インタビュー
「武装神姫」のこれまでの歩みと,気になる新作「BATTLE MASTERS Mk.2」について,総合プロデューサーの鳥山亮介氏に聞いた
2007年には,そんなフィギュアをPCのディスプレイの中で楽しめるオンラインゲーム「武装神姫 BATTLE RONDO」(以下,BATTLE RONDO)がスタート。さらに,キャラクターソングやコミックス,グッズなど幅広い展開を繰り広げてきた。
そして2010年7月,PSP用アクションゲーム「武装神姫BATTLE MASTERS」(以下,BATTLE MASTERS)が発売され,ヒットを記録。つい先日には,BATTLE MASTERSの続編となる「武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2」(以下,BATTLE MASTERS Mk.2)が,今夏に発売予定であることが発表された。
PSP用新作「武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2」を正式発表!
ワンダーフェスティバル2011[冬]で行われた,
KONAMI「武装神姫スペシャルステージ」レポート
なお,3月3日にはBATTLE MASTERSの廉価版が,コナミ ザ・ベストとして発売された(UMD版:税込み2980円,ダウンロード版:税込み2300円)。こうしたことからもBATTLE MASTERSは,今,あらためて注目しておきたい作品といえるだろう。
3Dバトルパートでは,“神姫ライドオンシステム”によって神姫と一体になったプレイヤーが,ほかのマスター(神姫の持ち主)と,「神姫バトル」で対戦する。フィギュアのようにパーツや武器を自由にカスタマイズできるため,ただアクションゲームとして楽しむだけでなく,神姫をより強く,より可愛くコーディネイトするといった楽しみ方もある。また,通信対戦で最大4人の同時対戦も可能だ。
一方,アドベンチャーパートでは,物語の軸となるメインストーリーと,神姫との日常を描いたサブストーリーが展開。登場する10種類の神姫は人気声優によるフルボイスでしゃべり,より深く感情移入できるようになっている。
そのほかにも定期的にダウンロードコンテンツ(以下,DLC)で新たな神姫やパーツが配信されるなど,意欲的な試みも盛り込まれている。
今回4Gamerでは,そんな武装神姫のプロデューサーである,鳥山亮介氏にインタビューを行い,武装神姫全体の歴史を振り返りつつ,新作BATTLE MASTERS Mk.2について気になるところも聞いてきた。
「武装神姫」ポータルサイト
フィギュア,PCオンラインゲーム,そして次のステップが
PSP「武装神姫BATTLE MASTERS」だった
4Gamer:
本日はよろしくお願いいたします。
実はこうして鳥山プロデューサーにインタビューさせていただくのは,4Gamerとしては初めてなんですよね。そこでまず,「武装神姫とは?」という基本的なところから,あらためて教えてください。
武装神姫は,2006年9月にスタートしました。
それまでの僕は,KONAMIのおもちゃ部門で子供向けのアクションフィギュアや合体ロボットなどを作っていました。そしてそれに関連したテレビ番組が終わったときに,「次は何を作ろうかな?」ということを考え始めたんです。
以前のアクションフィギュアは,まだ関節なんかもブラブラしていてあまり遊べるものではなかったんですが,ちょうどあの頃になると,製品としての精度も工場の信頼度も上がってきたんですね。そこで,それまでは難しいといわれていた女の子っぽいラインのアクションフィギュアも,そろそろ実現できるかな? という発想に行き着いたんです。
4Gamer:
以前なら諦めていたものを,今なら作れるかもしれない,と。
鳥山氏:
ええ。その後,原型師の浅井真紀さんが制作した,単行本の付録の女の子のフィギュアを見て「これだ!」と直感し,MMS素体の原型をお願いしました。
実は武装神姫のコンセプトである“ロボットと女の子の融合”って,僕が子供のころに親しんでいた模型雑誌やアニメなどでお馴染みだったモノなんです。それを僕なりに解釈し現代風にアレンジしてみたんですよ。
当時,女の子のフィギュアとロボット的な要素を,ここまで露骨にドッキングさせたものって,ほとんどなかったんですよね……。
4Gamer:
今でこそある意味で一般的なジャンルに成長しましたが,確かに当時はそうでした。
鳥山氏:
そんな経緯があるので,実はロボット少女の第一人者ともいえる明貴美加先生にオファーさせて頂いたものを,「ワンダーフェスティバル2011[冬]」で発表できたのは,凄く感慨深い出来事だったんですよ。
4Gamer:
あのビックバイパー型ですよね。
まだ制作中で,発売日などは未定なんですが,ようやくここまでこれたかな,と。
4Gamer:
手に取れる日を楽しみにしています!
