヤーは距離感を感じ取り, チェーンを揺らすことを思い付く
- チェーンを揺らしてから,再度装置を押してジャンプする
- チェーンに手が届き,無事,遠方のセーフゾーンに無事に着地する
……もちろん,必ずしもすべてのプレイヤーが同じ行動をとるというわけではないはずだが,LIMBOで重要な要素になっている「物理」を把握できれば,いくつかの試行錯誤を繰り返すことによって,パズルが“解けていく”はずであり,それが醍醐味だと,Carlsen氏は言いたいのだろう。
ちなみにこのLIMBO用レベルエディタ,事前にタイマーやトリガーを自在に調整できるようにしておくことで,オブジェクトの「ノード」(node,連結点)をつなげていくような形態をとることができている。組み立てられたレベルは,すぐさまゲームとしてテストできるので,プログラミング知識を必要とせずにゲームをデザインできるのが強みになっているようだ。
セッションでCarlsen氏は,マシンガンとカッター,重力という3つの要素を使って,パズルをささっと作って見せていた。だが,実際のLIMBOでは,100種類以上ものノードが利用されているレベルもあり,「我々が考えていた『ミニマムなゲーム作り』は,必ずしも実践されていたわけではない」と告白していたのは面白かった。簡単に弄れると,ついつい弄りすぎてしまうのかもしれない。
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LIMBO
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