インタビュー
[CJ 2011]多元宇宙でありとあらゆる世界を内包する「Infinite World」,可能性も無限?
「なんかPerfect Worldみたいな名前だな」と思った人は鋭い。
完美時空の前身であるArchosaur Studio時代からの中心的スタッフが2009年に独立した会社が北京趣遊天際網絡公司となる。主に企画担当を中心にしているようで,Perfect WorldのプロデューサーだったCe Zeng氏などがメンバーとして名を連ねている。Ce氏は誅仙の初期くらいまでを手がけていたようだ。Perfect Worldのゲームエンジンを作ったメンバーは完美に残っているので,Infinite WorldsのエンジンはPerfect Worldとは別のものとなり,独自開発でInfinite Engineというものを作り上げている。
あまりこういった色眼鏡で見てしまうのはよくないが,こういう情報が頭にあると,ゲームの理解も格段に早くなるので,あえて最初に挙げてみた。会場では,同社CEOであるCe Zeng氏に短時間のインタビューができたので,そこで分かった内容を紹介していきたい。
なお,混乱しやすいので,社名は漢字の完美と趣遊,作品名は英字のPerfect WorldとInfinite Worldsで表記しているのでよろしく。
さて,思えば,Perfect Worldも西洋ファンタジー系,武侠系,ケダモノ系の世界を詰め込んだ感じの世界感だったのだが,Infinite Worldsはさらに徹底している。基本的には多元宇宙や時間軸方向の違う世界がいくつか詰め込まれた感じのゲームになっている。Perfect Worldが一つのマップ内にいろいろ詰め込んでいたのに対し,Infinite Worldsでは,それぞれが独立したゲームであるかのように分離されている(基本的には)。
Infinite Worldsに用意されている世界としては,
武侠世界(東洋歴史/ファンタジー系)
西洋ファンタジー系世界
未来宇宙世界
文明崩壊後の終末世界(ミリタリー系?)
の4種類がある。
東洋的な武侠世界 |
西洋的なファンタジー世界 |
SF調の未来世界 |
文明崩壊後の近未来世界 |
それぞれ風景もゲームの雰囲気もまったく異なるのだが,MMORPGとしての基本システムは共通だ。当然ながら,各世界では職業や武器,スキルなどは違っており,剣や刀を使う世界,剣と魔法の世界,ロボットや光線銃の世界,銃器と弾薬の世界などが並立している。ほとんど4種類のMMORPGがあると考えたほうがいいのかもしれない。
ちなみに,Perfect Worldとの類似については,武侠世界などの個々の世界には似たものもあるが,西洋世界や宇宙世界などまったく違うものもあり,全体として見るとあまり似ているとは考えていないようだ。
それでも,なんらかのクエストで,刀を持った剣客が宇宙ステーションで敵と戦うといったこともあるようなのだ。ワールドを移動しても武器やスキルなどに変化はない。ロボットなどに刀が通用するのかというと疑問はあるのだが,きっと通用するのだろう。
各世界は多元宇宙ということらしいのだが,ワールドの移動は「タイムマシンのようなもの」を使うとのことで,時間と空間の移動という理解でよいかと思われる。
現状版であるver.0.6の資料を見ると,クラスは4種で武侠,Mage,ロボット,特殊部隊と,各世界で1種類になっているのだが,これはさすがに少なすぎる。各世界との交流も自由にできないことを考えると,パラメータなどで役割分担という形式かもしれないが,ちょっと大雑把すぎる気はする。
ちなみにいろんな世界の人が集まれるような場所はないのかと聞いてみると,一応あるとのこと。ただし,避難所のような扱いで,なにか特別なときに使う場所のようだ。
で,そもそも,なんでいろんな世界を詰め合わせているのだろうか?
