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ついにオープンβテストが始まった「World of Warships」。サンクトペテルブルクスタジオで,開発者に怒濤のインタビューを行った
「World of Warships」公式サイト
なお,今回の合同インタビューはOBTの前に行われたので,現在分かっていることを改めて聞いているような部分もあるし,また,そのときの話と現在では食い違っているところもあるかもしれない。その点については,あらかじめご了承いただきたい。
話を聞いたのは,掲載順に以下の皆さんで,いずれも「World of Warships」開発やサービス展開におけるキーパーソンだ。
・Ivan Moroz氏(Director of Global Operation)
・Danny Volkov氏(Development Director)
・Anton Oparin氏(Art Director)
・Artur Tohtash氏(Head of Sound Team)
・Aleksandr Zotikov氏(Senior Technical 3D Artist)
・Sergey Gornostaev氏(Museums and Militaria Relations Specialist)
・Anton Artemov氏(Head of Interaction Department)
さて,インタビューに移る前に,まずはサンクトペテルブルクスタジオの様子を,写真を中心にお届けしよう。率直に言って,実にうらやましい環境だ。
「『蒼き鋼のアルペジオ』とのコラボは,MODよりも
直接的な形で行います」
「World of Warships」の世界展開における責任者であるIvan Moroz氏は,2012年にWargamingに入社。それまではテスターを務めていたという。各リージョンでのプロモーションやコラボ企画,世界大会などもMoroz氏の統轄する分野になる。
――最初に,「World of Warships」の今後の予定について聞かせてください。
Ivan Moroz氏(以下,Moroz氏):
クローズドβテストが始まった段階で,「World of Warships」はすでに85%程度完成していました。CBT期間中にももちろん,開発は進行しており,2015年夏頃にはオープンβテストへと移行する予定です。
OBT移行時には,CBTのデータはワイプする予定ですが,OBTから正式サービスに移行する段階でのワイプは考えていません。
また,「蒼き鋼のアルペジオ」とのコラボレーション企画も進んでいて,特別な船の制作やキャラクターの登場など,さまざまな計画があります。「World of Tanks」が「ガールズ&パンツァー」とコラボしたときは,MODとしての展開が中心でしたが,「蒼き鋼のアルペジオ」では,ゲームの中で直接からむような形にしていきたいと思っています。なお,コラボのスタートは,2015年の秋頃を予定しています。
――CBTで得られた情報やフィードバックにより,ゲームは変化しそうですか。
Moroz氏:
CBTは,ゲームのバランスやメカニズムの調整を行うためのものです。ですから,ゲーム内容そのものが大きく変化することはないと思ってください。
――CBTに参加している日本人プレイヤーの反応はいかがでしょう。
Moroz氏:
日本の人達からはいい反応をもらっています。コメントにしても,フィードバックにしても,とても良好ですね。我々は,「World of Warships」のアジアにおける中心的なターゲットは日本だと考えています。実際,プレオーダーパッケージも日本が一番売れ行きが良いというデータをもらっています。
日本のプレイヤーはとても熱心で,艦艇の開発速度も非常に速いですね。この熱意と期待に応えられるよう,我々も一層ピッチを上げて開発を進めていきたいと思っています。
――「World of Warships」の開発にはかなり時間がかかっていますが,開発中の印象的な出来事はなんでしょう。
Moroz氏:
あまりにたくさんの思い出があって,これ,というのは難しいのですが――そうですね,αテストの頃にぶつかった問題はとくに印象に残っています。
あの頃,一応ゲームとしてはもう動いていたんですが,20戦〜30戦くらいプレイすると飽きてしまうような作品になってしまっていたんです。どうやら,ゲームとして何か問題があるぞ,と感じて,これを解決するために,結局はゲームシステムを根本から変えることになりました。その後もテストを重ねて改善を続けて,現在に至っています。
――それは,かなりの出来事ですね。ところで現状,「World of Warships」にはさまざまなゲームモードやマップがありますが,史実においていくつか発生した,夜間戦闘を再現するようなモードやマップがありません。個人的に期待しているのですが,いかがでしょう。
Moroz氏:
あり得る,と考えていただいても良いと思います。
というのも,目下のところ,ゲームに天候の影響を入れていきたいと考えているからです。風や波,嵐や霧といった天候の変化を,ゲームに取り入れるための努力を現在しています。ですので,そうした環境の1つとして,夜戦もあり得るわけです。
――それは,嬉しい話ですね。続いて船について聞きたいのですが,日米以外の艦船が追加される予定はありますか。
Moroz氏:
OBTでは,CBTと同様,日米のほかにソ連,ドイツ,イギリスといった国の船を,プレミアム艦として収録する予定です。また正式サービス後は,日米に続いて,ソ連,ドイツ,イギリスの技術ツリーが追加されていきます。
