インタビュー
「武装神姫」のこれまでの歩みと,気になる新作「BATTLE MASTERS Mk.2」について,総合プロデューサーの鳥山亮介氏に聞いた
完全新作ではなく,拡張版的な「Mk.2」
しかしボリュームは膨大なことに……?
さて,そろそろBATTLE MASTERS Mk.2についてもお聞きしたいんですが……。
これを作ろうということが決まった,最も大きな理由はどこにあるんでしょうか?
鳥山氏:
武装神姫というコンテンツがずっと続いているということもありますが,やっぱりBATTLE MASTERSで黒字を出せたからですね。
昨今,ゲーム市場が厳しいのは確かで,売れないものは1万本にも満たないことが普通です。
そういう市場環境で,BATTLE MASTERSは大ヒットではないものの,そこそこ調子が良く,それに加えてKONAMIとして初めてといっていいぐらいの本格的なPSP向けのDLC配信を行って,そこである程度の実績を残せたんです。
4Gamer:
そういえば,PSPで本格的にDLCに取り組んでいるメーカーって,実はそれほど多くはないんですよね。
鳥山氏:
社内でも「DLCってどうなの?」という声はあったんですが,BATTLE RONDOの経験があったので,僕の中に抵抗はなかったんですよ。できるんだったらやってみようよ,という感じで。
最初の配信にスクール水着があったんですけど,これが予想以上に喜んでいただけたようで(笑)。その次からは,ベイビーラズと紗羅檀など神姫の配信もスタートして,これらも好調でした。
4Gamer:
そうしたファンの支持があったからこそ,BATTLE MASTERS Mk.2を作ることになった,と。
ところで,開発はいつごろからスタートしたんですか?
鳥山氏:
ワンダーフェスティバル2010[夏]の直後ぐらいには,もし続編を作るとして一年後に発売するんだったらこのパッケージ,もっとがっちり作るんだったらこのパッケージ……という具合に,いくつかのプランを頭の中で描いてはいました。
それらのプランを社内で揉んでいった結果,完全な新作ではなく「Mk.2」という形に決まったんです。実際にスタートしたのは,2010年9月ぐらいですね。
4Gamer:
意外と最近ですよね。それでいて,発売時期が今夏と発表されています。やはり開発期間との兼ね合いもあって,完全新作とは違う形を選択したということでしょうか。
やはり完全新作となると,少なくとも1年では開発できません。かといって,2年かけて作るとなると,BATTLE MASTERSからの期間が空きすぎてしまって,「ああ,そんなのあったね」みたいな受け止められ方をされてしまうと思うんです。
当然,その間には新たなフィギュアをリリースしますから,キャラクターも増えていきますよね。
4Gamer:
フィギュアがリリースされるたびに,ゲームにも追加していこうとなると……いつまで経っても完成しなさそうです。
鳥山氏:
そうなんですよ。そこで今回は,BATTLE MASTERSで僕らがやり残したこと,そしてプレイヤーの皆さんから寄せられた「あの神姫も使いたい」といった要望に応えよう,と。2年お待たせしてしまうより,BATTLE MASTERSをベースに,キャラクターや装備などを追加して,いわばVer.1.5的なものにしようと決めたんです。
Ver.1.5といっても,内容的には1.5倍じゃ済まなくて,すでにヒーヒー言ってるんですけどね(笑)。
4Gamer:
ボリューム的にも期待できそうですね。
鳥山氏:
まだ何ともいえませんが,「こんなもん?」みたいなレベルにはならないはずです。新たな神姫だけでなく,BATTLE MASTERSに登場した神姫の後日談も,全神姫分きっちり用意していますので,ご期待ください。
メインシナリオも,BATTLE MASTERSで描いていた世界が,あれからどうなっているのか? という部分をカバーしていますので,楽しんでいただけると思いますよ。
4Gamer:
ところで,BATTLE MASTERSについてプレイヤーからは,不満点も寄せられたことと思います。例えば,とくにUMD版におけるロード時間の長さであったり,バトルの再戦時にも会話シーンが必ず入ることであったり。そのあたりは,BATTLE MASTERS Mk.2で解消されますか?