それに対して,Ce氏はプレイヤーの飽きやすさを挙げる。いろんな世界を用意することで,新鮮な楽しみ方を持続しやすいということだろう。ついでに,ストライクゾーンを大きく広げる手であるのは認めざるをえない。
話を聞いていくと,上記で挙げた「世界」というものも,さらに小規模の世界をまとめたものらしいことが分かってきた。例えば,武侠世界とされているものは,いわゆる東洋系世界の総合体であり,武侠もいれば日本の戦国時代も含む,忍者なども登場するものだという。大枠での東洋ファンタジーの下に,武侠の世界,戦国時代の世界などが並立している構造を取る模様。そして,小世界のほうについては,3か月に1個くらいのペースでどんどん追加をしていく予定とのこと。ディズニーランド内の各テーマパークのような感じだとCe氏は表現していた。
この小世界のほうだけでも,独立したゲームとして成り立つんじゃないかという気はしなくもないのだが,さすがにMMORPG丸々1個分の規模ではないようだ。ほかのゲームでいうところの「マップ追加」のような感じでどんどん世界が広がっていくイメージだろうか(もちろん,通常のマップ追加のほうは,それはそれで別にある)。
大分類としての世界は上記のように,東洋ファンタジー,西洋ファンタジー,遠未来宇宙系,近未来SF系の4つ。近未来あたりのイメージがつかみにくいかもしれないが,具体的には,西暦2077年。最終戦争後の混沌とした世界で,武器としては,銃器が中心となる。
将来的には,大世界のほうに「マンガ世界」と「航海世界」が追加される予定だという。とくにマンガ世界は日本市場をかなり意識したものとのことで,キャラクターの造形もリアル系ではなく可愛い系のものになる模様。もう一方は,いわゆる大航海時代をテーマにしたもので,近代ヨーロッパや各地の雰囲気を反映したものになるのだろう。
なんとなく,大きな世界という汎用の枠組みをいろいろな種類で用意しておいて,さまざまなコンテンツを,その内部で展開するようなイメージだろうか。
例えば,なにかのマンガタイトルと提携して,マンガ世界内にその小世界を追加していくようことはやらないのかと聞いたところ,そういうことも考えてないわけではないが,もう少し小規模なストーリー単位での導入を中心に考えているとのこと。できれば,積極的な小世界展開を期待したいところだ。
なんらかのIPを持っていたとしても,それをテーマにゲーム,ましてやMMORPGを作ることは大変だが,こういったすでにゲームとして出来上がっている世界内に作るのであれば,コストは低そうであり,そういった小世界を追加できる基盤がすでにできているというのは,新しいビジネスになりそうな雰囲気ではある。すでに多くのゲームでアニメタイアップなどは盛んに行われているのだが,こういったゲームの場合「ゲームの世界観に合う,合わない」といった心配をまずしなくてよいのも利点であろう。
ゲームを使って,もっとメタなコミュニティを目指しているのかと聞くと,とくにそういうわけでもないらしいのだが,各種ネットサービスなど,ゲーム外のものとのリンクには力を入れている模様だ。
戦国時代では織田信長などの武将が実名で登場する。戦国時代に相当する部分を作るだけでも100冊以上の本を読んでいるとのことで,かなり詳しくなったとのこと。このあたりは,かなり本物志向でいくようだ。
ちなみに,海外で日本展開に力を入れるというと「ニンジャを出します」といった感じで,日本人の喜ぶものはそのあたりにあると思い込んでいる人が多い。西洋世界を強化したほうが日本ウケはよくなると思うのだが,100%善意なだけに対応が難しい。まあ,たまに分かりすぎていて「メイド服とネコ耳ですよね」と断言されるのよりはマシなのだろうか。
資料を見ると,ファッションシステムやマウント,インスタンスなどは実装されているものの,倉庫やギルド,生産,移動ナビなどまだいろんなものが開発中であり,全貌を見せるのはしばらく先ではないかと思われる。開発予定リストを見ると,ほかに変身システムやオークション,ペット,実績などといったものも追加される模様。
最終的にどのようなかたちで着地するか,正直いって見えづらいのだが,なにかほかとは違った展開が期待できそうなタイトルでもある。今後の追加情報に注目しておきたい。
- 関連タイトル:
無限世界 − Infinite Worlds
- この記事のURL:
キーワード
(c)2009 - 2011 All rights reserved 版?所有 北京趣游天?