鳥山氏:
ありがとうございます。
話を戻しますと,フィギュアの開発当初って,KONAMI自身がすでに展開している各事業をうまく組み合わせて,効果的かつ面白いことができないか? ということを全社的に模索していた時期でもあったんです。
なので,フィギュアとゲームを組み合わせる企画も考えていたんですね。ただ,何億円もかけてハイクオリティのゲームを作るというのは,なかなか難しいものがありました。そこで,軽い気持ちでオンラインゲームのはしりみたいな企画をゲーム部門に持っていったところ,非常にクオリティの高いものになって返ってきたんです。
これならば大丈夫だろうということで,世界観とデザインを守ってもらいつつ,全面的にゲーム部門に取り組んでもらいました。
4Gamer:
それがBATTLE RONDOなんですね。
鳥山氏:
はい。でも何年も続けていると,そろそろ次の何かをやったほうがいいよね,という空気になってくるんですよ。
でもその時点で,フィギュアはやっているし,PCオンラインゲームもやっているし……かといって,いきなりアーケードゲームというのも難しいだろうし……。
4Gamer:
えっ,アーケードゲームですか?
鳥山氏:
凄く大きな筐体があって,その中で本当に神姫が戦うみたいな。上司からは,「フィギュアを置いたら,ピーってスキャニングして戦うようにできないのか?」なんて軽く言われたりもしましたが,技術的にはちょっと無理ですよね。
4Gamer:
いつの日か実現してほしいですけど(笑)。
そんなこんながありつつ,ならばコンシューマゲームでやってみようということに落ち着いたんです。
4Gamer:
つまり,BATTLE MASTERSは,現実的な企画に着地した結果生まれたわけですね。
コンシューマ展開をしようとなった時点で,プラットフォームも決めていたんですか?
鳥山氏:
据え置き機も検討はしました。
ですが,バトルを繰り返してレベルを上げたり,同時にストーリーを楽しんだりできるゲーム内容にしようとなると,PSPが最適だろうという結論に,比較的早い段階で至ったんです。
僕自身,携帯型ゲーム機のいつでもどこでも遊べる部分に魅力を感じていることや,開発期間の事情などもありましたけど。
あえて緩く設定していた世界観に
物語という新しい血を加えた「BATTLE MASTERS」
4Gamer:
BATTLE MASTERSを,あのようなアクションゲームにしたのはなぜですか?
実は最初のうち,BATTLE RONDOのように自律した神姫を戦わせるシミュレーションゲームにするか,それとも自分で操作するアクションゲームにするかで悩んでいました。
でも,神姫が勝手に戦うだけでは,BATTLE RONDOと同じになってしまうんですよね。そういったこともあって,アクションゲームにしようと決めたんです。
ただそうなると,武装神姫が持つ世界観との親和性が崩れてしまいかねません。
4Gamer:
神姫は神姫で,マスター(プレイヤー)とは別の自律した存在というのが前提ですからね。
鳥山氏:
そこで,マスターが“神姫ライドオンシステム”というメカを背負った神姫に憑依する……つまり,あの世界に存在するバーチャルリアリティ技術を使って,神姫の視点になれるという設定を考えたんです。
ただこれも,“神姫である意味”がなくなるのでは? と悩んだりもしました。でも,神姫を操作するプレイヤーの腕前と,それをナビゲーションする神姫,つまりマスターとナビゲーターが二人で一つという関係であるならば,世界観的にしっくりくるな,と。
ゲームで遊んでみても,その辺りの設定で,「こんなの神姫じゃない!」みたいなことを思ったりはしませんでしたね。
神姫の自律的な側面を,アドベンチャーパートで補えているのが大きかったのかもしれません。
鳥山氏:
ありがとうございます。
発売前は「神姫はこうあるべき!」みたいなご意見がたくさん届くんじゃないかとも思っていたんですが,そんなこともなく,スっと受け入れていただけましたね。
ただひたすらバトルを繰り返して,ラスボスを倒して終わり……というゲームにしていたら,ひょっとしたら違った評価になったかもしれませんが……。
アドベンチャーパートとアクションパートを切り分けて,アドベンチャーパートでバトルをからめた神姫との生活が描けたので,皆さんに納得していただけたんだと思います。
4Gamer:
とくにアドベンチャーパートで印象的だったのは,神姫の性格がBATTLE RONDOからうまく取り入れられていた点です。
鳥山氏:
BATTLE RONDOにも,バトルだけではなく,マイルームでイチャイチャできたり,プチイベントがあったりといった要素がありますよね。
とくにそのあたりはご好評をいただいていましたから,BATTLE MASTERSでも充実させようと考えました。その姿勢が,アドベンチャーパートの骨格になっています。
4Gamer:
一方,BATTLE MASTERSの登場によって,武装神姫の世界の細かな部分が明らかになったという側面もありますよね。
鳥山氏:
そうですね。
武装神姫はもともと,最初にフィギュアを発売したときからちょうど30年後,2036年が舞台になっています。
その世界では,15cmぐらいの女の子型フィギュアロボ,つまり神姫が存在していて,それを持っているマスター達がホビーとして神姫同士をバトルさせて楽しんでいるという設定があります。