ただし,どの国から追加していくかといったところは,まだ決まっていません。また,ある国の艦艇を一度に全部収録するのではなく,少しずつ増やしていくような形になると思います。
――CBTでは,プレミアムアカウントやゴールドなどは実装されていませんが,OBTではいかがですか。
Moroz氏:
プレミアムアカウントはOBTの段階から開始する予定です。ゴールドは正式サービス以降と考えてください。
――ちょっと気が早い質問になりますが,PCだけでなく,据え置き型のコンシューマ機での展開の予定はありますか。
Moroz氏:
あり得ると思います。ただ現状は,まずPC版を完璧に仕上げることを目指して,最終的な調整に集中している段階です。
――なるほど。もう一つ気が早い質問なんですが,「World of Tanks」のような世界規模のゲーム大会は予定されていますか。
Moroz氏:
そうですね,大会を行うかどうかはプレイヤーに委ねられていると思います。プレイヤーから「大会を行いたい」という声が上がってくれば,そのための手段を提供していきます。
――では,正式サービス開始時の特別なイベントなどはいかがでしょう。
Moroz氏:
コミュニティでのイベントや,ゲームでの特別ステージといったイベントは,もちろん予定しています。
また,「World of Tanks」ではマウス戦車の復元プロジェクト,「World of Warplanes」ではドルニエ爆撃機の引き上げとレストアが行われてきましたが,「World of Warships」の場合は,なにせモノが大きいので,そういうプロジェクトは難しいかもしれません。
ただ,博物館とのコラボレーションといったことは,すでに予定に入っています。
――分かりました。ありがとうございました。
「『Wargamingでゲームを開発する』というのが,
私の夢でした」
本作のディレクターを務めるDanny Volkov氏は,サンクトペテルブルクスタジオの前身であるLesta Studioの出身。自身も熱心なゲーマーであり,かなり早い段階からゲーム大会などに参加していたとのこと。そんなVolkov氏に,開発ポリシーなどを聞いた。
――よろしくお願いします。まず最初に,「World of Warships」はグラフィックスの非常に美しいゲームですが,快適にプレイするためにはどれくらいのスペックのPCがあればいいのか教えてください。
Danny Volkov氏(以下,Volkov氏):
「World of Warships」は,「『World of Tanks』の1つ上」を目標としています。ですから,「World of Tanks」がギリギリプレイできるPCでは,「World of Warships」を快適にプレイするのは難しいですね。ただ,現在のミドルクラスPCのスペックがあれば十分に楽しめるようにしていきたいと考えています。
――CBTの手応えはどうですか。
Volkov氏:
非常に良い感触です。多くの意見をもらっていますが,そのほとんどはポジティブなもので,とてもありがたく感じています。プレイヤーがゲームを遊び,「面白かった」と言ってくれるような作品を作ることは,我々の目標そのものです。
――印象的な意見などはありますか。
Volkov氏:
ゲームバランスに関する意見の中に,ちょっと面白い傾向が見られました。主に戦艦を使っているプレイヤーからは,「駆逐艦の魚雷が強すぎる」という意見がたくさん寄せられています。一方,駆逐艦を主に使っている人達からは,「戦艦の火力が大きすぎて,とても魚雷が命中する距離まで近寄れない」という意見をもらっています。
――なるほど。「お気持ち,お察しします」という感じですね。そうした側面も含めて,ゲームバランスを調整していくのは大変かと思います。仕事を続けるモチベーションとしては,どんなものがあるんですか。
Volkov氏:
私の場合,なによりも「Wargamingでゲームを開発する」という,今のこの仕事が夢でした。また,我々はかなり恵まれた状況にある,とも思っています。「新しいゲームを完成させて,サービスインさせる」という明確な目標があり,そこに向かってチームが一丸となって進んでいますから,楽しいんです。これが,ローンチからすでに4年が経過した「World of Tanks」になりますと,新しいコンテンツの制作にしてもバランス調整にしても,非常に複雑な仕事にならざるを得ません。
――そうだったんですね。ところで,「World of Warships」のターゲットとしては,どういう層を狙っているのでしょうか。歴史やミリタリーをテーマにしたゲームの場合,テーマそのものに強いこだわりを持つ人も少なくないと思いますが。
Volkov氏:
我々は何よりもまず,「ゲームとして面白いこと」が重要だと考えています。ゲームバランスを調整するにあたっても,そのバランスが実際の軍艦と比較して正しいかどうかではなく,ゲームをより楽しんでもらえるようになるかどうかを重視します。
もちろん,史実を再現することも大切ですし,それらの要素をそのまま取り入れてうまくいくなら,そのまま取り入れます。
――では,軍艦は好きだがゲームはあまり遊ばないというビギナーに対する,何か特別な対応はあるのでしょうか。
Volkov氏:
これに加えて,AIを相手にしたPvEコンテンツがあります。いわゆる「Co-op戦」ですね。これはビギナープレイヤーがルールを覚えるためのモードだと考えています。