鳥山氏:
BATTLE MASTERS MK.2を作ることが決まったとき,真っ先に開発にお願いしたのは,メモリースティックDuoへのデータインストール対応と,会話なしでのバトル再戦の二つです。
4Gamer:
おお,それは嬉しいですね。
DL神姫にもストーリーを追加
ゲームバランスをはじめとした,細かな調整も
4Gamer:
BATTLE MASTERSのプレイヤーからは,「俺の嫁がいない!」といった声もあったかと思うのですが……。
鳥山氏:
多いですねぇ。ざっくり数えると,神姫って50人以上いるんですよ。さすがにBATTLE MASTERS Mk.2でも全部を入れることはできないんですが……。
増えることは確実,ということですよね。
とりあえず現段階では,エウクランテとイーアネイラの参戦は発表されていますが,それ以外にも……?
鳥山氏:
もちろんです。まだお話できないんですが,続報をお待ちください。
それと……,BATLLE MASTERSではDL神姫にいっさいストーリーがなかったんですね。そこに不満を持たれているプレイヤーさんも多かったようですし,僕らとしても心残りの部分でした。そこで,DL神姫にもストーリーを実装します。
4Gamer:
前作でDL神姫を買っているなら,DLストーリーだけを買えばいい,という形ですか?
鳥山氏:
はい,完全データ引き継ぎですので,もう一度パーツや神姫を買う必要はありません。ただし,ちょっとシステム面で調整中なのですが,配信し直しみたいなことが必要になりそうです。
4Gamer:
所持しているDLCの武装やパーツがBATTLE MASTERS Mk.2用に更新されるといったイメージでしょうか?
鳥山氏:
そうですね。ちょっとお手間をかけてしまうんですが,全体のバランスも見直すので,一部パラメータが変わる可能性もあります。ゲームをより楽しく遊んでいただくためのものなので,この点はどうかご理解ください。
DLCだけでなく武装も調整されるんでしょうか。
前作では“使える武装”と“使えない武装”がはっきりしていましたが。
鳥山氏:
いくつかの武器カテゴリに,特殊な操作で攻撃方法が変わるような調整を入れようと考えています。そのほかにも相手に二択を迫れるようになったり,より使いやすくなったりするような調整ですね。
例えば当てづらいと不評のバズーカですが,ロックオンしていても射線をずらして予測射撃ができるようになるといった調整を入れていく予定です。
4Gamer:
なるほど,そういった細かな調整も行っているんですね。
ところで,BATTLE MASTERSのセーブデータがない人は最初から遊ぶことになると思うんですが,セーブデータがある人は前作の続きから始めることになるんでしょうか?
鳥山氏:
必ずしも前作の続きから遊び始める必要はありません。エウクランテやイーアネイラは最初から買える状態になっていますし,新キャラの追加で一部の対戦カードも変わっています。武器のカテゴリーもいくつか増やしたり,レールアクションを発動したときの見え方や軌道を変えてみたりもしていますので,最初から遊び直して前作との違いを楽しんでもらうのもいいと思います。
もちろん,前作を何十時間も何百時間も遊んでいて,もうそこはいいという方は,セーブデータを使って前作の続きから遊んでもらえればいいかなって思います。
4Gamer:
BATTLE MASTERS Mk.2のスタート時は,やはりアーンヴァルMk.2に固定なんでしょうか?