確か神姫は,PC一台分ぐらいの価格という設定でしたよね。
鳥山氏:
ええ。プラモデルみたいに毎月のお小遣いでホイホイ買えるレベルではなく,かといってお金持ちしか買えないという設定でもなく,大体PC一台分,いまなら10万円前後あれば買えるかな? という。ただ,それ以外の設定をまったく作っていなかったんですよ。
4Gamer:
それはもちろん,意図的にですよね。
鳥山氏:
ええ。例えばアーンヴァルは量産品なので,工場からたくさん出荷されているんです。だからこそ,このアーンヴァルが頑張って地球を救ってはいけないと思ったんですよ。
北海道のアーンヴァルにはこんなエピソードがあるだろうし,沖縄のアーンヴァルにはあんなエピソードがあるだろう,と。マスター一人一人によって,アーンヴァルとの物語は違うはずなので,そこを細かく作りたくなかったんです。実際,フィギュアでは武装を組み合わせて,剣じゃないものを剣っぽくする“見立て遊び”を楽しんでいる方も多いんです。
そういったことを考えると,ヘタにお話を付けたり,“最強の剣”みたいなものを設定したりするより,皆さんにそれぞれの解釈で遊んでもらえるほうがいいな……と。
フィギュアに興味を持ってもらうためのフックとして
ストーリーの重要性に気付いた
4Gamer:
それがなぜ,BATTLE MASTERSでは,あそこまできちんとしたストーリーや細かな設定が盛り込まれることになったんですか?
実はある日,僕の知人が,おもちゃ屋さんで武装神姫を彼の友人に初めて見せたときのエピソードを教えてくれたんです。
「凄い格好いいじゃん,これ何のアニメキャラ?」と興味を持った友人に対し,知人が「アニメじゃないんだよ」と伝えたところ,「ふーん,凄いねー」って,そのまま棚に戻したそうなんです。
それを聞いたとき,武装神姫に興味がない人に対するフックとして,物語が大事なのかな? と思えたんですね。
4Gamer:
フィギュアの背景に何らかの物語がないと興味を持たない人がいる,ということですか。
鳥山氏:
ええ。そういえば自分自身も,神姫のデザイナーとの打ち合わせのときに少し脱線して,アニメや映画の話題になることがあるんですけど,そういった作品で何が一番重要なのかを突き詰めていくと,物語が面白いかどうかという結論に至ることが多いんですね。
で,そういえば意図的だったとはいえ,武装神姫には物語がなかったな……と。
4Gamer:
確かにこれまでは,せいぜいBATTLE RONDOの「サマーフェスタ」や「ウィンターフェスタ」ぐらいでしたよね。
鳥山氏:
はい。そういった経緯もあって,BATTLE MASTERSでは物語を付けようということになったんです。
最初のうちは,バトルをしていればゲーセンで対戦者と喋ることもあるだろうし,そのうち強くなって大会にも出るだろう……みたいな流れのお話を考えただけなんですが,そこからさらに膨らんでいって,最終的に神姫一人一人にオリジナルのストーリーが欲しくなったんです。
その時点で10体の神姫が出ることは確定していたんですが,じゃあどうやってそれを作ろう? となったんです。
4Gamer:
まあ……なりますよね(笑)。
そこで,アルトレーネのデザインでお世話になっていたスタジオオルフェの黒田洋介さんに相談をしたんです。黒田さんは映画のお仕事にかかり切りの時期だったんですが,最終的には黒田さんが監修を引き受けてくださり,脚本は黒田さんに紹介していただいた方にお願いしました。
4Gamer:
確か複数の方が担当していましたよね。
鳥山氏:
ええ。神姫のオリジナルストーリーは,お二人に5体ずつ書いてもらっています。
メインストーリーは開発会社のシナリオライターさんに書いてもらったんですが,いつの間にかどんどんボリュームが増えていって,バトル前後の会話がもの凄い量になってしまったんですね。なので開発の最後には,みんなでヒーヒー言いながらスクリプトを打ってました(笑)。かなりたいへんでしたけど,その甲斐もあって,個性豊かなNPCが完成したと思っています。
4Gamer:
僕も「給料シーフ羨ましい!」と思いました。
鳥山氏:
あれは,僕が是非! とお願いしたものなんですよ。
僕は結婚しているんですが,仕事だからということで神姫を持ち帰れるんです。でもプラモデルやフィギュアが好きな友人達は「買って帰れないんだよね……」っていうんですよ。奥さんの視線が痛くて持って帰れないようで。
「また買ったの?」って言われるだけならまだしも,美少女フィギュアを買ってきたことをカミングアウトできず,車のトランクに隠しているという話まで聞いたことがありまして……。
4Gamer:
ああ,それで奥さんが出かけている間に,こっそり部屋に持って行ったりするんですよね(笑)。
鳥山氏:
そうそう(笑)。
じゃあきっと,神姫は好きだけど家に持って帰れない人もいるだろうと考えて,駅のロッカーに住まわせている神姫に人間が通っている……というのを書いてもらったんです。
突飛なNPCもいるんですけれど,わりと切実な実体験に基づいたヤツも居て,バラエティに富んだかなと。ちょっとアブナイことを言うヤツとかもいてドキドキしますけどね。
某アクションゲームのプロデューサーが
“萌え”に覚醒した事件も……?