ただし,Co-opについては,さらに作りこんでいく必要があるでしょう。例えば,αテストの段階では,輸送艦を守る「Convoy」モードを用意していましたが,プレイしたところあまり面白くなかったため,現時点ではありません。
また,Co-opは新規プレイヤーが遊び方を覚えるためだけでなく,対人戦に疲れたベテランが気軽に海戦を楽しめるモードとしてもブラッシュアップしていく予定です。
――日本の場合,対人戦に若干の抵抗を感じるプレイヤーも珍しくありませんから,Co-op戦には大いに期待したいですね。
ところで,日本市場では「艦隊これくしょん -艦これ-」がヒットしたため,軍用艦艇を「○○級」でひとまとめにするのではなく,それぞれ固有の船に対して愛着を持っている人がたくさんいます。金剛級ではなく,霧島や榛名のファン,といった形ですね。こうした「姉妹艦」を実装する予定はありますか。
Volkov氏:
確かに今の「World of Warships」では,“Kongo”と記述されていても,それは単艦の「金剛」ではなく,「金剛級」を表しており,個別の艦艇については,プレミアム艦艇として再現されているのが現状です。
ただ将来的に,艦艇をカスタマイズして姉妹艦を再現できるようにする可能性はあります。これについては,「World of Warships」の今後の展開次第というところでしょうか。
――分かりました。楽しみにしていたいと思います。
「描くべき対象が複雑きわまりないところに,
最も苦労させられます」
緻密に描かれた艦艇や,群青の大海原,そして夕焼けに染まる空など,グラフィックスの美しさもまた「World of Warships」の大きな魅力だ。そうしたグラフィックスは,どのような方針のもと,どのようにして描かれるのか。本作のアート部門を統括するAnton Oparin氏に話を聞いた。
――まず,具体的にどのようなお仕事をされているのかを教えてください。
Anton Oparin氏(以下,Oparin氏):
私の仕事は,「World of Warships」のアートワークについて,各リージョンで進んでいるさまざまな作業をまとめることです。もちろん,美術担当としてアートワークも作りますし,ゲームのマップを美術的側面からレベルアップしたり,火災や爆発などの特殊効果のデザインも担当したりしています。そうそう,マッチが始まる前のロード画面なんかも作っています。
――かなり写実的なアートワークですが,どのような方法で作っているのでしょうか。
Oparin氏:
どちらかといえば,私はイマジネーションを重視しています。もちろん,何もかも完全な空想で描くのではなく,ディテールは実物から取り入れていますが。アートワークに使うのは,基本的にコンピュータですね。
――大変なのは,どういうところでしょうか。
Oparin氏:
とにかく,描くべき対象が複雑きわまりないところに苦労させられます。艦艇はもちろん,航空機も描かねばなりません。そういった複雑で緻密な対象を,リアルに,かつゲームに適したように描くのは,とても難しいですね。
ですが,その難しさは面白さでもあります。苦労して描いたモデルやパーツが組み合わさって,最終的にゲーム画面の中で1枚の絵として完成していく様子を見ると,大いにやりがいを感じます。
――描くべき対象が複雑かつ緻密というだけでなく,例えば艦艇で火災が発生したり,船首が破断したりといったように,実際に見ることが非常に難しい現象もゲームでは発生します。こういった,いわばレア度が高い場面は,どのように描くのでしょうか。
Oparin氏:
また,当時の絵が残っている場合,そこからインスピレーションを得ることもあります。とはいえ,リアリティとエンターテイメントの間でバランスを取ることは,絶対に欠かせません。
――役に立った資料として,どのようなものがありますか。
Oparin氏:
飛び抜けて重要なのが設計図であることは,言うまでもありません。ですが,キーアートの作成においては,当時の写真からインスピレーションを得ることのほうが多いですね。図面よりも写真のほうが,想像力を掻き立てられます。
――さまざまな調査で,実物の艦艇を見ることも多いと聞いています。そうした体験は有益でしたか。
Oparin氏:
一言で表現するなら「やはり本物は違う!」ですね。我々は,チームとしても個人としても,多くの資料を集めています。ですが,実物から得られる感触は,それらとはまったく異なるものでした。
アメリカには第二次世界大戦期の軍艦がたくさん残っていますので,我々はそれを見に行って,乗船したりしたのですが,その巨大さ,鉄の感触,迫力など,とても多くのことを学びました。
――一なるほど。とくに印象が強い船はありますか。
Oparin氏:
個別の船に対する印象というよりも,船の内部に乗り込んだときの体験が鮮烈でした。とくに,機関室には興奮しましたね。まず何より,機関室は水面下20mに位置しています。鉄の壁を隔てて,自分は海の中にいるのだという感慨は,なんとも言葉にできません。
そのうえ,機関室は複雑で精緻でありながら,とても力強いという印象を受けました。純粋に,「すごい」という感想しか出てきませんでしたね。それに船には独特の神秘性があり,古い戦艦は,それ自体が一品物のアートとすらいえます。しかも,その設計思想が国ごとに異なっており,それぞれにまったく違った完成形を見せています。これもまた,素晴らしい点ですね。
――「World of Warships」の軍艦は,そうやって生まれたんですね。どうもありがとうございました。
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