鳥山氏:
セーブデータを引き継いで続きから遊ぶ場合は,BATTLE MASTERSでF1を優勝したときに使っていた神姫が,BATTLE MASTERS Mk.2スタート時のデフォルトになります。
アーンヴァルMk.2で固定というわけではなく,すでに全神姫がお店に並んでいるという設定になっていますから,どの神姫で始めてもかまいません。
前作のスタートはアーンヴァルMk.2固定だったので「なんで俺の○○を最初から使えないんだ!」と思うプレイヤーも多かったと思うんですが。
鳥山氏:
それは神姫のデザイナーさんにも言われましたね(笑)。
でも,「僕がデザインした神姫を早く使いたいんだけど,アーンヴァルで戦い抜くのが辛い。でも,アーンヴァル可愛いなあ」って(笑)。
4Gamer:
前作の恐ろしいところは,「○○は俺の嫁」って公言できる武装紳士/淑女でさえ「アーンヴァル可愛いよ,アーンヴァル」になってしまうところですよね。
鳥山氏:
アーンヴァルは「ときめきメモリアル」でいうところの詩織ちゃん的な立ち位置なんですが……みんな「アーンヴァル可愛いよ」になってしまうんですよね。でも,とくにアーンヴァルを優遇しているわけではないんです。
ゲームの導入部分から全神姫を選べるようにすると,その分シナリオが膨大になってしまうんです。ですから,まず語り部としてアーンヴァルMk.2を出して,そのすぐあとにハウリンとマオチャオ,ゼルノグラードを買える形にしてあります。
でも,アーンヴァルと武器を一つ二つ買うと,それだけで神姫ポイントがなくなるのでほかの神姫が買えなかったんですよね。そこでBATTLE MASTERS Mk.2では,最初から始めたとしてもすぐに別の神姫を買えるような調整も検討しています。
Mk.2の発売は今夏の予定
未経験者はベスト版で予習しておこう
4Gamer:
BATTLE MASTERS Mk.2の発売は「今夏」とのことですが,やはりBATTLE MASTERSと同じぐらいの時期……つまり,今年の夏のワンダーフェスティバル前後でしょうか?
鳥山氏:
そのあたりに出せるといいな,と思っています。ちょうどBATTLE MASTERSの発売から一年経つ時期ですからね。
もちろん,開発の状況次第ですが,半年延びるとか,そういったことにはならないと思います。
それに先駆けて,3月3日にはBATTLE MASTERSがKONAMI The BESTとして再発売されました。
ですが,BATTLE MASTERS Mk.2にも,この内容がすべて入っていることを思うと,僕らはどういう気持ちでこれを迎えればいいのかと悩ましいのですが……。
鳥山氏:
すでに遊んでくださっている方に,もう一度買ってくれ! とは言いません(笑)。
むしろ,これまで興味はなかったけれど,そういえば周囲に武装神姫が好きな人がいたなぁとか,とりあえず新作も出るようだし安くなったベスト版を遊んでみようかな,といった方に手にとっていただければと思います。
そしてバリバリ遊んで,BATTLE MASTERS Mk.2にデータを引き継いでほしいですね。
4Gamer:
BATTLE MASTERS Mk.2では,オープニングアニメも用意されるそうですが,これもやはり,まだ武装神姫に触れたことのない層へのリーチを狙ってのものですか?
鳥山氏:
ええ。話題になるフックをいくつか作っていきたいというのがあります。
フィギュアはおもちゃ屋さんでしか買えず,BATTLE RONDOはPCでしか遊べないという時期が長く続いてきました。でも,BATTLE MASTERSで,ゲーム売り場に武装神姫という言葉が初めて入ってきたんです。その意味は凄く大きいんですよ。
となると,次はアニメだろ,と。アニメムービーをきっかけに,武装神姫に注目してくれる人がいるんじゃないだろうか……そういう狙いもあるんです。
……単純に僕らが作りたかっただけっていうのもありますけど(笑)。
4Gamer:
そういえば,ワンダーフェスティバル2011[冬]のトークイベントでも,鳥山さんの趣味でオープニングテーマをMIQさんに依頼したとおっしゃってましたよね。
鳥山氏:
はい,プロデューサー権限発動です(笑)。
僕自身,子供の頃は土曜日の夕方にロボットアニメを見て育った世代なんですが,そういう経験があったからこそ,武装神姫が生まれたという経緯があるんですよ。だからこそ,子供のころ夢中になったものを,ただの萌え萌えだけにしたくなかったんですよね。そこで,ちゃんと実績もあって,個性的な歌が歌える方にお願いしたいと思ってオファーしました。
イベントでは,初めてMIQさんにお会いしたときに「ずっとファンでした!」って言ってしまったことを話しましたが,実はあれには続きがありまして……。
お……?