4Gamer:
ほかにBATTLE MASTERSの開発中に印象的だったエピソードなどはありますか?
鳥山氏:
ありますよ!
開発会社が頑張ってくれたおかげで,開発途中でもバトルシステムはいい感じだったんです。その段階でちょっと外の意見も聞いてみようと思って,武装神姫にいっさい関わったことのない社内の人間に遊んでもらったんですね。
一時間ぐらいして様子を見に行ったら,凄く真剣にプレイしていたんです。面白いですか? と聞いてみたら,「絶対にあのブーツを買うまでやめない」と。
4Gamer:
えっ?
もともと萌え方面の属性を持っていないはずの人だったんですが,「アーンヴァル可愛いかも……」とか言いながら,レザーパンツやレザーアーマーなどの可愛い系のアイテムばかり買ってるんです。「バトルするなら,ヘッドパーツやリアパーツを買ったらどうですか?」とアドバイスしても,「俺はこれでいいの。アーンヴァル可愛いから,こういうのを着せたいの」って。うちでは古株で,割と有名な某アクションゲームのプロデューサーなんですけど(笑)。 そんな風に真剣に遊んでもらっている姿を見て,自信が付きましたし,開発にも弾みがついていきましたね。
4Gamer:
萌え属性のない人でも,遊んでみると神姫の魅力に取りつかれてしまうという好例ですねぇ。
そういえば,BATTLE MASTERSがリリースされた直後の「ワンダーフェスティバル2010[夏]」のイベントで,「あんなに売れるとは思わなかった」とか「営業担当者に謝られた」みたいなエピソードを披露していましたよね。
鳥山氏:
発売日の翌日,出張で大阪に行っていたんです。現地に仲の良い営業マンがいるんですが,「鳥さん,電話が鳴りやみませんよ。えらい量のFAXが来てますよ。どうしてもっとたくさん作ってくれなかったんですか?」と言われてしまいました。いやいやどれだけ作るかはそっちの部署の偉い人が決めることだろうとは思いましたけど(笑)。
でもおかげさまで,何度かリピートしては,その度に売れて……という形で,じわじわ売れていったみたいなんですよ。まだリピートして大丈夫なの? って,僕が心配になったぐらいで。
4Gamer:
先日のワンダーフェスティバル2011[冬]の段階でも,まだじわじわ売れ続けているとおっしゃっていましたよね。
昨年末にDLCのアイテムセールをやったんですが,あのタイミングでお正月にまた少し売れました。UMD版だけでなく,ダウンロード版も好調で,まだ買ってくれる人がいるんだな……と思うと,凄く嬉しかったですね。
4Gamer:
コンシューマゲームの販売って,発売初週が勝負みたいなところもありますし。
鳥山氏:
そうなんですよね。でもどういうわけか,BATTLE MASTERSはリピートもちゃんとさばけていて,逆に営業部から「何でですかね?」なんて聞かれるぐらいです。
4Gamer:
プレイヤーの中には,UMD版を買ったあとでダウンロード版を買った人も少なくないみたいです。
鳥山氏:
そうなんですよねぇ……。
実際に何人ぐらいなのかは分からないですが,少なからずいると聞いています。両方買わせちゃって申し訳ない気持ちもあるんですが,次回作で良いものを作って恩返ししたいと思っています。
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