鳥山氏:
「だったらもっと早く使ってくれればいいのに!」って笑いながら言われちゃったんです(笑)。あのときは,凄く嬉しかったですね。
ちょっとベタかもしれませんが,最近のアニメやゲームのオープニングとはまた違った,耳に残る歌ができたんじゃないかなと思います。まだ20秒バージョンしかできていないんですけど。
4Gamer:
早くフルバージョンが見てみたいです。
鳥山氏:
あのオープニングアニメ,実は全カットリテイクする予定なんですよ。この爆発の煙が違う,とか監督がいろいろとこだわってるみたいで。あの絵がそのまま使われるシーンは,一つもないかもしれません。
4Gamer:
まるで映画の予告編みたいですねぇ(笑)。
鳥山氏:
先日公開したものは,イベントに間に合わせるために作ってもらったものなんです。スケジュールの都合もありますが,必ず手は入れると聞いています。発売前には公開しますので,こちらもご期待下さい。
再生産プロジェクトも含め
フィギュアのリリースはこれからも続く
ところで,BATTLE MASTERS Mk.2でも特別版のリリース予定はありますか? BATTLE MASTERSで黒塗りの箱が家に届いたときは「何事か!」と思ったものですが。
鳥山氏:
BATTLE MASTERS Mk.2の特別版に関しては未定です。
前回の特別版は,ちょっとふざけてみました(笑)。1万9800円っていったら,それなりの金額じゃないですか。それなら,綺麗なツヤのある箱に箔押ししよう! って。
実は発売日の7月15日って,ギリギリお中元の時期なので,コナミスタイルからのお中元というのし紙を付けてもらおうと考えてもいたんです。ところが,発送する直前にあの箱に巻けるのし紙が見つからず,泣く泣く断念したんですよ。
4Gamer:
ああいう形のサプライズは,武装神姫ファンとして嬉しいものですので,次も何かを期待しています!
それと,BATTLE MASTERS Mk.2の発売に合わせて,アルトレーネの再生産プロジェクト(※2500体以上の注文が集まれば再生産されるというプロジェクト)などはあるのでしょうか? 先日は惜しくも実現ならず,でしたが。
実はアルトレーネは初期出荷が一番多い神姫なんです。ですから相当行き渡ってるとは思うんですが,それでも1800人前後のご要望をいただけたのは,ありがたいと思っています。
でも,これでアルトレーネの再販の機会が永遠に失われたわけではないので,頃合いをチラチラうかがっていきます。
4Gamer:
コナミスタイルでは,レジンキャストキットのアラストールとキュクノスの通販も始まりましたし,なんだかんだでリリースラッシュですよねぇ。
鳥山氏:
これもご要望があるからこそ,続けられるものですから,本当にありがたく思っています。全部を買っていただくのは難しいと思いますが,それぞれのペースで,身を持ち崩すことのないように楽しんでいただければ,と。
さらに,これまで支えてくださった皆さんだけでなく,それ以外の方達へのアプローチも続けていきたいと考えています。
4Gamer:
BATTLE MASTERS Mk.2のみならず,武装神姫全体の今後の展開を期待しています。本日はありがとうございました。
今回のインタビューでは,これまであまり語られることのなかった武装神姫の生い立ちや,BATTLE RONDO,BATTLE MASTERSから,BATTLE MASTERS Mk.2への流れを整理してみた。
本音を言えば,もう少しBATTLE MASTERS Mk.2の詳細をお聞きしたかったところだが,どうやら現時点で表に出せる情報は,ここまでとのこと。4月以降には,新情報が続々と発表される予定とのことなので,続報を楽しみに待つこととしよう。
なお,フィギュアに関しては,3月発売の「アーンヴァルMk.2 テンペスタ」「ストラーフMk.2 ラヴィーナ」(「オールベルン ガーネット」「ジールベルン サファイア」も,という武装紳士/淑女もいるだろう)以降も,まだまだリリースは続いていくとのこと。
現在は,フィギュアを購入すると「武装神姫 等身大ブックマーカー」がもらえるキャンペーンも実施中なので,買いそびれているものがある人は,この機会に揃えてみる……というのもアリかもしれない。
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(C) 2010 Konami Digital Entertainment
(C)2006 Konami Digital Entertainment Co., Ltd.
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